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進軍と補給

遠征に出発した。予定としては一ヶ月となっている。大型ゴーレムの進軍速度が遅いためだ。ビスマス砦救援のときのように、大型ゴーレムを馬車で運べればそれなりに早いのだが、さすがに二十機以上の大型ゴーレムを運ぶ馬車の手配は出来ない。そもそも本来は防衛用だからね、大型ゴーレム。


すぐにミリシディア領土には入らず、まずは東にある支砦では大きい方のテルビウムに向かう。支砦最大はハッシウムなのだが、そこは一番東にあり、ミリシディア侵入予定地域を越えた向こうにあるためだ。


すでにテルビウムでは私達を迎えるための物資や準備が整っているという。今はないレニウムからテルビウムを結ぶ道を作るという話も出ているらしい。まあ今回の遠征には帰還時でも間に合わないけど、うまくいけば通行量がすごく増えるからね。


テルビウムとレニウムの間にある支砦はビスマスとオガネソンだけど、ビスマスは放棄され、オガネソンはビスマスなみに小さい支砦でとてもジュシュリの受け入れが出来ない上に、遠回りになってしまうらしいので、寄らずに通過することになった。


大型ゴーレムの足だとどんなに頑張ってもテルビウムには、三日ほどかかる距離にある。ので途中は野宿となる。けどすでに移住で野宿は経験しているので問題はない。どころかテルビウムという中継地点があるおかげで、結構な贅沢もできるようだ。事実、輜重隊の荷物は今はまだ少なく、基本徒歩の技術者たちが便乗で馬車に乗り込んで一緒に揺られているものもいるほどだ。


テルビウムまでの補給はレニウムの人族部隊が担当してくれているから、進軍と言っても今は単に集団移動って感じだね。


テルビウムまでは計算通り三日かかった。テルビウムは支砦と聞いていたけど、かなり大きい。支砦はビスマスしか知らなかったけど、ビスマスの三倍以上はあると思う。特に倉庫らしき建物が多くあって、九号ゴーレムも結構な数が配備されていた。テルビウムの兵士たちには大いに歓迎された、特に技術者ゴブリンが。


テルビウムのゴーレム技術者が進軍してきた大型ゴーレム以外にも馬型や牛型ゴーレムのメンテナンスも代わりにしてくれた。技術者ゴブリンは技術指導みたいなことをしていた。言葉が通じなくてもある程度意思疎通が出来ていたようだけど、ゴガに頼んでリンクしてもらったり共通語も話せる者たちに通訳してもらったりした。


レニウムの兵士たちはゴブリンに偏見は持っていなかったので助かったけど、それはテルビウムでも同様だったので一安心した。むしろ積極的に関わろうとしてくるテルビウム技術者は、技術者ゴブリンを本場の、最新技術を持っている技術者集団、として扱ってくれているようだった。まあ実際そうなんだけど。


レニウムで別れたはずのラキウスが何故かテルビウムにいて、私とテルビウムの砦長たちとの顔合わせなどにも付き合ってくれてとても助かった。皇帝陛下の、親衛隊の威光はかなり強いみたいで、頭が硬い、と私が言ってしまうと少々アレだけど、まあテルビウムの上役にはそういう人もいたけど、そういう人との壁にラキウスはなってくれた。それで常々思っていたけど、やっぱりレニウム砦長のケインさんたちが特殊なのだろうと思えた。最初に、長く関わる人が頭の柔らかい人で良かった。そのへんは感謝しかない。


モンスター扱いされている種族の上位種族を名乗る異種族と、それの姫と担がれるハーフエルフの八才の女の子が相当な武力を持ってやってきたとか、そりゃー胡散臭いと私自身が思うからね。


まあだから、別に不愉快にも思わず、むしろ申し訳無さを感じるんだけど、最終的には打ち解ける、まではいかなかったけど、ともかく希望していたことはしてくれるようだし、嫌がらせとか邪魔とかはなかったので良かった。陛下の敵対貴族とかの手は回ってはいないかったようだ。今後はそういうのも注意していかなくてはならないと、ハームルにも言われたし、うんざりだけど、仕方ないか。


丸二日滞在して、補給やメンテナンスを行った。さあ次からが敵がいるかもしれない場所だ。ラキウスとも今度こそしばらくお別れだ。付いてきたら死ぬかもだからね。


テルビウムを出て、南東に進んでいく。しばらく進むと森が広がっていた。この森に入ったらそこからはミリシディアだ。人族によると森には常に霧がかかっているように見えているらしいけど、私達にはさっぱり分からない。


なぜこのルートが選ばれたかというと、この森には道が残っているはずだからだ。ほとんどいなかったけど、ミリシディアに行く人や来る人はこの道を使うことが多かったらしい。過去の記録によると、この先に大きな街があるらしいし、それがパサヒアス様がいっていた街だろう。


その道を見つけることが出来、大型ゴーレムでも問題なく進軍できるようだ。ただそんなに広い道ではないので縦に長くなってしまうのがやばい。

先頭を行くギグのゴーレムにも護衛はもちろん付いているけど、それ以外にも左右にフリーのゴブリン戦士やハイゴブリンを横の森を同時に警戒してもらうしかない。進軍速度は遅くなるし、森を行く兵士は大変な役目だけど、奇襲されても困る。


しばらくその体制で進んでいくと、森を進むゴブリンたちからたびたび報告が入った。事前に見つけたら報告するように言っておいたものだ。


何箇所も小さな石灰塚が発見された。ほとんどがもはや人の形を残していないものみたいだけど、間違いはないだろう。今は進軍中なのでマッピングしていくだけにするけど、ある程度落ち着いたら全部供養するつもりだ。


一箇所だけ道の真ん中に石灰塚が出来ていた。スルーするにも難しい位置だったので、それは取り除いて、近くに埋葬させてもらった。もちろんその埋葬場所もマップに記載していく。ゴブリンたちには理解できない行為だとは思うけど、知った上で私がそれを知らないふりは出来ない。自己満足だと分かってはいるけど、供養ぐらいはあとでさせてもらいたい。


けどその石灰塚のおかげでこの道はここ数年使われていないことが分かった。このルートは巨人たちや蟻たちも使っていないということだ。


実はもう一つ、石灰塚以外にも見つけたら報告するように言っていたものがあったんだけど、それらしきものは少ししか見つからなかった。どれも道からは離れていたので私が直接見ることは出来なかったけど、断罪の霧を発生させるデバイスと思われるものだ。


それらの報告では見た目が一致していたしパサヒアスの指輪から引き出していた情報とも一致したので、おそらくデバイスで間違いないだろう。周りに敵はいなかったらしいが破壊しようとしたら近づいてくるかもしれない。ある程度戦況が確定するまでは手を出さないほうがいいだろう。


そんな感じで半日進み、ある程度開けたところへたどり着いた。森の中の集落というか、崩壊しかかった小屋がいくつかある、たぶん炭を作る拠点である炭場だ。そこに仮拠点というか、雨が降っても物資を傷めないようにするための屋根床つきの倉庫を作る。今は技術者や兵士だけど以前は伐採をしていたゴブリンもたくさんいるので現地調達でそれらを作っていく。


そして物資を仮置した輜重隊はわずかな護衛を連れてテルビウムへ戻る。彼らはテルビウムの物資を少しでも多く、私たちの近くへ持ってくる役目だ。食料だけでも一ヶ月分を持ち歩くのは困難だし、ゴーレムの補給物資、クロスボウの矢とか予備パーツとかになると膨大な量になる。かといって足りない分をいちいちテルビウムへ取りに戻るのは厳しい。だから中継地点を作っていくのだ。


ただジュシュリにはそこまで戦力がない。仮拠点を十分に守っていく武力を置いてはいけないので、最初から偵察は多めに出していたのだ。石灰塚やデバイスの件もあるしね。

それに今までは巨人たちに補給部隊を襲うという知恵はなかったようだし。もちろんこれからは違うという可能性もなくはないので警戒はしている。


ミリシディア侵入一日目はこれで終わった。日が暮れる前にある程度の仮倉庫も完成して、痛めることなく保存できそうだ。輜重隊は随分前に荷物を置いてテルビウムに戻ったから今頃テルビウムに戻れているはずだ。


夜に進軍するのはさすがに危ない。ゴブリンたちはある程度夜目が効くらしいけどハイゴブリンは無理だし、私も無理だ。それに夜になると野生動物とかも動き出すだろうからいろいろとめんどくさいし。拠点作成中に偵察も兼ねた狩猟隊も出していたので、ある程度は現地で食料が取れた。


新鮮な血の滴る肉が多く手に入ったのでゴブリンたちは大喜びだ。ジュシュリでもこちらで潰さない限り、血抜きされている肉が配給されるからね。ハイゴブリンは血抜きした焼いた肉の方が好きだけど、ゴブリンたちは血抜きしていない生肉が大好きだから。


新鮮な肉はゴブリンたちに食べてもらうことにして私やハイゴブリンは補給物資である乾燥した肉を食べた。ジャーキー意外とおいしい、少ししょっぱいけど。あとはハイゴブリンたちに喜ばれるチーズと硬いパン、それをふやかすためのスープだ。ジュシュリ村で食べていた香草と塩だけの味付けのものではなく、ブイヨンを使った人族のものである。


夕食が終わり、五神官たちと打ち合わせを終えて、あとは寝るだけとなったところで、思い出した。

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