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無能冒険者、名を授ける

 ラビーニャを体から引き離してから、俺は一息をつく。

 彼女は地面に寝そべったまま至福の表情を浮かべていた。

 少し、放っておくことにしよう。


「さて、と。そろそろあっちも終わったか」


 そう、今日訓練場に魔物がいないのはあることを頼んでいるからであった。

 遠くからポチ太が走ってくるのが見えた、そしてその体の上に二体の魔物が乗っていた。

 本当に丁度いいところを来てくれたみたいだ。


「わふっ!」

 ポチ太は舌を出して、頭をこちらへと向ける。

 なんとなく撫でてほしそうだったので、その通りにすると、尻尾が強く横に振られていた。その勢いで枯れ葉や木の枝は吹き飛ばされ、天に昇っていく。

 恐ろしい尻尾である。


「さてと、それじゃあ始めようか」


 ポチ太から降りた魔物たちを見て俺は頷く。

 そして、昨日解放された技能について、俺は集中する。


――――――――――――

技能<名づけ(ネームド)2/4>

魔物に名前を与えることによって、その個体をユニークモンスターにすることができる。

ユニークモンスターにすることによって、その個体の能力は上昇する。その上昇値は、技能者の能力に依存する。


――――――――――――


 おそらく、以前にセーラが名付けのところを見て首をひねっていたのはこれを知っていたからだろう。

 能力の上昇が確認できなくて不思議に感じたのだ。


 俺は前に並んだポチ太含めて三匹の魔物を魔物鑑定のスキルで見る。

 レジェンドウルフ、ことヴァナルガンドのポチ太。彼の能力は前見た時よりも大幅に上がっていた。おそらく名づけの技能が解禁されたことによって上昇したのだろう。


 そして、後の魔物のうちの一匹はタイラントスパイダー。



――――――――――――

タイラントスパイダー Lv 21

普段、森の奥地で巣を張り獲物を待つことを得意とする巨大な蜘蛛型モンスター。その粘着する糸に捕まったものは、この魔物からは逃げられないほど恐ろしい。また、その牙には毒が含まれており、咬まれたものは体がしびれ、動けなくなる。

 動きは素早く、足の跳躍力など力が強いため、気を付けたほうがいい。


――――――――――――


 うむ、蜘蛛であった。大きな蜘蛛である。その体表には毛が生えており、頭についた八つの眼は全て俺を見つめていた。

 配下の昆虫系の中では、こいつが一番上の魔物である。

 そう、今日、俺が魔物たちに頼んでいたことは名づけ技能を使う候補を自分たちで決めてくれと言うことであった。


 そのために魔物達には話し合いでもしてくれと頼んだのが、彼らについている擦り傷などを見る限り、おそらく喧嘩で決めたのだろう。

 強い奴がリーダーをやるのは、自然界からの常識である。

 まぁ、唯一ポチ太は傷ついていないみたいだが、こいつは規格外だから考えない方がいいか。


 そして俺はもう一匹のリザードマンの方に目をやる。

 つやつやとした鱗には幾重もの傷がついており、いかにも歴戦の猛者のような個体である。片目に傷がついていてさらに風格がある。


 ――――――――――――

 ハイリザードマン Lv32

 リザードマンの上位個体、水辺があるところに生息することが多いが、乾燥した場所でないか限りはその存在を確認されている。特徴としては人間に近い体をしており、手先が器用、知能も高い。もぐることも得意であり、水を操作して戦うことができる。また、魔物の中では武器をもって戦うこともできる種族だ。生息地が近いと思われる場合、彼らの仕掛けた罠など注意して進むべきである。


――――――――――――


 うーん、何でこいつここにいるんだ。 水生の魔物っぽいんだけどな。

 まぁ、魔力スポットに惹かれてきたんだろう。手先も器用で役に立つし、ここからいなくなることもないしな。必要なら水辺を作ってやるくらいはした方がいいかもしれないな。

 目の前のリザードマンを見ると、ニヤリと笑って見せる。

 長い口から除くその牙は、太陽の光を浴びてきらりと光った。


 ステータスも二人とも充分だ。

 俺は名づけ技能を俺は発動させ、目の前の一体一体に掌を向けた。

 ふむ、なんて名前を付けようか。

 今まで適当に決めてきたし、どうしたものか。


 名付けの段階になって、今いち踏ん切りがつかない。

 数分だけ悩んで俺は口を開く。

 そして、名前だけしか言うつもりがなかったというのに、すらすらと呪文があふれ出す。


「我が名はウォレン、契約に則り、貴殿らに名を授ける」


 掌と魔物たちの額に魔法陣が浮かぶ。


「貴殿にはサムト、貴殿にはレズパの名を与える」

 

 そう唱えると魔法陣が輝きを増し、そして収束していった。

 そして彼らの体が急に光り始める。


 次の瞬間、そこには白い髪をはやした鱗を持った老人と、下半身が蜘蛛の美女がそこに立っていたのだった。


 ――――え? なんで?

 


「主様、我々に名を授けてくださり、誠に至極恐悦、身を粉にするつもりで精進いたします」

「主様、レズバも頑張って見せるねー、役にたってみせるよー」


 各々、そんなことを言うのだった。

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