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29 王太孫殿下

 初等学校の二年生に進級しました。

 二年A組、奨学生は基本的にA組ですが、クラスメートは入れ替わります。

 同じ奨学生のピエールは当然同じクラスです。他に去年A組だったメンバとしては、主だったところではダニエル、ジョニー、リゼットが同じクラスになりました。ダニエル配下の他の二人は別のクラスになったようです。

 それ以外に球技大会で戦ったD組のアナベラが同じクラスにいますね。

 また、B組・C組にいた騎士志望の女の子が一人ずつ同じクラスになりました。

 他はあまり知ってる子はいなそうです。

 これは今年の球技大会は期待してもいいかもしれませんね。


 さっそく、ダニエルやリゼットが活発に皆に声をかけていますね。あの二人経由で新しいお友だちも増えるといいなって思ってます。

 A組の担任は変わらずにルミア先生だったりします。どうやらわたしとの相性は良さそうなのでこれは歓迎です。

 具体的にはあまり細かいことにこだわらないところがいいですね。いい意味で放任主義な感じです。


 二年生になって一番不満なこと。

 それは一年生たちがどう見てもわたしより大きいこと。

 二年生になったというのに学校で一番小さいってのがなんか辛いです。

 見た目が四歳児ってところはまだ変わらないようです。少しだけ背は伸びたと思うんだけどなぁ。


 昨日あった入学式で、二年生代表で歓迎の言葉ってのをやったんですよ。

 一年生の子たちに「ちっちゃい」「かわいい」とか言われるのは辛かった……ちょっとキレそうになりましたよ。

 でも大丈夫です。お母様に鍛えられてますからね。

 内心キレてても表面上は最高の笑顔で相手に接するという貴族の流儀も最近は普通にできるようになりました。


 そして不満ってわけではないですが、新入生代表として奨学生を押しのけて挨拶した王太孫殿下のこと。

 今日、特待生専用喫茶室に行くといるんですよね。

 奨学生でないのに特別に利用を許可された殿下が……

 前世では三年離れていたおかげであまり接点なく過ごせたけど一年差だからなぁ。

 きっといろいろと絡むことになるんでしょうねぇ。

 今日行くのをサボりたいけどそんなことできるわけないし。お父様にもくれぐれも失礼のないようにって念押しされちゃってますし。


「ピエールも気をつけてね。王太孫殿下はとっても気まぐれなお方ですから、何に興味を惹かれるかわかりませんから」

「どのように気をつけたらいいんでしょうか?」

「それがわかれば苦労しないのよねぇ」

「はぁ」

 本当にわたしが教えてほしいところですよ。


 そして毎年恒例の自己紹介タイム。

 いきなり殿下が話し始めることで始まりました。


「余はヨハン・アングラードである。

 奨学生ではないが特別にここを利用する許可を得た。ここにいる皆は王国の宝であると祖父からも聞いている。

 皆の中で育つことが余にとっても重要なのだそうだ。よろしく頼む」

 さすがに王太孫殿下、立派なものですねぇ。「よろしく頼む」といいながら、まったく頭を下げようともしないってところが帝王教育ってものなんでしょう。


 これを受けて新六年生のジェフが立ち上がり進行を始めました。

「殿下、自己紹介ありがとうございます。

 新入生の奨学生の方も自己紹介お願いします」

 殿下の横に座っていた男の子が立ち上がり挨拶を始めました。

「カロンです。よろしくお願いします」


「わたしは六年生のジェフ、格闘術での奨学生です。

 カロンの推薦項目はなにかな?」

「はい、わたしは剣術での推薦になります」

 前世ではカロンは殿下に気に入られて、ずっとお付きの剣士となったはずです。


 その後、普通に全員の自己紹介が流れていきました。お兄様の自己紹介の時に

「おぉ、そなたが勇者殿か。よろしく頼むぞ」

 こうやって声をかけるのも前世のとおりですね。すごく驚いた記憶があります。

「はい、よろしくお願いします」

 お兄様はぎこちなく挨拶した後、深々と一礼しました。


 さて、このまま普通に流れていくかな。

 そういえば、一期上のアンリエットはこういう日でも来ないんだよね。ブレないというかなんというか……


「二年生のシャルロットです。学力と魔法の推薦です」

 そしてわたしが挨拶した瞬間、殿下がいきなり立ち上がったではないですか。

 どうしてわたしの横に歩いてくるの?


「シャルロットと言ったか、昨日の入学式で挨拶していただろう。

 そなたは小さいのぉ。余も小柄な方だが、余と比べてもずいぶん小さい。

 余もこのくらいの妹がおればのぉ」

 どうやらわたしの横に来たのは身長を比べたかっただけのようです。

 んーと、こういう場合ってどうお返事したらいいの? お母様、教えて!

「いや、レディーに対して失礼した」

 殿下は上機嫌にそう続けてくれた。

「いえ、殿下にお声をかけていただき光栄に存じます」

 内心慌てふためきながらも笑顔を維持して、こう答えたんだけど、これで応対それほど間違ってないよね?


 その後ピエールが普通に挨拶して自己紹介は終わったんだけど、なんか殿下がわたしの方をじっと見てる気がします。

 もしかして、気に入られちゃった?

 殿下に気に入られるとか、なんか厄介事が増えそうな気がしてあまり嬉しくないんですけど。

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