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34 お母様との話し合い

「一つ確認させてください。今こうして話してるのは、フェリックスなんでしょうか? それともシャルロットなんでしょうか?」

「フェリックスとしての意識は、すでにわたしの中で、記憶とわずかな意思だけになってしまっている感じです。今こうしているのは、ほぼシャルロットであると思ってください」

 お母様の問いにわたしはそう答えます。フェリックスとしての意識はあの魔族からの襲撃から生き延びて以降、どんどん小さくなってきている、そう感じています。

 シャルロットとしての自我が強くなったせいなのか、あの事件から守り抜くというフェリックスの義務感を満たしたせいなのか、その両方のせいなのか。


「シャルロット、これまで一人でよく頑張りましたね」

 すべて話を聞き終えたお母様をわたしをしっかりと抱きしめてくれました。

「お母様は信じてくださるのですか?」

 わたしは恐る恐るお母様にそう尋ねた。

 平常心で話してたはずなんだけど、どうしても今まで隠していた涙がこぼれ出てしまいます。


「荒唐無稽な話ですね。普通なら信じられる話では到底ないでしょう……

 でも、シャルロットは赤ん坊の頃から普通ではありませんでした。そのことはわたしが一番良く知ってます」

 これでも普通にやって来たつもりだったんだけどなぁ……


「あまりゆっくりしてるわけにはいかないでしょうね。

 今回のことについて話しましょう。シャルロットも見かけどおりの子供ではないと言うことですので、いろいろはっきり言わせていただきます」

「はい」

 お母様はしばらく考えていたようですが、わたしの方に向き直って話し始めました。

「今回の事態を招いた原因の全てはシャルロットにあります」

「わたしのせいなんですか?」

「そうです。前世でそれほどひどい目にあっておきながら、何故早急に手を打たなかったのでしょうか?

 明確な敵に対してしばらく様子を見るとか、対応が甘すぎて呆れます。

 敵と言うのはこちらが後手に回ればそれだけこちらの不利になるものです。将来に禍根を残す可能性のある敵はできるだけ早めに芽を摘んでおかなくてはなりません」

 なんかとても過激な発言が飛び出してきましたよ。


「でもまだ今の時点ではマクシミリアンが敵だったかどうかはっきりとは……」

「そこが甘いと言うのです。もし敵にまわらずに味方になる可能性があると判断したのなら、あらゆる手で懐柔すべきでしょう。

 よくわからないから放置して様子見をしておくというのは、ただの逃げであって怠慢としか言いようがありません。

 中立でいるのを許すのは無害な者に対してだけだと思ってください。それ以外はすべて敵か味方のどちらかであって他はありません。

 このことが問題の一番目です。そして二番目の問題点としては……」

「まだ問題点があるのですか?」

「たくさんありますよ。

 二番目の問題点はすべて自分一人で抱え込んでしまうことです。

 特に前世で追い詰められた時に遅すぎたとはいえ、わたしに一言相談してくれてさえいれば……」

 そのことを言われると言葉もありません……

「あくまで想像ですけど、たぶん前世でフェリックスが死んだ後、敵は連座でベルトラム家自体を滅ぼしにかかったでしょうね」

「そんな!」

「貴族として当然の行動です。放置すればベルトラム家の力でフェリックスの名誉回復の動きとかされれば困るのはあちらでしょうから。

 当然、真実を掴めば逆襲に出たでしょうし。

 それくらいなら、滅ぼせるうちに滅ぼしておくというのが当たり前の行動でしょう。

 貴族の争いというのはそういうものです。まぁ早々簡単に滅ぼされたりしてあげるつもりもありませんが。

 前世のことを悔やんでいてもしかたありませんが、シャルロットはもう少し信頼できる味方が必要です。

 今回、わたしに相談してくれたことは評価します。なかなかすべてを話すことはできないでしょうけど、もう少し信用できる味方を増やしていかなければなりませんよ」

「はい、お母様」

 そう、前世ではひとりぼっちで自暴自棄になってしまったのが一番の悔いだ。あの時のことを繰り返しちゃいけない。


「それで今回のことですが、表面的にはアバロ家に任せようと思います」

「任せてしまうのですか?」

「あくまで表面的にはですよ。当然裏でわたしたちも行動いたします。

 今の時点で敵側とわたしたちの立ち位置を見てみるといいでしょう。

 何らかの手でマクシミリアンと思われる敵に操られたブノワがピエールを襲って、たまたま居合わせたシャルロットがブノワを取り押さえた。

 ただそれだけですから、まだシャルロットやベルトラム家が前面に出てくる理由が敵陣営にはわかりません。シャルロットが前世の記憶を持っているってことなど誰も知らないんですから」

「そうでしょうね」

 確かに言われてみるとそのとおりですね。

「それならば、まだベルトラム家は敵の思惑通りに、何も知らないという様子をとりつくろったままでいた方がいろいろ謀略を進めやすいと思いませんか?

 アバロ子爵夫人もなかなか優秀ですからね。長男を利用されて、三男のパーティーの時にあんな事件を起こされるとか、当然のように行動を起こしてくれるはずですから、こちらは上手くそれを誘導いたします」

「なるほど」

 さすがお母様です。腹黒さでは、ずば抜けています。


「シャルロットの出席していたパーティーで事件が起こったんですから、わたしが事情を確かめに行くのは自然でしょうから、後ほど一緒に参りましょうか。

 その時にアバロ家の方々と今後の計画を話し合いましょう」

「はい、わかりました」

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