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5 運命の五歳

 ついに五歳になりました。

 とても賢い子と評判ですが、まぁこれは当たり前でしょう。高等学校までそこそこ優秀な成績で卒業した実績がありますからね。

 細かい記憶は少しずつ薄れてきてますが、知識はそうそう劣化しません。


 シャルロットは前世での評判通り魔法使いの素質があったようです。いや、むしろ素質がありすぎでした。

 その素質の上にわたしが調子に乗って魔力の圧縮拡張をやりまくったせいで、なんかすごいことになってしまいました。だって前世より気持ちよく圧縮拡張できるんだもん。

 五歳の今すでに、前世の魔王との戦いに向かった頃より魔力は多そうな気がします。勇者より魔力の多い幼児ってなんなんですか。


 魔法の習得の方もほぼ前世で知っていた魔法は使えるようになりました。最近は書庫を漁って知らなかった魔法を探してますが、こっちはなかなか成果が上がってません。

 貴族とは言え、優れた魔法使いを出したことのない家系ですので、魔法関係の蔵書がやや乏しいようです。

 これに関しては今のところどうしようもない感じ。この魔法関連の実情をバラせばきっと英才教育を受けさせてもらえると思いますが、少なくとも魔族襲撃事件までは自重しようかと。

 前世になかったイベントを起こすと、魔族襲撃事件に影響が出て予想外の事態が引き起こされるかもしれません。


 魔力の鍛錬については一つ大きな弊害が見つかりました。

 前世でも、「成長期にあまり大きな魔力を身に宿していると成長が遅れる」という俗説があると教わりました。どうやらこれは俗説ではなく、紛れもない事実だったようです。俗説だって言われてたから気にしてなかったのに。

 あまりにも大きすぎる魔力のせいで、わたしの肉体の成長が大きく遅れてます。

 五歳になったと言うのに、見た目はどう見ても三歳児。もう来年の今頃は初等学校に通ってるというのに。

 前世ではシャルロットの見た目は普通くらいだったような記憶があるので、これはどう考えてもわたしのせいですね。


 少しでも魔力を解放しようとしてたんですが、いくら魔法使ってもほとんど減った気がしないし、一晩寝るといつも魔力はマンタンになってる感じ。むしろ、めいっぱい魔法使ったせいでより魔力の総量が増えていってる感じです。

 ということで、こっちはもう諦めました。成長が止まるってわけじゃなく、遅れながらもすこしずつは成長してるようなので気長に行くことにしますよ。

 幸いなことに毎日の鍛錬のおかげで、年齢相応の運動能力はあるようですから。

 ただこれは前世のとおりなんですが、すぐに風邪引いて熱を出す体質は変わらないようです。


「シャルロットお嬢様、夕食の時間です」

 最近見習いではいったばかりのメイドのベレニスが迎えに来てくれました。今年の誕生日も盛大にお祝いしてもらえるようです。

「わかりました。今参ります」

 レディーとしての教育もしっかりされてます。

 この点だけが前世の知識では欠落してますのでやや苦労してますね。


 食堂に入ると家族の皆はすでに揃ってます。

「遅くなりまして」

 わたしはスカートのはしをちょこんとつまんで、優雅に挨拶します。最初はこういうの恥ずかしかったけど、もう前世の男性としての意識はずいぶんなくなってきたかも。

 小さくて椅子に優雅に座ることができないので、アネットに抱え上げてもらいます。

 ついこの前まではよじ登ってたんだけどね。レディーはそういうことしちゃいけないようなんです。


 テーブルのわたしの前には五本のロウソクの乗ったケーキが。毎年一歳の誕生日の時のケーキを吹き消した話題が出るので、きっと今年も出ることでしょうね。

「ハッピーバースデイ、シャルロット♪」

 恒例のバースデイソングの合唱の後に、わたしは思いっきり息を吹きかけて一気にロウソクの火を消しました。

「シャルロット、レディーがそんなふうに思いっきり吹き消してはいけません」

 お母様からお小言を言われてしまいました。どうやら一本ずつ静かに消していくのだそうです。

 去年はそんなこと言われなかったし、初めて聞いたよ。五本だからまだいいけど、年をとってロウソクが増えると、だんだん時間がかかるようになってくるんだね。

「そういえば、シャルロットが一歳の誕生日の時にケーキを吹き消してビックリしたよな」

 お父様が恒例のネタを引っ張り出してくれました。予想通りです。

「去年も聞きましたわ。一歳のときのこととか覚えてませんの」

 ちょっと頬を膨らませて怒ったような顔でわたしがそう言い返す。嘘ですけどね、しっかり覚えてます。

 お兄様も笑ってるけど、きっと一生このネタを言われるんでしょうね。


 一生といえばシャルロットも歴史通りなら余命は残り三ヶ月ほどです。

 忘れもしないあの夏の日のことを。

 死すべき運命さだめを乗り越えて、この平和な日々をもう少しだけ満喫したいものです。

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