2 魔力の訓練
半年が過ぎました。
だーだーとか、まーまーとかいわゆる喃語を話せるようになりました。
工夫すればもう少し意味のある言葉も話せると思うんだけど、無理に話しても気味悪がられるだけなので、無駄な努力はしないようにしてます。
死亡フラグを回避すべくいろいろ考えたが、今できることと言えば魔力を高めておくことでしょう。
確かシャルロットは魔法使いの素質があるって言われてたような気がする。
素質があるのなら今のうちから伸ばしておけばいいじゃないかと、そう考えたんですよ。
魔法が使えれば、身体強化でもっと機敏に動けるであろうし、魔法で身を守ることも可能でしょう。
その時までめいっぱい魔力を鍛えて、なんとか生き延びてやるんですからね。
とにかく、あの襲撃イベントまでは自分が生き延びることを最優先に考えましょう。
生き延びないことには兄フェリックスのやりなおしを応援することもできないし、自分が死なないことがフェリックスの心の成長に一番役立つはず。
魔力操作の練習方法については、前世で習っています。
赤ん坊の体でも、すぐに魔力を手に集めることができるようになりました。おー、シャルロットって天才じゃないですか。魔法使いの素質って怖いですね。
集めた魔力を両手に交互に移動させたりしていたが、すぐに疲れてしまいました。
焦る必要はないなと思って魔力を解放させたら、気を失っちゃいました。魔力の総量が少なすぎたせいでしょう。
気がつくとおしめが濡れてました。気を失った時に失禁したのだと思うけど、こればっかしはしかたないよね。
ぎゃーぎゃー泣きわめいて、おむつを変えてくれるように主張したらメイドのアネットが駆けつけてくれた。
いつも世話をかけますねぇ。
あ、お兄様。レディーのお着替えをじっと眺めるのはよろしくないと思うんですよ。
これでも恥ずかしいんですからね。
しっかりとお兄様に見られてしまったようです。もうお嫁にいけない体になってしまいました。
ってのは冗談としても、無事に生き延びたりすると、シャルロットはどこかの男性と結婚したりすることになるんだろうか。
男と結婚するとか、なんか正直言って、それは勘弁して欲しいものがあるんだけど。
まぁそうしたことはいろいろ生き残ってから考えましょう。
とりあえず、魔族襲撃事件を生き残って、その後は魔法使いとして兄を助けるような未来がいいんじゃないかと思ってる。
そして、その後のことはまたその時に考えればいいや。
さて、魔力の練習に戻りましょうか。
さっきの感じでは魔力操作は普通にできそうだけど、問題は魔力の総量だね。
成長に応じてだんだん大きくなっていくとは思うけど、今のうちからめいっぱい拡張しておいたほうがいいと思う。
ガンガン拡張して、どんどん使っていくことにしましょう。
ということで、気を失ってる間に魔力の方は回復してるみたい。
この魔力をまずは圧縮することにしましょう。
魔力をギュッと押し付けて圧縮……うーん、体がまだ上手く動かせないせいか、イメージができてないなぁ。
なら魔力の上にのっかかるように……これもダメか。
そうだ、この前、寝返りできるようになったんですよ。魔力をこのベッドだと思ってその上でゴロンと寝返りするイメージで。
うん、できた。
ちょっとだけど圧縮できたよ。
「シャルロットお嬢様はとてもご機嫌みたいですね」
わたしの様子を見に来ていたアネットがフェリックスにそう話しかけてる。
あ、フェリックスがなでなでしてくれた。
ありがとう、お兄様。わたしは頑張ってるよ!
ちょっと休憩しましょう。どうせ他にやることないんだから、ヒマはたくさんありますよ。
普通の赤ん坊って普段は何してるんでしょうね。
寝てるだけって、ずいぶんヒマだと思うんだけどなぁ。
休憩してる間に魔力が回復してまたいっぱいになっていたので、再度魔力の圧縮。
毎回ちょっとずつだけど圧縮できていってるみたい。
よーし、それなら今度は魔力領域の拡張もやってみましょうか。
領域の隅っこをひっぱるように……うーん、これも上手くイメージできないなぁ。
前世と体が違いすぎるのがイメージできない原因なんでしょうね。
この体で上手くイメージするにはどうしたらいいんだろう?
そうだ、引っ張るんじゃなく、自分が魔力領域の中に入っちゃって伸びをうつ感じで広げればどうかな?
お、なんかいい感じ。やっぱり体が小さいので中に入るイメージがしやすいんですね。
いいぞいいぞ、少し領域が伸びた気がする。
圧縮と拡張を少しずつやっていきましょう。
そして魔力操作してすべて解放。
大きくなってからと違って、いつ気を失ってても問題ないのが赤ん坊の利点ですね。
毎日ちょっとずつでも、これらを続けていけば五歳までにはそれなりの魔力量になるんじゃないかな。




