表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/54

50 魔道具の価格

 アンリエットの研究室から四年A組の教室へ戻ると、今日の授業はすべて終わったところでした。

 皆は興味満々の顔でわたしの方を見ています。

 でも、なかなか聞きにくそうな雰囲気。

 別に内緒にすることもないから、聞いてもらっても構わないんですけどね。


 そんなところへ、別のクラスだったダミアンとリゼットの二人が駆け込んできました。


「シャルロット様、ご無事で何よりです。

 アンリエットに連れて行かれたと聞いて心配してました。

 いかがでしたか?

 もし差し支えないようでしたら、様子を教えてもらっても」


 皆の聞きたかったことをダミアンが尋ねてきました。

 あいかわらず、まわりの空気は無視していますね。クラスの皆も耳を立てて聞いているようです。


 そういえば、アンリエットが現れたときにダミアンがいたらどうしていたんでしょうか?

 ダミアンは空気を読まないタイプですから、わたしをアンリエットから守ろうと衝突していたかもしれませんね。


「特に差し支えはありませんよ」


 わたしは今日あった出来事をつぶさに話して聞かせました。


「え、あの空中散歩してた魔道具が実用化できそうなんですか?」


 わたしの話に思いっきり食いついてきたのは、意外なことにリゼットでした。


「これは、さっそくお父様にお話して、アンリエットとの商談に入らないといけませんね」

「え?

 ドメージュ商会ってアンリエットと絡みがあるの?」

「ありますよー。

 なんといってもアンリエットの魔道具の取り扱いはうちが一手に引き受けてますからね。

 いろいろと大人気ですよ、彼女の魔道具は」


 そうだったのか。

 ということは、アンリエットの豊富な財源はすべてリゼットの家から出ていたって寸法だったのか。


「それで、どうなの?

 あの魔道具を作るのにシャルの魔力が必須ってのはわかったけど、元の作成はアンリエット本人でなくてもできそう?

 当然、レシピはすべてアンリエットが公開したとしての話だけど……」

「んー、それはちょっとムリだと思う。

 それなりにルーン文字は理解してる方だと思うけど、まった見たこともないルーン文字が細かくぎっしり書かれてたから、丸写しにしようにもあってるかどうかが判断できないし……

 アンリエット本人以外が作ったりしたらまともに作動するとは思えないわ」


 ルーン文字は理解していなくても、正確に写せばそのとおりに作動するものです。

 でも、複雑なルーン文字が正確に写せてるかどうかは第三者の目で確認してもなかなか難しいものですから、理解していないルーン文字を正確に写すということは至難の技なんです。


「そうなると、魔道具本体はアンリエットが、魔力を込めるのはシャルが、それぞれかかりっきりにならないとできないわけか。

 こりゃ、半端な価格じゃ売れないね」

「そういえば、アンリエットは対魔族戦においても役立つとか言ってたわ」

「むむむ、軍需用か……そうなるとまた価格が跳ね上がるわね」


 リゼットの頭の中で数字が激しく計算されているようですね。


「アンリエットから魔力提供に対する対価を決めないとって言われてるんだけど、どうしたらいいかしらね」


 そういえば、アンリエットからそういうことを振られていたことを思い出したので、この際ということでリゼットに投げてみました。


「そりゃ、しっかりもらわないといけませんよ。

 アンリエットの魔道具は売値の8割をアンリエットに支払うという契約になっているはずですから、そのうちの3割程度はシャルがもらってもいいと思いますよ」


 割合で言われてもなかなかピンと来ませんね。


「あの魔道具だといくらくらいになりそうなの?」


 思い切ってリゼットに具体的な金額を聞いてみました。


「これからお父様と相談した上で、軍やアンリエットと詰めていかないと正確な金額は出せないんだけど……

 さっきから聞いた情報からわたしがざっと計算すると、一体あたりおおよそ2000万ゴールドくらいじゃないかなと」

「2000万ゴールド!?」


 わたしがなんとなくイメージしてた金額と桁が二つほど違ってました。

 それって、公爵家である我が家の月収より多い金額じゃないですか!


「あ、シャルがそれだけもらえるってわけじゃないからね。

 それの八掛けして三掛けだから、わたしの見積もりくらいだとすると、シャルの取り分は500万ゴールド弱かな?」


 それにしても大金じゃないですか。

 そればっかりに専念するわけじゃないですが、週に三体作ったりすると毎月6000万ゴールドとか、ありえない金額じゃないかと。


「今まで、アンリエットはそんな大金をもらってたの?」

「いやいや、軍需物資じゃなければもう一桁安くなるし、権利ごとレシピを買い取ったりして魔道具も何点かあったりするからね。

 平均すれば、アンリエットの収入は毎月1000万ゴールドをちょっと超えるくらいじゃないかな?」


 いやいやいや、軽い感じで1000万ゴールドって言ってるけど、我が家の収入と遜色ないから。

 そして我が家の場合は、その収入から騎士や家の執事やメイドたちを養っているわけなのよね。

 それに比べて、アンリエットは一人でそれだけの収入とか……


 あ、アンリエットの家庭とか詳しく聞いてなかったから、もしかしたらたくさんの人を養ってたりするのかもしれないけどさ。

 でも、リゼットもそれだけの大金のことを気軽に言ってくれるよね。

 まわりの皆もちょっと引いてる感じだし。


 これからわたしまで金銭感覚が麻痺してくる世界になってきそうで少し怖いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ