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14 【ピエール視点】同級生シャルロット様

 ボクはピエール、五歳です。今年、初等学校に入学したばかりです。

 入学して貴族様のお友だちができました。

 シャルロット様という綺麗な女の子です。今日はその子のお話しをします。


 父さんは竪琴奏者、母さんは声楽家という音楽一家で育ちました。ボクも歌うのが大好きで、歌ってさえいれば他の何もいりません。

 歌って一生を過ごしたいのなら貴族様の支援者がないといけないそうです。両親の勧めもあって貴族様ばかりの初等学校の奨学生試験を受けることにしました。

 初等学校の奨学生は一つのことに優れていれば合格できるという話です。ボクは歌うことなら誰にだって負けないと思っています。

 でも、お勉強もできたほうが合格しやすいと言われたので、お勉強もしっかり頑張りました。歌う時間が減るのは嫌ですが、将来のためにはしかたないことだそうです。


 奨学生試験は十人の受験生がいました。貴族様の女の子も一人いました。小さいけどとても綺麗な女の子でした。貴族様の女の子は皆こんなに綺麗なんでしょうか。

「皆、がんばりましょうね」

 その女の子が皆に声をかけてくれたので、ボクはビックリしました。貴族様は威張っていて平民には声をかけてくれないって聞いていたからです。

 ボクはとても嬉しくなって、

「うん、がんばろう」

 と言いました。あとで母さんに怒られました。貴族様にはもっと丁寧な言葉で話さないといけないそうです。

 貴族様って難しいと思いました。


 午前中の学力試験はとても難しかったです。初等学校ではこんなに難しいことを勉強するのでしょうか。ボクは半分くらいしかわかりませんでした。こんなことでは入学してもついていけるのでしょうか、とても不安です。

 ボクがまだ少ししか回答できていないのに、貴族の女の子は試験が終わったようです。レベルが違いすぎます。


 学力試験で自信がなくなってしまいましたが、午後の試験が本番です。気を取り直して頑張らないといけません。

 音楽の試験を受けるのは、ボク一人だけでした。音楽の試験は得意な楽器か歌を一曲演奏することです。ボクはもちろん歌に決まってます。

 ボクは張り切って歌いました。自分ながら上手く歌えたと思います。

「素晴らしかったよ。試験はこれまででOKなんだけど、もう一曲歌ってもらえないか?」

 試験官の先生の一人がこんなふうに褒めてくれました。ボクは歌うのが大好きなので何曲でも歌いますよ。でも怖そうな大人の人が三人もいる前で歌うのはちょっとだけ緊張します。


 奨学生試験には無事に合格しました。貴族様たちと一緒に初等学校へ通うことができるようになりました。

 入学式を控えてお父さんにいろいろ教えられました。お父さんもお母さんも貴族様に呼ばれてよく演奏しに行くので貴族様のことをよく知ってます。

「まわりは貴族様がほとんどだ。貴族でないお金持ちにしろ気位の高いやつらが多い。とにかく丁寧な言葉を使いなさい。

 そして相手のことを呼ぶときには、必ず様をつけるんだ」

「父さん、わかったよ」

「練習だから、学校だと思って言ってみなさい」

「父様、わかりました」

「うん、いいだろう」

 貴族様って面倒ですね。


 入学式では、奨学生試験で見かけた貴族様の女の子が新入生の代表でした。シャルロット様っていう名前のようです。やっぱりシャルロット様も奨学生試験に合格していたようです。一緒に行けたらいいなって密かに思ってたのでとても嬉しいです。

 シャルロット様は壇上で難しいあいさつを読んでました。あんな難しそうなあいさつを読むのは大変そうです。メロディがついていればどんな難しい言葉でも覚えちゃうんですけど。


 教室に入るとシャルロット様と隣の席でした。奨学生はボクとシャルロット様の二人だけみたいです。

 シャルロット様とお友だちになれないかってドキドキしながら考えていたら、シャルロット様の方から話しかけてくれました。

「ピエール、あらためてよろしくお願いしますね」

「シャルロット様、よろしくお願いします」

 ボクは慌てて挨拶しました。ちゃんと噛まずに言えてよかったです。


「えー、様ってのはやめましょうよ」

 思いもかけないことを言われてしまいました。どうしたらいいんでしょう。

 どうしたらいいか、わからなくてあれこれお話していたら、

「わたしはお友だちから、シャルロット様なんて呼ばれるのはイヤなんです」

 え、ボクのことをお友だちって言いましたよね。すごく嬉しいです。


「ぜひ、ボクとお友だちになってください…………シャルロット」

 貴族様を呼び捨てにしてしまいました。そうしろって言われたからなんですが、お怒りにならないでしょうか?

 貴族様の常識がわからないのでとても怖いです。

「わーい、じゃお友だちですね。わたしのことはね、お兄様は『シャル』って呼ぶからそれでもいいですよ」

 どうやら喜んでもらえたようでよかったです。

 呼び捨てと愛称となら、愛称のほうがドキドキが少ないかなって思います。愛称で呼ばせてもらうことにしました。


 初等学校の初日でシャルロット様……じゃなかったシャルとお友だちになれました。

 明日には是非シャルにボクの歌を聞いてもらいたいです。

 ボクの歌を気に入ってくれるかな?

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