25 クラスメートたち
「申し訳ありませんでした」
ダミアンの言葉に従って、エロワ、カロン、ジョニーの三人もわたしに頭を下げています。
ジョニーはまだ顔に包帯を巻いたままで痛ましくはありますね。反省はしてませんが。
「謝るのはわたしにではありませんことよ。
ピエールに謝ってくださいませ」
わたしの言葉を受けて、ダミアンたちはピエールに頭を下げた。
「ごめんなさい」
「ピエール、そう簡単に許せることではないかもしれませんけど、これから同級生として長い間付き合っていかなければなりません。
何か適当な条件をつけて許してあげてやってはいただけませんか?」
わたしからピエールの方に口添えしてあげることにした。
「ボクはもういいんですが……」
ピエールはこの状況にどうしていいかわからない感じで困ってる様子。
「ピエール、いい機会ですから、簡単には許さず何か有利な条件を引き出しておくといいですよ」
「シャル、なんか悪い顔になってますよ」
あっと、お母様にいろいろ教わったことをいきなり実践してしまったかしら。おほほほほ。
「ピエールもこう言ってることですので、二度とこのようなことを起こさないでくださいね。
今度何かあった時は……怖い思いをすることになると思いますよ」
わたしは厳しい目を四人に投げかけておきます。
「かしこまりました、シャルロット様。
それで今後のことなんですが、先程も四人で話し合ったのですが、この三人にはシャルロット様を敬う気持ちが欠けております。
今後、何か必要なことがありましたら、代表して俺に申し付けてください。
誠心誠意務めさせていただきます」
なんか敬う気持ちとか別に要らないんですけど……ちょっとダミアンの視線に怖いものがある気がします。
「わかりました。そうさせていただきます」
お母様、このダミアンを手駒として使うのが貴族の流儀なんですの?
「とりあえず今お願いしたいことは、ピエールが他の男の子たちにいじめられたりしないようにあなたたちで守ってあげてください」
ピエールがちょうど席を外したので、ダミアンたちにはそうお願いしておきました。
なんかダミアン見てると、犬が尻尾を振って喜んでいるように見えて気持ち悪いです。
今回の事件のおかげと言ってはなんですが、リゼットともお友だちになれました。
暴力事件でクラスの皆にちょっと引かれてしまった後、リゼットがいろいろ庇ってくれたんです。
リゼットは王都でも有数の豪商の娘だそうです。
あまり身分を気にせず、ずけずけと会話してくれるのが逆に気持ち良いです。
そう言ったら、相手を見て話をしているのだそうで、わたしにはそういう態度のほうが気に入られると思ったんだそうですよ。
そういうことをバラすのはどうかと言ったら、わたしはバラしたほうがいいタイプなんだそうです。
そう言われるとそうかもしれませんね。どちらにせよ、とても頭のいい子のようです。
リゼットを間にしてクラスの他の女の子とも、それなりに仲良くなれそうです。
でも、あらためて女の子のお友だちと何を話したらいいのかと考えると困ってしまいます。
前世でも、クリスティーヌ以外の女性とあまり親しくお話したこととかなかったんですよね。
同世代の女の子との会話、どんな話題が適当なんでしょう。
しかたなく、ニコニコしながら、皆の会話を聞いているだけの感じになっちゃってます。
とりあえずクラスメートの女の子たちの話を聞いてて思ったこと。
女の子って怖い。
ずいぶん女の子って存在に幻想を抱いていたようです。
クラスメートの女の子たちは同世代の男の子、いえ今のお兄様とかと比べてもずいぶん考え方が大人です。
そしてずいぶん現実的で打算的なんですね。
女の子たちが成長するとお母様のようになるってことが、よくわかりました。
そしてお母様は女の子がそういうものだと知っているからこそ、お兄様にはまったく見せなかった黒い面をわたしには見せたのですね。
お母様の期待どおりになってなくて申し訳なく思います。
これは想像どおりだったんですが女の子は恋バナが好きなようで、やはりクラスの男の子たちのことが話題になります。
そしてやはりと言うか当然のように、女の子たちの間でもピエールは人気が高いようです。
ピエールについては、わたしとしても当然そうだと思うんですが、意外なことにダミアンもそこそこ評価が高いみたいです。ダミアンのどこがいいの? って思うけど如何にも貴族ってところがいいようですね。
確かに行動をいろいろ聞いてみると如何にも貴族ならそうしますって感じの行動に思えますね。でも、それって憧れるところ?
わたしとしてはお兄様のように少々甘い性格のほうがいいんじゃないかと思ってたんですが。
だから前世ではイマイチもてなかったのかなぁ。




