12 魔法大学
特待生試験の翌日からまた熱を出しました。
本当にシャルロットの体は魔法使いの素質はバツグンなのに、ひ弱さのほうがどうしようもないのが困ったところです。
両親は小さい頃からいろんな医者に見せているのですが、ただひ弱なだけで特にどこも異常はないそうです。
成長と共にひ弱さは解消するだろうって言われてるんですが、わたしが自重なく魔力を増やしまくったせいで、成長のほうが極めてゆっくりです。
それでも最近は四歳児くらいには見えるようになってきたって言われてます。あまりうれしくないや。
数日後に特待生試験の結果が通知されました。もちろん合格です。
どうやら同期の合格者はもう一人。前世と同じくピエールが合格したようです。
仲良くなれるといいな。
熱も下がって元気になると、魔力検査のときに知り合ったオーレリアン教授のことが気になります。
「魔法大学のオレリアン教授のところへ行ってみたいの」
ってお母様におねだりしましたが、
「いきなり訪問しては先方にご迷惑です」
と怒られてしまいました。
「こういうときはどうしたらいいんですの?」
「まずお手紙を出して先方の予定を確かめて見るものです」
と教えてもらったので、さっそくオーレリアン教授にお手紙を書きました。
執事のレオポルドにお手紙を頼んで二日後、わたしの目の前に小鳥が飛んできました。
小鳥はわたしに向かって話し始めます。
「三日後の午後ならいつでも時間がとれますぞ。美味しいお菓子を用意して待ってますからの」
しわがれた声で小鳥がしゃべるのはなんか不気味です。
小鳥はわたしの目の前に止まったままですけど、もしかしてわたしのお返事を待ってるのかな?
「ありがとうございます。楽しみにしてますね」
わたしがそう言うと、小鳥は飛んでいきました。
あれでちゃんとお返事が伝わるんでしょうか?
お返事が来たことをお母様に伝えに行くと、
「三日後ですか。困りましたね、わたしは集まりがあるのでご一緒できそうにありません」
それは困りました。本当は一人でも大丈夫なんですが、幼児が一人で外出するとか許して貰えそうにはありません。
「どういたしましょう?」
わたしも困った様子をしていると、
「魔法大学ならわたしがご一緒しましょうか。従姉妹が通っていますので遊びにいったことがありますから」
メイドのベレニスがそう言ってくれた。
ベレニス、ナイス。
「ベレニスがこう言ってくれてますからお願いしましょうか。
シャルロットはこれから何度も行くことになりそうですの?」
「たぶん、そうなると思います」
「それなら、訪問日が決まったら都度ベレニスに伝えるようにしてください。
わたしとどちらかが付き添いますので調整いたします」
「はい、わかりました、お母様。
ベレニス、よろしくお願いします」
オーレリアン教授の部屋を尋ねると、ケーキと紅茶が用意してありました。
「わーい」
わたしはむしゃぶりつきます。
最近お母様は少しダイエットを始めたようで、おやつに甘いものがあまり出なくなったのです。
オーレリアン教授相手には最初から自重することはやめました。こっちの手のうちを全部出すことで、どんどん高度な魔法も教えてもらうことに。
「もう瞬間移動までできるとは驚いた。あれは空間魔法の中でもなかなか難しいものだと思うからの」
そうなんだ。そういえば高等学校で習ったけど、使えるようになった学生は一割くらいだったかも。
「瞬間移動が使えるのなら、アイテムボックスを覚えてもいいだろうな」
なにそれ! いろいろと原理を教えてもらったけどさすがにこれは難しそう。
「ぜんぜんできないや」
「そんな簡単にできやせん。練習あるのみじゃな」
「小鳥が飛んできてしゃべったのも魔法なの?」
「あぁそうじゃよ。あれは召喚魔法の応用じゃな」
「召喚魔法! やったことない、どんなの?」
「まずは小さな虫から召喚してみるといい。その原理はな……」
うわ、空間魔法より難しそう。イメージできそうにないや。
「召喚魔法は無詠唱は難しいかもしれんの。これは詠唱より、魔法陣を使うのがいいじゃろう」
「魔法陣ってよく知らないんです」
「魔法陣は魔法大学でも特別なコースでしか教えないからのぉ。ちょっと待っておれ」
わたしは紅茶をすすりながら、待っていると一冊の本を貸してくれた。
「この本をよく読んでおくといい。魔法陣について基本的なことがわかるであろう」
「ありがとうございます。お借りしてもいいの?」
「あぁ、返すのはいつでもよいぞ」
オーレリアン教授の話を聞いているのは楽しいので、あっという間に時間が経ってしまいました。
「本を読んで疑問に思うことがあればいつでも聞きにくるがいい」
「またお手紙書きますね」
「楽しみに待っておるぞ」
魔法陣とアイテムボックスの魔法。
なかなか面白そうな課題がもらえたよ。
初等学校入学までになんとかしたいな。
第一章 完