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紹介

すでにミリシディア領内に入っているのだった。ここでなら魔将を三人とも同時に呼べて、魔力もかからないし、呼ばない理由はない。



確かパサヒアスの指輪でパサヒアス様と念話も出来たはずだ。今までは別に特に用事というか、手を煩わせたくなかったので連絡していなかったけど、今はミリシディアに侵入してるし、報告ぐらいしておいたほうがいいと思った。



夜だけどガギ、ギグ、ゴガに来てもらった。この三人はまだパサヒアス様とお会いしていないし、ゴガもちゃんと紹介しておきたい。私以外に話せそうな人だし。


三人がいつもの広間に当たる場所に集まったところで指輪に触れながらパサヒアス様に話しかけるように考える。



『待ちかねたぞ、リン』


(早速のご対応、ありがとうございます。よろしければ私のところまでおいでくださると嬉しいのですが)



『行ってよいのか? では早速まいろう』


私は椅子に座って右足の義足をつけている。五神官の三人はそれに控えている、といった位置で片膝をついていたんだけど、その三人の後ろにパサヒアス様が現れた。



『前の緑と違うな?』


三人は突然現れた大きな気配に気づいて、私を守る体勢になっていた。



「リン姫様、こ……、の方が?」


ギグがなんとか声を出せたという感じで言う。



「ええ、そうです。ですのでそこまで警戒しなくていいですよ。ゴガ、皆にリンクをお願いできる? パサヒアス様、一種の魔法をパサヒアス様にも使用してよろしいでしょうか?」



「待った。リンよ。その魔法を使う前に、話せるという者と魔法無しで話をしてみたい。ゴガ、だったか? 誰だ?」



「はい、パサヒアス、様。私でございます」


ゴガが少し顔を引きつらせながら一歩前に出た。



「おお、そなたがリンが言っておったものか? 今は魔法を使っておらんのだな?」


さっきまですごく緊張していた感じだったのに、ゴガは微笑んで答えた。



「はい、パサヒアス様が話していらっしゃるのは私どもでは魔族語と呼ばれているものですね。今その言葉で話しております」



「おお、なるほど。通じないのはまったく我らの言語がそちらの記憶に残っていなかったからなのだな」


「はい、おそらくは。私も魔族語を学びはしましたが、実践で使用したのは初めてです」


「ほうほう。リンと違ってところどころ発音や言葉が奇妙に思えるところもあるしな、しかしそれだけ話せるなら問題ないな。我らの文化は伝わっておるのか?」



「はい、しかし私はほとんど知りません、申し訳ありません。こちらにいるガギが専門ですのである程度は知っているかと」


「そこなガギとやらは話せないのだよな?」



「今は話せませんし聞き取れないでしょうが、それが出来るようになる魔法を私は知っております。パサヒアス様にも影響を与えるものですので、ご許可いただけるならそれを施させていただきますが」


「うむ、先程リンが言っておったものだな。よろしい、使ってみてくれ。リン以外とも会話できるのは嬉しいぞ」


ゴガがわたしを見たのでうなずく。ゴガがリンクを使ってくれた。これでガギ、ギグもパサヒアス様と会話ができる。



「リンとは似ていない緑のものたちよ。お前たちが何なのかは今は問うまい。リンの助けとなってくれているようだからな。だから私もお前たちの助けとなろう、何なりと言うが良いぞ」


「いえ、今日は紹介だけのつもりでした。わたし達は明日から更に進んで巨人たちと戦いたいと思います」


おそらく三人に言ったのだろうけど、あえてわたしが答えた。まだ三人には答えにくいだろうしね。



「ふむ、そうか。まあ焦る必要もないな。ミリシディアにいる限り、いつでも呼んで構わぬからな。ああ、それとミリシディア南や村付近の巨人共は処理しておいた。しかし北の方はまだだ、それをリンに頼もう」


「はい、分かりました」


「おお、そうだ。一つ言っておかねばならぬことがあった。こそこそと動いておった魔将の一人、アンテリモウが我が城にやってきて、いろいろと言い訳をしおったわ」



「申し訳ありません、パサヒアス様。話が見えないのですが?」


ガギが頭を上げて、パサヒアス様に言う。そう、これだ。仮面をなくしたのはこういうことなのだ。今のガギの顔を見れば当惑しているのが分かるだろうけど、仮面で見えないなら、当惑しているのか、バカにしているのか、発言だけでは分からない。



「ふむ、リンはこちらのことを話してはおらんかったか。お前たちはリンの魔将みたいなものだろうから、説明しておこうか。アンテリモウは私が創造した自律型の魔将だ。私のことは生みの親低度にしか思っておらぬ。今回の件はアンテリモウともう一人の自律型魔将であるラキーガが引き起こしたことのようだ。ラキーガがアンテリモウを私のためだとそそのかし、巨人共を操ってそちら、帝国だったか? そちらに攻め込ませていたのだ。少なくともそうアンテリモウは言い訳しておった」



「そのアンテリモウは、どうなったのですか?」


「アンテリモウは私が生み出した割に純真なようでな。本当に私のためだと思って動いておったようなのだ。もしそれが演技であるなら大したものよ。なので釘を刺しておいただけで自由にさせておる。今はあやつも、その眷属どももこちら側よ」



「その、アンテリモウの眷属とは? どのようなもの、姿なのですか?」


ギグが聞く。



「ああ、アンテリモウはゴリラと獅子のケンタウロスよ。ゴリラは分かるか? 獅子は分かるよな?」


確かにレニウムや帝都での装飾に獅子はあったので広く知られていると思うけど、ゴリラは微妙だよね。ゴリラの装飾とか元の世界でも見たことないし。探せばあるのかもしれないけど。



「ゴリラは猿の一種ね。巨人や蟻に混ざっていたモンスターがたぶんそれの眷属ね」


「ああ、あいつらですか。戦闘力は低かったですがとにかくうっとおしかった」


「アンテリモウはとにかく数を増やそうとしたらしく、かなり性能は劣るのは確かだな。ただまあ使い方次第よな。今はそれなりに役立っておるよ」


「そうなのですね、では残る敵は巨人と蟻だけですね」


「蟻もかなりの数をこちらに引き込んだ、アリクネの魔将キリカーンテがな」



「アリクネ?」


三人がハテナを飛ばす。全く説明していなかったからねぇ。まあここは本題ではないのでスルーするように言っておく。



「ということは蟻も少数しか敵としてはいないのですね?」


「ああ、そうなる。多くの蟻はキリカーンテから盗んだものだったようでな。今は多くを取り返した。が、ラキーガ自らが育てたヒュージアントの集団がいたんでな。そいつらはそのままだ。キリカーンテの蟻に戦闘型はあまりおらぬから、戦闘型の蟻はだいたいラキーガの蟻と思って良い。念の為キリカーンテの戦闘型には苔を背負うように言ってある。故に苔が生えている蟻、もしくは蜜を背負う蟻は敵ではない」



「なるほど、それは助かります。北にはほぼいないのですよね? 味方の蟻は」


「戦闘型は念の為南にいるように言ってある。北側にいるのは苔蟻、蜜蟻が大半だな。こやつらは巨人共の食料として使われていたようだ。今も取り返せていない蟻がいると思う。見つけた場合は開放してやってくれ。巨人たちに見つからなければ自力でキリカーンテの元へ戻るだろう」



「ということはジュシュリを占領した蟻は、そのラキーガという魔将の手駒だったということですか?」


ガギが険しい顔でパサヒアス様へ質問した。



「ラキーガはそれほど大した魔将ではないはずだ。故におそらくラキーガの手を離れ、暴走したやつらではないだろうか? ラキーガには巨人の周りにいる蟻ぐらいしか操れまい……」


「ラキーガという魔将について、教えていただいてよろしいでしょうか?」



「ラキーガは虫の王だ。根源世界でもっとも人族を殺すと言われた虫の姿を持つ。まあ体は変異してめちゃくちゃだがな。だからやつは、私を恨んでいるのかもしれないな。私がやつにデバイスを撒くように言ったし、ラキーガはそれが得意な魔将だった」



一瞬想像するのもいやなあの虫を思い出したが、やつらは不愉快だし間接的に病原菌を撒き散らしたりするけど、人間を殺す力は持っていないはず。となると、あいつか。

姿形はあまり思い出せないけど、ぶーんとうるさくて血を吸ってくるあいつだ。そんなのが他の魔将レベルの大きさで体は変異しているとか、出会いたくない見た目の敵のようだ。

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