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「なにをしょげておるんじゃ。

 今の下手さを嘆くよりも改善すべき点が判ったことを喜べ。

 自分の価値は自分で作るものぞ。

 嘆く気持ちと、己のすべきことは切り離して考えい。

 と言うたとて、己の事で頭がいっぱいの

 おぬしは『でも』とか『はぁ』しか言わんのじゃろうな」


「はぁ。いえ、確かに頭はいっぱいです……」


「えぇぃ、手の掛かるやつじゃ、

 おぬしは人の話を聞く姿勢を整える。まずはこれだけせいっ!」


 百言主(ひゃっことぬし)さまは手毬をまた投げてきた。


「話を聞く姿勢ですね。やってみます」


友至(ゆうし)に宿題を申し付けるぞっ。心して聞け。

 おぬしは明日から、役に立つ話。これを日に10件。

 儂に送って来い。儂が良いと云う迄毎日じゃ」


「毎日ですか!? 10件も!? いえ、分かりました」


「今、大変だとか、なんでとか思ったが、飲み込んだであろう?」

「はい。そのとおりです……」


「それを心掛けておれば、人の話をよく聞けるようになる。

 人の話を聞く時はの、自分の事を考えん事じゃ。

 相手の事だけ考えて聞け。己の心を相手に重ねよ」


「相手の事だけ考える。それが今の僕にはないってことですね」


「そうじゃ、えぇい。この際じゃから言うてやるがな、

 おぬしは人の話を聞いている時でさえ、己の事を考えておる。

 つまり何も聞いておらんのじゃ。

 だから他者の事を覚えておらん。

 とは云え、興味は持たんが持たれたい。

 これを聞いてどんな人物だと感じるかや?」


「う、勝手なやつだなと……」


「そうじゃ、勝手なやつじゃ。

 それを知ったうえで、己がして貰いたいことを、他者に(ほどこ)せ。

 そうしていく事で、変わって行けるであろうよ」


「はい… 」


「本来ならば己で気付かせようと思っておったのに。

 まぁ、このくらいの強い薬でないと、この唐変木には効かんからの。

 それで友至よ、宿題の件は(しか)と、覚えておるの?」


「はい、毎日10件の『役立つ話』を百言主さまに送る。ですよね」


「そうじゃ。おぬしの主観でよい。

 これは役に立つという話を送ってくるのじゃ。

 一件でも足りぬ時には『ぺなるてい』じゃ。

 何を課すのがよいかのぅ、(つむぐ)、知恵を貸せ」


「アイアイサー! 任せて下さい! 

 お兄ちゃんの恥ずかしい話を浮かべましょう。

 いっぱい知ってますよ。ふふっ」


「おぉ、紡、ないすじゃ。

 これは楽しいことになりそうだのぅ。いとおかし。かっかっかっ」


「……。 ちゃんと10件送りますっ!」


「おう、よいぞ。その思考でよいのじゃ。

 言ってやった甲斐があると云うものじゃ。

 それからの、本殿前のつぶやきは放っておいてよいぞ。

 儂がしばらくしてから、消しておくでの」


「分かりました。いろいろとありがとうございます」

「百言主さま、お世話になりました」


「うむ、紡よ、あまり助け過ぎるでないぞ」

「はい。気を付けます!」


 紡は真面目な顔で、百言主さまに敬礼をしている。

 僕はおじぎをしてから、社を出る。


「お兄ちゃんさ、百言主さまに言われたこと、

 忘れないうちに整理して確認しといた方がいいよ」

 

 紡の言う事はホント、いつも正論なんだよなぁ。


「そうだな。家に帰ったらノートに書き出してみるよ」


「じゃあ、和歌(わか)さんの所には寄らずに帰ってね。

 話は私が聞いてくから」


 なっ!? あぁそうか。これは気を使ってくれてるんだな。

 今の僕には和歌さんの話を聞くよりも、

 百言主さまに言われた事を、きちんと復習する方が大事だって事だよな。


「わかった。そうするよ。和歌さんにはうまく説明しといてくれるか?」


「そこはまったく心配いらないから」

 紡の表情は自信があるというか、余計なお世話だと言ってるようだ。


 僕は紡と別れ、ほっと屋さんには寄らずに家に帰った。

 まだ、お昼だっていうのに、物凄く疲れたな。

 言われたこと全部思い出せるかなぁ。


 でも、せっかく百言主さまが教えてくれたことだからな。

 しっかり実践できれば、人見知りとか引っ込み思案を卒業できる!

 

 家に帰り、お昼ご飯もそこそにして、机に向かいノートを開く。

 百言主さまに言われた事を書き出しならが、


「会話を上達させるようにって事をいっぱい言われてるけど、

 これって引っ込み思案とどう関係するんだろ?」


 会話が上達するとどうなる?

 人と上手く話せるようになる。ってことでいいんだよな?

 上手く話せるとどうなるんだ?

 意思表示ができるようになる?


 なんか違う気がする。

 百言主さまは聞く姿勢を整えろって言ってた。

 でも聞いてばっかりじゃ、意思表示にはならないぞ……

 相手が受け取りやすい言葉を投げる。

 受け取る側の気持ちを知れってことでいいんだよな。


 自分が受け取りやすい言葉なら、相手にも受け取りやすいって事か。

 自分が言われて嫌なことは、相手も嫌だと思うだろう。って事だ。

 自分が言われて嬉しい事は、相手もきっと嬉しいことだ。


 だから、聞く事に専念しろってことなのか!

 受け取る側がどう感じるかを気にしてなかったから、

 今までのは聞いていたとは言えないってことなんだな。

 真剣に聞いていないって叱られたもんな。


 紡は話やすい。あれは紡が聞くのが上手いってことなのか!

 だから、あいつは僕の考えてることがわかるみたいに、話せるのか!?

 ものすごくいいお手本がすぐ側にいたんだなっ!


百『やれやれ、世話の焼ける童じゃわい。

  さてと、続きを……止まっておらんではないかっ!?

  泥棒さんと伯爵は何故に時計塔で闘っておるのじゃ?

  話が分からんではないかっ。えぇぃ、最初から見直しじゃっ!

  あのバカタレのおかげで、まったく……』


  あなた~にだけは~♪


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[良い点] 答えをはっきりと示してもらって、ようやく一歩前に進むことが出来そうです。 さあて、1日10件、どんなことが出てくるでしょうかね? [気になる点] 今和歌さんに会ったら、百言主様のことで盛…
[良い点] さりげなく、必要性を持って、日常編に戻ってきた(?)そんな感じがします。\(^^)/ [一言] ヤバい、宿題の事をあっさり忘れそうになりました。 友至はちゃんと覚えていてエライ! あと、…
[良い点] 友至くんが百言主様の宿題についてちゃんと考えていますね! 素直に受け取る姿勢も大切だと思います。 [気になる点] 役に立つこと10個…… 友至くんは何を思いつくんだろう? [一言] 友至く…
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