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記者会見

作者: Mr.たまご




ある写真が世間を一気に騒がせる。




週刊誌に掲載される記事の写真。



それは…あの、大人気女優、水間 麗奈の不倫写真とされるものだった。



夜のくらい公園。洋風のハットに黒のサングラス、そして、マスク。オシャレなロングドレスを身にまとい、男性と腕を組んで歩く写真。



更に、拡大された写真もあった。



それは、左手のアップの写真。そこには、確かに薬指にリングがあり、結婚を証明していた。

もちろん、麗奈の方にもリングはあった。




記事にはこうある。



ーーーとある日の真夜中、2人はホテル街からの帰りのようだ。仲睦まじく腕を組み、笑いながら歩くカップル。

そう、このカップルの女性の方は、あの、水間 麗奈だ。3年前に結婚を発表し、誹謗中傷を惚気話で変えたあの、水間 麗奈だ。

隣を歩くのは地味な男性だ。しかし、バッグや靴など所々に経済的な余裕を感じる男性だ。



さて、我々は3年前に水間 麗奈の結婚相手として某有名インターネットサイトの社長を挙げた。

それは、確かな情報筋から入手したもので、信ぴょう性は高いと見ていいだろう。


しかし、この写真に映る男は彼ではない。



そう、もう、我々が言いたいことは分かってくれただろう。



有名女優のスキャンダル。これが日本映画界、ドラマ界にどのような影響を与えるか、しばらく見てみよう。




と。






そして、世間は反応する。そして、動揺もする。


彼女は今、映画やドラマには欠かせない存在となっていたから。



連日ワイドショーでこの一連の騒動について議論され、ネットでは掲示板等で炎上。




そして、本人が動く。とあるSNSを更新。そして、記者会見を開き、そこで全てを話すと綴った。







ーーー数日後ーーーーー






カシャッ、カシャカシャッ、カシャカシャカシャカシャッ




そこに集まったのはテレビ局から週刊誌まで様々な媒体のメディア。

記者会見はネットやテレビでライブ中継され、大きな注目を浴びていた。


けたたましいフラッシュとカメラを切る音によって水間 麗奈の登場が知られる。




「え〜、この度はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした………なんて、言いませんが、お集まり頂きありがとうございます。」




カメラの音も収まり、麗奈は言葉を発する。

それは、質問攻めを楽しみにしていた記者たちの耳を疑うものだった。



「は?」



と、疑問を多分に含んだ言葉が漏れる。麗奈は気にせず進める。




「えー…と、まず、一番最初に報じた 週刊 『ピーナツ』さん、私に謝罪を。間違った情報を堂々と報じるのはどうかと。

まぁ、とりあえず言いたいことはそれだけです。

ので、質疑応答の時間としてもらって構わないですよ。」





カウンターを食らったような形の報道陣。もっと下手に出てくると思っていたからだ。

しかし、時間が経ち、チラホラと気付き始めるもの達も。 これは強がりで、チャンスボールをくれたのではないか、と。




「はい!」と手が上がる。その記者はこう、名乗る。




「週刊ピーナツの田澤です。なぜ、誤報と断ずるのでしょうか。何か根拠でも?強がりでしょうか?」




週刊ピーナツはここ数年、急激に伸びてきた雑誌だ。報じる情報は正しいものが多く、この雑誌は扱う情報が正しい、と読者の信頼は高い。


不倫をしたと思い込んでる田澤からすればあまりにも生意気な態度。反射的にキツめに返してしまう。



「えーと…ごめんなさい。質問に質問を返すようで申し訳ないんですが、あなた方が信頼するその情報は何処からですか? 特に、私の結婚相手が何処かの社長という所。」




質問で返してくることに田澤にはストレスが溜まる。同時にイライラゲージもMAXに近くなる。



「ふぅ…。ん゛んっ、情報源は言えないのでそこはご了承ください。しかし、あなたも信頼なさっている人物です。」




「なるほど。では、有り得ませんね。私、最近というか、結婚の前後で信頼する人を削りましたから。本当に信頼できると私が判断した人はあなた方に情報を売るような人ではありませんので。」




有り得ないと断言した麗奈。それには田澤も驚いていた。そこで、質問を変える。




「そうですか。では、あの男性はどなたですか?ご結婚なさってたようですが。」





「ふふっ。あなた面白いわね、ふふっ…ふふっ。

それに、記者会見って疲れるわね。早く帰りたいので一気にお話しますね。夫が待っているので。



まず、何故結婚指輪をつけたカップルが不倫のカップルだと思うのでしょうか?田澤さん、なぜ?」




笑い声をあげる麗奈に訝しげな田澤。





「そりゃ、あなたはご結婚なされているじゃないですか。」



「? はい…そうですが、何故そこまで行って気が付かないんですか? 」




「はぁ……?」




「ええと…夫婦って外に出かける時だいたい指輪付けませんか?」




「………?」




「あら。あなた、記者として失格だわ。いや、人としてかしら。あなたの心汚すぎですわ。

何故、私と男性が歩く写真から不倫が出てくるの?

私は結婚している。彼も結婚している。腕を組んで仲良く歩いている。 はい、もう、これだけで分かりませんか? あの人私の旦那様ですわよ?」




「はっ?はぁぁ? なんでだ!あなたの結婚相手は社長って言ってたじゃないか!あいつが嘘つくわけないだろう!」





「ふふっ。ふふっ、ふふふふっ。やっぱりあなた面白いわね。多分あなたの言うあいつ、って前のマネージャーでしょ? あの子ジロジロ私の事見て不快で不気味だったから速攻で変えてもらった子なのよ。

最後にお土産として、私が信頼に足らないと判断した人達みんなに言っている結婚相手の事をあの子にも言っただけ。」





では、と言葉を残し、麗奈の記者会見は終了した。




その後、麗奈に関するガセネタを報じたとして、週刊ピーナツの信頼度と売上はガタ落ち。

しばらくして廃刊となる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] サクッと読めるところが良かったです。 オチも好きな感じでした。
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