第三章 第十五話 商王国編15
霜葉達は新たな商王国の街へとたどり着き、その街に行く途中で冒険者たちを助けて彼らの案内で冒険者ギルドに到着したが、早々にBランク冒険者のダーキス、アルネア、ナーバァと騒動になる。騒動の理由は彼らが白夜たちを倒そうとしたことと白夜たちを庇うために霜葉が割って入り【魔物使い】だと明かすが、彼らはそれを暴論で否定し刃を向け続けたことだ。
幸いギルドマスターのバリガン殿が仲裁してくれたおかげで騒動は収まったが、霜葉はこの街に居る間はダーキスたちを要注意人物として気を付けることに。それから、霜葉達が助けたDランク冒険者のホワン、ヴァン、ザァガ、イーサ、エイダに彼らと交流のある防具職人を助けたお礼に紹介してもらうことに。
その防具職人であるラヴァと言う人物は、ホワンたちの話をろくに聞かないまま霜葉を【魔物使い】だからロクな素材を持っていないと決めつけて防具は作らないと言い切った。それに対してトラブルに巻き込まれたばかりの霜葉は頭にきてラヴァにラージ種であるデーモンスコーピオンの甲殻を見せ、売ってくれと言ってきたラヴァの言葉を速攻で断った。それに対してラヴァは己の行いをすぐに土下座で謝罪。それを見て溜飲の下がった霜葉は早速防具の依頼をすることに。
「いや、本当にすまんかったのう。お主を見くびっておったわい。わしも見る目がまだまだじゃわい」
「その話はもう終わりにしましょう。それよりも作ってもらいたい防具の話をしましょう」
「わかった。何か要望があるのかのう?」
土下座から立ち上がり職人の顔で依頼者からの言葉に耳を傾けるラヴァ。それに対して霜葉は作ってほしい防具の概要を話す。
「僕は後衛の魔法術師の戦い方ですので、防具は革鎧で。それと肩を保護する部分はかなり頑丈にしてください」
「それはなぜじゃ?」
「杖の上に止まっているこの子を肩にも止まらせてあげたいんですよ。ですが、今の防具ではこの子の力に耐えられなくて」
「ホー」
「ふむ、理由は分った。それならこの甲殻で補強をすればかなり頑丈になるじゃろうの。わしとしてもいろいろやってみたいしの。しかし・・・その鳥は羽が綺麗じゃなぁ~」
「ホ~♪」
防具の案をすぐに口にしたラヴァは霜葉の持っている杖に止まっているルナを見てその美しさに見惚れた。ルナも褒められて嬉しそうだ。
「それと、今僕が持っている魔物素材でこの国で冒険者をするなら作っておいた方がいい物があればお願いしたいです」
「わかった。すまんがお主が持っている魔物素材をすべて出してくれんか?」
「量がかなり多いですよ?」
「それなら、一種類づつ出してくれ。数よりもどんな素材を持っているかを確認したい」
「わかりました」
そうして霜葉は白夜たちと一緒に今まで倒してきた魔物素材を出した。その種類は・・・
メイルスコルピオン、サンドスネーク、アイアンタートル
ギガントリザード、アースシザー、テイルモンキー
メイルリザード、サンドウルフ、ロックリザード
ブラックイーグル、ギガントタートルの計11種類だ。素材を簡単に確認しているラヴァは上機嫌だ。
「いやはや、どれもこれも状態がいいな!品質では過去に例を見ないほど最高品質だ!」
「すごいな・・・こんなに倒したのか」
「もう実力的にはBランク冒険者クラスなんじゃ?」
「アースシザーなんて初めて見たわ・・・」
ホワンたちもこれだけの魔物素材を見たのは初めてなので圧倒されている。
「これらの素材を使った場合、どんな防具があれば便利でしょうか?」
「そうだな・・・テイルモンキーの尻尾を使って防寒着は作っといた方がいいかもしれないな」
「防寒着ですか?」
「ここ商王国は山と荒野とでは寒暖差が激しいからな。時々寒い所に住んでいる魔物が降りてくる場合があるし、雪山へ向かう必要がある依頼なんかもたまにあるんじゃ。その依頼のために後衛は防寒着を持っとる」
「確かに私たちも作ってもらったわね?」
「前に雪山から降りてきた魔物を討伐した時は助かった」
「俺達も革鎧の裏に温かい毛皮が付いている物を装備して行ったな」
「あれは助かった。あの魔物たち冷気纏ってたから近づくと寒かったからな~」
ホワンたちは身に覚えがあるらしくうんうんと頷いていた。それを見た霜葉も作ってもらった方がいいかと考えた。
「ギガントリザードの皮でフード付のローブを作り、その裏にテイルモンキーの尻尾を縫えばかなり上等な防寒着が作れるぞ?」
「ではそれでお願いします」
「了解した!腕が鳴るわい!」
「おいくらくらいになりますか?」
「注文は肩部分を補強した革鎧に防寒着じゃな?全部で金貨4枚と銀貨8枚と言ったところじゃが、ちと相談がある」
「なんでしょう?」
「これらの素材を買い取りたい。注文の金額はそれで帳消しにはさすがにならんか。わしがまだ払わんといかんわい」
「いいですよ」
そう言うことになったので相談した結果、霜葉が持つ魔物素材を買えるだけ買いたいと言うので半分以上も買い取り合計金額は金貨7枚と銀貨6枚に銅貨8枚と鉄貨5枚になった。ホワンたちはラヴァにそんなに払って大丈夫かと心配したが・・・
「これだけの品質の素材を目の前にして手を出さん職人なんぞおらんぞ!こんなチャンスは滅多にないからのう!心配するなら作った防具を買ってくれ!ちなみに代金は最低でも金貨三枚にはなるぞ」
「「「「「高!?」」」」」
心配していたので買ってあげようかと思ったホワンたちだが、金額を聞いてどうしようかと本気で悩みだした。ラヴァの腕は知っているしそろそろホワンたち前衛組の防具が修復不可能なくらいに痛み出したので買い換えたいが、値段が高すぎる。結局しばらくは金策をすることになったが。
「作り終わるのはだいたい十日後だ。それ以降にまた訪ねてくれ」
「わかりました」
そう言ってラヴァは作業場があるのだろう部屋へと買い取った素材を持ち込んで行った。霜葉たちとホワンたちは邪魔したらまずいので店を出ることに。
「職人の紹介も済んだし、ソウハはこれからどうするんだ?」
「今日の宿のために孤児院を探しますよ」
「なんで孤児院?」
「僕にはこの子たちが居ますから、宿屋には泊まりづらいんですよ。店側が許可しても客の中に難色を示す人がいるかもしれませんし」
「ああ、なるほどね」
「そう言うことなら俺達が案内してやるよ」
「いえ、そこまでしてもらうのは・・・」
「構わないよ。俺たち四人はこの街の孤児院出身なんだ。それに俺達は孤児院の隣の空き家を購入していてな?帰り道だから気にしないでくれ」
そう言うので案内を頼むことにした霜葉。彼らの案内で孤児院にたどり着くとそこは古びた教会だった。なんでもここは神聖教の教会だったが唯一居た神官さんが亡くなり、そのまま放置されていたのをとあるおじいさんが買い取り孤児院にしたのだと言う。おじいさんは親を亡くした子供たちを積極的に引き取り育てて簡単な読み書きや計算を教えて、伝手のある防具職人や商人の所にお手伝いに行かせている。
また、おじいさんは元冒険者であり戦い方の基礎なら教えられるので冒険者になりたい子供たちには戦い方を教えていると言う。ホワン、ヴァン、ザァガ、イーサもそのおじいさんに基礎は教わった。冒険者になった現在も孤児院の隣の空き家を全員で購入して時々手伝っているんだとか。
「ラヴァさんと違って優しいから、ソウハも泊めてくれるよ」
そう言ってホワンは孤児院へと入った。ちょうど掃除道具を持って外に出ようとしていたおじいさんに出くわした。
「おお、ホワンじゃないか。また手伝いに来てくれたんか?」
「こんにちはトグじいさん。今日はちょっと頼みたいことがあってね」
「うむ、なら少し待っておれ。まん前を掃除してくるからの」
「あ、手伝います」
「私も」
そう言ってトグじいさんと呼ばれたご老人はイーサとエイダを連れて孤児院を出た。その後は霜葉たちと孤児院の中で待っていたが、子供たちが白夜たちに興味津々で遠巻きに見つめてくる。近づかないのは白夜と十六夜が怖いためか。しかし、そこは子供であるため何人かの子供が白夜たちに思い切って近づき撫でると嬉しそうに鳴き声を上げる。それからは子供たちが思い思いに白夜たちに触れ合う場となってしまった。
「すごいもふもふ~」
「え~ふわふわだよ~」
「きれいだね~」
「クオン♪」
「ガァル♪」
白夜と十六夜の体毛の触感を堪能する子供たちに。
「まぁ~」
「「「かわいい~」」」
「ぐぅ!」
「ぐる!」
「「「まって~」」」
三日月を可愛がる子供たちに撫でられたくないので逃げる新月とその新月に付き合っている無月を追い駆ける子供たち。
「もぐ!」
「「「「もぐも!」」」」
「「きゃきゃ♪」」
「うふふ。この子たちったら」
「よっぽど彼らが気に入ったのね」
一番小さな子供である赤ちゃんたちを抱いている女性と言ってもいい年長の子たちを手伝っている金剛一家。初めて見る人間の赤ん坊が珍しいのだろう。そんな子らを見ながらホワンたちは子供たちの世話をしている顔見知りである年長の男性二人と話し合っていた。
「あの赤ん坊は?」
「母親が風邪で寝込んでいるからうつさない様にしばらく預かることにしたんだ。医者が言うには二、三日で回復するってさ」
「父親は仕事で世話ができないし、かと言って仕事を休むと栄養がある食事を母親に食べさせることができないから、トグじいさんがならばしばらく家で預かろうって提案したんだ」
「トグじいさんらしいな」
「まぁ、うちなら遊び相手と世話する人手はいるからな。食事に関しては二、三日分なら何とかなるし」
「そうだな」
「ところで、今さらだがあの魔物たちはなんなんだ?ガキどもの遊び相手をしてくれるのは助かるけど」
男性は白夜たちのことを訪ねた。それに対してホワンたちはトグじいさんが帰ってきたら説明するよと答えて彼の帰りを待った。男性も害がないし子供たちが楽しそうだからいいかと説明を待つことに。やがて、掃除を終えた三人が帰ってきてトグじいさんと男性に赤ん坊を抱いている女性二人に霜葉と白夜たちを泊めてくれないかとお願いした。
「もちろん、お金も払いますし何でしたら食料も提供しますよ?」
「なら、お金より食料を貰いたい。たまにはこの子たちにお腹いっぱい食べさせてやりたいのだ」
「わかりました」
トグじいさんの要求を受け入れた霜葉。聞いていた子供たちも喜んでいる。そろそろ夕飯時なので早速霜葉は、ギガントリザードのお肉を提供して料理を始めた。女性二人とイーサとエイダも手伝ってくれた。メニューは肉野菜炒めを甘辛く味付することに。できた料理を子供たちは嬉しそうに食べていたが、何人かの子供たちは肉だけでいいのにと呟いたら、トグじいさんに説教された。
「いいかお前たち。この料理はソウハのおかげで今日口にできるんだぞ。私たちからしたら久しぶりのまともな料理だ。それなのに肉だけでいいなどとそんな恩知らずなセリフを口にするなど恥を知れ!」
と言っていたので霜葉はホワンたちに彼らは普段何を口にしているのかと聞いてみた所、基本は芋類だそうだ。料理方法が焼くか蒸すかしかないため不人気な芋類は店で残りやすいとのこと。それでも貴重な食料には違いないので孤児院では助かっているが、やはり飽きてしまうようだ。
そんな話を聞いたのでここでもフライドポテトやポテトチップスを教えようと決めた霜葉だった。その後は霜葉が泊まる部屋を全員できれいに掃除しようとしたが、霜葉が【エリアクリーン】であっという間に綺麗にしてしまった。それを見たトグじいさんが子供たちにも【クリーン】を掛けてくれないかと、頼んできたので早速行動に移すことに。
ホワンたちも含めた全員が体を綺麗にでき、とても喜んでいた。何人かの子供たちなどすでに舟をこいでいる。一番喜んでいたのは女性陣だが。とにかく寝付きそうな子たちを部屋へと送り、今日はそのまま寝ることに。ホワンたちも住処に帰って行った。
翌朝。霜葉達は目覚めて朝食を作っている。白夜たちは子供たちと遊んでいる。ちなみにホワンたちも一緒に食べるとのこと。依頼で街に居ない時以外は食事は一緒に食べているらしい。時々依頼で倒した魔物のお肉をお土産にしているとか。朝なので簡単なスープと芋類を蒸して、潰した後に小判形に形を整えハンバーグの様に焼いた物を出した。味付けはハーブと塩だけだったが、この芋のハンバーグ風が子供たちには好評でまた作ってとリクエストされた。
朝食を終え、食器の片づけは子供たちと協力して終わらせてから霜葉たちとホワンたちは冒険者ギルドへと向かう。何人かの子供たちは白夜たちともっと遊ぶ~と不満げだったが、トグじいさんや年長の子たちにわがまま言わないと怒られていた。ギルドに着いて霜葉達は早速、昨日バリガン殿に言われた農地開拓の依頼を受けることに。
ホワンたちにはかなりの重労働だと心配されたが、金剛一家がそう言うのは得意だと説明して一応の理解を得られた。依頼者の下へ行き、農地へ案内された場所を金剛一家が穴掘りをして柔らかい大地へと早変わり。この結果に案内をした男性は顎が外れるのではと言うくらい驚いていた。
それから霜葉達は日々の冒険者の依頼は主に農地開拓の仕事をして、時々街の周辺の魔物討伐をしながら過ごした。農地開拓では金剛一家以外も活躍し、白夜は氷魔法術で氷を出して農地用のまき水確保に。十六夜は馬以上の力で広範囲を耕せる道具を引っ張る。新月たちは土から出てきた大きな岩の撤去に。
おかげで街の人たちからはすっかり人気者になった。孤児院以外の子供たちが農地開拓の休憩中に遊びに来るくらいだ。ただ、この状況を快く思わない者たちも居た。Bランク冒険者のダーキスたちだ。ダーキスたちは街の人々に白夜たちは危険な魔物だから近づかない様にと呼びかけているのだが、白夜たちの活躍のおかげでその声に耳を傾ける者たちは皆無だった。
むしろ、彼らに対して何を言っているのかと言う態度なのだ。霜葉が【魔物使い】だと言うことは街の人たちほとんどが知っているし、白夜たちの人懐っこさと可愛さで危険だとはとても考えられない。むしろ、子供たちの遊び相手にもなってくれてすごく助かっているのだ。
そんな街の人々の態度にダーキスたちはなぜ理解しないのかと声を荒らげることが多くなり、トラブルが多くなった。冒険者ギルドもさすがにBランク冒険者が騒動を起こしているので無視するわけにはいかず、再三注意をしているが、聞く耳を持たない。霜葉達の評判はうなぎのぼり。逆にダーキスたちの評判はダダ下がりの状況なのだ。
そんな状況が十日以上続いた。今日霜葉達は頼んでいた防具の受け取りにラヴァの店に来ていた。店に入ってきた霜葉たちをラヴァは上機嫌で迎え入れた。
「オウ!よく来た!頼まれた防具はできてるぞ!微調整する必要があるかもしれんから、着てみてくれんか?」
「わかりました」
そう言ってラヴァは店の奥から革鎧とフード付のローブを持ってきた。革鎧の方は所々に黒い鉄板のような物で補強がされていた。特に両肩部分が頑丈そうだ。フード付ローブの方は色的には黄土色でパッと見は特に目立ったところのないローブだが内側には暖かそうなモコモコの毛がびっしりだった。霜葉は鑑定をして見た。
【ギガントリザードの革鎧】
品質の高いギガントリザードの皮を一流の職人が革鎧に仕立てた逸品。ラージ種であるデーモンスコーピオンの甲殻を急所や肩の補強に使っているため革鎧とは思えないほど頑丈。適正価格、金貨八枚
【ギガントリザードの革製防寒着】
品質の高いギガントリザードの皮を一流の職人が防寒着へと仕立てた逸品。テイルモンキーの尻尾を裏側に縫ってあるので見た目以上に温かい。適正価格、金貨六枚
これまでで一番適正価格が高い。それほどの価値の物を着込むことに若干緊張しながら革鎧を装備して、動きやすさを確かめる。
「どうじゃ?どこか動かしにくい所はないか?」
「すごく動きやすいですよ。まるでなにも着ていないみたいです」
「そうかそうか。次は防寒着じゃ革鎧の上に着込んでも大丈夫なはずじゃ」
早速霜葉は防寒着を着てみる。若干動かしにくくなったがそれ以上に温かいのがとても心地よい。肌触りもいいので霜葉は満足している。
「少し動かしにくいですが、これもいいですね」
「まぁ、さすがにの。前衛なら問題じゃが後衛なら許容範囲じゃろう?」
「そうですね。ありがとうございます」
「礼を言うのはわしの方じゃ!久しぶりに満足できる物が作れた。職人としてこれほどうれしいことは無い!」
そう言いラヴァは実にいい笑顔で誇らしげだった。その後は霜葉から買い取った他の魔物素材で防具を作りたいと早々に作業部屋へと戻った。霜葉はこの後街の領主の屋敷に呼ばれているので店を出て向った。
街の奥にある屋敷へと着いた霜葉は門番さんに用件を伝えるとすぐに屋敷からメイドさんが出迎えてくれて彼女の案内で屋敷へと入り客室へ通された。それからメイドさんが淹れてくれたお茶を飲みながら待っていると、部屋に二人の女性が入ってきた。
「あれ?あなたは」
「久しぶりだな?君たちの活躍は耳にしているぞ」
この街へと入る前に出会った女性騎士と再び出会った。今日は騎士甲冑ではなく派手な服を着ているが、水色の髪をサイドテールにしているので霜葉の記憶に残っていたのだ。もう一人の女性は真っ赤な長髪で優しげな微笑を浮かべていた。
「前に出会った時は名乗っていなかったが、私はこの街の騎士団長を務めているリディム・ハーゼンという者だ。そしてこちらが・・・」
「はじめまして。この街の領主であるエリーナ・シュトルムです。あなたたちのおかげで農地開拓が進んだことは本当にありがたいです」
「お褒め戴きありがとうございます」
「もぐ~♪」
「「「「もぐも~♪」」」」
領主であるエリーナ様からお褒めの言葉を言われ霜葉はお礼を口にする。金剛一家も嬉しそうだ。
「この子たちが噂の魔物さんたちですか?皆さん綺麗で可愛いですね~触ってもいいですか?」
「どうぞ」
エリーナ様がそう言ったので霜葉が許可を出すと、エリーナ様の一番近くに居た白夜の頭を恐る恐る撫でるのだった。撫でられて気持ちいいらしく白夜は上機嫌だった。
「クオ~ン♪」
「本当に大人しいですね~。それになんとも気持ちのいい体毛ですね~癖になりそうです」
「エリーナ様。そろそろ本題を話した方が・・・・」
「あ、そうですね。すいませんソウハさん」
「いえ、白夜も嬉しいみたいですしこちらは気にしませんよ」
「クォン♪」
エリーナ様は霜葉と白夜にお礼を言ってから霜葉の対面のソファに腰かけてその後ろにリディム殿が立って護衛をしている。
「まずは先ほども言いましたが、農地開拓の件では本当に助かりました。冒険者ギルドで長年誰も受けてくれずにそろそろ騎士団か警備隊の訓練もかねてやった方がいいかと思っていたんですよ」
「訓練ですか?」
「何分重労働な作業ですからね。体力づくりの訓練としてはいいかと思っていたのです」
霜葉はエリーナ様の答えになるほどと思った。
「ですが、あなたたちの活躍でほとんどの農地は上質な土になりましたのでこれからは新たな野菜も育てることができるでしょう。領主として本当に助かったのです」
「お役に立ったのならよかったです」
「そのお礼をいろいろ考えたのですが、あいにくこちらもいろいろあり今は自由にできるお金も少なく満足なお礼が出来ません。そこで今何か困ったことはないですか?お力になれることがあるかもしれません」
そうエリーナ様が口にしたので霜葉はあのことを相談してみようと思った。
「それでしたら、一つだけ相談したいことがあるのですが」
「なんでしょう?」
「実はこの街のBランク冒険者に目の敵にされている様なんですよ。彼らがこの先僕たちと言うか白夜たちに危害を加えないとは断言できないので、そう言うトラブルが起こった場合はこちらの味方になっていただきたいのです」
そう言うとエリーナ様とリディム様は顔を曇らせた。さすがに彼らのことは耳に入っていたらしい。
「もちろん僕たちに非があると判断した場合を除いてですが」
「ああ、すいません。彼らのことはこちらでも把握しています」
「実は、何度か警備隊と騎士団で忠告を行ったのだが、全く聞く耳を持たなかった。私自ら会いに行き話も聞いたうえでの結論は彼らの主張は暴論以外の何物でもない」
「私自身も報告とリディムの意見を聞いて、彼らの行動は限度を超えていると判断しています」
そう言う二人の顔は呆れていると言うか、彼らの行動は理解しがたい物だと言っている様である。
「いくらこの街の冒険者ギルド唯一のBランク冒険者と言っても、彼らのここ最近の行動は目に余る物があります。これ以上問題行動を続けるのなら、冒険者ギルドにも抗議して街の責任者として厳重な罰を与えるつもりです」
「そうですか」
とりあえずもしもの時の備えとしてはこれ以上の物は無いかと霜葉は考えた。ジムキス様からもらった手紙もあるが、相手が相手だ。これ以上のことはできないと判断した。
「そう言ってくれるのなら、よかったです。心配事だったので」
「お気になさらずにこちらとしても無視できない問題ですので。そう言えばこれからソウハ殿はどうするのですか?農地開拓はほとんどの土地を耕したそうですが?」
「不人気ダンジョンへ挑戦してみようかと思っています」
「あのダンジョンへですか?こう言ってはなんですがもう一つのダンジョンの方が実入りはいいですよ?」
「ですが、人が多いので間違ってこの子たちが攻撃されかねませんから。人の少ない不人気ダンジョンの方が都合がいいのです」
「確かに、その心配がありますね。どうかお気をつけて」
それから雑談とエリーナ様が他の子たちを撫でたり構ったりして過ごして、屋敷を出た。その後は孤児院へと戻り、夕食時に明日はダンジョンへ挑戦するのでしばらくは帰れないとトグじいさんに伝えておいた。それを聞いた子供たちが不満げだったが、トグじいさんが一喝した。
冒険者がダンジョンへ挑戦するのは当たり前だと言って。子供たちはしぶしぶ納得して、今日は何人かの子供たちが三日月や金剛一家と一緒に寝たいといい。本人たちは喜んで一緒の部屋へと子供たちと向かう。霜葉達も明日は朝早くからダンジョンへ挑戦するため早めに寝ることに。
次回の更新は12/20予定です。




