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37 アバロ子爵夫人

「お待ちしておりました。バルバラ様」

 アバロ家に到着すると、ダミアンのお母様が待ち構えていました。

 ちなみに、バルバラというのはお母様の名前です。

「アンヌ、何かわかりまして?」

 お母様がダミアンのお母様に尋ねているようですが、アンヌというのが名前なんでしょうか?

 お互い名前で呼び合うってなんか仲がよさそうですね、この二人は。


「まずはこちらへどうぞ」

 アンヌに案内されて彼女の私室っぽい部屋へ。

「シャルロット、先程のように結界が張れますか?」

「はい、わかりました」

 お母様の指示に従い部屋に結界を張ります。


「これで誰にも会話は聞かれないはずです」

 お母様がそう宣言すると、アンヌはさっそく話し始めた。

「ブノワを診断したところ、強力な薬を使われた上で暗示をかけられていたようです」

「強力な薬ですか? いったいどのような」

「王国内では未知の薬と言ってもいいでしょうね。判断力をなくし暗示を無条件に受け入れるようになる麻薬の一種です」

「未知の薬という割にはよくそこまでわかりますね」

「わたしを誰だとおもっているのですか?」

 アンヌは自信にあふれた顔つきでお母様にそう言います。


「シャルロット、このアンヌは結婚前までは薬師としていろいろ活躍していたのですよ。

 どちらかと言えば悪い噂の方が多かったと思いますが」

「悪い噂とか……バルバラ様の噂に比べれば可愛らしいものでしたわよ」

「おほほ、娘の前でその話題は辞めましょうか」

「どちらが言い出してことですか」

 怖いのはうちのお母様だけではなかったようですね……


「それで、その薬というのは?」

「魔族のものと考えて間違いないでしょう。魔族領でのみ採れる瘴気を帯びた植物が何種か必要になります」

「それで、ブノワは大丈夫なんですか?」

「まだ中毒になるまでは行ってないようですね。中和できる薬を飲ませておりますが完治までは一ヶ月はかかるでしょう」

「それはひどいことに……でも完治できるとのことで何よりです。

 シャルロット、まずアンヌに謝るべきことがあるでしょう」

「はい、お母様。

 今回のことはわたしがブノワにマクシミリアンをそれとなく監視するように頼んだことが原因だと思っています。

 マクシミリアンがこういうことをやってもおかしくない人物だと知っておりながら、中途半端な指示を出したことがすべての原因でしょう。

 まことに申し訳ありませんでした」

 わたしは、そう言ってアンヌに深々と頭を下げた。


「ダミアンが心服するわけですね。とてもあの子と同じ年だとは思えません。

 別にシャルロット様のミスとも思えません。強いて言えばブノワが不甲斐なかったのですが、さすがに今回のことでブノワを責めるのは気の毒でしょう。

 子どもたちの相手としては敵が上手うわてすぎましたね」

「ブノワからはそれ以上何も情報は?」

「あら、わたしがこの程度の情報しか集めてないとでもお思いですか?」

「さすが、アンヌと言っておきましょうか」

「ブノワから薬を中和する際にすべての記憶は引き出しております。証拠能力がないのが残念ですけどね」

 記憶を引き出す? そんなことができるんでしょうか?


「え、そのようなことができるのですか?」

「ここだけの内緒ですよ、シャルロット様。

 そういう薬があるんですよ、寝たまますべての記憶を話してしまう薬があるんですよ、本人が忘れていることまですべて洗いざらい」

 アンヌってお母様より怖い人なのでは……?


 アンヌからブノワがマクシミリアンにされたことが細かく伝えられました。

 それを聞いている限りではすでにマクシミリアンは、前世でフェリックスを陥れたときのそのままのイメージで感じられます。

 でも、マクシミリアンはまだ十一歳か十二歳のはず。いくらなんでもこの年齢ですでにあんな存在だなんて……

 それはお母様方も感じたようです。


「それでそのマクシミリアンは中等学校の一年なんて……」

 お母様も驚きの表情になっています。

「尋常な敵ではないと考えた方がいいでしょう。すでに子供とは思っておりません」


 その後、お母様とアンヌの二人で謀略の話し合いに夢中になってわたしは横で座っているだけになってしまいました。

 話がやたら込み入った物になった上、わたしには理解できないような隠語が使われまくっていますので半分も理解できません。

 とりあえず、わたしが理解できた内容としては、

 ・物的証拠はドゥヌエ辺境伯家に押し入って薬の現物またはその材料を押さえる以外にない。

 ・ディフェンタール侯爵家の関与が不明のため、現状ではこちらの戦力不足の可能性がある。

 ということくらいです。


「わかりましたか、シャルロット」

 ごめんなさい、半分もわかってません。わたしがきょとんとした顔をしていると、お母様は、

「ですから、王家にどうしても関与してもらう必要があります。ですが、わたしたちには王家にこっそりとお会いするだけの名目が用意できそうにないのです」

「はい」

「ですから、シャルロットがヨハン殿下のもとへ遊びに行くときにわたしが付き添いするという名目で、王太子妃殿下に接触を取ります。

 ということで、そういうように進めてください」

「はい?」

 ちょっと待ってください、お母様。

 わたしがヨハン殿下のところにいきなり遊びに行くとか、そんなムチャな……

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