表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/243

広場での戦い

広場には多くの巨人が集まっている。集まっている理由は食べ物らしい。

中央南側に蟻の集団がいる。それの体から蜜や苔をとって食べている。

……それに哀れな肉の巨人もいるようで、体からむしった肉塊をそのまま食べているようだ。



東の一角で爆発が起こり、争乱になっている。東周りのグループが突っ込んだのだ。こちらもレオが突っ込み、ベフォセットが爆発を放つ。


最初は一体二体と少しずつしかかかってこなかったので余裕でレオだけで回っていたけど、じきに数が増えていってベフォセットが加勢し、それでも追いつかなくなっていったので、ガギやゴガ、私も支援する。ゴブリンたちは一箇所に集まってクロスボウを連射し、ザービや盾を持たない護衛がそちらに突っ込んでくるサイクロプスの相手をしている。サキラパさんとブゥボ、もう一人のメジャーワーカーは私たちの壁役だ。


こちらは三箇所に分かれてやってくる巨人を捌いているけど、ギググゲゲゴたち東周りグループは一体となって戦っているようだ。

当然突貫力は東周りの方が高く、徐々に押して行っている。それはすなわち突出し始めているわけで、段々と東周りへの圧力が上がっていっている。


おかげでこちらの圧力は減って楽に捌けるようになってきているけど、このまま東周りが押し続けるとやばいのはグゲは理解しているはず。ということはこちらにも押せということかな?


「ベフォセット。こちらもだいぶと押せたと思います。蟻や肉の巨人を巻き込まない範囲攻撃、いけますか?」


目の前の巨人を、先程ガギが使った炎の魔法で蹴散らしてから、ベフォセットはこちらに戻ってきた。



「適したものがあります。が少しだけ時間をいただきたく」


その場で詠唱を始めた。ベフォセットが詠唱? デトネーションを使ったときでも短い詠唱だったのに、かなり長い詠唱をしている。これは大魔法の予感だ。時間を稼がなければ。


ちょうど悪いタイミングで突撃してくるサイクロプス複数がいたので、散弾モードのストーンバレットをサイクロプスの目を狙って放つ。大半のサイクロプスはそれで動きが止まる。二体、サイクロプスとイオデンが止まらず近づいてくる。

そのサイクロプスはゴガの投槍で倒せた。けどイオデンはゴブリンたちのクロスボウをいくつ受けても止まらない。護衛たちもガギやサキラパさんは他の巨人に手一杯で動けない。私の前まで突撃してきたイオデンは胸の前で手を組み合わせて振り下ろしてくる。



私が狙われた攻撃だったけど、イオデンの巨大な腕の振り下ろしに護衛のカバーは間に合わない。というか間に合っても防げないと思う。万が一のためにある魔法を仕込んでおいてよかった。


その魔法はレビテーションである。サーチェスさんが使っていた戦法は足の悪い私にも役立つと思ったので。戦闘になると分かった時点でレビテーションをかけておいてある。それをとっさに操作してわずかに浮き上がる。そのときに生身の左足で地面をけるのだ。サーチェスさんは爆発的な速度を生むために強化された義足で蹴っていたけど、私にはそこまでの速度はいらないし、義足でやると稼働時間が短くなっちゃうからね。


普通にバックステップするのと、レビテーションをかけてバックステップだと、レビテーションの方が若干早く長距離を飛び下がれる。もともと超人的な能力を持っているならただのバックステップでもできるんだろうけど、並の運動神経しか持っていない私だとレビテーションを使ったそれのほうがずっと素早く長距離を下がれる。



今回もイオデンの巨大な両手拳を回避できた。そのまま十分に距離をとってエネルギージャベリンを使い、イオデンをひるませた。あとは手の空いた皆が処理してくれた。



「デーモンフォール:スターライト」


ベフォセットの呪文が完成し、空から巨人たちが固まっているところに一筋の光が一瞬射し、そこが大爆発した。エクスブローションやデトネーションですら目じゃない巨大な爆発で、爆発による輝きや衝撃波がすごいことになっている。範囲外だったと思われる巨人も倒れているし。こちらは前から衝撃波が来たから耐えれたけど巨人たちはただでさえ大きいから衝撃波を受ける面積が大きいし後ろからだしね。



「これでもデーモンフォールの中では一番弱いやつなんですがね」


ベフォセットがこちらをちらと見て、そんな事を言う。一番弱いやつでこれなんだ。ふーん、すごいーって言ってあげた方がいい気もするけど、たぶんベフォセットだと調子に乗りそうなので、発言はスルーする。



「チャンスです! 突撃!」


実際にチャンスなので号令をかけたけど、私自身は魔力が底をつきそうになっているのであまり戦力にならない。少し時間が経てば多少は回復するだろうけど、自衛用の魔法を使う程度が今はせいぜいだ。


衝撃波で姿勢を崩している巨人たちをレオが一瞬で屠っていき、一瞬とは言わないものの盾持ちでない護衛たちやガギ、ゴガ、サキラパさんは単独で巨人を一体ずつ倒していく。機動力にかけるゴブリンや盾持ち護衛は集団で一体だけど、スターライトで得た有利でだいぶと倒せた。スターライト自体で消し飛んだ巨人もかなりいたようで、だいぶと圧力が下がった。


ちゃんと東周りグループもスターライトで作った有利を最大限利用して、だいぶと突き刺さって巨人たちを包囲できる位置まで突き進んでいた。こちらの数が少ないので包囲は実際にはできないけど挟撃にはできそうだ。



しばらくして広場にいた巨人は全滅させた。さすがにグロい景色が辺り一面に広がっているのは嫌なので、時間をかけてベフォセットに処理してもらった。それで得た魔力を私やガギ、合流したグゲに分け与えてくれたので魔力不足は解消した。この技術が人間にも使えたらいいんだけど、今の所魔族特有の能力のようだ。



魔族特有といえば、先程ベフォセットが使ったスターライトも、デーモンフォールという魔族特有の魔法らしいので今は私たちでは使えない類のものらしい。ただ私だけは学べば使えるかも、と言っていた。なんで私だけいけるんだろう?



ひとまずあらかた街の巨人たちは倒したと思うので綺麗になった広場で休憩することになった。


東周りグループは特に問題なく、出てきた三体のグレンデルも最初のものよりだいぶと格下に感じるレベルだったらしく、それほど苦もなく倒せたそうだ。個体差があるのは当然のことかもしれないけど、グレンデルは個体差が激しいようだ。



まだ蜜を満載したままの蟻がいたので蜜壺? 蜜がたまった部分をとって、いただくことにする。他には動けなくなるほど苔や蜜を満載した個体はいなかったので、そのままだ。蟻は保護の方向で動いているからいいんだけど、この肉の巨人はどうしよう。


正直毟られていたので非常に痛々しく、実際痛みを感じているみたいなんだけど、私たちが近づいても逃げない。四つん這いで頭を覆って怯えている感じだ。しかし彼らはその体中から生えてくる肉塊が大きくなるスピードがとても早く、取ってやらないとすぐに身動きできなくなるレベルになってしまうらしいからやっかいだ。


食肉としてたいへん有効なんだけどゴブリンにとっても人型から取れた肉を食べるのはやや抵抗感があるようだし、私なんかは元人間だと知ってしまったので、食べないで済むなら食べたくない。だからジュシュリで管理するのも嫌だし、かといってこうも無抵抗で哀れに見える相手を処分するのもなんか嫌だ。やっかいね倫理って。



「ゲゴ、痛み止めの魔法って覚えるの難しい?」


唐突に私に聞かれてゲゴが目をぱちぱちさせたあと答えてくれた。


「リン姫様なら容易かと。ゴブリンには魔法を学んでいる者なら、難しいですができなくはないです。ハイゴブリンならいけるかと」



「俺でも使えるレベルですよ、姫」


グゲが横から声をかけてくる。明らかに戦士のグゲだけど彼は戦闘用でない魔法ならある程度なんでも使いこなせるようだ。


ならなんとかなるかな。殺すのも違う気がするし、かといって放したとしても彼らは単独では動くことすらできなくなるみたいだし。

自死の意思がなさそうならとりあえず保護しておいて、あとでキリカーンテさんの元に送ろう。彼女?は獣人の村で同種の巨人を管理していたし、肉を切り出す痛みには痛み止めの魔法である程度抑える方向で動いてもらおうと思う。

人間であった頃どれほどの悪行をなしていたのかは知らないけど、今までの三年の苦しみだけでもある程度は業報を受けたんじゃないだろうか? 私が判断していいことでもないけど、放置もしたくない。



蜜蟻を軽くしてあげるために余分にとった蜜を肉の巨人に渡す。彼らは飢えていたようで、飛びついて無心に蜜を飲んでいた。彼らが暴れたりすることはなさそうなので、このまま広場にいったん放置しておこう。


あとは南側に残っているだろう巨人たちの掃討だけだ。ルオンに偵察にいってもらっているので、ほどなく正確な位置や残りの数も分かると思う。それまで皆には休憩してもらおう。なんかギグはグゲの剣をその場で研いだりしてるけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ