第三章 第三十九話 商王国編39
遅くなりましたが、なんとか更新できました。
雪山での依頼を終わらせて町へと帰還した霜葉たちだったが、町ではお世話になっている孤児院で問題が起こっていた。その問題はキールと言う子が調子に乗り、特別に許可をもらってダンジョンへ一階層だけ入っているのだが、早い話が天狗になっているのだ。
他のダンジョンへ入っている子供たちも含めて、戦闘訓練をしてくれた冒険者であるブルスたちパーティに孤児院の責任者であるミーナとリーザが相談した結果、彼らが口をそろえてひどいと言うありさまだった。そのことをキール本人に指摘しても、全く聞く耳を持たないほど。
結局、キールは今のままだと危険だと言うことでダンジョンへの出入りを禁止して、しばらくは戦闘訓練をさせることになったが翌日に冒険者ギルドで仕事を探していた霜葉にキールが決闘を申し込んだ。
理由は現在Ⅽランク冒険者である霜葉を倒せば自分が強いことを証明できると本人は言うのだが・・・結局は決闘を受けた霜葉に負けてしまう。キール本人のルール違反と言うおまけ付きで。
決闘が終わった直後の訓練所では、見ていた数少ない冒険者たちが霜葉の戦いぶりに感心していた。霜葉の戦い方は効率的でなおかつ無駄がないもので短剣使いの見本のような戦いぶりだった。
「なかなかの戦いだったな?」
「ああ、強いとかじゃなくうまい戦いだった」
「いいものが見れたが、同時に嫌なものも見ちまったな・・・」
霜葉は周りから感心されているが逆にキールは何をやってんだかっというような目を向けられている。戦い方も素人以下、自分より弱いと考えた霜葉に戦いを挑んでおいてあっけなくやられる。さらには決闘のルールを破ると言う暴挙。
これが冒険者であれば周りの信用を失うほどのことだ。キールはまだ正式な冒険者ではないが、それでもやってしまったことはこのままで済まされるようなものではない。
「いや~うまい戦い方だね? ソウハ君」
「あれ? ビーキスさん?」
「ギルドマスター見てたんですか?」
「ああ、この騒動を職員から聞いてね。それに結果次第ではやることがあると思ってね?」
そう言ってビーキスはこの結果にショックを受けてうつむいているキースに近づく。その顔は他人が見ても怒っていると表現できるほど厳しい物だった。
「キース君。今君がしたルール違反は冒険者なら周りの信用を失うほど重いもんだ。それを理解しているかね?」
「・・・はい」
力なく返事をするキース。さすがに感情で起こしたことではあるようだが、落ち着いた現在は事の重要性を理解できているようだ。
「君はまだ正式な冒険者ではないが、ダンジョンの探索を許されている以上冒険者ギルドとしては今回の一件は無視できるものではない。よってこれから二週間の間は君のダンジョン探索の資格をはく奪する」
「なぁ!」
キース本人は驚いているが、周りの冒険者たちは当然だなといった顔だ。それほどの事なのだ。
「君のことはこちらでも把握していたんだよ。格上である冒険者に食って掛かる態度にお粗末と言う言葉ですら表現できない戦闘。これらのことに加え今日のルール違反だ。さすがにこちらとしても無視できない」
「う・・・」
「さらに付け加えるならば、ソウハ君に決闘を挑んだこともその決闘内容もあまりにひどすぎる」
ここでビーキスは話の間を開けて、霜葉に視線を向けさらにブルスにも視線を向ける。
「冒険者には強さも重要だが、相手の強さを見極めることも大事だ。それがあれば不要な戦いを回避するのはもちろん、どう立ち回ればいいのかもおのずとわかる。無論、依頼によっては相手が強くとも戦わなくてはならない時はある。護衛依頼なんかがいい例だね? しかし、そういう場合のほとんどが相手に勝つ戦いではなく護衛対象を守る戦いだ」
ビーキスの言う通り、相手がこちらより強い場合は無理に攻める必要などない。むしろ、護衛対象を守るために慎重になる場合が多いだろう。
「その考えで言えば先ほどの君の戦い方は評価する以前の問題だ。ただ突撃するだけでは防御に集中した相手を倒すことなどあの戦い方をしている限り一生勝つことはできない」
数ある冒険者を見てきたであろうビーキスの言葉は実に重い言葉である。
「君は若いし経験不足だ。だからこそ先達であるブルスやソウハ君の言葉を聞いてこれからのために学んでほしい」
「・・・・はい」
さすがにビーキスに突っかかるような真似はしないらしく、うなだれたまま力なく声を絞り出した。だが、その後に霜葉を睨んでいるあたり霜葉を認めてはいないらしい。そんなキースにブルスとビーキスは肩を落とすのだった。
その後はキースに対して今日一日だけ追加の罰としてギルドの雑用をさせることになった。と言っても掃除やらギルドに併設されている酒場の皿洗い程度だが、体が成長期なキースにとってはこれだけでも重労働だ。
霜葉たちもダンジョンに行こうとしたが、ビーキスにある依頼をしてほしいと言われた。
「訓練をしている彼らと君の魔物たちと模擬戦をさせてほしい。人相手の模擬戦はいつでもできるが、魔物相手の模擬戦など君たちが居ないとできないからね?」
と言われ、依頼料などの話し合いをした結果で今日一日訓練して銀貨三枚となった。訓練は白夜たちは攻撃禁止で回避や防御のみ。訓練の子達も刃引きした訓練用の武器で急所の攻撃は禁止となった。
この訓練だが、意外と好評で昼過ぎからは低ランクの冒険者たちも参加しだした。やはり攻撃しない魔物と戦える機会などないので経験したいと言う冒険者たちがほとんどだった。
白夜と十六夜は近接武器の中で間合いが狭い武器持ちと訓練している。剣や斧とか短剣などだ。二人の魔物タイプである狼や虎はスピードがあり、近接武器を持つ冒険者はどう攻撃を当てるかを考えながら訓練していた。白夜や十六夜にとっては鬼ごっごに近いようだが。
「クォン!」
「ガァル!」
訓練相手の攻撃を時には紙一重でよけ、大ぶりの攻撃には大きく離れるように避けながら楽しそうにしていた。
新月たち兄弟はまだ冒険者ではない子供たちの訓練相手だ。熊の魔物はパワータイプで四本足や二本足で戦うこともある意外と芸達者な魔物だ。その為、子供たちは熊の魔物の力を体験してもらうために盾持ちの子や体格がいい子が相手をしている。
訓練はシンプルに力比べだ。盾を構えた子たちと新月たちの押し合い。変則的な相撲と言ってもよし。盾に前足を添えて新月たちが押し、子供たちは耐えて踏ん張ると言う実にわかりやすい訓練だ。
分かりやすいからこそ子供たちも熱中しやすいらしく、皆頑張って踏ん張っている。新月も楽しそうにしている。三日月と無月は新月が率先してやっているので交代要員として待機中。
「ぐぅ!」
「負けるかぁ!」
「まぁー!」
「ぐるぁ~」
足腰を鍛えるのなら結構理にかなった訓練だ。楽しんでやれているのならなおよし。
金剛一家は低ランク冒険者のパーティと連携訓練。実はここが一番訓練らしいことをやっている。相手の冒険者と同じ数だけ金剛一家もそろえて模擬戦をし、冒険者たちは金剛一家の見事な連携になかなか攻めきれない。
だが、金剛一家の連携はかなり参考になるらしく見学者たちや訓練を受けたい冒険者パーティが多い。順番に戦いながら金剛一家の動きを見てどう攻略するか話し合っている。ついでに言えば訓練の初めにちゃんとお辞儀をし、終わりにはお疲れさまと言いたげにお辞儀をする金剛一家の礼儀正しさに驚いていた。
「モグ」
「「「「モグ」」」」
「「「「「お願いします!」」」」」
「なぁ? これほんとに魔物との訓練か?」
「下手な冒険者より礼儀正しいよな・・・」
見学者の中からこんな声もあるほどだ。たいていの冒険者は粗野で粗忽者が多い。さらに悪いと平気で暴言を吐く者もいるし、一般の人がイメージする冒険者はそんなものだ。
以上が訓練風景だ。ルナに関しては訓練しようにもここではできることがないと判断されて、今回は出番がなかった。代わりに霜葉を独り占めできたので上機嫌だったが。
突発的に始まった霜葉たちの訓練は大盛況で終わった。ギルドでも予想以上に効果があったので依頼料も増額された。霜葉たちは依頼料である銀貨七枚を受け取り、今日はそのまま孤児院へ帰ることにした。
翌日。霜葉たちは改めてゴーレムダンジョンに足を踏み入れた。この町にいる間に最低でもカイロスたちを一回だけでも進化させたいと考えているからだ。
理由としてはこのダンジョンがかなりの広さで、大きなカイロスたちでも行動できるため。もう一つは次に行く商王国の王都にも4つほどダンジョンがあるが、ハズレと呼ばれるものはなく彼らのLv上げがしにくいため。
最後に霜葉は王都でのことが済んだら、この国を出ることを考えている。王に謁見する冒険者として注目されることともうすでに貴族の間で有名になっていることを考えるとこの国に居続けることは危険と判断したのだ。
そんなわけでカイロスたちの進化のチャンスはこの町に居る時だけなのだ。そして現在、霜葉たちは早々に5階層まで行きここでLv上げをすることに。
現在のハズレダンジョンでは利益を得られるようになっても訪れる者は増えていない。それどころか明らかに以前の一時的な増加よりも減っているのだ。
理由としてはここで一定以上の利益を得ようとするのならばそれ相応の実力か戦いの相性に左右されるからだ。ゴーレムには物理攻撃は打撃系の武器以外は効果がなく、魔法主体で攻めたほうが効率的だがその戦法にしてもミスリルゴーレムには通用しない。
もっと言えば利益で考えるとミスリルやアダマンタイトとのゴーレムが出る階層に行くよりもその前のゴールドやシルバーのゴーレムが出る場所で狩りができる実力があるのなら、そこで狩り続ければ利益は十分なのだ。
引き際を心得ている冒険者たちは金塊と銀塊を手に入れて帰ってしまう。現在のハズレダンジョンでミスリルとアダマンタイトを狙うのは霜葉たちのように利益以外の目的がある者や商人や貴族の直接依頼で挑戦する者くらいだ。もっとも後者の成果はあまりよろしくないらしいが。
そう言うわけでハズレダンジョンは確かな実力者たちしか価値ある素材を持ち帰れないダンジョンとして定着しつつある。この事実を考えギルドマスターのビーキスと領主であるボールトはハズレダンジョンを高ランクダンジョンとして認定しようと忙しくしている。
話を霜葉たちに戻すとしよう。現在の5階層では白夜と十六夜によれば人は霜葉以外いないとのこと。これ幸いと霜葉は階段を下りた直後の広間で【箱庭世界】へと帰り、北斗たちとカイロスたちを振り分けて挑ませることに。
ただ、組み決めをすることにした段階でちょっとした問題が浮上した。人数が多すぎるのである。現在の狩りの組み分けは四組で、それにカイロスたちトロールを組みこむとさすがに多くなりすぎて、ダンジョン内の狭い空間では戦闘に支障が出るのだ。
そんなわけで組み分けを新たに考えた結果、6組にすることに。まず北斗たちシルバーヴォルフを6人5組にして最後の組を5人に。そこへカイロスたちトロール組を3人一組にして振り分ける。子供が6人いるので大人二人に子供一人の組み合わせだ。6組なのはこれが理由だ。
そこに霜葉たちが加わる。内訳は霜葉にルナ。新月たち兄弟。ガウェイン。金剛一家。白夜と十六夜が一人ずつ組に加わる。霜葉から離れなかった白夜と十六夜がここで離れることを決断したのだ。
『僕たちも仲間を守るよ!』
『いつまでも主と一緒ではだめだと考えました』
進化したことで考え方に変化が起こったか、時間が彼らを成長させたかはわからない。だが、確かな成長を遂げたのは間違いない。そんな二人を霜葉は褒めた。
新月たちは一番数が少ない組に同行してもらい、ガウェインはカイロスと一緒に行動することに。組決めが終わり、狩りに出発する霜葉たち。
アイアンゴーレムとの戦闘は特に問題がなかった。カイロスたちが活躍したのだ。アイアンゴーレムの攻撃に怯むことなく肉薄し、動きを封じてその間に残りのアイアンゴーレムを全員がボコボコにする。傷ついてもホワイトトロールたちが回復してくれるので狩りの効率が上がったくらいだ。
そのままお昼まで戦いを重ねた結果、目的達成の時が来た。
《ホワイトトロールの群れすべてのLvMAXを確認。条件達成。【存在進化】の効果で進化を行えます。群れの進化は長の進化先が群れすべてに適用されます》
『お?』
『おお・・・コレが・・・』
丁度、お昼を食べるために合流するところでアナウンスが聞こえた。
『おめでとうカイロス。とりあえずはお昼を食べながら相談しようか?』
『モンダイない・・・楽しみだ・・・』
それから全員と合流して、【箱庭世界】で昼食を作って仲良くランチ。そのままカイロスたちの進化を実行する。
『じゃあ、やるよ?』
『お願いする・・・』
「カイロスの進化を実行します!」
《進化先を選択してください》
【ホワイトトロール】 選択肢 ⇒ 【セイントトロール】
【トロールウォーリアー】
【グラントロール】
【バスタートロール】
進化先は四つ。それぞれの詳細は・・・
【セイントトロール】
聖なる戦士の称号を経たトロール。すべての能力が向上しており、隙のない能力。
【トロールウォーリアー】
歴戦の戦士のごときトロール。戦闘能力特化なため、戦闘能力以外は弱い。
【グラントロール】
大地の加護を得たトロール。土魔法術を使い、防衛能力が高い。
【バスタートロール】
大型武器の扱いに長けたトロール。戦闘能力は高いが魔法術は壊滅的。
どれも強い。だが、全体的に強くなりそうなのは【セイントトロール】と【グラントロール】くらいだ。
他は特化していて今のカイロスたちには合いそうにない。とは言え、決めるのはカイロスたちだ。
『どれも強そうだけど、カイロスたちはどうする?』
『ミナト相談・・・する・・・』
その後は食事をしながらカイロスたちは話し合いを続けた。霜葉たちは彼らに任せて食事を終え片付けをしていた。やがて決断したカイロスが霜葉に伝える。
『長・・・俺たちは・・・【セイント】になりたい・・・』
『了解だよ。ちなみに選んだ理由は何だい?』
『回復は長の役に立ってる・・・それが強化すれば・・・モット役に立つ・・・』
自分たちの長所を伸ばす選択をしたようだ。霜葉は理由を聞いて笑顔になる。力を求めても彼らは霜葉たちの力になりたいと言ってくれたからだ。改めて彼らを仲間にしてよかったと思う霜葉だった。
『じゃあ、進化を行うよ』
『了解だ・・・』
「カイロスをセイントトロールに進化させます!」
霜葉の宣言直後にカイロスたちは光に包まれた。それがだんだんと弱まり収まった後には・・・
『へぇ~細かいところが変わったね?』
霜葉の言う通り全体的にはそれほど変化はない。3mのお相撲さん体型だ。しかし、腕や足は太くなり筋肉質になった。顔も優しげなぽっちゃり系お相撲さんだが、何となくいくつかの実戦を経験したかのようだ。
『これが進化か、凄まじいな・・・改めて仲間にしてくれたこと感謝します長』
『話し方はだいぶ慣れた感じだね? こっちこそ君たちのおかげで助かってるんだ。これからもよろしくね?』
『今まで以上に頑張る』
カイロスの言葉に進化の効果に驚いていたほかのトロールたちもしっかりと頷いている。そんな彼らの新たなステータスは・・・
名: カイロス
種族: 【セイントトロール♂Lv1/30】
スキル: 棍棒術Lv4 : 自己回復Lv7 : 回復魔法術Lv5
: 冷気耐性Lv6 : 体力強化・極 : 魔力強化Lv1
: 筋力強化Lv1 : 体術Lv1
詳細の通り全体的に強化されている。【魔力強化】を覚えたことで魔法術の効果は上がるし、【筋力強化】の効果で戦闘もより頼もしくなるだろう。【体術】も地味な効果ながら戦闘ではありがたい。
その後はカイロスたちの戦闘力の確認もかねてまた探索を行った。その結果はカイロスたちは単体でもアイアンゴーレムと互角に戦えるようになった。ただ、丸太棍棒は数回の戦闘で使用不能になってしまうが。
幸い丸太はいくつもストックがあるので作りさえすれば武器の心配はない。だが、さすがに何度も武具を作るよりは長く使えるしっかりとした武具が欲しいところだ。
『さすがに魔道具でカイロスたちが使えるのはないよね?』
『そうですな・・・難しいかと』
ガウェインでもこの問題を解決できるいい知恵はなかった。これからの旅での新しい発見に期待するしかないと結論して今日は早々にダンジョンから脱出することに。
翌日。霜葉は孤児院の子供たちに昼食を作っている。今日はギルドの仕事は受けずにみんなとのんびり過ごそうと考えたのだ。ダンジョン探索に出かけた子供たちと冒険者ギルドで罰を受けているキール以外の子達も仕事はお休みで霜葉の食事を心待ちにしていた。
このまま今日一日は穏やかな日で終わるかと思われたが・・・・
「ソウハはいるか!?」
突如として孤児院にブルスの声がけたたましい扉を開ける音とともに響いた。何事かと思い霜葉と孤児院の管理者であるミーナとリーザが向かう。
「どうしたんですか? ブルスさんそんなに慌てて?」
「何かあったんですか?」
「悪いが緊急事態だ! ソウハは俺と冒険者ギルドに来てくれ! 二人は子供たちを連れて領主様の屋敷に避難するんだ!」
避難と言う言葉に嫌でも緊急事態と言うことを理解された三人。詳しいくことを聞くのも惜しいらしいので言われた通りに行動する。途中までは一緒に行動することにして道すがら事情を聴くことに・・・
次回の更新も未定です。




