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ビジランス

読んでくださってるみなさま、どうもありがとう。

「あの、和歌(わか)さん? 話の続きをしてもいいですか?」


「あ! ごめんなさい、つい。えーと…

 そう、この歌をツイートにしておけって、そういう意味だと思う」


百言主(ひゃっことぬし)さまがそう仰ったのなら、否やはありません。ねぇ、詠唱(えいしょう)?」


「あぁ、その通りなんだが、そこまでしてもらっていいのかい?」


「えっとですね、昨日このアプリを貰ってから、

 百言主さまにずっと言われてるのは、

 言葉の使い方を学べっていうことなんです。

 その百言主さまがこれをやれって言ったというのには、

 僕にとっても意味があるんじゃないかと

 そう思ってたので、全然構わないです」


「そう言ってくださるのは、嬉しいわ。友至(ゆうし)くん。

 この出会いに感謝します」


「いや、あ、そんなにたいしたものじゃぁ……」

そんなに丁寧にお礼を言われるなんて、

どうしたらいいのか分らなくなっちゃうんですよ。


「昨日のツイートであれだけお客さんが来たんだから、

 新しくツイートされたら、凄いことになりそうだねっ!」


和歌さんは期待で、笑顔がさらに輝いているな。

その笑顔の方がお客さんを呼ぶと思うんだけどな。


「おう! 仕入れとか見直す必要がありそうだなっ!」

お父さんは裏方に専念することをお勧めします。


「はいっ! 提案がありますっ」

(つむぐ)が元気に声をあげて、真っ直ぐに手を挙げている。

学級会で意見する小学生かっ。


「はい、紡さん。なんでしょうか」

となると先生はお婆さんこと、歌子先生ですよね。


「お店の事はわからないんですけど、お兄ちゃんのツイートが、

 どんな影響になるかは、考えておいた方がいいと思うんです」


真剣な表情で喋る紡の言葉には説得力があるなぁ。


「確かにそうね。お客さんはツイートを見たら、

 これなんだ?ってきっと騒ぎになるものね」


「そうなんです。SNSやってる人だったら、

 これを見たら、確実に写真撮ってSNSに上げます。

 そしたら、お正月過ぎても相当の人がこれの事を知るんです」


「で、今度はそれを見た人が写真を撮りに来るんです。

 きっと凄い事になります。甘酒はいっぱい売れるかもしれないけど、

 甘酒も買わずに、写真だけ撮りに来る人もきっと来ます。

 営業してなくても関係なく来ますよ。

 しかも、これはなんだって、ずぅっと聞かれます」


「ただのSNSのつぶやきだって、そういう事が起きてるんです。

 なのに、空中に浮かぶツイートなんてあったら、

 確実に、大騒ぎですよ。テレビとかだって絶対来ます」


紡の言ってることは僕も聞いたことがある。

ツイート目的の人が集まりすぎて、営業に支障がでるとか、

ポイ捨てが増えるとか。


「紡、お前、黙ってると思ったらこんな事考えてたんだな」


「お兄ちゃんはSNS詳しくないからね。お手伝いだよ

 対策は考えてよね」

対策かぁ……


「それなら、取材とかされて、宣伝にもなるってことだろ。

 忙しくななるかもしれないが、商売繁盛じゃねえか。

 俺は是非ともやって欲しいぞ」


お父さんは乗り気だな。


「百言主さまは、なんと仰ったのかしら?

 そこに百言主さまの思ってらっしゃる事が

 含まれていると思うのだけれど」


「百言主さまは、店の前でこの歌を読めって、

 僕にそう言ってました」


もしかして、あそこで、黙って聞いていたら何か違うことも、

聞けてたのかな……


「読めとは言ってましたけど、

 つぶやきを浮かべろとは正確には言われていません。

 てことは、浮かべても消すなとも言われていない。

 浮かべるにしても、どこにとは指定されてない。

 自分で考えろ。そういう事ですよね?」


わかったぞ。言われた通りじゃなくていいんだ!

自分で考えて決めればいいんだ。

だから百言主さまは、ただ読めとしか言わなかったんだ!

肝心なことは言ってくれないのは最初からじゃないかっ!


「そうかも。確かに詳しい事は何も仰ってなかったわ」


「でしゅよ…… ですよね!

 だとしたら、あの歌は美調(みしらべ)さん一家に宛てたものだと思うので、

 こちらのお宅と店内のどこかにしましょうよっ!

 それで、お店の看板の上に、これと同じ物を浮かべましょう。

 それも短時間にするのはどうです? 一日だけとか。

 すぐに消せばそれほど大騒ぎにならないで、しかもお客さんは増えるかも」


どうだろう、なかなかいいアイデアだと思うんだけど……


「おう、名案じゃねぇか! やるじゃねえか、友至君よ」


「あ、じゃあ、私の部屋にも欲しい!」


褒められた… 二人は賛成してくれたし、お婆さんは笑顔だし、

これはOKってことかな。


「じゃあ、それでよろしいですか?」


結局、美調家の面々は全員が自室に百言主さまの歌が欲しいと言い出した。

気持ちはわかりますけどね。

全員の部屋に行き、希望の場所にふきだしを浮かべた。

さすがに和歌さんの部屋に入るのは、ちょっと緊張した。

女の子の部屋を全く知らないわけじゃないけど、

妹の部屋とはやっぱり違うから、なんだかドキドキしてしまった。


「じゃあ、次はお店だね。どこがいいかなっ」


和歌さんはノリノリだな。嬉しそうなのは、見ている方も

嬉しくなってくるから不思議だよなぁ。


「はいっ! また提案ですっ!」

我が参謀殿は、また何か思いついたようだ。


ぜひ、皆様の感想、ご指摘をお聞かせ下さい。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 少しずつ、友至くんが積極的に考えるようになってる気がします。 善きかな善きかな。 ですが、和歌さんの笑顔がさらに輝いてるとか、油断してるとまたふきだしが……。 [気になる点] 紡が元気だ…
[一言] 紡ちゃん、凄いしっかりしてますね。 大人でもそこまで気が回らない人、たくさんいますよ。
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