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35 ピエールの秘密

「お母様、今回のことで一つ疑問がありますの」

「なんでしょうか?」

「ピエールのことなんです。前世ではピエールが特に襲われるとかそういう事件が起こった記憶はなかったかと」

 わたしがそう言うと、お母様は少し迷った様子を見せました。

「前世のことは推測でしか話せません。ですが、ひとつちょっとした情報を聞いておりますので、それが関係あるかもしれません」

「どのような情報なんでしょう」


「ディフェンタール侯爵家の方からピエールに専属楽師の誘いがあったようですが、ピエールは断ったようです」

「ディフェンタール侯爵家と言うと確か……」

「そう、六年生にテオドールという男の子がいますね。現在王家を除けば初等学校在学生の中で唯一の我が家より身分の高い生徒です」

「そんな家からのお誘いをピエールは断ったんですか……確かピエールは貴族の支援者を得るために推薦を受けたと言ってましたのに」

「ディフェンタール侯爵家ならその希望に十分応えられるでしょうね。シャルロットは何故ピエールが断ったと思います?」

「わかりません……」

 そのようなもったいない話を断るなんて……


「シャルロットも、もう少し男の子の気持ちを考えてあげた方がいいかもしれませんね。まぁそれはとりあえずはいいでしょう。

 わたしの推測ではシャルロットの前世ではピエールはディフェンタール侯爵家からの誘いを受けていたのではないかと」

「それでは、ディフェンタール侯爵家とマクシミリアンに何らかの関係が!?」

「可能性はありますが、それは現時点ではわかりません。ただ単にディフェンタール侯爵家を敵に回したくなかっただけかもしれませんし」

「確かにそうですね……断定はいけませんね。

 そうだとしても、どうしてピエールが狙われるんでしょう? そういえば、オーギュスト校長もピエールを何か特別な生徒と……」

「そのことも話しておいた方がいいでしょうね」

 お母様はため息混じりに話を続けてくれました。


「このことはわたしも、聞いた話ですので詳しいことは知りません。

 魔族がどうして恐れられているかシャルロットは知っていますか?」

 話がいきなり飛躍してしまった気がします。いったいどう繋がるのでしょう?

「前世で習った記憶があります」

「魔族、特に上位の魔族は、その波動により人間の行動力を減衰させるそうですね。

 ですから、魔族相手には人間はその能力を存分にふるうことはできなくなるようです」

「はい、ただ騎士の持つ盾に刻まれた魔法陣である程度それが防げるとか」

「そのようですね。ただ上位の魔族にはあまり効果はないようですね。

 そんな状態の中で唯一、勇者はすべての能力を存分にふるえると聞いてます」

「はい、前世ではそうでした。でも今の体ではその能力はないようです……前に魔族に襲われた時ももっと威圧が効くと思ったのに」

「やはり、あの時もシャルロットが何かしていたのですね」

「あ……」

「知っていましたよ。マルコも、そして多分フェリックスも」

「そうなんですね……」


「ただ、そんな中で前に魔族との抗争で最前線に立っていた一人の歌い手がいたそうです。

 その歌い手の歌が聞こえるところでは魔族の波動は効果を無くし、王国の騎士たちは魔族の軍を追い返すことができたと伝えられています」

「そんな歌い手がいたのですね」

「そう、その歌い手の名はシルヴェール。ピエールの母フルールの父にあたるようです。

 シルヴェールの呪歌は男性にしか使えないようで、しかも歌うにはすばらしい歌唱力が必要であったとか、多くのシルヴェールの弟子たちには呪歌を受け継ぐことはできなかったようです。

 一人娘であったフルールは呪歌を受け継いでいたかもしれませんね。女性ですから呪歌が効果を出すことはなかったでしょうが、その歌唱力は誰もが認める存在ですから」

「それでは、ピエールも?」

「たぶんまだピエールには伝承していないと思いますよ。なんと言ってもまだ幼いですから」

「そうですよね」

「ただ、将来魔族との戦いがあるとしたら、ピエールは王国に必要な者と言えるでしょう」

「はい、わたしが勇者であるお兄様を助けて戦う時に一緒にいてほしい存在です」

 ピエールがそのような存在だとは思ってもいませんでした。


「お母様、ちょっと待ってください。

 ということは、すでにマクシミリアンは魔族と何らかの関係が……」

「だから、シャルロットが甘すぎたと言うのです。わたしの考えとしてはマクシミリアン本人だけでなく、ドゥヌエ辺境伯家自体が魔族と関係してると踏んでおります。

 ドゥヌエ辺境伯領は魔族と接しておりますし」

 まったく、ドゥヌエ辺境伯家ってことに考えが及んでませんでした……


「ピエールとその家族は我が家で保護いたします」

「お母様? ディフェンタール侯爵家でも断られたのですよね。それを我が家では……」

「ベルトラム家にはシャルロットがいますから、返事は変わってくるでしょう」

「ふぇ?」

「前世で受け入れたディフェンタール侯爵家からの誘いを断る理由としては、シャルロットの存在しかありません。

 ピエールは現在、この家にいるんでしたわね。この後、さっそく参りますわよ」

「あと、リゼットもいるんですが……」

「たしか、ドメージュ商会の娘でしたわね。わかりました、あそこにも一口絡ませなければならないのですね。

 さぁ、参りましょうか」

 お母様の頭が急回転で回っているようで、どんどん悪い顔になっていってます。

 なんかいろいろと急展開ですね。忙しいことになってきたようです。

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