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30 転移魔法

「というわけで、ずいぶん中途半端な魔法になっちゃってるんですよ」

 オーレリアン先生のところでケーキを口いっぱいに頬張りながら課題の現状を説明していたわけです。

 以前出された、転移魔法を魔法陣なしで行うという課題なんですが、せっせと魔法陣に書かれているルーン文字を解読していった結果、なんとか魔法陣なしでも転移を行うことができるようになりました。

 ただし、転移先として選べるのが自分の使える魔法陣にだけというなんか中途半端な状態に。

 これでも、ずいぶん便利ではあるんですよ。いちいち魔法陣のあるところまで行かなくても、自分がどこにいても自由に転移できるんですから。

 ただし、魔法陣が魔力消費を軽減してくれている恩恵を受けれないので、魔力はずいぶん必要となります。


 ここまで苦労したんですよ。転移魔法陣の本を見てもルーン文字はただの紋様として書かれているだけ。

 その意味とかまったく解説されているわけではありません。

 ルーン文字であるってことは、以前お借りした魔法陣の本で知っていましたが、ルーン文字の辞書があるわけでもないんです。

 できることと言えば、魔法陣に書かれているルーン文字と同じ文字を解読済みの魔法陣から探し出して一文字ずつ意味を理解していくという地道な作業。

 まぁこうした地道な作業が結構楽しかったからよかったんですけどね。

 わたしって結構、研究者向けなんでしょうか?

 それでも、見つからなかった文字が多数あって前後から類推して行かなければならなかったり。

 まぁ他の魔法の原理とか知っていましたし、転移の魔法陣の実際の動きからいろいろ類推して、ここまで実用化できたわけです。


「それだけでも、なかなかすごいことじゃぞ。一年かからずにここまでできるとは思ってもおらんかった」

「ここから先に進むのにどうしたら良いかと行き詰まってしまって」

 そう、なんとか打開できないかとオーレリアン先生の知恵を借りに来たんです。なんとかヒントを聞き出せないかと思って。

「それはわしにもなんとも言えないのぉ」

「そんなこと言わないでヒントだけでも教えてくださいよ」

「いやいや、別に意地悪で言えないんじゃなく、わしにもわからないんじゃ」

 あれ? どうしてなんでしょう。


「でも、オーレリアン先生は使えるんですよね。転移魔法が」

「ふぁっふぁっふぁ、まさか使えるわけがなかろう」

「えー、そうなんですか。使えるものだとばかり思ってましたよ」

「シャルロットちゃんなら、もしかしたら使えるようになるかもしれないなぁと思って課題にしたんじゃよ。

 仮に使えるようにならなかったとしても、これを探求することがいろいろ勉強になるじゃろうからな」

「確かに魔法陣に書かれている内容を理解しようと、ずいぶん勉強しましたよ」

「そうじゃろう、そうじゃろう。そういった地道な探求が学問の道じゃ」

 うーん、今日何かヒントをもらおうと思ってたのに、収穫なしか。

 残念……あ、そうだ。ついでにあのことを聞いてみましょう。


「魔法陣を解読していく上で、一部どうも解読があいまいなんですよ。ここの部分が」

 そう言って魔法陣の一部を書き写した部分をオーレリアン先生に見せてみた。

「うーん、わしもルーン文字については専門ではないからのぉ」

「他に詳しい先生とかいるんでしょうか?」

「一昨年までは一人おったんじゃが、今は遺跡の探索の旅に出ていていつ帰ってくるかわからんのぉ。

 たぶん、数年は帰ってこんじゃろう」

「そうなんですかぁ、残念です」


 わたしががっかりしていると、オーレリアン先生が何か思いついたようです。

「あ、そういえば一人だけ心当たりがおるぞ。たぶん、あれなら」

「え、詳しい人がいるんですか? ぜひ、ご紹介してください」

「いや、わしも面識はないのじゃ。と言うか、わしよりシャルロットちゃんの方が知り合いなのではないか?」

「え、誰のことですか?」

 わたしの知り合いでルーン文字の専門家とか、まったく心当たりがないですよ。


「初等学校のシャルロットちゃんより一学年上だったと思うが、アンリエットという奨学生がおるじゃろ。

 あの子の作った魔道具を見てみたが、わしも知らないようなルーン文字がぎっしり書かれておった。

 相当ルーン文字にも詳しいはずじゃぞ」

「アンリエットですか……実はまったく面識がないというか、巡り合わせが悪いせいか一度も会ったことがないんですよね」

 超のつく天才児とは聞いていたけど、ルーン文字にも詳しかったのか。

 いったいどれだけすごい子なの?

「他は心当たりがないのぉ。せっかく同じ学校におるのじゃから、頼ってみるのが一番じゃと思うぞ」

「はい、わかりました」


 とは言ったものの、いったいどうすればいいんでしょうかねぇ。

 研究の邪魔されるのをもっとも嫌うっていう話ですから、学校にある彼女の研究室に尋ねていくのも問題ありそうですし。

 だいたい、初等学校に自分の研究室持ってるとか、どれだけ特別扱いなのかと。

 奨学生と言いつつ、まったく専用喫茶室にも顔を出しませんし。

 なかなかの難題のようです。

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