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石川 一 さまに多大なる感謝を
不定期にてぼちぼち投稿予定です。
ゆるゆるとお付き合いください。
令和二年元旦
僕は毎年の恒例行事として、
近所の百言主神社に初詣に行く。
いままで、記憶にある中で、
12回は初詣に来ているけれど、
ご利益があったことは一度もない。
僕のお願い事は、
神様に届いたことがないんだろうか。
そんな事を考えながら、
お参りの順番を待っていた。
僕のお願い事は毎年一緒だ。
やっと、最前列にたどり着いた。
お賽銭を投げ入れ、二礼二拍。
百言主さま。
僕の名前は言ノ葉友至と申します。
今年こそ、どうか、
人見知りの引っ込み思案が治って、
きちんと意思表示のできる
人間になりたいです。
どうか、お力をお貸しください。
ポコン。
ん?
『いいよ』
え?
ポコン。
『だから、力を貸してあげる』
なんで、目の前にこんなふきだしが?
「言ノ葉友至というたな。童。前を見い。」
本殿に上がる階段に、
男の子とも女の子とも言えない、
子供が豪華な古めかしい衣装を着て座ったいた。
「えと、百言主さまですか?」
「そうじゃ、儂が百言主じゃ。
童が呼んだんじゃろう」
「はい、呼びましたけど…」
理解が追い付かない…
「この人数では話もできんな。童、裏へまわれ」
そういうと百言主さまは、
すたすたと、歩いていってしまった。
僕もついて行こうとして、
最後の一礼を忘れそうになった。
「あ、ありがとうございます?」
参拝者の列から抜け、
急いで本殿の裏へ回ると、
百言主さまは、
イカ焼きをほお張っていた。
「おぉ、来たか、童。これはうまいな。
ここで、海の幸が食せるとはの」
「あの、百言主さま?
色々お尋ねしたいんですが…」
「おう、なんでも聞くがよいぞ。
儂は今、機嫌がよいのでな」
「なんで、僕の前に?」
「それはの、おぬしの願いが
ちょうど良かっったからじゃな」
「ちょうどよいとは?」
「儂は五百年ほど寝ておったはずなんじゃ、
目覚めてみたら、
面白い物が流行しておるではないか。
ほれ、これじゃ。」
百言主さまは袖からスマホを取り出した。
しかも最新機種だし。
今まで寝てたんですか?
そりゃ、お願いなんて、届くわけないじゃないか。
「寝ておった間のことなぞ、知る由もなかろう」
それはごもっともです。
「これよ、この『すまほ』なる物を、
猫も杓子も持っておるではないか。
どんなもんかと、手にしてみたはよいが、
ようわからんでな。
先日、ここに来た女子に聞いたのよ」
むしゃり。 百言主さまは、
イカ焼きをかじる。
むしゃむしゃ。ごくり。
おいしいですよね。僕もあとで買おう。
神様がスマホを持っているなんて、
リンゴの会社の人もビックリだろう。
しかも、女の子に使い方を聞いたんですか?
聞かれた子もビックリしただろう。
「いや、そうでもなかったぞ?
丁寧に教えてくれたわ」
筒抜けなんですか? 僕の頭の中?
「それでだな、『えすえぬえす』ちゅうのと、
『えすえむえす』とやらが、
大層面白うてな。
よく使っておるのじゃ。
おぬしもやるじゃろう?」
「はい、使ってます」
家族とだけだけど…
ツイートは見てるだけだし…
ていうか、
神様は誰にメッセージとか送るんでしょうか。
「今のところは、大宰府ぐらいじゃな」
大宰府天満宮という所かな?
「そうじゃ、
あやつは言葉を弄くるのが好きでな。
毎日付き合わせておるが、
あやつも満更ではないらしくてな」
「はぁ。それで僕の目の前にも、
ふきだしを出したんですか?」
「おう、せっかくおぬしの願いに
ぴったりの『あぷり』じゃからな、
おぬしに『いんすとーる』したという訳じゃ」
「は? インストールしたんですか!? 僕に!?」
「これで、
簡単に意思表示ができるじゃろう?
うまく使えよ、童。ではな」
百言主さまは
空へと浮かび上がって行ってしまった。
「えぇぇぇぇ!?」
僕の願い事は叶ったって言ってもいいのかな。
コレ。
読んでくださったみなさま。どうもありがとう
石川 一さまへの感謝については、活動報告にて。