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23 【ダミアン視点】俺の天使様

 俺はダミアン。初等学校一年生、中級貴族の三男だ。


 初等学校の入学式で俺は天使に出会った。

 新入生代表で壇上に上がった彼女の姿を見た瞬間、俺は夢かと思った。

 その小柄な体、優しげな笑顔、澄んだ声、小さい頃に絵本で読んでもらって以来、夢見てきた俺だけの天使様。

 それが今、俺の目の前に降臨されたのだ。


 天使様はシャルロット様というらしい。

 シャルロット様と同じクラスになれるなんて俺は神に感謝した。

 俺の初等学校生活は祝福に包まれているな。


 俺は帰宅してからさっそくシャルロット様のことを調べた。なんと我が家よりはるかに位の高い上級貴族のようだ。

 その容姿からして貴族であるとは思っていたが、奨学生であることからきっと下級貴族であろうと思っていたのに。

 下級貴族ならお近づきになる手段もいろいろ考えられたけど、上級貴族となるとなかなかそれも使えない。


 翌日、授業後の光景を見て驚いた。

 シャルロット様が同じ奨学生のピエールに歌を捧げられているではないか。

 シャルロット様は歌が好きなのか。俺も竪琴など一通りの練習をさせられてきたが、残念ながらあのピエールほどの能力はない。

 悔しくて仕方がない。

 そしてなんと腹立たしいことに、ピエールはシャルロット様のことをシャルと呼んでいるではないか。

 平民のくせに生意気な。俺の天使様を愛称で呼ぶなんて、そんな羨ましい……いや不遜な態度を許しておくわけにはいかない。

 目にものを見せてくれるわ。


 家で夕食の時に、すぐ上の兄のマルセルからいいことを聞いた。

 なんとマルセルはシャルロット様の兄上のフェリックス様とクラスメートで仲もいいというのである。

 この兄上の縁を上手く利用すれば、シャルロット様をお近づきになれるかもしれない。

 でもなかなかチャンスは少なそうだ。この縁は大事なところまでとっておくことにしよう。


 クラスで俺の子分が三人できた。エロワ、カロン、ジョニーの三人だ。

 三人とも下級貴族で俺の言うことはよく聞く。

 こいつらを上手く使ってシャルロット様とお近づきになれるようにしよう。

 とりあえず、目障りなのはピエールだ。

 なんとかやつを排除したいが、いつもシャルロット様といっしょにいるので、なかなかいい機会が訪れない。


 シャルロット様がお休みになられた。

 お病気なのであろうか?

 心配で仕方がない。シャルロット様のお顔を見れないと心が張り裂けそうだ。


 でも、これはチャンスかもしれない。シャルロット様がいない間にピエールを排除するのだ。

 授業後、俺は三人を使ってピエールを呼び出した。

「なぁ、ピエール。ちょっとシャルロット様にずうずうしすぎるんじゃないのか?

 もう少し大人しくしていたほうが学校生活を楽しく送れると思うんだがな」

「でも……」

 俺は優しくピエールに教えてあげたんだが、どうもピエールは理解してもらえないようだ。

「しかたないなぁ、俺は暴力とかは好きじゃないんだよなぁ。

 ジョニー、ピエールに丁寧に教えてやってくれ、俺は少し席を外すことにするから」

 ジョニーは三人の中でも腕っ節に自信があるようだ。その分、頭のほうが悪いがこいつも使いようであろう。


 しばらく席を外して戻ってくると、すっかりピエールは素直ないい子になっていたようだ。

「もう、シャルロット様に馴れ馴れしく口を聞くんじゃないぞ、わかったな」

「……はい、わかりました」

 なかなか素直でよろしい。


 シャルロット様は翌日もお休みになられた。

 まことに心配である。でもまだ俺の状況ではシャルロット様の御見舞とかいけやしない。

 はやくお近づきにならなくては。

 シャルロット様が早く元気になられるように神にお祈りを捧げた。

 念のため、ジョニーたち三人にピエールを教育してもらっておいた。


 翌日になってシャルロット様が元気に登校なされた。

 神よ感謝します。

 ピエールは俺たちの言うことをよく聞いて、シャルロット様にずうずうしく口を聞いていないようだ。

 学習効果は十分だな、結構なことだ。


 授業後、シャルロット様は早々に帰られてしまった。

 ピエールのことを褒めておいてやることにするか。

 俺は三人とともにピエールにところに行って、お褒めの言葉を投げてやった。

「約束どおりにシャルロット様と口を聞かなかったようだな、これからも約束を守るんだぞ」

 三人もいろいろ教育の言葉を投げているようだな。

 平民の教育はしっかりしないといけないからな。貴族の大事な仕事だ。


「そういうことでしたのね」

 そんな瞬間、シャルロット様の神々しい声が聞こえたのだ。

 シャルロット様が目の前に降臨なされた。

「シャルロット様!」

 俺の歓喜の声が響く。


「……最低の男たちですね」

 シャルロット様自らがわたしをなじっておられる。なんとありがたいことだろう。

 そしてシャルロット様は俺の前に近づいてきてくださった。

 このようなお近くでシャルロット様を眺められるなんて、素晴らしき幸せ。


「チビのくせに生意気なこと言うんじゃねぇよ」

「女のくせに!」

 エロワとカロン?

 お前たちはシャルロット様に向かってなんということを言うんだ!

 そのような言葉は天がお許しにならないぞ。


 エロワたち二人に気を取られていたら、ジョニーがシャルロット様に殴りかかったではないか。

 シャルロット様に手を上げるとか、気が触れたのか!


 その瞬間、驚くべきことが起こった。

 シャルロット様の姿が一瞬消えたかと思ったら、ジョニーがそこに横たわっていたのだ。

 今、何が起こったのだ。

 俺がシャルロット様の姿を見失うなんて、俺の目の前で起こったはずの奇跡を見れなかったとは一生の不覚。


 俺はエロワとカロンに腕を掴まれて引っ張られていく。

 おい、何をするのだ。

 シャルロット様の目の前にいられる幸福をお前たちは邪魔をするのか。

 しかも、シャルロット様のお許しもないまま、立ち去るなんて失礼この上ない。

 おい、待て。やめるんだ。


 この後、シャルロット様の母上自らが父上母上のところへやってきたらしく、両親ともどもシャルロット様の家の派閥に属することになったようだ。

 俺たち兄弟もシャルロット様の兄妹の配下として行動しなさいと言われた。

 俺としてはシャルロット様に仕えることにはまったく依存はない。というかこの上ない幸せである。

 次兄のマルセルは仕方ないなぁって感じであったが、長兄である六年生のブノワは不満そうだ。下級生の配下というのが気に入らないのであろうか。

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