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24 貴族の流儀

 ジョニーに怪我を負わせたことはわたしの正当防衛が認められたもののやりすぎってこともあり問題視されました。

 やはり貴族の学校で暴力事件ってのが問題になったようです。

 相手の方も下級から中級貴族たちという身分差を別にしても、四人がかりでしかも女の子に怪我させられたってのは不名誉極まりないらしく表沙汰にはしたくないようです。

 お母様が何やらいろいろと暗躍していたようで、一応表面的には無事に収まった感じではあります。


 お母様に自室まで呼び出されました。

 これまで事情聴取はあったもののお説教の方は後回しにされてましたので、これからまとめてお説教がされるのでしょう。

 お母様のお説教はいつも心をえぐってきますので、恐れおののいています。


「お母様、わたしは悪いことをしたとは思っていません。ですから、謝るつもりはありません」

「いいでしょう。貴族たるもの自分のしたことには責任を持つことが必要です。

 すぐ謝ってしまうのはよくない態度です」

 あれ、それでいいの?


「でも今回のシャルロットのやり方はいろいろ問題があります。

 貴族としてもう少し考えて行動してもらわなければなりません」

 お母様はとても厳しい表情をしています。わたしは神妙な顔で話を聞くことにした。


「まず、一番問題なのは今回の解決方法です。

 暴力を直接振るって相手に怪我を負わせるのはこちらにも後々不利益になります。今回もそのことで相手の親が少々強気になっていたようです。最低の解決方法ですね。

 暴力自体を否定するつもりはありません。相手に確実に勝てるだけの力があるのなら、それを直接でない方法で相手に誇示することで相手の心を折るのが暴力の有効な使い方です。

 それもあまり貴族的とは言えませんけどね。でも使えるものを使わないというのも愚かです。

 シャルロットの場合、もっと有効な方法を取るべきでしたね。

 隠れて相手の証拠を握るというのは重要です。そこまでは合格点です。

 本来なら、クラスの他の皆の言論を誘導することによりそのグループを孤立させたりするのがよろしかったのでは?

 他にも相手の弱みを調査してそれを脅すことにより相手の行動を封じるとか、相手のうちの一人を誘い出して裏切らせたり、お互いに疑心暗鬼にさせるなどで分裂させるのが有効だと思いましたよ」

 あれ? お母様的に問題なのはそういったことでしたの……


「でもあいつらは、四人がかりでいじめをしたり、貴族であることを笠に着たり……」

「あら、それは悪いことではありませんよ」

 え?


「いじめがよくないことは別にしても、物事を確実に成功させるためにあらかじめ根回しをして協力して行うことは有効なことです。

 また貴族というのは先祖の功績があり、今現在でも平民より多くの義務を持っています。そのことで貴族が優遇されることは当たり前と言っていいでしょう」

 そうなのか……いろいろと貴族の常識ってのがまだよくわかってないのかも。


「今回の事件のポイントは奨学生である平民を否定したことに尽きるのです。

 奨学生の制度を作ったのは国王陛下です。その制度を否定することは陛下を否定することになるのです。

 わかりますか?

 そのあたりのことを含めて四人の親はしっかりと追い詰めさせていただきました。

 あの四人のことはシャルロットが好きにしてよろしい。あの親たちはベルトラム家の手駒として有効に利用させていただくことになりました。

 そうそう、アバロ家の子、ダミアンと言ったかしら。上の二人のブノワ・マルセルも含めた三兄弟はなかなかいい手駒として使えそうですわよ」


 お母様……せっせと暗躍してると思いましたら、一体何をしてましたの?

 怖い……お母様、怖いですわよ。


 でも、将来的にお兄様を助けようと思ったら、お母様のこうした手腕が必要なのかもしれませんね。

 わたしもお母様にそのあたりのことをしっかり教わった方がいいのでしょうか。

 もしかしたら前世の追い詰められてた時も、何とかお母様に助けを求めれば何とかなったんじゃないのかって気がしてきましたよ。

 前世ではあまりお母様はフェリックスにこうした黒い面を見せてくれてなかったからなぁ。


「それにしても、ピエールという子にも少し問題がありますわね。

 貴族四人にという不利な状況は認めますが、一方的にシャルロットに庇護されているだけでは、将来我が家に入れるわけにはいきませんね。

 シャルロットもその気があるのなら少しは鍛えないといけませんよ」

「お母様。ピエールはただのお友だちで……」

「あら、わたしが調査した話とはずいぶん違うようですね。ずいぶんシャルロットがお熱だと……」

 うわっ、お母様の調査網怖い!

「お抱えの楽師というのならそれでもいいでしょうが、彼に別のものを求めるのなら、シャルロットとしてもおつきあいのしかたを考えないとなりませんよ」


「平民だと言うことは問題ありませんの?」

「あなたのお父様は問題視するかもしれませんね。でも少々の身分差は能力で覆せるものですよ。

 わたしだってもともとは貴族とは名ばかりの貧乏な下級貴族の娘ですから」

 きっとお母様のことだから、お父様の周りにいたライバルになりそうなお嬢様方を蹴散らして、お父様を上手くたらし込んだのでしょうね。


「お母様のようになるには、どのようなお勉強をしたらよいのでしょう?」

「あら、シャルロットも貴族の流儀に興味がありまして?」

「早めにお勉強したほうがよさそうな気がしましたので」

「それではいっしょにお勉強いたしましょうか」


 二人で悪い笑顔で微笑み合いました。

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