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第三章  第十六話  商王国編16

霜葉達がジムキス様の街を旅立ち、次の街へ着いて早々にBランク冒険者であるダーキス、アルネア、ナーバァとトラブルになった。彼らは、魔物は倒すべき敵であり【魔物使い】などこの世から無くなればいいなどと暴論を口にして、白夜たちに剣を向けるのだった。


幸いその時はギルドマスターであるバリガン殿が仲裁をしてくれて事なきを得たが、ダーキスたちは街で白夜たちは危険な魔物だから近づかない様にと住人たちに呼びかけたのだ。しかし、その呼びかけをまともに聞く住人は皆無だった。と言うのも白夜たちが農地開拓や子供たちの世話などでとても役立ったことと白夜たちの人懐っこさと可愛さに住人達には危険だとはとても思えなかったのだ。


そんな住人達の態度にダーキスたちは声を荒らげて、トラブルが増えてきた。ちょうど農地開拓の活躍で領主の館に呼ばれた霜葉達は活躍のお礼を領主であるエリーナ・シュトルム様から直々に口してもらい、その時にダーキスたちのことも聞いたのだ。領主としても彼らの行動は目に余る物があるらしく、これ以上トラブルが起こるのなら冒険者ギルドに厳重に抗議した上で領主として厳しい罰を与えると言う。


霜葉はこの言葉で彼らに対する備えとしては十分と判断して、領主の館を出て泊まっている孤児院へと戻った。その後孤児院の管理者であるトグじいさんに明日からこの街にある不人気ダンジョンへ挑戦するためしばらく帰ってこられないと伝えた。子供たちは不満そうだったが、明日は朝早くに出発するために早めに寝た。


そして翌日。朝食を作り食べ終えた後に霜葉達は孤児院総出で見送られ、不人気ダンジョンへと向かう。子供たちは未練がましく白夜たちや金剛一家を抱きしめていたが、トグじいさんが拳骨を落とし邪魔をしたらいかん!と一喝して数人の子供たちは目に涙を浮かべながらの見送りとなった。


「ホ~♪」


そんな中ルナはご機嫌である。今日のルナは杖の上ではなく霜葉の肩に乗っている。以前の防具では進化したルナの力に耐えられず損傷してしまったので、この街に来る前に助けた冒険者グループのホワンたちに防具職人を紹介してもらい材料持ち込みで作ってもらったのだ。紹介の時にトラブルはあったが、紹介されたラヴァと言う職人は確かな腕で霜葉の新たな防具の革鎧とこの国で冒険者をするなら持っていた方がいいと防寒着も作ってくれた。


当のラヴァも霜葉の高い解体技術と【錬金術】で傷一つない最高品質の魔物素材で久しぶりにいい仕事が出来たと喜んでいた。ルナの今の力でも傷つかないこの防具のおかげでまた大好きな霜葉の肩に乗れてルナはご機嫌だった。上機嫌なルナの鳴き声を聞きながら霜葉達は不人気ダンジョンへとたどり着いた。


そこはジムキス様のダンジョンよりも立派な壁に囲まれ門も重厚な造りでかなり頑丈そうだった。その門番をしている兵士に霜葉は話しかける。


「おはようございます。ダンジョンに挑戦しに来ました」

「おお、おはよう。だが、ここは不人気ダンジョンだぞ?挑戦するならもう一つのダンジョンの方がいいんじゃないか?」

「ここでいいんです。それに人がいっぱいいるとこの子たちを攻撃する人が居そうで・・・」

「お?」


霜葉がそう言うと兵士は今気づいたらしく白夜たちに視線を向けた。


「ああ、お前さんが今話題の【魔物使い】なのか。確かに噂になっている通り可愛い子たちもいるな?」

「ぐぅ?」

「まぁ?」

「ぐる?」

「「「「「もぐ?」」」」」


可愛い子たちと言うくだりで新月たちと金剛一家に視線を向けていた。


「まぁ理由は分ったよ。確かにこの子たちを連れてちゃ間違って攻撃する奴も居そうだな?」

「ええ、可能性がある以上ここの様に人が少ない所が都合がいいんですよ」

「でも、ここはちょっときついぞ?実入りは蜘蛛糸だけでもそれなりだが、無理はするなよ?」

「はい。ありがとうございます」


そう言って霜葉は兵士にお礼を言って兵士はダンジョンカードを霜葉に渡して門を開けた。門の中には洞窟がありその入り口は階段状になっていた。


「ここは洞窟タイプだからな。もっとも2階層以降は知らないがな」


兵士に見送られ霜葉達は洞窟の階段を降りて行った。階段を降り切った場所は明かりが等間隔で灯っている部屋のような場所だった。霜葉達の正面に洞窟の通路が見えていた。


『じゃあ、とりあえず1階層は退化組は退化を解かずに。ガウェインと北斗は2階層から出すね?』

『『はーい!』』

『『『わかった』』』

『頑張る~!』

『承知』

『了解です』

『頑張りますぞ!』

『『『『おお~!』』』』


霜葉は現在の全戦力を出すのは2階層からに決めて、1階層は人がいる可能性を考えて白夜、十六夜、新月たち、ルナ、金剛一家だけで探索することに。白夜と十六夜を先頭に洞窟を進みだした。しばらくすると目の前からカサカサと音がし、その直後に現れたのは・・・


「うわ・・・確かにグロい・・・」


霜葉達の目の前には中型犬くらいの大きさのクモが居た。八本の足と胴体は黒く体毛がびっしりと生え、お尻は黒と黄色のしましま模様。なによりこちらを睨んでいる目と鋭い鋏角はかなりくるものがあるほどグロい。そんな蜘蛛が計三匹居るのだ。確かにこれは女性は嫌がるだろうし、男性でも嫌な人はいるだろう。


「とりあえず、普通に戦ってみようか?」


霜葉の言葉に白夜たちは頷き、まずは魔法術を使えるルナが先制で【ダークアロー】を放ち、一体を倒し残りの二体は白夜と十六夜の爪の攻撃であっという間に倒してしまった。


『ご主人!倒せた!』

『主!やりましたよ!』

『パパ~どうだった?』

『うん、三人ともご苦労様。かっこよかったよ?』


霜葉にそう言われて三人とも嬉しそうだった。しかしこの三人では過剰戦力であるようだ。


『三人は次の戦闘ではお休みね?新月たちと金剛一家にも戦わせてあげてね?』

『『『は~い』』』

『頑張る』

『強くなるの~!』

『やる・・・』

『皆、油断しない様に』

『『『『うん!』』』』


蜘蛛を倒したドロップ品である蜘蛛糸を回収したが、ご丁寧に棒に巻き付いた状態でドロップしていた。便利だと割り切ることにして先へと進む。何度かの分かれ道を進み、再度蜘蛛が今度は二匹で現れた。早速新月たちと金剛一家が戦うのだが・・・


「ぐぅ!?」

「「もぐ!?」」


最初に新月と黒玉、黄玉が蜘蛛がお尻から出した蜘蛛糸に絡まり身動きが取れなくなった。すぐさま三日月と金剛が爪で蜘蛛糸を切り救出した。しかし、戦闘を続けると何度も蜘蛛糸に新月たちと金剛一家の誰かが絡まり、それを助けると言う事態が起こったのだ。蜘蛛たちは何とか倒したが時間がかかり過ぎた。


これは蜘蛛が強いと言うよりは新月たちと金剛一家は白夜と十六夜やルナと比べると移動速度が遅いのが原因だろう。ましてや今の彼らは退化状態で本来の力を発揮できないのだから。


『面倒な相手だった』

『お兄ちゃんは避けることをしないからだよ?』

『攻撃が来ることは分りやすかった・・・』

『うぐ・・・』

『お前たちも避けるか爪で蜘蛛糸を切り裂くかすれば蜘蛛糸に絡まることもなかったはずだぞ?』

『『『『はい・・・』』』』


特に新月と黒玉、黄玉、天青、天藍が蜘蛛糸に捕まっていた。他の子たちは避けたり爪で蜘蛛糸を切り裂いたりしてうまく躱していた。新月の場合は本来の姿の【スケイルベアー】が避けるタイプではなく敵の攻撃を受けるゲームで言えばタンク型の戦いをしているのも避けられなかった原因だろう。実際、彼が本来の姿に戻っていれば力で蜘蛛糸を引き千切ることも可能だろうから。黒玉達の原因は単純に経験不足だろう。


『それじゃあ、1階層では新月たちと金剛一家が主に戦ってもらおうかな?経験不足を補うくらい戦ってみよう。新月はここで敵の攻撃を避けることも覚えようか?』

『わかったよお兄さん』

『ご配慮感謝いたします』


方針を決めて探索を再開。出てくる蜘蛛たちは新月たちと金剛一家が相手をする。ごくたまに天井を移動する蜘蛛たちが現れるが、それは白夜たちが魔法術で撃ち落として倒すことに。最初はぎこちなかった動きが戦闘を重ねることで徐々に良くなってゆく新月と黒玉たち。何度目かの戦闘では蜘蛛糸を躱し、躱せないと判断すると爪で蜘蛛糸を切り裂いていた。


『こっちの攻撃で相手の攻撃を無効化することもできるのか』

『『『『やっと慣れてきた~!』』』』

『上出来だよ皆。あと攻撃の種類によってはそう言うことができない類や似たような攻撃で無いと相殺できないなんてこともあるから見極めることも大事だよ?』

『なるほど。覚えとく』

『『『『勉強になる~!』』』』


新月たちが蜘蛛との戦いに慣れてきたところで2階層への階段を発見した。早速、階段を降りて2階層へと到達する。そこは1階層と変わらない洞窟であり左右に通路があった。ここではガウェインと北斗たちを呼び退化組も退化を解いて、別れて探索することに。ちなみに北斗たち半分のウェアウルフたちは弓矢を持っていた。ここに出てくる蜘蛛の出す糸に対抗して飛び道具があった方がいいと判断したようだ。


そしてその判断は正解だった。ガウェインと新月たちは右の通路へと向かい、霜葉たちと北斗と金剛一家が

左の通路を進むことに。それからすぐに蜘蛛と遭遇して戦闘になると弓矢を持ったウェアウルフたちが活躍した。蜘蛛たちを近づけることなく矢のみで倒したのだ。この結果に北斗たちはことのほか嬉しそうだった。


さらにガウェイン達の方でも弓矢を持ったウェアウルフたちが活躍して戦闘が楽であったと報告された。それとは別の報告もあったが。三体の蜘蛛が現れたのだが一体だけ同種ではなかったのだ。その蜘蛛は周りの蜘蛛よりも一回り大きく、体の色は白でものすごく目立っていたと言う。


『あれはシルクスパイダーですな』

『どんな魔物なの?』

『バインドスパイダーの上位種と呼ばれる魔物で、蜘蛛糸がかなり丈夫で伸縮性もあり捕まれば抜け出すことは難しいと言われております』

『厄介そうだね』

『ただ、その糸は肌触りも良く美しいのでわしの生前では貴族の女子たちに大変人気の素材でした。これを使って作られた花嫁衣装は美しく飛ぶように売れたとか』


実際にガウェイン達の倒したシルクスパイダーのドロップした蜘蛛糸は大変に美しく触るとなめらかな肌触りでウェアウルフたちがこれで布などを作りたいと話している。霜葉は便利なのなら大量に手に入れようと考えた。ちなみに今回のダンジョン探索ではウェアウルフたちは手作りの背負い袋を持参していた。以前のダンジョンでは手に入る物が大きかったので役に立たなかったが、今回は役に立つだろうと大量に作っていたのだ。


これのおかげで霜葉が態々素材を回収に行く手間が省かれたので、ダンジョン探索に集中できる。その後に霜葉達の目の前にもシルクスパイダーが現れて、北斗たちと金剛一家で戦ってみた。結果は北斗たちの勝利だ。シルクスパイダーの蜘蛛糸は金剛たちでも切り裂けなかったので魔法術での遠距離攻撃で戦った。勝利した後金剛の爪に絡まっていた蜘蛛糸は消えたので助かった。


とりあえず北斗たちと金剛一家でも戦えるので次の分かれ道で別れて探索することに。その後は3階層に降りる階段を探して探索をしながらシルクスパイダーを見つけては倒して蜘蛛糸は順調に溜まりだした。御昼前になり休憩もかねて一度【箱庭世界】へと集まり、昼飯を作ることに。その間になぜか裁縫スキルを持っていたウェアウルフたちがシルクスパイダーの蜘蛛糸で太めの糸を編み、その糸を使い簡単な布を作った。


そうしたら素晴らしい肌触りでウェアウルフたちは霜葉にこの素材を私たちにも分けてくれないかと相談した。霜葉はもちろん許可を出してウェアウルフたちは喜ぶと同時にシルクスパイダーを倒すために矢と矢筒の量産を始めた。北斗は群れの様子に苦笑して霜葉にお礼を言った。


『主様。許可していただきありがとうございます』

『これくらいならお安い御用だよ。と言うかもっと欲しい物が有ったら遠慮なく言ってね?』

『それでしたらご相談があります』

『なんだい?』

『実は何人かの同胞が子供を宿しておるようなのです』

『え!?本当!?』

『はい。我々は匂いでそう言うのが分かるのです。今はまだ動けますが近々安静にする必要があるのでダンジョン探索へは参加できません』

『そう言うことなら、北斗たち全員で見守った方がいいんじゃない?』

『た、確かにそうですが、主様の手伝いを優先したく・・・』

『そんな大事な時に僕のことを優先するのはよくないよ?なら僕から指示を出すよ。生まれる時期が来たら北斗たち全員で手伝い見守り祝福してあげること!群れが増えるんだから群れの長として責任を果たしなさい』

『主様・・・ありがとうございます!』


北斗は霜葉の言葉に感謝して頭を深く下げた。その後、昼食時に北斗たちに新しい子供が増えると全員に報告がされた。全員が北斗たちと子供を宿したウェアウルフたちとその夫を祝福した。主である霜葉や仲間たちに祝福されて子供を宿したウェアウルフたちは嬉しくて涙を流しながら霜葉に感謝していた。強くなり新たな子を宿せたのは霜葉のおかげだと。生まれてくる子供ともどもこれからも主様を助けると固く心に誓って。


それから北斗から出産のためにシルクスパイダーの布はかなりの数が欲しいと相談を受けて、全員がシルクスパイダーを狩るのに意欲を燃やした。昼食後に全員がダンジョン探索へ向かうことに。妊娠中のウェアウルフたちには無理をしないこと、体に少しでも違和感を覚えたらすぐに知らせることを条件に探索を許可した。心配性と言ってしまうのは簡単だが、これが霜葉と言う人間である。心配されているウェアウルフたちは不謹慎であると承知しているが嬉しい気持ちだった。


探索は全員が3階層の階段を探しつつ、シルクスパイダーが現れたら確実に倒して行った。なぜ3階層への階段探しを優先しているかと言うと、3階層ならシルクスパイダーが多い可能性があるからだ。そんな考えがあり階段を探しているとガウェイン達が発見したと連絡してきた。霜葉はすぐさま全員を迎えに行き、3階層の階段を降りることに。


階段を降り切った場所は同じく洞窟で今度は三方向に通路が分かれていた。まずガウェイン達を呼び彼らは左側に、次に新月たちに付いて行くウェアウルフたちを呼び彼らは右側の通路を進む。残った目の前の通路は霜葉達と北斗と金剛一家たちが進み分かれ道を見つけたら別れることに。しばらく進むとシルクスパイダーを含めた蜘蛛たちが現れた。


これらは白夜たちのグループが協力して戦い撃破した。その直後に他のグループからも連絡があり、どうやら3階層ではシルクスパイダーが必ず現れるようだ。霜葉達はこれに歓喜し予定を変更して3階層を探索してシルクスパイダーを狩りまくることに。4階層に行く階段は早くに見つけたが、降りることはせずに霜葉達は残り一日の時間をシルクスパイダーの討伐に費やすのだった。


その結果、翌日には大量に確保されたシルクスパイダーの蜘蛛糸が【箱庭世界】で山積みになっていた。ざっと見ても3桁はあるか、下手すると4桁はあるのかもしれない。


「頑張り過ぎちゃったかな?」


山盛りに積まれた素材を見て霜葉はそんな風に思った。しかし、他の皆はそうは思わずウェアウルフたちはせっせとタオルやら服などを作っているし、他の面々は霜葉の呟いた言葉に首を傾げている。


『まぁ、足りないよりはいいではないですか』

『余れば、主様が自由にお使いくだされ』

『うん。二人ともありがとう。そうするね』


ガウェインと北斗の言葉にそう答えて、霜葉は半分の蜘蛛糸をアイテムボックスに仕舞った。ある程度は売ることにして残りは必要なら言うようにと作業中のウェアウルフたちに伝えた。今日からウェアウルフたちはダンジョン探索をお休みして出産に備えることにすると北斗から報告があった。なんでも魔物の子供の成長は早く近々生まれるとのこと。生まれて五日も過ごせば立ち上がり戦えるようにもなるらしい。


ある意味においてそれは当然のことだった。この世界では魔物たちの生き方は野生動物よりも苛酷だ。強さにはスキルで格差が開き、人間にも命を狙われる事すらあるのに悠長に成長を待っていては生き残れない。その結果、成長の速さと言う手段を獲得しなければ生き残れなかったのだろう。


そんな考えが脳裏に浮かんだ霜葉。しかし、今はそんなことは関係が無いとも同時に考えた。彼らは今は自分の仲間なのだから。ともかく北斗たちは暫くダンジョン探索はできないので霜葉達は久しぶりに北斗たちを除いた主戦力で探索を行うことに。早速、霜葉達は4階層へと降りる。


4階層へ降りた霜葉達は全員唖然としていた。てっきり霜葉達は4階層も洞窟の中を進むものだと思っていたのだが、その予想は間違っていたのだ。4階層に広がっていた光景は・・・


「森だね?」


そう森なのだ。しかも立派な樹が至る所に生えている場所で、森と言うよりも樹海と言った方がいいかもしれない。それほどの密度だった。しかも、天井にはご丁寧に空と太陽までもが浮かんでいた。一瞬ダンジョンから出たのかと疑う霜葉だったが、後ろにはちゃんと降りてきた階段が不自然に存在していた。間違いなくダンジョンの中である。


『ほう。二つのタイプが一緒に存在しているダンジョンだったのですな。これは珍しい』

『ガウェイン、この状況が分かるの?』

『はい。そもそもダンジョンの基本は洞窟タイプなら最後の階層まで洞窟。砂漠タイプなら最後まで砂漠と言う風に一貫性があるのです。ところが極まれにこのように一つのダンジョンの中にいくつものタイプが形成される場合があるのです。そう言うダンジョンには珍しい魔物が生息していたり、有用な魔道具が生成されている場合がありますぞ』


先へ進むと他のタイプになっている場合があると考えた方がいいともガウェインは付け足していた。


『ダンジョンって本当に不思議なんだね?』

『主殿。ここの探索はこれまで以上にお気を付けくだされ』

『え?』

『これまでに主殿が経験したダンジョンでは特定の種類の魔物しか出現しませんでしたが、このような広い空間ではこの場所だけの生態系が構築されております。場合によっては未知の魔物が出てくることもあるのです。白夜たちもここでは前後左右はもちろん上空や地中も警戒してくれ』


ガウェインの言葉に霜葉達は気を緩めていたのを引き締め直した。それを確認した後にこれまでと違った陣形で進むことに。ガウェインの経験をもとに攻撃と防御のバランスがいい新月が先頭を進み、その左右を素早く動ける白夜と十六夜が。三人の後ろを援護が出来、守る対象である霜葉の位置にしてその頭上はルナが飛んで守り、霜葉の後ろは金剛一家が固めた。そして一団の殿は防御能力が高いガウェインと三日月が。無月は遊撃として一団の隣を歩いている。


この陣形で樹海を進むことになった。進むごとにこの樹海は素材の宝庫であることが分かった。薬草や魔力草は豊富に生えているし、樹にはおいしそうな果物が生っているし、他にも【箱庭世界】でウェアウルフたちが加工している木材や植物などが生えているのだ。


霜葉は白夜たちに見張りをお願いしていくつかを採取した。ダンジョンから出たら冒険者ギルドに報告するためだ。採取を時々行いながら樹海を進む霜葉達。そんな時に白夜と十六夜が立ち止まり前方を睨みつけた。


「グォォ~」

「ガル~」

『二人とも何か見つけたの?』

『目の前の樹の上に嫌な匂いがする!』

『いやな音もです!』


二人がそう言うので樹の上に視線を向けるとそこにはかなりの大きさのカブトムシとクワガタムシが居た。


『あれは、ホーンアーマービートルにスタッグアーマービートルです。どちらも硬く攻撃力があるので気を付けてくだされ!』


ガウェインが注意喚起を行うのと同時に二匹の魔物は霜葉達に襲い掛かった。二匹はまず先頭に居る新月に攻撃するために角を向けて突撃し、鋏を大きく開き向かってくる。


「グゥ!」


そんな二匹に新月は爪を連続で振るい迎え撃った。その攻撃は見事に相手に当たり空中に居たため派手に吹き飛ばすことに成功した。しかし、吹き飛び樹に激突した二匹は何事もなかったかのように再び飛翔して突撃してきた。


「クオ~ン!」

「ガァ~!」


今度は白夜と十六夜が魔法術の【アイスボール】と【サンダーボール】を放った。この攻撃でホーンアーマービートルは氷漬けになり、スタッグアーマービートルは感電して動かなくなり次の瞬間には角と鋏と甲殻を残して消えた。


『新月、攻撃した手応えはどうだった?』

『かなり固かった。ほとんど効いてないと思う』

『なら無理に接近戦を挑まずに魔法術が使える子たちで攻撃した方がいいね?』

『『わかった!』』

『頑張るの~!』

『任せて・・・』

『それがいいでしょうな』

『お任せあれ』

『『『『任せてください!』』』』


4階層の最初の戦いを経験して霜葉達はさらに注意深く進むのだった。

次回更新は12/25日予定。

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