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第三章  第三十三話  商王国編33

お待たせしました。

現在滞在中の町で、北の雪山で異常が発生している可能性があるらしくその調査と可能ならば原因の解明と排除を依頼された霜葉。早速、翌日に雪山に向かうとその麓には本来雪山の頂上付近に生息しているはずの魔物たちが多く居た。


確かにこれは異常事態だと、考えた霜葉は雪山に入るためその魔物たちを全戦力を投入して壊滅させた。乱戦になってしまいその戦闘では今後の課題が浮き彫りにもなったが、ともかく、霜葉たちは戦闘の疲れを癒すためにもその日は早めに就寝。明日雪山へと入ることにした。


そしてその翌日。朝飯にお肉大好き組のリクエストでフロストワイバーンの照り焼きを作り、食べながら霜葉はガウェイン、北斗、金剛と雪山探索の相談をしていた。


『雪山ではいつものメンバーにガウェインを加えて探索するよ』

『我々も探索に加わった方がよいのでは?』

『それはやめておこう。今の雪山ではフロストワイバーンでさえ住処を追われるような何かがいる。全員で手分けしたほうが早いだろうけど、現時点では不確定要素が大きすぎるね』

『わしも同意見です。それに北斗殿たちは雪山での戦闘経験はないはずでは? 雪の中で動くのは少々コツがいりますぞ?』

『確かに・・・主様にガウェイン殿、お心遣い感謝しますぞ』


その後も話し合いを続けた結果、雪山での活動はガウェイン以外初めてなのでそれに慣れるために雪山の麓をゆっくり調査することに決まった。霜葉も現在装備している防寒着を再度確認する。


全員が雪の中の行動に慣れてきたら、山頂付近を調査するために向かうことに。北斗たちも麓で雪の中での動き方を学ぶことになった。


方針を決めて朝食を食べ終えた後に多少の休憩を挟み、霜葉たちは【箱庭世界】を出て雪山の麓へと足を踏み入れる。


そして、早々に雪山の頂上付近を目指さなくて正解だと知ることに。この雪山はそこまで吹雪いておらず、雪も足首よりも上程度の積雪しかないが、慣れない雪に全員が動きにくくしていた。特に難儀をしていたのは新月だ。


『さ、寒い・・・』

『大丈夫? お兄ちゃん?』


現在、新月は寒さに耐えきれずに三日月に抱きかかえられている。もちろん退化した状態でだ。新月の現在の種族は【レッドスケイルベア】で本来なら火山地帯に生息している魔物だ。


そのせいで雪山の寒さに適応できずに仲間内では一番雪山がつらい。ちょくちょく退化しては三日月に抱っこしてもらい暖をとっている。なお、他の者たちは動きにくくしていても寒さには適応している。その中でも特に喜んでいるのは白夜だ。


『わ~い!』


雪で動きにくくなるどころか仲間内では一番の動きで雪山を駆け回っている。尻尾がはちきれんばかりに左右に揺れながら。白夜の場合は新月とは逆で寒いところはホームグラウンドだ。嬉しい誤算と言うやつだ。


『白夜はいいとして、新月は大丈夫かい?』

『な、なんとか・・・』

『無理しちゃいけないよ? 我慢できないようなら一度【箱庭世界】で焚火を起こしてしっかり暖を取ろうね?』

『わ、わかった。ありがとうお兄さん』


新月を気にしつつガウェインの指導の下で全員がなんとか雪山での動き方を覚え始めた。もっともガウェインが指導しているのは人型に近い北斗たちだけだが。他の者たちは各自の方法で雪山での動き方を模索している。


さすがのガウェインでも二足歩行のモグラさんや四足歩行の指導はできないのだ。しかし、彼らはもともとは野生の魔物。その場に対する適応力はなかなかであり、しばらくしたら動くのに支障がない程度には上達した。


『主殿。皆動けるようにはなりましたし、これ以上は実戦や山頂に行く過程で上達するでしょう。そろそろ調査に出発してもよいかと』

『ありがとうガウェイン。じゃあ、北斗たちは【箱庭世界】で待っててね? ただ、戦闘準備はしておいて。この先は何が待っているかわからないからね』

『心得ております』


お昼前になる前に調査に出発することができた霜葉たち。雪山を進む行程は順調そのものだった。なぜなら一切魔物に出会わないのだ。白夜と十六夜によればここらあたりには魔物はおらず、居たとしても隠れているとのこと。


『ほとんどの魔物が隠れているの?』

『そうだよご主人。全員が隠れてるよ』

『隠れるか雪山を降りたんでしょうね。多分』


もはやこの時点でかなりきな臭い。霜葉は全員により一層警戒するように念を押して、慎重に山頂を目指す。やがて、山頂にかなり近づいたところで事態は動いた。


『ご主人。近くで嫌なにおいがするよ』

『私も戦闘音を確認しました』

『二人とも、その場所に案内して』

『『わかった』』


二人の先導で山頂からは少し外れる。進んでいくうちに十六夜以外の耳にも何かを叩いている音が聞こえてきた。さらに進み視界に映ったのは5体ほどの青い肌の二本角を生やした大きな人型だった。肌のところどころには氷のような物体が張り付いている。


『あれは・・・フロストオーガですな』

『フロストオーガ?』


霜葉はガウェインの念話に首を傾げる。オーガはファンタジーゲームでは定番の魔物だ。でも、霜葉はまさか雪山で遭遇するとは思わなかった。


『オーガ種の一つでかなり好戦的な奴らです。もっともオーガ種そのものが血の気の多い魔物なのですが。フロストオーガは寒さに適応したオーガ種で雪山などに生息している魔物です。個体の戦闘力も高くそのうえ群れを作ります。キングが生まれることもありまして、もしそうなればゴブリンよりも厄介です』

『フロストオーガってフロストワイバーンよりも強いの?』

『普通ならばワイバーン種の方が強いですが、キングが生まれた場合は立場が逆転します。オーガ種は最低でも二桁の群れを作るのに対して、ワイバーン種は多くても5匹ですからな。キングの群れを強化する能力と数の暴力にはワイバーンでは太刀打ちできません。アイスドラゴンが居れば話は別ですが、この雪山にはいないようですな』


アイスドラゴンの名を聞いて詳しく聞きたくなった霜葉だが、それよりも先に白夜と十六夜があることに気付いた。


『ご主人。あの青いやつらが攻撃している子はいいにおいがするの!』

『いい音もします。主助けてあげましょう!』

『え?』


霜葉は二人の言葉にフロストオーガたちが攻撃している何かをかばって岩壁に両手をついて背を向けている大きな物体に気付いた。


『二人が言うなら、安全だと思うし皆! オーガたちを倒すよ!』


これまでの実績で白夜と十六夜がいい匂いといい音と言った以上安全なのは確定だと判断した霜葉。すぐさま金剛一家以外は駆け出した。金剛一家は霜葉の護衛である。寒さに耐えるため三日月に抱っこされていた新月も元の姿に戻り駆け出す。


最初にフロストオーガに接敵したのは雪をものともしない白夜だ。そのままスピードに乗って五体のフロストオーガの背中を爪で切り裂く!


「「「「「ギガァ!?」」」」」


いきなり背中を攻撃されたフロストオーガたちは後ろを振り向くが、攻撃した白夜はとっくにその場にはいない。代わりに自分たちに向かってくる十六夜達を目撃する。


「「「「「ギガァー!」」」」」


見た目通りに脳筋らしく、向かってくる十六夜達に怒りを込めて向かっていく。その隙に白夜が攻撃されていたであろう物体をかばうために姿を現す。


後ろに自分たちを攻撃した相手がいることに気付いていない。さらに言えば挟み撃ちにされているにもかかわらず、目の前の敵らしい存在のみに集中する。おつむが足りないと言うべきであろう。


そんなフロストオーガにまず先制攻撃したのは十六夜と飛んでいるルナだ。


「ガァア!」

「ホー!」


十六夜が雷魔法術の【スパークブリット】を複数放つ。これはLv8で覚えた魔法術であり、電気の球体を複数作り出し高速で相手に向かってゆく。かなり使い勝手がよく弾速も早いので十六夜のお気に入りとなっている。


ただ、さすがにオーガ種には貫通はせずにダメージのみだ。もっとも雷を受けたせいで動きは鈍り、2体ほどしびれて動けないようだ。そこへルナが放った闇魔法術の【ダークブリンガー】がオーガたちの中心の地面に刺さり闇の衝撃波を周りに放つ。


この【ダークブリンガー】もLv8で覚えた魔法術であり、大きな黒い大剣が上空から大地に落ちてそこを中心に闇の衝撃波を発生させる。発動してから落ちてくるまでが遅いが、威力が高く衝撃波の範囲が広いためルナのお気に入りとなっている。


闇の衝撃波を受けて雷で痺れていた2体は大きく吹き飛んだ。残りの三体は踏ん張って耐えたようだ。雪が足元に残る場で踏ん張れることからさすがは雪山に生息している魔物だ。


吹っ飛んだフロストオーガには新月たちが向かい、残りの三体は十六夜、ルナ、ガウェインが相手をする。オーガたちもそれぞれが別々に十六夜達に向かい、タイマンすることとなった。悪手以外の何物でもないのに。


まずはルナの戦いだが、これはすでに戦いとは言えないものだ。オーガに空を飛ぶ手段などないのにルナに勝てるはずがない。遠距離攻撃手段も持ち合わせていないようなので、ルナの闇魔法術の弾幕の前に倒れることに。


つぎに十六夜の方はと言えば、こちらも相手を翻弄し圧倒している。動きそのものは雪山に慣れているであろうフロストオーガに分があるのだろうがそもそもの地力が違う。十六夜が速すぎて相手の攻撃が当たらない。逆に十六夜の攻撃は当たる当たる。そのまま十六夜は無傷でフロストオーガを倒した。


最後にガウェインだが、こちらはようやくまともな戦いになっている。


「ギガァ!」

『ぬん!』


フロストオーガの大きな拳から繰り出されるパンチをガウェインは盾で受け止め、時には受け流して相手の攻撃後の隙に剣で攻撃を行っている。徐々に傷が増えてゆくフロストオーガ。それに恐怖でも感じたのか、後ろを向き逃げ出そうとしたときに。


『【ライトチェーン】!』


ガウェインが光魔法術のLv8で覚えた魔法術で拘束した。【ライトチェーン】は光輝く鎖が対象とした者の足下から出現して相手を拘束する魔法だ。攻撃魔術でもなく拘束力も弱いのであまり使える魔法ではない。魔法術師(・・・・)にとっては。


拘束されたフロストオーガはすぐに力ずくで鎖を引きちぎろうとしたが、その前にガウェインによって首を切られ、大量の血を流し絶命した。魔法術以外の攻撃手段を持つガウェインにとって相手を一時的にでも行動不能にするこの魔法術は相性がいいのだ。


ちなみに、残り二体のフロストオーガは・・・


「グゥー!」


寒さを感じないように激しく攻撃していた新月に殴り倒され・・・


「マァー!」

「グル!」


三日月のドロップキックによって仰向けに倒れた後に無月の【ロックジャベリン】によって体の中心を串刺しにされて絶命。フロストオーガを倒した後、全員が白夜のもとへと集まった。


『みんなお疲れ様、雪山での戦闘はどうだった?』

『問題ないよご主人!』

『私も大丈夫でしたよ主』

『俺も大丈夫。少しはあったかくなった・・・』

『私も~』

『俺も・・・』

『ルナも~!』

『私たちは戦闘はしていませんが、皆さんの戦いぶりを見ると問題なさそうですね』

『『『『次は頑張るの!』』』』


ガウェイン以外の皆に雪山での戦闘の感想を尋ねる霜葉。一番雪山に適応している白夜は問題ないとして、他の皆も特に違和感とかなく戦えたようだ。


『わしから見ても問題なく戦っておりました。あとは経験を積めばよいかと』

『わかったよ。あとは彼らだね』


ガウェインの意見を聞いて雪山での問題はなくなったと判断した霜葉。その後にフロストオーガたちが攻撃していた物体を、もとい魔物たちに視線を向けた。


大きな物体だと思ったものは三mに迫るほどの大きな魔物だった。体は相撲取りに酷似している。肌は真っ白であり、腰には大きな毛皮を巻いている。


そんな魔物と同じだが、小さくしたような魔物が2体その大きな魔物の陰から現れている。どうやら大きな魔物は彼らをフロストオーガからかばっていたようだ。フロストオーガからかなり攻撃されていたが、驚いたことに傷が少しづつ回復している。


そんな魔物たちの正体はガウェインが知っていた。


『ふむ。これは珍しいですな? ホワイトトロールです』

『トロール? 珍しいの?』


トロールと言えばファンタジーゲームやファンタジー小説などでは定番の魔物だ。だが、ほとんどの場合は結構な強敵として書かれている。まぁ、この世界のトロールは違うのかもしれないが。その答えはガウェインが語ってくれる。


『はい。トロール種は基本温厚な魔物です。もっとも、ブラックトロールやレッドトロールなどの好戦的な者たちもいますが、それ以外はこちらから攻撃しなければ敵対はしませんな。特にこのホワイトトロールはトロール種の中では特に無害です。基本戦いは狩りや自分たちの命が危ないとき以外はしません』

『へぇ~珍しい魔物だね? 戦闘力という点ではどうなの?』

『攻撃面では特出した能力はありませんが、防御面ではタフで自己回復能力もありますしホワイトトロールは回復魔法も使えます。私の知っている【魔物使い】でホワイトトロールを仲間にして町から町へと渡り歩く医療団をしていた者もいましたな』


大きさ的に町での生活ができなかったからとガウェインは付け加えた。そんな話をしている間に傷ついたホワイトトロールは傷が少なくなってきたところで、立ち上がり霜葉たちの方へ視線を向けて、軽く頭を下げた。


どうやら助けられたことへのお礼のようだ。そのままホワイトトロールたちは立ち去ろうとするのだが・・・


『ちょっと待ってくれないかな?』

『ム?』


霜葉は【思念会話】で大きなホワイトトロールに語り掛けた。


『コレは・・・オマエのコエ・・・か?』

『そうだよ。僕のスキルで魔物とも会話ができるんだよ』

『ソレは・・・スゴイ・・・』


ホワイトトロールの言葉はどこか片言に聞こえてくる。トロール種はこんな感じなのかと霜葉は疑問を覚えたが、聞き取りにくいわけではないので問題ないと判断。


『で・・・ナニカ用・・・か?』

『僕たちはこの雪山で何か異常が起きているらしいからその調査に来たんだけど、さっきのフロストオーガが原因じゃないかと思うんだよね。良ければ話を聞かせてくれないかな?』

『オーガたちを・・・タオシテくれる・・・のか?』

『それが原因なら倒すよ』


霜葉の言葉にホワイトトロールは少し沈黙してから・・・


『タスケテもらった・・・シンヨウする・・・ツイテ来てくれ・・・コノ子らをスミカにツレてゆきたい』

『うん、わかったよ。ありがとう』

『?・・・マモノにレイを・・・イウのか?・・・オカシナ人間・・・』


かくして霜葉たちはホワイトトロールの後をついてゆき話を聞くことに。しばらく進むと雪山の北側の海に面している方に結構大きな洞窟があった。どうやらここが住処らしい。


『モトモトは・・ベツの場所に・・・スミカがあったが・・・オーガたちに追いやられて・・・ここに逃げてきた』


そう説明されて、洞窟へと入る。すると待っていた別のホワイトトロールたちが小さな子たちを見て歓喜したが、すぐに霜葉たちを見て動揺した。


『このニンゲンは・・・ダイジョウブだ・・・タスケラレた』


と案内していたホワイトトロールが言うと一応落ち着いた。距離は離れているが。その時に一緒に居た子供のホワイトトロールと奥に居た子供たちのお腹が鳴った。どうもお腹がすいているようだ。


『もしかして食事取れてないの?』

『オーガたちを警戒して・・・カリなどに行けない・・・ナンニチも続いている』


それはつらい話だ。それを聞いた霜葉は・・・


『じゃあ、話を聞く前に僕が食料を提供するよ』

『ナニ?』

『ただ、お肉じゃなくて果物や野菜だけどね? 匂いでオーガたちがここに来るかもしれないし』

『ソレは・・・モンダイない・・・デモいいのか?』

『ただで話を聞くのも悪いしね。それに子供たちがお腹を空かせているのを黙っているのもね』

『・・・スマナイ・・・カンシャする』


そういうわけで、霜葉はアイテムボックス・極に入っている果物やお野菜を提供することに。いきなり目の前に出てきた大量の果物や野菜にホワイトトロールたちは驚くが、霜葉と会話していたホワイトトロールが説明すると、まずは子供たちが果物に群がった。


大人のホワイトトロールは霜葉たちに頭を下げている。やがて子供たちが果物を食べ始めて大人たちもお野菜を食べ始めた。どうも、ホワイトトロールたちは果物やお野菜などが好物らしく、お肉はたまに食べる程度らしい。


大量にあった果物やお野菜はすべてホワイトトロールたちの腹の中に納まった。子供たちは久しぶりにお腹いっぱいになりすぐに寝てしまった。それを大人たちが洞窟の奥へと運んでゆく。その際に霜葉たちに再び頭を下げている。なかなかに律儀な性格らしい。


『お腹はふくれたかい?』

『オカゲで・・・アリガトウ』

『どういたしまして。それと話を聞いてもいいかい?』

『モチロンだ・・・ショクリョウも・・・もらったしな・・・』


この雪山で何が起こったのか。語れることに・・・

次回更新は未定ですが、今年中にはあと二話くらいは更新しようと考えています。

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