第三章 第三十七話 商王国編37
霜葉たちはギルドで受けた雪山の異常事態の調査及びその原因解明または排除の依頼を達成し、新たな仲間のホワイトトロール18人が仲間に加わり、久しぶりに町へと戻ってきた。
幸い町への門は人が空いており、並んでも短時間で霜葉たちの番になった。なお、霜葉たちを始めて見る商人たちが驚いていたが霜葉たちのことをよく知る他の商人や冒険者たちに安全だと説明されていた。
「おお? ソウハじゃないか。雪山の依頼は終わらせたのか?」
「はい。原因は排除したのでもう大丈夫かと」
「ほぉ~さすがだな。なら早いとこギルドに知らせてやってくれ」
ギルドカードも提出して、確認されて町へと入る霜葉たち。冒険者ギルドへ向かうがその道中に知り合いの住人や子供たちに声を掛けられて足を止める事態に。もはやお約束である。
と言っても住人たちは霜葉が依頼に行っていたことは把握している。そのため会話は短い内容で、子供たちも白夜たちと少しの間触れ合ってまた遊んでねーっと言って立ち去った。そんな感じで霜葉たちは意外と早く冒険者ギルドへと辿り着いた。
冒険者ギルドに入ると早速受付嬢が霜葉たちに気付き声を掛ける。
「ソウハさん! 雪山から戻ってきたんですね!」
「はい。原因も排除してきました」
そう言って霜葉は受付へと足を向ける。
「そうですか! よかった~雪山にも貴重な素材がありますからこの事態が長く続くのはいろいろなところで悪影響が出ますからね」
「お役に立てたのならよかったです。あ、それと今回の原因はフロストオーガキングが11体の群れを率いていたのが原因でした。群れは討伐しましたから」
「・・・はい? すいません・・・今、何と言いました?」
「フロストオーガキングが率いていた群れを倒したと言いましたが?」
「フ、フロストオーガキング~!!!」
ざわざわ!!!
受付嬢が叫ぶ前に冒険者たちは霜葉たちの言葉を聞こえて騒ぎ出していた。さらに聞こえていなかった冒険者たちも受付嬢の叫び声で気付き、冒険者ギルドはさらに騒がしくなる。
「マジかよ・・・キング種を【魔物使い】が倒した?」
「はったりじゃねえか?」
「それはないな。シルバーゴーレムとゴールドゴーレムの強さはオーガ種に匹敵する」
「確かにな・・・あの【魔物使い】はさらに上位の魔物の素材もギルドに提出してるし、倒せる実力はあるだろう」
「だ、だからってキング種は別だろう!」
そんな冒険者たちのが伝わったのだろう。2階からギルドマスターであるビーキスが降りてきた。
「なんの騒ぎだい? おお、ソウハ君。依頼は達成してくれたのか」
「そ、それなんですがギルドマスター。雪山の異常事態はフロストオーガキングが原因だったようです」
「な、なに!? それは大変だ! 急いで領主であるボールト様にも協力を」
「だ、大丈夫です! ソウハさんが言うには討伐したそうです・・・」
「・・・なに?」
受付嬢の言葉にビーキスは何を言われたのか理解できなかった。
「ソウハ君・・・・」
「はい?」
「彼女が言っているのは本当かね?」
「そうですよ? 証拠の死体も回収してあります。見せましょうか?」
「頼む」
そんなわけで受付嬢とビーキスと一緒に解体場へと向かう。その後ろからはぞろぞろと冒険者たちも付いてくる。話の真偽は確かめたいと思ったようだ。
いきなり大人数でやってきた者たちに解体場の職員は驚いたが、その後に霜葉がフロストオーガキングを群れごと倒したと言ってさらに驚愕。いや、何人かは信じておらず霜葉に対して疑いの目を向けている。
しかし、そんな目を向けた者たちも目の前に出現したフロストオーガキングの死体を見れば、信じないわけにはいかない。そしてそれはこの場に居る他の冒険者にも言えること。
「マジかよ・・・本当にオーガキングだぜ・・・」
「あれが? 確かにオーガよりも体つきがすごいとは思うが・・・」
「間違いない。以前オーガキングに率いられた群れの討伐を受けたことがある。そん時のキング種に瓜二つだ。フロストオーガの特徴がなければな。あの時は群れの規模が30を超えてたからかなりの大仕事だった」
「・・・ちなみに結果は?」
「・・・討伐にには成功したが、参加したCランク以上の冒険者総勢30名。騎士団45名だったが、冒険者は20名負傷してそのうちの8名は冒険者を続けることができなくなった。騎士団も5名の死者を出してたよ・・・」
その話を聞いた冒険者たちは絶句する。補足するならばオーガと言う魔物は群れを作る魔物の中では実力は上位に迫る。それこそゴブリンやオークが10体いても1体のオーガには勝つことは不可能に近いだろう。
「本当にフロストオーガキングだ・・・ソウハ君一体どうやって倒したんだ?」
「群れの規模は11体くらいでしたし群れから離れた個体を倒してさらに少なくして倒しました。それに奥の手の一つや二つくらいは用意していますよ?」
ビーキスの確認に対して霜葉はそう答えた。言うまでもなく報告をするための真っ赤な嘘だ。
「そうか・・・そう言うことなら詮索はこれ以上はしないよ。それと依頼の報酬だがこちらでも雪山の調査をしてからになる。すまないが確認はしておかないといけないからね」
「もっともな話です。僕は構いませんよ」
「ありがとう」
その後はキング種と群れ11体をギルドに買い取ってほしいと霜葉が伝えると、ビーキスや解体職員は大喜びだ。キング種の素材などめったに出回らないため、高値で取引される。
職員が解体を始めるので霜葉も協力しようとする。ただここで少し揉めることに。揉めると言っても険悪なことではなく解体職員が霜葉にも手伝ってもらうのは心苦しいとの事。
キング種と言う町を襲うかもしれない危険な魔物を倒してくれた相手に解体まで手伝ってもらうのはさすがにと言うことだ。とは言え、霜葉の解体の腕は確かな物でありキング種の素材の価値を上げるためにも手伝ってもらう方が断然いい。
結局は霜葉にキング種の解体を依頼として受けてもらうことで落ち着いた。報酬は金貨二枚。霜葉はもらいすぎじゃないかと考えたが、ビーキス曰く問題ないとのこと。キング種の素材の価値を考えたら安いくらいだ。霜葉に解体してもらえばさらに価値は上がるのだから。
解体はお昼を過ぎた頃には終わり、霜葉は冒険者ギルドを出ることに。解体職員はまだフロストオーガを解体していたが、霜葉の解体方法を見てある程度やり方を学んだらしく手際が良くなっていた。彼らもプロであるのだ。
解体所の片隅で丸くなっていた白夜たちに声を掛けて、受付で金貨二枚を受け取って霜葉たちは久しぶりに孤児院へと帰るため足を進める。
その道中は霜葉に声を掛ける人はいたが、引き留める真似はせずにスムーズに孤児院へと帰ってこれた。ただ、何やら孤児院の中で言い争っている声が聞こえる。孤児院の扉に近づくと・・・
「キール! 魔物が目の前に居ながら集中しないなんて死にたいのか!」
「うるさいな! 無事だったんだからいいだろう!」
「いいわけあるか! 一階層の魔物だったから無事だっただけだ! だが、冒険者を続けたいと言うなら今日のお前では命がいくつあっても足りないぞ! ついでに言えば武器の扱いだって以前見た時よりも悪かったぞ!」
「それでも倒せたんだ! つまりは俺が強いからだろ!」
「一階層の魔物だけ戦っている今の状況で自惚れるな! 今日お前が生きているのは相手の魔物が弱いからだ! お前が強いわけでも何でもない!」
言い争っているのはキールとブルスさんようだ。てっきり霜葉はキールとミーナさんがまた言い争っているかとおもった。そう言えばブルスさんたちがキール達肉ダンジョンの一階層で探索している子達に戦闘訓練していたとリーザから聞いたことを思い出した。
ついでにキール以外の子達が最近キールの様子がおかしく探索にも集中していないらしく、ブルスさんに相談すると言っていたことも思い出した。とりあえずは孤児院の中に入ることに。
「ただいま戻りました~」
「クォン」
「ガァル」
「まぁ!」
「「「「モグ!」」」」
霜葉のあいさつに続いて白夜、十六夜、三日月、黒玉、黄玉、天青、天藍たちがあいさつのために鳴き声を上げる。言い争っていた二人も霜葉に目を向けた。その二人の周りでは子供たちとミーナとリーザ。ブルスさんのパーティがいた。
「ん? ソウハか? 依頼から帰ってたのか?」
「はん! どうせ失敗して帰ってきたんだろう!」
「キール! また失礼なことを!」
キールは失礼なことを言ってミーナに怒られている。さすがの霜葉もここまで失礼なことを言うキールを無視してブルスさんに話しかけた。
「こんにちはブルスさん。お久しぶりですね?」
「ああ。最初に会ってから縁がなかったな? 俺たちは皮目当てにダンジョンに行ってたからな。戻ってきてからお前さんの活躍は聞いてるぞ?」
「まぁ、運良くって感じですよ」
「運があったとしても実力がなければ新発見の魔物を倒すことなんてできんさ」
などとブルスさんと他愛無い会話をしていると再びキールが噛みついた。
「はぁ! 魔物使いが実力者なわけないだろう! 何言ってんだよ」
「キール!!」
バチン!!
キールが失礼なことを言いきったら、ミーナがキールを引っ叩いた。コレにはその場に居る全員が驚いた。霜葉以外はミーナが子供に手を出すような人ではないと知っているから。霜葉はまさかミーナがビンタとは言え子供に手を出すとは思わなかったから。
「ミ、ミーナ姉?」
「あなたはいつからそんな子になったの! お世話になっている人に対しての失礼な言動! いい加減にしなさい!」
「だ、だって・・・魔物使いが冒険者なんてできるわけが・・・」
「いつからあなたは人を評価できようになったの! それにソウハ君は冒険者として今日までやってきてるのよ! この町の一つのダンジョンの一階層でしか戦闘をしないそんな狭い世界で強くなったつもりなの!」
「!!」
確かにミーナの言う通りだった。キールが戦えているのは一つの町のダンジョン限定でしかも一階層だけ。そんな狭い世界で自分は強いなどと自信を持つのははっきり言って滑稽でしかない。子供であれば微笑ましいと言えるかもしれないが、それで人様に迷惑をかけているのなら話は変わる。
「キール。ソウハ君に謝りなさい!」
「・・・ふん! やなこった!」
「キール!!」
「ミーナ姉がなんて言おうと魔物使いに謝るつもりは「ホー!!!」痛!!!」
キールが言い返す間になんとルナがキールに対して頭突きをした。いきなりのルナの行動に周りにいた者たちは驚いたがすぐに納得した。あれだけ失礼な言動をしていたら霜葉に懐いている彼らからしたら怒って当たり前だ。
ルナは頭突きをして一旦離れて再度突撃しようとしたが、二度目の頭突きは霜葉に捕まって不発に終わる。一応は手加減をしていたので霜葉でも捕まえられた。本気だったら爪でひっかいていたか魔法術を使っている。
「ルナ! さすがにダメだよ!」
「ホー!?!?」
『パパ放してー!?!?』っと言ってじたばた暴れるルナ。さすがにまずいと新月たちが霜葉からルナを受け取り抑えることに。
「まぁ!」
「ぐる」
「ぐぅ・・・」
『さすがにダメ~』『落ち着く』と言ってルナを宥める三日月と無月だが、新月だけは『気持ちはわかるけど・・・』っとルナと心情的には同じだった。ついでに言うとほかにも心情的に同じ者たちが居る。
「クォン!」
「ガァル!」
「モグ!」
白夜と十六夜の二人にそして珍しいことに金剛も怒っているようである。もっとも迫力満点な白夜と十六夜は怖いという感想だが、かわいい二頭身のモグラさんが怒っていても怖さはない。むしろ微笑ましいだけである。
「な、なんだよ・・・お前ら・・・」
「失礼なことを言っているからこの子たちも怒ったのよ!」
「ふ、ふん! いくら怒ろうが謝ったりするもんか!」
「キール!」
「ミーナ姉もこいつの味方するのかよ!」
「当り前ですよ。キールが悪いんですから」
さすがのリーザもキールの言動に対して怒っているようで姉を援護する。さらに言えば他の子供たちもキールに対して攻めるような視線を向けている。少なくともここにキールの味方はいないらしい。当たり前だが。
「ああ、そうかよ!? だったら勝手にしろよ!」
「待ちなさい! どこに行くの! まだ謝っていないわよ!」
「絶対謝るもんか!」
そう言ってキールは孤児院を飛び出してしまった。さすがにこの行動は想定外だったらしく皆その場に立ち尽くした。
「キール兄どうしたんだろう?」
「らしくないの・・・」
「ソウハ兄ちゃんのおかげでお肉以外も腹いっぱい食べられるのに・・・」
子供たちも初めて見るキールの行動に戸惑っているようだ。とりあえずミーナとリーザは子供たちを落ち着かせることに。その過程で二人は白夜たちに謝った。
「みんなもごめんなさいね? あの子が失礼なことを言って。大好きなソウハ君のことを馬鹿にされたら怒るよね・・・」
「ほらみんな? ミーナさんが謝ってくれたんだからちょっとは落ち着こうね?」
霜葉にもそう言われては白夜たちも反省しないわけにはいかず、ルナと心情が同じ者たちは落ち込んだ。
「クゥン・・・」
「ガァル・・・」
「ホ~・・・」
「ぐぅ・・・」
「モグ・・・」
先ほどとは打って変わりしゅんと元気をなくしたように肩を落とす面々。そんな彼らに対して子供たちが元気を出すように触れ合う。もっとも新月には声を掛けるだけだが。新月は触れ合いが好きではないのでこの場では気を使う子供たちである。
そのまま、子供たちと遊んでおいでと霜葉が許可を出して金剛とルナ以外は子供たちと外へと向かう。それから霜葉は何があったのかを聞くことに。
「今日ブルスさんたちにお願いして、子供たちのダンジョン探索に付いて行って貰ったの」
「最近キールがおかしいと同行していた子供たちが言うのでブルスさんに相談したら、まずはダンジョンでの戦闘を見たいと言いまして」
二人の言葉に霜葉はブルスさんたちパーティに視線を向け、話の先を促した。
「二人に相談されて子供たちに戦闘指導した以上、責任があると考えてまずはどうおかしいのか確認することにしたんだ」
「結果は相談してくれて正解だったわけだ」
「キールの奴は明らかに戦闘に集中していなかったからな」
「あいつの武器は槍なんだが、扱いすらひどくてな?」
「以前に教えたことを何も守ってない。今までうまくいっていたから調子にのっているのかもしれん」
Cランク冒険者パーティにここまで言わせるほどダメだったらしい。それから町へと帰還して、他の子供たちに助言を言い問題のキールを言い聞かせようとしたが・・・
最初は穏やかに間違いを指摘しつつどうすればいいのかを助言するつもりだったが、キール自身が「俺は強い」を繰り返すばかりでブルスさんたちの助言を聞こうとしない。
さすがのブルスさんもその態度に怒ってしまい、言い争いになった。その最中に霜葉が帰ってきたというわけだ。
「なるほど・・・ではどうしますか? このままではキールはもちろん他の子供たちも危ないと思いますが?」
「確かにな・・・今のキールは大失敗をしでかすのは時間の問題だ」
「どうするよ? リーダー」
「早急に解決すべきなのはわかるが、肝心の本人があれではな・・・」
周りが指摘したところで本人が聞く耳を持たないのではどうしようもない。その後の話し合いでキールだけしばらくの間は戦闘訓練をさせて、ダンジョンに入らせないことが決まった。これにはキールの保護者であるミーナさんも納得してブルスさんたちCランク冒険者が今のままでダンジョンに入るのは危険と判断したからだ。
当然キール本人は帰ってきてから猛反発したが、戦闘経験豊富なブルスさんたちの判断の方が確かであるため誰も耳を傾けなかった。このことが原因でキールはしばらく子供たちはもちろんミーナとリーザとも口を利かなくなるのだった。
次回の更新も未定です。




