表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

ループヒロインと悪役令嬢

ループヒロイン(自覚なし)×悪役令嬢です。

 男爵令嬢のフローラは、鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。

 いつも通り、中庭でお弁当を食べる予定なのだが、今日のお弁当はちょっと豪華なのだ。昨日いい果物が手に入ったので、お弁当に入れて来たのである。


「あ…殿下だわ!王太子殿下、この間はどうもありがとうございまっ…」


 昨日、図書室で宿題のための資料探しを手伝ってくれたお礼を言おうと、走りだしたフローラの言葉は、最後まで続かなかった。

 彼の隣には、婚約者のリリアナ様が立っていた――フローラは、彼女がいるといつも緊張して、なにかしら失敗をしてしまう。


 勢いよく走り出して、急に体が強張れば、脚がもつれてしまうのは必至である。そのまま、みっともなく転んだフローラはリリアナに注意を受ける。


「フローラ様、廊下を走ってはいけません。はしたないですよ。それに、殿下を大声で呼び止めるなんて、マナー違反ですわ。今後はなさらないように」


 そして、まずはフローラの怪我の心配より厳しい注意が出てしまうリリアナを苦笑して、王太子殿下がフローラに手を差し出すのだ。


「フローラ嬢、大丈夫かい?リリアナ、言うことはもっともだが、先に彼女を心配してあげないと。…怪我はない?」




――これは、そういうイベントのはずだった。


 しかし、フローラは今回、リリアナを押し倒すような形で転んでしまったのだった。


「リリアナ様っ、ごめんなさい!大丈夫ですか?どこも怪我されませんでした?!」

「リリアナ、大丈夫か?頭は打ってないか?」

「ええ…大丈夫ですわ…。少し背中が痛いだけです」


 幸い、リリアナは意識もあり、ひどい怪我もないようだ。


「念のために私が保健室につれていこう。痣になってないか、診てもらわないと」

「わ、私も行きます!あ、そのまえに、先生に保健室に行くって伝言しておきますね。リリアナ様、本当に本当にごめんなさい!」


 完全にテンパり、涙声で何度も謝るフローラに、溜息を付きながらリリアナが応じる。


「フローラ様。大丈夫ですから、落ち着いてくださいな。あなたがどいて下さらないと、わたくしも起き上がれませんわ。お怪我はないの?立てますか?」


 その言葉に、フローラはハッとして、慌てて体を起こそうとした。


 むにっ。


「……っ」

「……!!」


 体を起こそうとして、リリアナの胸を思いっきり掴んで(揉んで)しまったのである。


「……あの、本当にごめんなさい…」

「~~っ、いいから、早くおたちなさい…!」


 リリアナの顔は耳まで真っ赤で、羞恥で涙目になっている。滑舌のいい凛とした声も、いつもより弱々しい。


 今度こそちゃんと立ちあがったフローラは、リリアナが立つのに、王太子とともに手を貸した。


「お二人が保健室に行くことを先生に伝えてきます!」

「走るのはおやめなさい!」


 また廊下を走ろうとしたフローラにリリアナの注意の声がとぶ。フローラは分かりやすくビクっとして、早歩きに切り替えた。様子を見ていた王太子から忍び笑いが漏れた。


 …イレギュラーは、それで終わりだと思ったのに。


「なんで。なぜこんなことになってしまったの…」

 

 ()()が見守る先には、お手製のクッキーを持ってリリアナのもとを訪れるフローラの姿があった。なんやかんやと文句を言いながらも、お茶を用意するリリアナ。なんだか楽しそうに雑談する二人。


「ええっ、ちょっと、ちょっと…!」


 フローラは、チャラい系攻略対象者も真っ青な手際のよさで、そのままリリアナの唇を奪い、ベッドに押し倒した。


「なっ、何をなさるの!?あっ、そんな、やんっ…」

「リリアナさま、かわいいです…」


 なんでだろうか。フローラも処女なはずである。この世界では()()()()()()()()()はずなのに、体が覚えているとでも言うのだろうか。リリアナが抵抗するまもなく、優しい快楽で着実に彼女を追い詰めていく。


「そんなこと、破廉恥ですわっ…おやめになって…おねがい…」

「リリアナ様…!綺麗でいいにおいで可愛いです…!」

「わたくしの話をきいて…!」


 抵抗むなしく、破廉恥なことをされまくった悪役令嬢と、破廉恥なことをしまくったヒロインの関係は、それから大きく変化した。


 最初は怒り、警戒していたリリアナとの距離を、ちょっとずつ、しかし着実に詰めていったフローラは、最終的には、王太子や他の攻略対象者そっちのけで、リリアナと結ばれてしまった。


「おかしいわ…なぜこんな展開に…。あのとき私は確かに、いつもどおり”小さな不幸”を彼女に投げたはず…」


 この世界を管理する女神、マリアベルは運と機会をつかさどる女神として、修行中の身である。正しい運命に人々を導くために、この箱庭世界でヒロインの運と機会を操作し、シナリオを動かすのが彼女の役目だった。

 彼女は、使用済みの運を確認して、がっくりと肩を落とした。


「”ラッキースケベ”だわ…これ…」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ