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異形

メジャーワーカーの護衛たちは、異形の動きを見切り、後方上からの攻撃を盾で完全に流した。降りてくる異形がはっきり見えた。

昆虫、たぶん蚊の頭にぶよぶよの体から痩せぎすな四本の腕のは先はかぎ爪。そのうち二本を使って器用に槍を持っている。持つための指みたいなのもあるようだ。

二本の比較的太めの足も細く、それだけで体を支えられているとは思えないけど直立している。

張った蜂のような腹部は宙に浮いてるかに見える。ぶよぶよの胴体部の背中側には半透明な昆虫の羽が4枚生えているけど、飛べはしないみたいだ。

ぶよぶよの胴体部の前側には他の手足とは違う吸盤のような足が複数生えていてうにょうにょ動いているのが生理的嫌悪感を刺激する。


彼らは私たちのような口がないように見えるため、しゃべれないようで交渉の余地なしの様子。いきなり襲いかかってきたしね。まあ見た目からしてこの異形がラキーガの眷属なんでしょう。


こちらは後方が前になって陣形をひく。前の二人がかなり硬めの戦士なので後ろからちょっかいをかける陣形だ。ラキーガの眷属たちは考え無しで突撃してくる。


意外に速い槍の突き、四本分を二人は苦もなく裁く。ブゥボももう一人もメジャーワーカーから選ばれた精鋭である。技量が通用する相手なら太刀打ちできる。たちまち眷属二体を斬り伏せてしまった。もう一体はゴブリンたちの集中砲火を浴びて矢を体中に生やすことになってしまった。最後に残った一体もやけくそ気味にブゥボに突きかかったけど、簡単に防がれて、その隙にゴガの投槍でとどめを刺された。私やガギなどは呪文の詠唱すらしていない。


巨人に比べたらなんと余裕なことだろう、とか思っていたら、最初に切り倒された二体がゆっくりと起き上がってきている。一度やられたゾンビが蘇るかのように。しかし油断することなくメジャーワーカーたちは再び切り捨てる。今度は念入りに二撃浴びせたようだ。二人共持っている武器は斧なので見るも無残な死骸になったようにしか見えない。


クロスボウの矢、ボルトをたくさん打ち込まれて倒れたはずの異形も立ち上がってきた。怪我の一つ、ボルトの一本も刺さっていない。さっき当たったはずのボルトはどこへ?と思ったら足元に死骸が倒れている。


え? どういうこと? ゲームなんかで残像だ、といいつつ復活してくる敵みたいだ。原理はどうなってるのかよくわからないけど、死骸を残して復活している。


しかし悲しいかな、戦闘能力が圧倒的に劣っているので、何度復活されても再び倒すだけで、眷属たちの状況はずっと悪いままだ。


「しかしうっとおしいですね。それにどんどん死骸が積み重なっていっているようにも見えますし、死骸も残らぬようにするのが正解なのですかね?」


面白くない足止めを食らっているのでガギが少しいらいらしているようだ。先程から魔力を節約するためにこの異形に対しては魔法は皆、使っていない。

またたぶん魔将の眷属なのでレオには遠く離れてもらって、ベフォセットは影に潜んだままでいてもらっている。ルオンはそこにいるみたいだけど、私たちでさえ分からないのだからやつらもルオンには気づけないでしょう。


「これ以上時間をかけるのも惜しい。少々魔力がもったいないですが、薙ぎ払います。お前たち、下がれ」


ガギが相手をしてやっていた護衛たちを下がらせる。そういえば魔法使いの護衛っていないな。咄嗟に動ける人じゃないとだめだからかな。


ガギが聞いたことのない呪文を詠唱して身振りし、発動させる。

ガギの目の前に大きな火の玉が現れ、その火の玉が崩れていって放射線状に炎が撒き散らされる。


異形の四体ともその炎を避けきれず、一瞬で炎に包まれ、すぐに崩れ落ちた。あたりに転がっていた彼らの死骸もまとめて数瞬で灰となって消えた。


「そこまで火力が高い魔法ではないはずなのだが、苦手だったかな?」

本当にいらついていたのか、倒した後に煽るガギ。初めてみたよこんなガギ。


「ほんま気持ち悪い奴らやったな、見た目もそうやが何度も復活してきよるし」

サキラパさんがほとんど残っていないやつらの燃えカスを拾おうとして、崩してしまう。


「今まで通った場所を再び見てきたが、一体サイクロプスが来ていただけだったから屠っておいた。後に共にいったゴブリンも戻ってくるだろう」

一旦離れていたレオが後方の偵察から戻ってきた。


「なかなか面白い特性がついておったが、あれでは有効に使えるとも思えんなぁ」

ベフォセットは再び影から頭を出してよく分からないことをつぶやいている。


「ともかく、次が最後の難関です。気をつけていきましょう」


街の南寄りにある大きな広場についた。東側にはギググゲゲゴの部隊もいるはずだ。ここには多数の巨人が出入りしている。北側から巨人が来なくなったことにはここの巨人たちは気づいていないようだ。多数いるとは言っても大半はサイクロプスで若干イオデンがいるぐらいで、他のやつは見えない。


ここでならゴーレムが役立ちそうだけど、今から引き返してゴーレム兵団を連れてくるのも時間がかかりすぎるよねぇ。それに今までの経験から、取り囲まれない限りなんとでもなると分かったのは大きい。無理して近接で相手をする必要は壁役以外あまりなく、盾持ちの護衛を前衛に私たちが魔法をぶっ放せばなんとかなると思う。ただここではフォースフィールドは使わないので無理はしないようにしなくては。


合図の光魔法をゴガに打ち上げてもらう。……しばらくして同様の光が東から上がった。巨人たちの群れに攻撃開始だ!

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