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6 領地の城へ

 夏休みです。

 わたしはまだ学校に通ってないので関係ありませんが、去年から初等学校に通っているお兄様は夏休みで家に毎日いてくれます。


 遊び相手のいないわたしは、お兄様が家にいる時はついてまわってます。

 前世のシャルロットがそうだったのでそうしてるのですが、お兄様はつきまとわれて嫌そうな顔をしています。

 でも、実は「お兄様、お兄様」といつもつきまとってくるシャルロットのことが大好きで、シャルロットに何か用があって近くにいないととても寂しい思いをしていることを知っています。

 まぁそれだけ可愛がってた妹を死なせてしまったんだから、そのトラウマが酷いものだったことは思い出したくもありません。


 もうあんな思いは絶対にさせないからね。


 夏休みの恒例の行事はベルトラム伯爵領の城への避暑です。王都より北に位置し、山の中腹に建てられた領地の城は、比較的涼しくて夏をすごすにはもってこいです。

 その分、冬は雪に覆われてすごしにくいことこの上ないと、成長してから知りました。

 小さい頃は前世も今回も、夏以外に領地を訪れたことはないんです。


 前世からずっと疑問だったことがあるんです。それは、これから起こる襲撃イベントの理由がまったくわからなかったのです。

 何故、あの時期に魔族が急に城を襲って来たのか。あの襲撃以降、魔族はしばらく鳴りを潜めてしまいました。何の目的で被害をもたらしながらも襲撃を行ったんでしょう。

 襲撃の結果として、勇者を目覚めさせるという魔族にとってはマイナスになる結果をもたらしたのに。


 前世での死の間際に悟ったことが一つあります。すべての人にそれがあるかどうかはわからないけど、人には大きくその生命力というべきか運命というべきか、そういったその人にとって絶対的な大事な何かが急激に低下することがあるんです。

 あの時は自分に何が起こっているか、よくわからないまま死に向かって突き進んでしまいました。あの時、あのタイミングでなければ、ああも容易くやられはしなかったと思うんですよ。


 そして、今このシャルロットにもその時期がきてるってのがよくわかります。こういう時期が人生に一度なのか何度かあるのかはわかりませんが、もし魔族が人のその運命が極端に落ち込む時期を何らかの手段でわかるのだとしたら、あの襲撃はシャルロットを殺すというただそれだけの目的のために起こされたのではないのかな。

 実際、シャルロットは死に、フェリックスの心に大きな傷を残しちゃいました。それだけでなく将来勇者とともに戦うであろう魔法使いがあの襲撃で死んでいたんじゃないの?

 すべてが魔族の将来に向けて計画されたその一つだったのかもしれません。


 そんな思いを胸に、家族揃って領地の城へと出発しました。馬車で十日の旅になります。

 二頭立ての馬車には家族四人とメイドのアネットとベレニス、執事のレオポルドが同乗しています。

 他に護衛の騎士が三人。うち一人が交代で馬車の馭者をして残り二人が騎馬で前後に付き添うって形になっています。


 前世ではあまり気にならなかったけど、馬車での旅ってなかなか体力を消費して辛いものがあるんです。

 去年もそうだったけど、途中で一度微熱を出してしまいました。家族ももう慣れたものでわたしの微熱くらいでは、たいして慌てることはありません。


 それにしてもこの体は将来健康になってくれるんでしょうか?

 こんな熱ばかり出している体では、いかにすごい魔法使いでも、お兄様の魔王との戦いに連れて行ってもらえない気がします。

 っていうか、わたしが勇者ならそんな魔法使いは勘弁してほしいと思いますからね。


 辛い馬車の旅ですが、景色の変化がいつも楽しみです。

 王都の周辺を抜けるとしばらくはのどかな田園風景が続きます。そのあたりまでは道も比較的整えられているのですが、二日も進むともう道と言っていいのかどうかわからないところを走ることになります。

 そのあたりからはもう乗り心地も最低です。揺れがひどくしゃべってると舌を噛みそうになるし、乗り物酔いになることもあります。

 お母様もわたしやお兄様がおなかにいる時は馬車に乗るのがとても辛かったと言ってます。


 前世では中等学校の頃から馬車は使わずに馬で移動してましたので、今度もそうしたいのですが、女の子が馬で長距離移動とか許してもらえるでしょうか?

 それ以前に身長が早く伸びてくれないと、馬とか乗れそうな気がしません。


 いろいろ将来への課題も多そうで頭がいたいですね。

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