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第三章  第四十七話  商王国編47

騎士と兵士の訓練をする前に建物解体の仕事で活躍したり、その訓練でひと悶着あったりと、ある意味いつものごとく刺激的な毎日を過ごす霜葉たち。


新人騎士と兵士の訓練は好評だったので、王都滞在中に何度かやることとなった。特に新月たち兄弟と金剛一家の訓練は現役の騎士と兵士たちが楽しみにしていると言う。


ただ、予定の調整が難航しているらしく訓練から三日が過ぎたがお呼びがない。そんな霜葉たちは今日は建物の解体の依頼を受けた帰りだった。


『今日もみんな活躍したね~』

『あの仕事好きだよー!』

『私たちには簡単ですしね~』

『俺も力いっぱい体動かせる!』

『お兄ちゃんが一番楽しそうなの』

『寝るのには向かないけど・・・』

『ルナも楽しいの!』

『私たちも楽しくやれております』

『『『『楽しかった!』』』』


白夜と十六夜は解体した瓦礫の運びだし。新月たち兄弟は建物を壊す作業に活躍。ルナは作業中に子供などが入らないように空中から見張り。金剛一家は瓦礫の荷車へと運搬。


ここ三日は解体作業の依頼を受けて、ほとんど急ぎの解体現場は終わらせていた。解体作業の責任者は霜葉たちに大感謝していた。あとは余裕のある解体現場があるが、それについては霜葉たちが居なくても余裕で解体できると言う。


それにこの依頼で活躍したことで霜葉たちの働きぶりが噂になっている。そのせいでとある依頼を受けてくれないかという話がギルドに来ているらしい。


『今度は解体作業じゃなくて、建物を作る作業なんだけど・・・僕だけでも来てほしいってどういうことだろう?』

『ご主人もすごく活躍してたよ?』

『主が居るだけで解体作業が速いって喜んでいました』

『『『お兄さんもすごいんだよ!』』』

『パパもすごいの~!』


白夜たちはそう言い金剛一家もしっかりと頷いている。実際に霜葉は付与魔法術で作業員全員の強化をして作業スピードを速め、万が一けが人が出ても霜葉がその場で回復する。それ以外は子供が作業場に入ってきた場合に相手をしたりもした。


霜葉も解体作業に貢献しているのだ。特に霜葉が居るだけで作業員の作業スピードが上がることと万が一のための回復要員というのは馬鹿にできない。


霜葉は回復に対して対価を求めないのも理由の一つだろう。回復魔法術は魔法術の中でも貴重かつ有用でそれを持っている者は回復に法外な対価を要求することなどざらだ。


もちろん霜葉に回復してもらった者たちは対価を要求しないことを利用するようなことはない。むしろお礼として依頼料を上乗せしてくれるくらいだ。仮にそのような者が居ようものなら他の者たちにボコボコにされるであろう。


それほど、霜葉たちは王都の人たちに信頼されているのだ。もっとも・・・そんな言い人ばかりではないのが現実ではあるが・・・・


『ご主人・・・気を付けて』

『主・・・正面から嫌な音が複数近づいてきます』

『皆、いったん止まって様子を見よう』


現在、霜葉たちはボールト子爵の屋敷へと帰る途中だ。その道中に平民街と貴族街との境目である場所を通る。そこは貴族街に近いせいで平民がおいそれと住めない場所であり、貴族も住みたいとは考えない場所。


そのせいで空白地帯となりあまり人通りがない場所でもある。そのせいでごくたまに事件も起こる。霜葉たちを待ち伏せた者たちが居るように。


正面の暗がりから、多種多様な武器を持ったならず者と呼ぶべき外見の者たちがぞろぞろと現れた。さらにその最後尾には訓練でガンドールに殴られた新人騎士が居る。


「何か御用でしょうか?」

「へっへっへ、悪いな坊主? 後ろの貴族様からあんたが連れている魔物を殺してくれって頼まれてな?」

「かなりの大金をくれるんで、悪く思うなよ?」


こいつらは正気なのだろうか? 武器の持ち方や動きでも霜葉から見てもそれほど腕が立つとは思えない。何より霜葉たちに手を出せば、王都に居られなくなる。それほどの人気をすでに獲得している。


「あなたは正気なんですか?」

「ふん! そいつらとお前のせいで恥をかいたんだ! 貴族に恥をかかせたことを後悔しろ!」

「旦那、静かにした方がいいですぜ?」


かなり興奮しているらしく声を荒らげる貴族様。さすがにやっていることがことなので回りがそれとなく注意する。


「まぁ、そう言うわけだ。恨むのなら魔物使いになった自分を恨みな?」

「いえいえ、僕は魔物使いになってよかったと思ってますよ?」

「「「はぁ?」」」


こんな状況でも笑みを浮かべる霜葉。そんな様子にならず者たちは疑問を浮かべ・・・


「この子達にも会えましたし、この国でこの子達が活躍してくれたおかげで彼らが護衛してくれたんですから」


霜葉のこの言葉を合図にこの場にどこからともなく黒ずくめの一団が現れた。


「「「「なぁ!?」」」」

「な、なんだきさ」

「制圧開始」


その黒ずくめの一団は、一瞬でならず者たちと貴族様を制圧してしまった。ならず者たちはもっとも傷が浅い者で腕か足を浅く切られているが、重症者は腕と足を断ち切られている。さすがに貴族様は気絶したようだが。


「お見事です」

「いえ、もとはと言えばこの国の者がご迷惑をおかけしたこと。全く持って恥ずかしい限りです」


霜葉の言葉に黒ずくめのリーダーらしき者が答える。その声は女性なのか男性なのかは判断できないもので体のラインも黒い外套で隠されているので判断できない。


この一団は国王直属の非公式の騎士団と言うべきもので、今回の一件を察知して国王から霜葉を助けるように密命が下ったのだ。


本来なら秘密裏に事を運ぶはずだったが、白夜と十六夜に発見されたことで霜葉に事情を説明し、協力してもらうことに。


「では、あとのことはお任せしますね」

「はい、ではこれにて」


そう言って一団は即座にこの場を去った。血の跡などもなくして。霜葉たちは何事もなかったように帰路を歩く。



その後の展開は、霜葉を襲った貴族様のお家は家族そろって牢屋へと送らた。その家は取り潰しになり、血縁関係も今回の一見に協力した者たちは、まとめて罪に問われることに。


更には副ギルドマスターもならず者たちを用意したことが分かり、彼も牢屋へと送られることになった。貴族ではないので取り潰しになることはなかったが、財産はすべて国に没収されることに。


その過程で、交易品の横流しにかかわった書類を発見。すぐさま調査がなされ横流しの主犯格である貴族やそれにかかわった者たちを芋づる式に捕縛することになった。


さすがにこのような大事になったのですべてを片付けられたのは霜葉が商王国を去ってから数か月も経ってからになったが・・・・



そんなことになるとは知らずに今日も霜葉たちはギルドの依頼をこなすことに。何やらギルドが騒がしかったが、受付嬢は詳しくは話せないようで霜葉は気にはなるが、今日の依頼を優先することに。


今日の依頼は白夜たちにとってはうれしい孤児院のお手伝いだ。子供たちの遊び相手になればいいだけであり、霜葉たちにとってはご褒美と言っていい。


「一番大きな教会らしいから、いっぱい子供たちもいるみたいだよ?」

『『楽しみ!』』

『一緒に遊ぶの!』

『ルナも~』


白夜と十六夜に三日月、ルナは嬉しそうに返事をして他の子達もどことなく嬉しそうに歩いている。そんな霜葉たちに話しかける者が・・・


「おや、これはソウハ殿ではないか?」

「あれ? ガンドール様?」


なんとそれは一騎当千の強者のガンドールだった。休日なのか騎士甲冑ではなく貴族服でもなく質はいいがラフな格好ではあるが。


「このようなところで会うとは奇遇だな? 今日は何を?」

「この先の孤児院の子供たちの世話をしてほしいと言う依頼を受けたんですよ」

「なんと、目的地は一緒か」

「え? そうなんですか?」


目的地は一緒らしくそれならばと共に向かうことになった。


「ガンドール様は孤児院にどのような用事が?」

「なに、男の子らにちょっと稽古をつけてやっておるんだよ。実はな・・・そこの孤児院の責任者と若いころ縁があってな・・・」


なんでもガンドールは若いころはやんちゃで暴れていたらしいが、とある喧嘩で怪我を負い、当時の孤児院の関係者に治療をしてもらったと言う。


それからは妙に縁があり、ちょくちょく出会って最終的に彼女のおかげで人として成長できたと言う。その後は心を入れ替え、騎士団に入り、魔物相手に実戦を重ねて一騎当千の強者と呼ばれるようになったとの事。


「そんなことがあったんですか?」

「うむ。正直な話、彼女に出会わなければ今の私はいなかったであろうな。その恩返しというわけではないが、冒険者や兵士志望の男の子に稽古をつけてやったり、寄付などもしておる」

「そうなんですね・・・ん? 何やら言い争いが聞こえませんか?」

「む? 確かに。これは孤児院からか?」


二人が話しながら歩いていると目的地である孤児院から何やら言い争いの声が聞こえた。気になったので急いで向かうと・・・・


「何度来てもこちらの答えは変わりません。どうぞおかえりください」

「そのようなことを言っていいのかね? 我ら神聖教の協力を得ればもっと住みやすくなるのだぞ?」

「その住みやすいと言う意味が、今この孤児院に居る子たち全員に言えるのであれば、お断りしないのですがね?」

「何を言う。人間以外の者など救う意味などないわ。この世は人間のためにある。人間以外の生き物はこの世からいなくなれば良いのだ」


そこに居たのは歳をとっているが腰はまっすぐで目も鋭い女傑と言うべき女性で、彼女の前には白と金色に彩られた目に優しくない衣服と鎧を着こんだ一団だった。


「あれは何でしょうか?」

「神聖国の一団のようだ。なぜ奴らがこの王都に居るのだ?」


神聖国。霜葉にとって初めて遭遇する関係者だ。女王国の人から聞いてはいたが、実際に見るのは初めてだが、聞こえてきた内容から問題視されるのはわかると言う物だ。


「私もドワーフなので、ここで育ち今も子供たちを育てている身としては途中で投げ出すわけにはいきませんので」

「ふん! 人間以外の子らは野で育てればいいのだ! そもそも人間を人間以外が育てるなどと片腹痛い!」

「さっさとおかえりください。これ以上子供たちに要らぬ考えを聞かせたくないので」

「我らを愚弄するか!!」

「先に侮辱したのはそちらでしょうに」


言い争いだが、徐々に白と金色の一団に殺気が混じりだした。鎧を着こんでいる者たちは武器に手を近づけ始めた。


「これはまずいな・・・ソウハ殿」

「何か?」

「武器を持っていないか? 欲を言えばハンマーがいいが、大型武器なら何でもいい。あいにく今は武器を持っておらぬのだ」

「でしたらこれを」


ガンドールの要望に沿う武器を霜葉は取り出した。それはハンマーで打撃部分が左右に取り付けられたサイコロ状のシンプルな物だ。


「これは?」

「頑丈なだけの魔道具なんですが、この場では下手に持ち主を強化される魔道具よりはましかと」


このハンマー名を【巌塊のハンマー】と言い、魔道具としての能力は【耐久値大幅アップ】【破損耐性】【破損修復】という壊れにくいだけの武器だ。それを説明すると・・・


「ほう? そのような魔道具があったか。まぁ、今はよい。すまぬが借りる」

「どうぞ。僕たちは彼女と孤児院を守りますね」

「そうしてくれると助かる」


そう言って、ガンドールは歩いて白と金色の一団の後ろへと移動する。


「ごちゃごちゃと言わずにこちらの言う通りにすればいいのだ!」

「何を馬鹿なことを」

「馬鹿だと!! もう我慢できんお前たち! こうなれば力ずくで」

「力ずくで何をするつもりか?」


交渉?していた者がとうとう実力行使に出ようとした直後にガンドールは声を掛けた。その声に驚愕する一団と嬉しそうに笑みを浮かべる女性。


「あら? 来たのですねガンドール。そう言えは今日は男の子たちの稽古の日でしたか」

「はい。ここは私にお任せを」

「ガ、ガンドールだと!? 【破壊神】がなぜこんなところに!」

「それに答えても意味はないな。ところで私の疑問には答えてくれんのか?」


さすがに一騎当千の強者の出現に予想外だったらしく、困惑する一団。霜葉はそんな一団の隙に女性へと近づく。


「どうも。こんにちは」

「おや? こんにちは。噂の魔物使いさんですか?」

「はい。今日は孤児院の依頼を受けてきたのですが、途中でガンドール様と出会いまして。ここは僕とガンドール様にお任せください。あなたは念の為孤児院の中へ。連中の仲間が他に居ないとも限らないので」

「なるほど。わかりました」

「この子達も連れて行ってください。強いので子供たちを守ることが出来ますよ」


一団に聞こえないように声を小さくして話しながら、霜葉は金剛一家を女性の護衛にするために紹介する。


「お言葉に甘えます。これでも腕には自信がありますが、子供たちを守りながらだと不安ですから」

「モグ」

「「「「モグモ」」」」


女性と金剛一家は互いに一礼して、孤児院の中へと向かう。その直後に状況は動いた。


「お前たち! うろたえるな! 街中ならば【破壊神】は全力を出せん! 今が好機よ!!」


一団の代表者らしき先ほど女性と会話していた者が声を荒らげる。その声に反応して鎧を着こんだ者たちは武器を手にガンドール様へと向かうが・・・


「ふん。馬鹿めが」


その対応を鼻で笑うガンドール。さすがにその態度に腹を立てた一人が襲い掛かる。


「でぇりゃー!!」

「ふん!!」


だが、その瞬間にガンドールが下段から上段へと振ったハンマーでその者は冗談でも何でもなく宙を舞った。3mくらい。


そしてそのまま地面へと落ちて動かなくなった。痙攣はしているので生きてはいるのだろう。唖然とする一団に当のガンドールはというと・・・


「ほう? 手加減した攻撃とは言え私の攻撃に軋み一つ上げんとは・・・やはりいい魔道具だな」

「「「あれで手加減!?」」」


この一言にさらに驚愕する一団。一気に戦闘意欲がなくなり後ずさる残りのメンバー。


「何をしておるか! このような人間ではない者に後れを取るな!」

「実力は足りないんですから、もう帰ったらどうですか?」


言葉だけは偉そうな一団の代表に見ていた霜葉はたまらずにそう口にしたのだった。


「なんだ貴様は! 魔物なんぞ周りに侍らせおって!」

「この子達は僕の家族ですよ? 魔物使いなので」


霜葉が答えると一時の間を置いた後に気持ち悪い笑みを浮かべる。


「皆! あの魔物使いを人質にしろ!」


そう高らかに声を上げて、気付いた者たちが一斉に霜葉へと群がるが・・・


「グオォン!」

「ぎゃあ!?」

「ガァル!」

「あわわわ!」


一人は白夜に下半身を氷漬けにされ、十六夜に電撃を浴びせられる者も。ルナと新月たちはと言えば・・・


「ホー!」

「イテ! イテテテ!」

「ぐぅ!」

「まぁ!」

「ぐる!」

「「「ぐはぁ!!」」」


ルナに顔面をひっかかれるものや新月たちに吹っ飛ばされる者たちなど霜葉にたどり着ける者は皆無だった。


「なぁ!?」

「はっはっは! その者を甘く見たからだな」


そんな様子を一団の代表者は言葉をなくし、ガンドールは大笑いしていた。


「ふ、ふん! まだだ! まだ我らの同志が孤児院の子供らを人質に・・・」

「モグー!」

「「「「モグ―!!」」」」

「「「ぎゃあ!!!」」」


そんなセリフの途中で、孤児院の中から金剛一家に蹴飛ばされて出てくる男たち。やはり霜葉の危惧した通り他にも仲間がいたようだが、あっさりと金剛一家に撃退されたようだ。


「な、なんだと!?」

「悪党なら考えそうなことですね」

「抜け目がないな? ソウハ殿」


ガンドールは自身が吹っ飛ばした者を引きずって、霜葉の近くまでやってきていた。さらには周りにはこの様子を見ていた街の人々が殺気立っていた。


「なんだ貴様ら!?」

「武器持った奴らが居たから、近づけなかったんだよ」

「でも、そいつらは役に立たなくなったからな?」

「あんたたち! この国から出ていきな!」

「おう! さっきから聞いてたがむかつくことばかり言ってたからな!!」


今にも襲い掛かりそうな雰囲気を出す街の人々。それでも逃げ出さずにいた一団の代表だが、さすがにこの騒ぎに警備隊が駆けつけて、全員を捕まえることに。最後まで聞くに堪えないことを叫ぶ者がいたが、ガンドールが気絶させた。


「これ以上は耳が我慢できんわ」


そう言って警備隊に城へと連れて行くように指示を出していた。さすがに今回の一見は警備隊だけで片付けられるものではないようだ。


その後は街の人々から感謝され、孤児院の女性からも感謝の言葉をもらい事情を聴くために孤児院へと入ることに。

次回の更新は未定です。暑さがきつくなってきたので皆さま体調管理には十分に気を付けてください。

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