47 魔力の代償
「さぁ、そこにでも座って」
アンリエットが椅子を指さします。彼女の身長に合わせてあるのか大人用の椅子ですので、わたしには座れません。
わたしは椅子の横で恨めしげに立っていると、アンリエットは気づいたのか、わたしを抱えあげて椅子にかけさせてくれました。
あれ? 思ったより親切だったりする?
「説明が要りそうね。面倒なことだわ」
わたしがじっと睨むのを辞めないので、そう察したらしくイヤイヤながらアンリエットは話し始めました。
「あなたが私のことを知っているかどうかわからないけど、わたしは天才と呼ばれているわ。
この研究室をもらって、自由に研究をさせてもらってる。
授業とかは別に出る必要はないって言われてるけど、研究に行き詰まったときとか、気晴らしに出てみることはあるわ」
そういう事情だったのね。そして私とは何故か間が悪いせいで今日まで一度も会えなかったわけね。
「そういう事情でここで研究生活をしてるんだけど、わたしには一つ大きな問題があるの。
それは魔力が驚くほど少ないのよ。魔力が少なすぎるせいで、実際に実験するのは一人ではできずに、いつも大学から人を借りてやっていたの」
そういえば、オーレリアン先生もアンリエットのことを知ってたのよね。そのせいか。
「でも、今の新しい研究に使うのに大学の学生たちでも魔力が足らなすぎて、さっぱり進まないじゃない。
それで困っていたら、昨日オーレリアン先生にシャルロット、あなたのことを教わったの。
幼女のような姿なのに、何年も前から魔力は伝説の魔導師級、その成長は未だとどまることを知らないって。
その上、わたしほどではないにせよ、魔法の理論にも精通しているとか」
わたしがこういう目にあってるのはすべてオーレリアン先生のせいなのね。
「シャルロット、あなたに協力してほしいの。
あなたの魔力があれば、わたしの研究は大きく進むわ」
なんか、まったく人に物を頼む態度じゃないのは気のせいでしょうか?
ずっと天才と崇められてきたので、なんでも言えば自分の思うとおりになるとでも……
「わたしの願い事は以上よ。あなたの協力の条件を教えて」
「え?」
いきなり何を言い出したのかよくわからないんですが……
「シャルロットには魔力を提供してもらいます。あなたにしかないというその巨大な魔力量を提供してもらうんだから対価は必要でしょう。
あなたが必要とする対価を支払うと言ってるんです。
何が欲しいの?
お金?
知識?
それとも、わたしの体?
命とか言われると困るわね、研究ができなくなってしまうから」
対価に体を提供とか、どこからそんな発想が出てくるのよ。まだ九歳くらいよね……
「まさか、大学の学生相手に体とかで支払ったりしてないでしょうね」
「してないわよ。わたしみたいな貧弱な体を求める学生とかはいないわよ。
たいてい、お金か知識で支払っていたわ」
「どうして、そんなにお金があるの?」
「わたしの研究の一部を公開するだけでいくらでも、お金なんて手に入るわ」
そうなのか……それにしても、命とか言い出すとか……
いったい研究のためにどれだけ必死なのよ。
ふとアンリエットのことで思い出した。そう言えば、オーレリアン先生が言ってたっけ。
アンリエットなら、魔法陣に書かれているルーン文字も解読できるのではって。
「ルーン文字の解読はできる?」
「得意ですよ」
「魔法陣の解読をしていて読めないルーン文字で困っていたの。大学で読めそうな人は今、遺跡探索で当分戻ってこないって」
「お安い御用よ。その魔法陣を見せて」
「今、持ってないの。また今度で」
とっても気軽に言ってくれるわね。
「それじゃ、こういう条件でいいかな? 今回シャルロットが魔力を提供してくれる代償として、今後シャルロットが必要なときにいつでもわたしがルーン文字の解読をするってことで」
え? 転移魔法陣のルーン文字を読んでもらうだけのつもりだったのに……ずっと解読してもらえるの?
それってずいぶんわたしがお得じゃない?
「シャルロット、あなたは自分の魔力の価値を過小評価しすぎですよ。あなたの魔力があればどれだけのことができるか、わかってませんね」
そういうものなの?
どうしていつの間にか、わたしが説教される立場になってるんでしょう……
「それじゃ、いいのね? この条件で」
「はい、わたしの方はそれで問題ありません」
「じゃ、契約成立ね。
さっそく、魔力の提供をお願いするわ。
準備するので、校舎の屋上に出て。」
この部屋じゃなく屋上で実験ってするものなの?
新連載スタートしました。よろしくお願いします。
「ミノタウロスは今日も草を食む ~異世界転生と思ったら輪廻転生だった~」 https://ncode.syosetu.com/n1804et/
(下の方にリンクがありますのでそちらから飛ぶと便利かと思います)




