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ギフト

美調(みしらべ)さんは、大きな水筒と、バスケットを腕に抱えて戻ってきた。


「おぉ、和歌(わか)よ、すまぬな」


「何を仰いますか、百言主(ひゃっことぬし)さまの神社のお陰で、

 私たちの家は生活させてもらっているんです。

 こちらこそ、どれだけ感謝しても足りないくらいです」


「うむ、相分かった。

 誠、有難きことよ。おぬしのその思いが儂に力をくれる。

 氏神として、し得る限りの事をしようぞ」


「はい。ありがとうございます。

 では、百言主さま、『ほっと屋』の甘酒をご賞味ください」


美調さんは、大きめの古めかしい焼き物のお椀を差し出し、

水筒から甘酒を注いでいく。

併せて(やしろ)の中に甘酒の香りが充満していく。

美調さんの所作のひとつひとつが、綺麗でつい見てしまう。


「うむ、善哉(よきかな)、良きかな。

 これは大層、美味じゃ。美味いのう。

 和歌よ、いやさ、ほっと屋よ、天晴じゃ!」


「あ、ありがとうございます!!

 家族が聞いたらどんなに喜ぶでしょう」


「そうじゃのう、おぬしの家族には伝えられんではのぅ。

 和歌が心苦しいか、ふむ、どうするか…」


百言主さまは珍しく考え込んでいるな。

神様にも事情があるのかな?


「ふたりも飲んでね」

美調さんは、僕たちにも甘酒を注いでくれた。

聞きたいことはあるんだけど、百言主さまが考え事をしてる横で、

雑談をするなんて出来そうもない。


百言主さまは、懐から、なにかを取り出した。

あれはなんて言うんだっけ、俳句とか書くやつ。

それに、筆ペン? 

スマホ使う神様が、筆ペン使ったくらいじゃ、もう驚かないぞ。


「よし、整うたぞ。

 美調の娘よ、甘酒の礼に歌をやろう。

 儂からの礼じゃと家の者に告げてよい。

 この短冊をな、神棚にあげておけ」


百言主さまは俳句を書いたやつを美調さんに渡した。

美調さんは、飛び上がりそうな、土下座しそうな喜びようだ。

 

「!! はい、はい! ありがとうございます!!

 あぁ、どうしよぅ、嬉しい! 嬉しいです、百言主さまっ!!」


「うむ、それとな友至よ」


「はい。なんでしょうか」


「おぬし、和歌の店の前で、この歌を()め」

 

「なん!? そうか! わかりました。百言主さまの言いたいことが」


「うむ、成長しておるな、よいぞ。

 (つむぐ)、おぬし見届けぃ。よいな?」


「さすが百言主さま! わかりました。必ず見届けますから!」


「うむ、和歌よ、馳走になったな。

 友至、おぬしは学べよ。紡は、わかっておるな?

 では三人とも行くが良い。儂も学ばねばならん事が山とあるでな」


「「「はい、ありがとうございました」」」


(やしろ)を出た僕たち三人は、美調さんちのお店に向かう。

待ってましたとばかりに紡がしゃべりだす。


「ねぇねぇ、和歌さん、その着物すっごく綺麗ですね!

 とっても似合ってるし、憧れちゃう!」


「あ、ありがとう、えっと、紡ちゃんっていったよね?」


言ノ葉紡(ことのはつむぐ)です。コレの妹です。

 ところで、和歌さんはどうして、お兄ちゃんを知ってるんですか?」


そう、僕もそれが知りたい。

こんな見惚れるくらい綺麗な人を忘れるとは思えない。たぶん…


「あのね、言ノ葉君は知らないかもしれないけど、

 中学も高校も一緒なんだよ。

 今日、はじめて話すんだけどね」


いや、そんないい笑顔でそんなこと言われても…

全然思い出せない! 


「そ、そうなんだ、ごめんなさい、

 人の顔とか名前覚えるの苦手で…」


「ほほぅ、お兄ちゃんはこんな美人さんも覚えていないと。

 いったいどんな人だったら覚えるんだろうねぇ~」


くそっ、楽しそうな顔でなんてこと言うんだっ!


「いや、それは、えっとだな、

 覚えてなかったのは申し訳ないんだけど、人と話さないから…

 でも、今日覚えたよっ! バッチリと」


「そりゃそうよねぇ~。

 なんてったって、『なんて綺麗なんだ』だもんねぇ~。ぷぷっ」


「おまえなぁ! くそっ。

 あの時は、そう思ったんだよ! 

 しょうがないだろっ、自動で出ちゃうんだからっ

 わざとじゃないっ! ほんとに綺麗だって思ったんだから!」


「だそうです。和歌さん。ご感想は?」


なんなんだよ! その、やったぜっって顔は!

見ろ! 美調さんも恥ずかしそうにしてるじゃないか。


「えと、ありがとう、綺麗なんて言われると、照れるね……」


綺麗な人がモジモジと照れている姿はかわいいと思う。

顔が熱くなってきた! なんか恥ずかしいじゃないかよ。


「あっ! あお、あのその、なんていうか……

 つむぐぅ!なんて事を言わせるんだっ!」


「お兄ちゃんが自分で言ったんじゃん。

 自動で出るにしても、お兄ちゃんの心でしょ。

 人のせいにしないでくださーい♪」


くそっ、その通りだから反論しようがない…

紡の思惑にいいようにされてる気がする。


読んでくださってどうもありがとう。


感想などぜひお聞かせください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 美調さんがかわいい。美調さん……。 [気になる点] 友至くんにもリア充の風が……ぐぬぬ。 [一言] 美調さんが出てきて、一気に話のスピード感が上がったように感じました。(^-^)
[良い点] こんばんは。 さてさて、友至くんは、百言主さまから、どんな詩(うた)を託されたんでしょう? 人前で披露できるでしょうか? 楽しみです。 [気になる点] 美しい調べの和ます歌、でしょうか…
[一言] 何だかほっこりします。 これは友至くんの成長物語のような感じがします。 紡ちゃんの手のひらの上で踊っているようなきもしますが。
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