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48 反重力魔法

「さぁ、この装置を身に着けて」

 指示されたものの、どうやって身につけたらいいのか、正直言ってわかりません。

 わたしが困っていると、察してくれたのか、実際にその装置をわたしに背負わせ、ベルトなどで厳重にわたしの体に装着します。

 体だけでなく頭にも何かいろいろついているようです。


「貴族の習慣かもしれないけどいろいろ面倒だから、何でもはっきり言ってちょうだい。

 理解できてなくて危険なことになるとお互いに困るんだから」

 確かに学問の分野では察してもらうってのは、よくないことでしょうね。


「この腰のベルトのところに手を当てて、魔力を流し込んで。

 思いっきりやっっちゃってね」

 わたしは言われたとおりに腰のベルトに手を当てて、魔力を流し込みます。


「きゃっ!」

 恐ろしく急激に魔力が吸収され始めたので、わたしはびっくりしました。

 体からすごい勢いで装置に向かって魔力が流れ込んでいるのがわかります。


「安全装置がついてて、魔力の9割以上は吸収できないようにしてあるから、安心して」

 なんかすごいことを言ってますね。そういう術式があるのは聞いてますけど、その術式を組み込むだけで膨大な大きさの魔法陣が必要のはずです。

 この背負えるような装置にそれだけの術式が組み込まれてるんでしょうか?

 それより何より、この装置って何?

 魔力を吸収してるんだから、何らかの魔道具なんでしょうけど。


 魔力が吸収されるのが止まったのがわかります。

 すっごく魔力を消費したようで、体がすごく軽くなった気がします。


「驚いた!

 もしかしたらと思ってたけど、まさか1回の吸収で装置に魔力が満たされるとか思ってなかったわ」


 そうなんだ……アンリエットは常識はずれの存在だと思ってたけど、そんなアンリエットから驚かれるほどわたしの魔力量は膨大なんだ。


「順序が逆になっちゃったけど説明するわ。

 この装置には、反重力魔法の術式が組み込んであるの。

 とは言っても、わたしの貧弱な魔力ではとてもそれだけの術式を組み込めないから、魔力なしで後から充填できるような術式になってるんだけどね」


 反重力魔法ってのが何かわからないけど、ついでみたいに言われたことの方が気になります。

 魔力無しで後から充填できるような術式って何さ。

 そんな術式とか存在自体を聞いたことがないんですけど……


「この方式だとちょっと余分な術式が増えるのが欠点だけど、わたしが組む以上そうするしかないの。

 それはさておき、一度術式に魔力を充填してしまえば、後は少ない魔力でも使うことができるわ。

 わたしの魔力を基準に設計してあるから、たいていの人が利用できるはずだわ」


 いろいろ考えられているんだ。魔道具の便利さは、少ない魔力でも使えるってことだからね。

 さっきみたいに膨大な魔力が必要なら、わたししか使えない魔道具になっちゃう。


「説明はそんな感じよ。さぁそのまま使ってみて。

 安全設計だから心配しないで大丈夫よ」


 えっ、説明それだけ?

 使ってみてって言われても……

 あっと、察してもらうんじゃなく、はっきり言わないといけなかったんだったっけ。


「待って待って。

 その説明じゃさっぱりわかりません。

 反重力魔法って何?

 どうやって使えばいいのかまったくわかりません」


「そうか、ごめんごめん。

 反重力魔法を知らなかったら無理だね。

 重力ってわかる?」

「わかりません」


 それから、アンリエットの物理学の授業になってしまいました。

 アンリエットがどういう頭の構造してるかわからないけど、すごく頭がいいってのがよくわかります。

 30分程で一応、重力という存在について理解できました。


「うん、理解度が早くて助かるわ。頭の固い大学の教授たちに理解させるのに半日以上かかったし。

 さて、この重力を自由にコントロールするのが反重力魔法ってわけ。

 使い方は簡単よ。

 体が浮かぶイメージをするだけ。

 詠唱とかは用意してないけど大丈夫よね」


 無詠唱魔法は得意ですから大丈夫ですが、そうイメージするだけならさっきまでの物理学の授業は必要だったんでしょうか?


「やってみますね」


 わたしは言われたとおり、体が浮かぶイメージを膨らませていきました。

 すると、そのイメージに反応して装置がうっすらと光り始めます。


 あ、浮いた!


 体がふわりと浮かびます。

 少しだけ浮かび上がってイメージするのをめると、浮いたままその場に停止します。

 イメージしたとおりに上下へ進むことができますね。

 イマージのしかたを変えると左右にも進めるようです。


「試作品ってことであまりスポードは出ないように調整してあるわ」


 耳元でアンリエットの声が響きます。なにこれ?


「声が聞こえますけど、なんですか?」

「離れると指示できなくなると思って、遠隔会話の術式も組み込んであるのよ」


 何から何まで安心設計のようですね。

 わたしは、学園の上空の空中散歩を楽しみました。


 ふと、下を見るといつの間にか昼休みになっていたのか、皆が下からわたしを見上げて騒いでいます。

 そりゃまぁ、いきなり空中をふわふわ人が浮かんでるのを見つければ驚きますよね。


 いい気になってそのまま空中散歩してましたけど、わたしって今、スカート履いてますよね。

 この状態で空中散歩って……下から見上げれば下着が丸見えじゃないですか!


 思わず真っ赤に混乱しちゃいましたが、混乱しても急に落下とかしないのが安全でいいですね。

 急いで屋上に戻って、アンリエットの元へ着陸しました。

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