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暴力

「このままではいけない、多少危険ですが前に出ましょう」


ガギが言う。私も賛成だ。すぐにブゥボの盾を先頭に大きな路地に出る。私たちが出てくるとは思っていなかったのか、多少イオデンがびびった感じだったけど、顔を見てみたら、両方にやにやしていた。サイクロプスと違って下手に人間に近い顔つきだから余計にむかつく。やっぱりこいつら遊んでるつもりなんだ、と。返り討ちにあうかもなどという考えはさっぱりないらしい。


ガギとゴガの護衛が一人ずつ、二人のハイゴブリンが飛び出してイオデンに斬りかかった。身長差が酷いので、すねにだけど。

イオデンはその攻撃をそのまま受けたけど、効いている様子がない。確かに斬れているけど、薄皮一枚だけのようで、かなり硬いみたい。今までは不意打ちとか遠距離攻撃で倒してたしなぁ。しかも防衛では爆発物とか使ったり。まともに戦うとかなり強いようだ。


イオデンは一瞬怯んだ感じだったけど、護衛二人の攻撃がそれほどでもなかったせいか、頭同士で見合ったあと、ニヤつきながら護衛に殴りかかってきた。もちろん護衛はそんな大振りな攻撃など当たらないけど、万一あたったら一撃だと思えるほどの攻撃だ。地面を殴って痛くないのかしら、とすら思う。


護衛二人が私たちに時間的余裕と距離を作ってくれた。私の護衛である女性ハイゴブリンのザービが縦に長い剣圧を放った。戦技だ。ザービも戦技使えたのね。というか実際に私を守って戦闘になるってこと自体初めてな気がするからザービの実戦を見ること自体今日が初めてだし戦技の使用は今回が初めてだ。

すごい技だと思ったけど、イオデンにあたっても両断されることはなかった。しかし大きくよろけた。斬撃ではなく衝撃だったのかな? あとで分かったんだけどイオデンは斬撃耐性という能力を持っていたらしい。耐性があるから斬れないってわけじゃないみたいだけど、威力はだいぶと弱まるみたい。


「エクスブロージョン」

ガギがこっちの世界では見たことのない魔法を使った。

イオデンの頭の高さで突然大きなな爆発が起きた。イオデンはその爆発を食らって右の頭と肩を吹き飛ばされた。すこしズレてしまったようだ。左の頭が右を見て叫ぶ。けっこうずたずたで血も流れているのだけど痛みを感じないのか、ただ叫びながら無事な左手で右の頭があったところを触ろうとしている。


……そういえばイオデンは互いしか見えてないつがい、夫婦とか恋人同士ってことだろう、が融合した姿だと言われていた。もしかすると双方の頭が意思を持っていたのかもしれない。けど、二つの顔が明らかに私たちをなぶろうとにやにやしていたのを思い出して、考えるのを辞めた。


「エネルギージャベリン」

残った頭に対して、容赦なく魔力で出来た槍をぶつけようとした。衝撃ではなく貫通の属性をつけて。

それは見事にイオデンの残った頭にあたったけど、ほぼ同時に先端が金属で柄が木で出来た普通の槍もあたっていた、ゴガがさっき投げつけて外れたはずの槍を投げたようだ。


二つとも頭をつぶされたイオデンがゆっくりと崩れ倒れる。しかし強敵を正面から倒した余韻にひたっている暇はなかった。

イオデンが倒されたからか、あるいは派手に音を立てながら戦ったからか、遠くで座っていたはずのグレンデルがこっちに向かって走ってきているからだ。五メートル越えの巨体で走るな。


しかしまだ距離はある。近づかれる前に倒せるか? いや、博打は辞めておこう。あのグゲが手こずった相手だ。


「ガギたちは攻撃して。私が守ります」


二人が一瞬こっちを見て、動いた。ガギは長めの詠唱を。ゴガはまるで先程のシーンが巻き戻るような感じで槍が手に戻ってきていた。魔法? それとも魔法の槍? そういったものが元の世界の神話であった気がした。


「デトネーション」

ガギの魔法が完成すると、グレンデル全体を包み込むような大爆発が起こった。先程のエクスブローションの上位版だろうか? 爆発の起こり方からして違う感じだった。


しかしその大爆発ですらグレンデルの気配を消せなかった。ゴガが再び槍を爆発の中へ投げた。何かを貫く音が響いた。グレンデルにあたったはず。しかしまだ気配は消えない。


私の呪文も完成した。

「フォースフィールド」


前に出ている私、ガギ、ゴガ、二人の護衛にブゥボ、ザービが範囲内だ。


上半身が焼きただれ、左腕に槍を刺されたままのグレンデルが爆発から飛び出してきて、二人の護衛の近くに道を踏み抜くように右足を降ろした。途端にこちらにまで地響きが伝わり、近くにいた二人には地面を這う衝撃波みたいなものが襲いかかったきた。しかし私のフォースフィールドがそれによる打撃を吸収した。魔力がごそっと失われる。二人はあわてて飛び退いた。


グレンデルは右足を踏み降ろした勢いのままブゥボに殴りかかった。ブゥボはそれを受け止めることはせず、器用にその大きな盾で受け流した。しかしそれでもフォースフィールドが働いて私の魔力が消費された。盾で受け流したのにダメージを受けたってことだ。やはりとんでもない。


ガギは立て続けに大きな魔法を使ったので魔力が心配だし、ゴガは槍を失ったので別の攻撃手段、おそらく魔法になる。一番余裕があるのは私だろう。護衛の二人は近づかないほうがいいし、ブゥボは私を守るので精一杯である。ザービは警戒しつつも動きはない。なんか力をためている感じだ。大技を出してくれるのかもしれない。それに期待して牽制することにする。実は今の私で最大の攻撃はさっきのエネルギージャベリンなんだよね。フォースフィールドを維持しながら魔法を使う。


「ストーンバレット」


グレンデルの上半身に向かって石の弾丸をばらまく。グレンデルに多少あたったところで大きなダメージはならないだろうけど、目などの急所に当たればしめたものだし、グレンデルもそれを警戒するだろうから気が削がれるはず。


グレンデルは鬱陶しそうに左腕で頭を隠す。そこでようやく気づいたといった感じで左腕に刺さったままだった槍を引き抜いて無造作に捨てた。その動きにすぐにゴガが反応して槍を手元に引き寄せた。


グレンデルの後ろから矢が飛んできて当たった。しかしあまりグレンデルは気にしていないようで、ゆっくり振り返るだけだった。けどこの一瞬は助かる。いつの間にか前に出てきたサキラパさんをフォースフィールドの範囲に加えて、いつもの魔力回復のタブレットを飲んだ。


ザービはためた力を開放し、別の戦技を放ったようだ。剣をその場で突く行動をすると、それからビームみたいなものが飛んでグレンデルの左足を貫いた。後ろを振り向きかけたグレンデルが再びこちらに飛びかかってこようとする。


そんなグレンデルに後ろからレオが斬りかかった。後ろから矢が飛んできてたし、レオが救援に向かったレンジャーゴブリンたちは無事にサイクロプスを倒して援護してくれていたのだからレオもフリーになってるよね。

背中をレオに斬られたグレンデルはレオに目標を変更しようとしたところで、サキラパさんが飛び出して、先程ザービに貫かれたせいか動かないグレンデルの左足の小指をハンマーで叩き潰した。


いかにタフで痛みを感じていないかのようなグレンデルにもこれは効いたようで、明らかに動きが鈍ったし、鈍い声をあげた。巨人といえどむき出しの小指をあんな大きなハンマーで叩かれたら痛かろう。先程お前が殴ったサイクロプスも痛かったと思う。しかし暴力の信奉者は暴力を受けても省みることはない。

しかし暴力の上にある武力ならどうだろう?


レオがグレンデルの首を刈った。


その醜く歪んた顔は今自分が死んだなどと理解できない!といった顔だった。首から上を失った体はゆっくりと脱力して崩れていった。道のど真ん中で倒れられるのはこの巨体では迷惑だ。けど処理する時間も惜しいので、死体を乗り越えて進む。

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