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36 ピエールの決意

 馬車でリゼットの家、ドメージュ商会へ向かっています。

 馬車に乗っているのは、わたしとお母様、リゼットとピエール、護衛としてマルコとベレニスです。

 お兄様も外出から戻ってきておりましたが、ロベールの剣術指南のある日でしたのでお留守番を。そのかわり皆が戻るまではロベールが家にいてくれるとのことなので安全でしょう。


 ドメージュ商会に馬車が到着し、わたしやお母様が付いてきてるというので慌ててリゼットのお父様である商会長が迎えに飛び出てきました。

「今日はリゼットにもいろいろ迷惑をかけてしまったようですが、何も聞かないおくようにしておいてくださいませ、よろしいですね。

 ドメージュ商会にはこれから我が家もいろいろ取引を頼むことになるでしょう。

 つきましては、明日の午後にでも尋ねてくるように。よろしいですか?」

 お母様が商会長に命じるように言ってます。

 要は「いろいろ内緒にしておいてね。これから儲けさせてあげるから。とりあえず用があるから明日来てね」って意味でしょうね。

「承りました。本日は誠にありがとうございました」

 そう言って商会長は平身低頭しています。いろいろ身分って面倒だよね。


 そして、いよいよピエールの家へ。ドメージュ商会からはすぐ近くです。

 ピエールの家では都合よく、ご両親共に家にいてくれました。

 ピエールのご両親とは初めてお会いしますが、お父様もお母様もどちらも驚くほどの美形です。ピエールのことも整った顔立ちだなぁとは常々思ってたんですけど、血の繋がりってのをはっきりと感じますね。


 今日あったできごとを、わたしの口からかいつまんで説明します。

「そのようなことが……」

 ピエールのお母様フルールが蒼白な顔になってます。

「どうして、ピエールが?」

 ピエールのお父様からそのような疑問が、わたしが答えようとするとお母様から手で制止されました。

「フルールの亡き父の話は聞いております。ピエールがその能力を継いで欲しくないと考える勢力が王国内にもいるようです」

「そんな馬鹿な……」

「そういう馬鹿な輩が存在するのですから困ったものです。

 残念ながらこの家では安全とはほど遠いものがあります。三人とも早急に我が家で保護させていただきます」

「実は先日、ディフェンタール侯爵家からお話がありましてそれを断ったばかりの今、それをお受けすると……」

 ピエールのお父様が苦渋の顔つきでそう言いかけると、

「その話は聞いております。我が家としてもディフェンタール侯爵家と事を構えたくはありませんが、それは我が家の事情ですので何とかいたします。

 それよりも、今は緊急を要します。

 それにですね、別に我が家といたしましてはピエールを専属楽師としたいのではありません」

「え?」

 わたしもこの話の流れでそうだと思っていたのですが……

「ピエールには、我が息子で勇者であるフェリックスの、またそれと共に戦うであろう我が娘シャルロットの仲間の一人として、ピエールを迎え入れたいと申しております」


「父さん、母さん」

 お母様の言葉を聞いていたピエールが話し始めました。

「今日もボクはシャルに助けられた。いつもいつもボクは守られる立場にすぎなかったんだ。

 ボクはシャルを守るというのはできないまでも、せめて同じ立場でありたいんだ。

 でも、ボクには歌うことしかできない……歌うことでシャルの役に立てるのならボクは何だってする。

 お爺ちゃんの話、聞かせてくれたよね。ボクもお爺ちゃんのようになれるよね」

「なれるわよ、ピエール。

 そのかわり修行は厳しいわよ」

 フルールがピエールと向かい合ってそう話しかけています。


 わたしはそれを聞きながら真っ赤になってうつむいてます。ここまでストレートに激しい好意を示されると、どう反応したらいいのかわからないじゃないですか。

 ただ理性では、ピエールがなんかやる気になってくれいて、将来戦う時にピエールが共にいてくれるっていうことをとても嬉しく感じています。


 その様子を眺めていたピエールのお父様は、

「話は決まったようですね。我が家には大事なものと言ったら、この二人の命とわたしの竪琴くらいです。

 この二人の命をお守りくださるのならすぐにでもどこへでも参りましょう」

「それではここに騎士のマルコを置いて、わたしはアバロ家の方にしばらく行ってまいります。その間に最低限の身支度だけしておいてください。

 細々とした荷物は後で業者にでもまかせればよいでしょう」

「マルコ様と言うとあの高名な……」

 マルコは魔族襲撃の際の活躍で王都では結構有名人なんですよ。


 心配そうなピエール親子に見送られて、わたしとお母様は護衛のベレニスと共に馬車でアバロ家へ向かったのです。

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