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第三章  第四十五話  商王国編45

商王国国王陛下との謁見が終わり、王宮の一室で和んでいると突然サイフォン国王が護衛であるガンドールとヘイルズ副団長を連れて訪ねてきた。


慌てた霜葉とボールト子爵を制して、ソファに座るサイフォン国王。その対面に霜葉とボールドは並ぶ。この場にやってきたのは国に多大な利益をもたらした霜葉へのお礼と謁見で無礼な態度と言葉を言った貴族たちの謝罪だった。


さすがに謝ったときはヘイルズ副団長とボールト子爵が慌てたが、サイフォン国王に論破され黙ることに。ガンドールだけは予想していたのか不動だった。


その後は霜葉に冒険者として依頼の話となり、話の内容は王都の農地開拓と兵士と騎士との魔物たちによる模擬戦だった。


報酬が破格だったこともあり、霜葉はこれを受けることに。冒険者ギルドには話を通してくれることになっており、明日に確認してほしいとのこと。その後国王は部屋を退出。霜葉とボールト子爵はいきなりの展開に疲れ早々に屋敷へと戻ることにした。


翌日。朝も疲れが残っていたが子爵邸の料理人の方々が、昨日の様子から朝も疲れが残ると予想して消化にいいリゾットを朝食に出してくれた。それらをゆっくりと噛みしめながら霜葉とボールト子爵は今日の予定を話す。


「ソウハ君は冒険者ギルドに行くのかい?」

「ええ、農業開拓の依頼は一日二日で終わるようなものではないので、早めに始めようと思います」

「なら、レンディを一緒に連れて行ってくれないかい?」

「レンディさんをですか?」

「昨日、あんなことがあったからね。冒険者ギルドの方でも何かあるんじゃないかと思うんだよ」

「あ~」


確かにボールトの懸念はもっともだ。冒険者ギルドの副ギルドマスターは交易品横流しの貴族たちの仲間である可能性が高い。そんな者が居るところに霜葉が訪れてはトラブルがあると言っているようなものだ。


「ギルドマスターが居れば問題ないとは思うのだが、かなり忙しい立場の人だからね。その国の首都にある冒険者ギルドの責任者はほとんどがその国のギルドの統括もしているから」

「そうなんですか?」

「まぁ、例外もいるみたいだが、おおむねそのようになっているはずだ」


なお、ここでいう例外とは首都に問題がなく他の町などで実力の確かな者が居たほうが何かと都合がいい場合のことを指す。冒険者も多く貴重な素材が多く手に入る辺境とかがいい例だ。


「そう言うことならレンディさん。よろしくお願いします」

「はい。ご同行させてもらいます」

「ちなみに他の予定は?」

「そうですね~農業開拓以外としては細々として依頼を片付けようかと。例えば古くなった家の解体作業とかですね」

「ダンジョンにはいかないのかい?」

「ここのダンジョンはどれも賑わっていますから、この子達が間違って攻撃されてもいけないので」


そう言って霜葉は料理を喜んで食べている白夜たちを見る。


「ふむ、その可能性はあるか」

「それに兵士と騎士の皆さんとの模擬戦もありますから。時間がかかるダンジョン探索は今回はやらない方がいいかと」


ボールトも納得し、その後は他愛無い雑談で食事を楽しむ。



その後、朝食終わりに小休止してから霜葉たちは冒険者ギルドへと向かうことに。道中は歩いて向かうつもりだったが、ボールトが首都でも有名な商人たちとの話し合いが行われると言って、冒険者ギルドまで片道だけだが送ってもらうことになった。


馬車に揺られること数分。霜葉たちは冒険者ギルドの前で降りることに。さすがに首都の冒険者ギルドだけあってかなり大きな建物だった。


「ではなソウハ君。レンディもよろしく頼む」

「送ってくれてありがとうございます」

「心得ております」


ボールトとも別れて、霜葉は白夜たちとレンディと共に冒険者ギルドに入る。入ってすぐに中に居る冒険者たちが霜葉とその周りにいる白夜たちを見て騒ぎ出す。


「ま、魔物だと?」

「あいつが貴重鉱物のゴーレムを発見したって言う魔物使いか?」

「あんな奴がか?」

「見たところ強そうには見えんが・・・」


こそこそと話をしている冒険者たちを無視して、霜葉は受付へと向かう。


「こんにちは」

「はい、初めまして。あなたが噂の魔物使いさんですか?」

「少なくとも僕以外の魔物使いさんには会ったことはありませんね」

「では、今日はどのようなご用件で?」

「今日僕あてに指名依頼が来ていると思うんですが?」

「指名依頼ですか? でしたら冒険者カードを提出してください」

「はい」


霜葉はポケットに手を入れそのままギルドカードをアイテムボックスから手の平に取り出す。あたかもポケットに最初からしまっていたように。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


そうして受付嬢がギルドカードを受け取り、何やら作業すると・・・


「はい、確認しました。農業開拓の指名依頼が確かにありますね。ですが、大丈夫ですか? この依頼はかなり苦労しますよ?」


受付嬢は小さめの男子くらいの身長しかない霜葉を心配する。


「大丈夫です。これまでに何度か別の町でやっていますし、この子達が主にやるので」

「え?」

「「「「「モグ!」」」」」


そう言って後ろに並んでいた金剛一家を受付嬢に見えるように移動する霜葉。そんな霜葉の言葉に任せろと言うように鳴き声を上げる金剛一家。


「ふむ? 何やら理解が追い付きませんがギルドカードには確かに同じ依頼を達成した記録がありますし、問題ないことは理解しました。頑張ってくださいね」

「ありがとうございます」


そう言って農業地区へと向かおうとするが・・・


「ちょっと待ってもらおうか!」


呼び止められてしまった。声がした方を向くとギルドの奥に見える階段から、何やら豪華な衣装とこれでもかと装飾品を付けた見るからに成金趣味の小太りの男が霜葉へと向かってくる。


『あの者が副ギルドマスターであるドリンガルです』


すぐそばで控えていたレンディが霜葉にだけ聞こえる音量で教えてくれた。


「ふん、お前が噂の魔物使いか」

「噂云々は知りませんが、魔物使いであることは確かです」

「お前以外の魔物使いはギルドにはおらんよ」

「そうなんですね。ところで何か御用ですか」

「その指名依頼だが、いろいろ腑に落ちんことがある。受けることは許さん」

「はい?」


ドリンガルは突然そんなことを口にする。これに疑問を浮かべる霜葉だが、他にもこの言葉に疑問を持つ者が居る。


「ドリンガル様? この指名依頼に何も問題にするところはありませんが? それにこの指名依頼は商王国の国王陛下直々の指名依頼ですよ? 一体何を理由にそんなことを言うんですか?」


先ほどまで受け付けをしていた受付嬢がドリンガルに対して疑問を投げかける。


「うるさいぞ。そんなことをいちいち説明する義務はない」

「いいえ、説明する義務はあります。この指名依頼は期限こそありませんが、国王陛下直々の依頼。依頼達成に時間がかかれば、冒険者とギルドの信用にかかわります。 そのような重要な依頼を副ギルドマスターであるあなたが受けるなという以上明確な理由を教えてもらいます」

「受付嬢ごときがわしに意見する気か!」

「私はただの一従業員ではなく、受付業務の責任者でもありますので。把握する責任がございます」


どうもこの受付嬢さんはそれなりに責任ある立場らしく、ギルドのナンバー2であるドリンガル相手でも臆さずに問題点をはっきりと口にした。もしかしたらこの受付嬢はナンバー3の可能性もあるが。


一方、突如として始まったトラブルを興味深そうに見ていた冒険者たちも雲行きが怪しくなったことを感じ取っていた。


「国王直々の指名依頼だとよ・・・」

「確かにそんなもんを受けるなというからにはそれ相応の理由がなくちゃな?」

「ていうか、国王の指名依頼を受けるななんて言って大丈夫なのか?」


冒険者たちもさすがに国王の指名依頼を副ギルドマスター程度の者が、受けるななどと言うことの意味を分かっていた。これがギルドマスターならまだよかったが、たかがナンバー2ごときが決めていい話ではないのだ。


「いいからわしの言う通りにすればいいのだ!!」

「でしたら、今日にでも国王陛下にそう言われたことを報告しますね?」

「・・・はぁ?」


ここで霜葉がドリンガルにとって無視できないことを口にした。受付嬢も詳しく聞くことに。


「どういうことですか?」

「昨日、国王陛下直々に指名依頼されたときにおっしゃられていました。『この指名依頼は今後の国家の行方にも左右されかねない重要な依頼だ。問題が起こった場合すぐさま報告してくれ。門番には話を通しておくので、ガンドールかヘイルズ副団長に話せば私の耳にも入るから』と言われたので」


霜葉の言葉に面白いように反応したのはドリンガルだった。顔面が蒼白になり、脂汗が顔からだらだらと流れている。聞いていた冒険者や受付嬢たちもドリンガルに対して冷ややかな視線を向ける。


「だそうですよドリンガル様? 国王陛下が納得される理由を言わないと最悪ギルド全体が責任を負わされますよ?」


特に受付業務の責任者だと言った受付嬢は、こめかみに青筋が浮かぶほどにらみつけていた。無理もない。霜葉が国王陛下に報告すればまず間違いなくギルドは責任を追及される。


そしてその場合、責任逃れのためにスケープゴートにされるのはドリンガル自身だ。まぁ、もともとはドリンガルの行動で起こったことなのでスケープゴートにされると言うよりは正しく責任を取らされるわけだが。


「き、急用を思い出した! これで失礼する!!」


そう言ってこの場から逃げ出すドリンガル。あまりに計画性のない妨害にあんなのが責任ある立場で大丈夫か心配になる霜葉だった。



そんなトラブルがあったが、霜葉たちは現在農業地区に向かっている。先ほどまでのトラブルは受付業務の責任者である女性が・・・


「此度のことは本当に申し訳ありません。この件はギルドマスターにも報告しますので、後日改めてお話しさせてください。今日は先ほどの指名依頼をお願いいたします」


と言われたので、農業地区に向かっていると言うわけだ。農業地区にはレンディの案内で向かっている。


「農業地区では主にイモ類などを育てておりますが、この王都は広く農業の土地も広々とした場所を確保しております」

「そうなんですね」

「ですが、ここ数年はイモ類でも育ちが悪く王都に住む住人も増えており、貴族の間でも農業地区の土地を住宅用に変えてはどうかという声も噂ではありますが耳にしております」


そのような事情があったから国王自ら霜葉たちに指名依頼を出したのかもしれない。その後は他愛無い会話をしながら進み農業地区へと辿り着いた。


そこでは今でも農作業をしている人々がいるのだが、これまでに霜葉たちが見てきた街の農業地区と比べてもかなり土の質が悪かった。


からかっらに乾いた大地に何とか力を振り絞り、鍬を突き立てて耕そうとする男たち。そんな男たちの一人が霜葉たちに気が付いた。


「おう、こんなところに人が来るとは珍しい。何か用かな?」

「初めまして。国王陛下の依頼でここの農地開拓をすることになった霜葉と言います」

「ああ、そう言えば兵士から聞いたな? しかしお前さんにできんのか?」


男はお世辞にも力自慢とは言えそうにない霜葉を見てそう言った。


「僕と言うよりこの子達がするんですよ」

「なに?」

「「「「「モグモ」」」」」


霜葉に促され前に出てお辞儀をする金剛一家。それを見た男はさらに困惑した。


「この子らは魔物か? 一体全体どういうことだ話が見えんぞ」

「まぁ、説明するよりは実際にやって見せたほうが速いです。みんなもいいかい?」

「モグ」

「「「「モグ!」」」」


金剛が霜葉にうなずき、残りの子らも任せろと言うように胸を張る。未だに混乱している男を置いて金剛一家は農地へと入り・・・


「「「「「モグモグ~!」」」」」


そのまま地面に潜り、耕し始めた。その速さはすさまじく一気に半分近くまで耕してしまった。これには混乱していた男も口を開けて驚き、成り行きを見ていたほかの農作業をしていた者たちも開いた口がふさがらなかった。


やがて、一画の農地をすべて耕して金剛一家は地面から出てきた。


「「「「「モグモ~」」」」」

「ご苦労様。どうでしょうか?」

「は!」


思考停止状態だった男と農作業していた者たちが慌てた様子で金剛一家が耕した一画に入り、土を確認する。


「マジかよ! あんなに硬かった土がこんなに柔らかくなってる!!」

「これならイモ類以外の野菜も育てることが出来るんじゃ!?」

「なんてこった! 俺らの3年分の仕事を一瞬でやってしまったぞ!!」


男たちは土の状態に驚き、歓喜した。この土の状態なら不作だったイモ類も十分に育てることが出来るし、他の野菜類も育てることが出来る。


「とりあえず、硬い農地は片っ端に耕した方がいいですか?」

「ぜひ頼む!! 耕した農地の方は俺たちが整える! その魔物たちにはとにかく硬い土を何とかしてほしい!!」

「わかりました。みんなもいいかい?」

「「「「「モグ!」」」」」


霜葉の確認に金剛一家は手を上げて答える。


「こりゃあ大仕事になるぞ! おめぇら! 手が空いている奴らを片っ端から呼んで来い! この土なら女子供でも作業ができる! とにかく数が必要だ!」

「「「「お、おう!!」」」」


そう言って農作業をしていた男たちは駆け出して行った。




それから九日間は霜葉たちは農業地区に足を運び、農地開拓に尽力した。金剛一家の実力はすさまじくわずか五日間ですべての農地を柔らかな土へと変えてしまった。


農作業者たちは大喜びで畑を整地し、イモ類や一部区画には実験のための野菜を植えて順調に育つかも行っている。


また、農作業には金剛一家だけではなく霜葉たちも活躍した。直接農作業に関係なくとも関係者が助かる形で尽力したのだ。


霜葉は付与魔法術で力が弱い女子供を強化して農作業の効率を上げ、ケガをした作業者を回復魔法術で治したりもした。


白夜は氷魔法術で氷塊を出し、農地用の水を確保。十六夜は大型の整地道具を引っ張って作業を助けた。


新月たち兄弟は農作業者たちが掘りだした大きな岩や石を撤去して、砕いた。ルナは上空から農地の状態を監視して作業に穴があれば知らせてくれた。


また、畑の整地作業に農作業関係者全員を動員したせいで小さな子供たちの相手をどうするか悩んでいたが、霜葉たちが交代で遊び相手になっていた。


そんなこんなで農地開拓は誰が見ても文句なしの立派な畑になった。これには農作業者たちは霜葉や金剛一家に大感謝していた。


冗談でも何でもなく彼らがしたことは農作業者たち八年分の仕事に匹敵するのだから。


とにかく霜葉たちの指名依頼は一つ片付いた。しばらく休んだのちもう一つの指名依頼をやることを霜葉は考えるのだった。

次回更新は未定です。

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