第三章 第十四話 商王国編14
霜葉達は次の目的地である街の近くまでたどり着いていた。その途中でギガントリザードに苦戦していたホワン、ヴァン、ザァガ、イーサ、エイダの冒険者グループを助けることに。その後に彼らと一緒に街へと向かい入る直前で女性騎士と警備隊に白夜たちが安全かどうか確認されたが、何とか入ることを許された。
ホワンたちの案内で冒険者ギルドへと向かい解体場にてギガントリザードの解体を行った。それからホワンたちは霜葉に助けてくれたお礼をどうするか悩むと、霜葉が解体後にホワンたちが防具を作ってくれる職人を知っているような会話をしていたのでその職人を紹介してくれないかと提案した。ホワンたち曰くその職人は腕は確かだが頑固職人らしいので、紹介はしてみるが作ってくれるかはわからないらしい。
それでもいいので紹介してくれないかと霜葉は頼みホワンたちはそれを了承。ギガントリザードの素材と受けていた依頼の報告が終わってから案内することに。その間ギルドの外で待っていようと外に出ようとした霜葉達だったが、ちょうどギルドに入ってきた男性一人と女性二人の冒険者たちが白夜たちを見て男性が剣を抜き斬りかかったのだ。
いきなり剣を抜き攻撃された白夜だったが、ギルドの入り口付近は広く右側に跳んで躱すことができた。ちょうど白夜が霜葉たちの先頭で周りに新月たちもいなかったからできた行動だ。いきなり攻撃されたことで白夜は牙をむき敵対者として相手を睨み付ける。
「グゥル~!」
「二人とも!魔物が街に入り込んでいるぞ!俺がこの狼を倒す!二人は他の魔物たちを!」
「わかったわ」
「了解」
白夜に斬りかかった男性は他の女性二人に他の魔物、十六夜たちを相手するように言い、背負っていた円形盾を構えて白夜に向けて剣を指し示す。
「どこから入り込んだか知らないが、僕たちに出会ったのは運がなかったな!」
「ちょっと待ってください!」
「うん?」
そんな男性に霜葉は白夜との間に割って入り、まずは白夜を宥めることに。
「白夜も落ち着いて。今僕が君は無害だって説明するからね?」
「クゥ~ン」
霜葉に撫でられて白夜は機嫌が一発で収まった。もはやお約束である。そんな霜葉に対して男性は・・・
「きみ!危ないから離れるんだ!今から僕がその魔物を退治してあげるから!」
「退治する必要はありませんから!この子は僕がテイムした魔物です!僕は【魔物使い】なんですよ!」
「なに?」
男性は一緒呆けた顔になった。しばらくして真剣な顔に戻り霜葉に向けて再度口を開く。
「魔物使いだと?君は何を言っているんだ?そんな使えない職業がこんな強そうな魔物をテイムできるわけがないだろう?」
「この子はまだ小さな子供の頃にテイムして大きくなったんですよ。僕の言うことはちゃんと聞きますし大人しい子ですから。ちなみにそちらの女性たちと睨み合っている子たちとこの鳥も僕の仲間でテイムした子たちです」
「ホー!」
霜葉の紹介で杖に止まっていたルナが男性を警戒しながら鳴き声を上げる。また、男性の仲間である女性たちと一触即発な睨み合いをしている十六夜、新月たち、金剛一家も鳴き声を上げる。
「ガァル!」
「ぐぅ!」
「まぁ!」
「ぐる!」
「「「「「もぐ!」」」」」
全員が白夜をいきなり攻撃してきたので彼らに対してお怒りである。そんな彼らと睨み合いをしている女性たちはと言うと一人は槍を構え、もう一人は弓を背負いここでは鉈を構えていた。
「そこの君、魔物使いでこいつらは君がテイムしただって?」
「はい、そうです」
霜葉に対して視線を向けずに槍を構えている女性が霜葉に語りかけるが、次に発したセリフは予想外の物だった。
「嘘つくならもう少しましなことを言いな!魔物使いなんて職業は使えない職業の筆頭だ!そんな職業に就いた奴がいる訳がない!」
「そうですね。それにこの魔物たちはなかなか強い様子。そんな魔物を魔物使いがテイムできるわけがありません」
霜葉の言葉を嘘と断言したのだ。この言葉に対して白夜たちはさらにお怒りになる。具体的に言えば殺気が漏れてこの事態を見ていた冒険者たちが咄嗟に後退りするぐらいには。
「本当なんですよ!そもそもこの子たちが冒険者ギルドに居ること自体がおかしいでしょう!」
「ソウハの言う通りだぞ!」
霜葉が何とか場を治めようとしていると、ホワンたちが十六夜たちと女性たちの間に割って入ってくれた。
「ホワンたちじゃないか。なんだい邪魔しようってのかい?」
「そうじゃない。ソウハの言っていることは本当だ。俺達は彼の言うことを聞いてこの子たちが魔物と戦う所を見ている」
「加えて街に入る時に騎士団長であるリィデム様が直々に調べた結果、安全であるとお墨付きをもらっている」
「さらに言えば、お前たちがいきなり攻撃したことはこの場に居る全員が見ているぞ?」
「冒険者たちの暗黙のルールでギルド内では乱闘や決闘などは禁止だよ?そう言うのがなくてもいきなり攻撃はまずいよ?」
「ミカヅキちゃん、コンゴウ君たちも落ち着いてね?」
「まぁ~」
「「「「「もぐ~」」」」」
ホワンたちが霜葉達を弁護してくれたことで、この場は収まると思われだが・・・
「悪いが、君たちの言うことが本当だったとしてもこの魔物たちは倒させてもらうよ」
「どういうことですか?」
男性の言葉に霜葉も怒りを含んだ言葉で答える。白夜たちを大切に思う霜葉にとって彼が放った言葉は許せるものではないからだ。
「君こそ何を言っているんだい?魔物は倒すべき敵だよ?そんな敵を仲間にできる【魔物使い】と言う職業自体が異常なんだよ。そんな職業はこの世から無くなった方がいいんだ。だからこの魔物たちも倒す。安心してくれ。この魔物たちを倒した後に手に入る素材は僕たちが有意義に使ってあげるから」
暴論。それ以上の言葉はないだろう。この世界で職業としてある物の否定。この言葉を聞いた他の人たちも驚きを隠せないようだ。ホワンたちも同様のようだ。
「わかったらそこをどきたまえ!」
「いいえ。ちっともわかりません。うちの子たちを倒すと言っている人の言葉など分かりたくもありません」
霜葉はこの時、目の前の男性を敵だと認識した。白夜も霜葉の隣で臨戦態勢だ。他の子たちも同様。この場が戦いの舞台になりかけた時・・・
「何をしておるかぁ~!」
場の雰囲気をぶち壊す大音量が響き渡った。その音源は2階に上がる階段の中間地点に居るドワーフの叫び声だった。
「ダーキス!また貴様か!今度は何をやりおった!?」
「ギルドマスター僕はただ魔物を倒そうとしただけだよ?」
「ふん、その【魔物使い】のことはすでに聞き及んでおるわ!一つ言っておくがの!その【魔物使い】はCランク冒険者じゃ!しかもある街において多大な功績を挙げた冒険者じゃ!そんな冒険者の仲間を倒す意味が分かるかダーキス!」
「なんだと?」
「意味が分かるならこの騒動はおしまいじゃ!そこの【魔物使い】はわしの部屋へ来てくれ!話がある!」
そう言ってギルドマスターは2階へと上がって行った。霜葉は戸惑いながら取り敢えずギルドマスターの後を追う。白夜たちも男性たちを睨みながら霜葉に続く。ギルドマスターが出張ってきたので他の冒険者たちはいつものように酒を飲んだり依頼を探したりと通常の状態へと戻る。ホワンたちも霜葉達を心配しながら受付に戻り買い取りと依頼の報告に戻った。
「ダーキス。私たちもとりあえず依頼の報告をしよう」
「・・・・わかった」
ダーキスと呼ばれたBランク冒険者も受付へと行き、依頼の報告をするがその手は強く握りしめられていた。
「改めて自己紹介だが、わしはこの街の冒険者ギルドの責任者でギルドマスターのバリガンという者じゃ」
「僕は霜葉という者です。先ほどはありがとうございました」
ここはギルドマスターの部屋でお互いの自己紹介をしているところだ。
「礼は不要じゃ。むしろこちらが謝らねばならん。すまなかったな?うちの専属冒険者が迷惑を掛けた」
「バリガンさんが謝ることではないと思いますが?」
「ダルバンが大変世話になった者にうちのギルドの者が迷惑を掛けたからのう。謝りたいんじゃよ」
「ダルバンさんを知っているんですか?」
「うむ。古い付き合いでな。お前さんのこともダルバンからの手紙が来て書いておったのよ」
そう言うと穏やかな笑みを浮かべ、長いひげをいじるバリガン殿。
「お前さんには感謝しておるよ。友人のこれからの人生を助けてくれた。まさかダルバンの街のダンジョンがハズレではなかったとはな~」
「いえいえ、僕はやれることをやっただけですから」
「それに街ではその魔物たちも大活躍だったそうだな?それを読んでこの街にも来てくれないかと待っていたんじゃよ」
そう言ってバリガン殿は真剣な顔で霜葉にあることを伝える。
「お主の魔物たちの力を見込んで、この街の農地開拓の依頼を受けてくれぬか?そこのモグラの魔物たちの力を借りたい」
「ええ、いいですよ。明日からでもいいですか?」
「もちろんじゃ。助かるわい」
「「「「「もぐ!」」」」」
バリガン殿の言葉に金剛一家は頑張る!と言うかのように鳴き声を上げる。
「いやはや頼もしいのう。農地開拓の依頼は長年ほったらかしになっておったから、こちらとしてもありがたいんじゃよ。その礼にこの街のダンジョンのことを話しておこうかのう」
「いいんですか?」
「もちろん」
そう言ってバリガン殿はこの街のダンジョンのことを話し始めた。この街のダンジョンは二つあり、一つは人気のダンジョンで20階層まであるそうだが、大昔に踏破されてからは誰もそこまで行った者はいない。出てくる魔物は、固い魔物が出てくる。具体例は、霜葉達が倒したことのあるアイアンタートルなどだ。
その他には、1階層から3階層までは、アイアンタートルとその上位種であるスティールタートル。
4階層から7階層には大きな蟻、レッドアントとその上位種クリムゾンアント
8階層から11階層には大きなカニのブルークラブとその上位種であるサファイアシザーが。
12階層以降は探索が行われておらず、どんな魔物が居るかはわかっていない。さらにこのダンジョンは砂地タイプであり8階層からはカニが出るからか砂浜で海が有ったりするらしい。魔道具は発見されたことはないがアイアンタートルとスティールタートルからはお肉が出ることがあり、カニも身の詰まった鋏や足が出るので人気があるのだ。素材も防具を作るのに適しているのでこの街には防具を作る職人が多い。
もう一つのダンジョンはハズレではないが不人気ダンジョンで、25階層まであるそうだが、これまた大昔に確認されてからは誰もそこまで行った事がない。不人気の理由は出てくる魔物にある。このダンジョンでは蜘蛛型の魔物が出てくるのだ。それも大型の。
1階層に出てくる魔物は、バインドスパイダー。蜘蛛糸を使い敵対者を捕食する魔物でかなりの大きさであり凄まじく気持ちが悪いと冒険者たちはこのダンジョンに入ることを嫌がるのだ。特に女性の冒険者は。もう一つのダンジョンの方が旨味があるためこのダンジョンはすっかり不人気になってしまったのだ。
「こっちのダンジョンはせいぜい蜘蛛糸が欲しいって依頼がたまに出てくる時に男ばかりの冒険者グループが受けて1階層だけ探索して魔物を倒すだけじゃ。2階層以降は誰も進まん」
「火魔法術がかなり有効そうですが?」
「確かに、有効だがよくわからんダンジョンに行くよりも情報が揃っているダンジョンの方が安全じゃからな。皆そっちへ行くんじゃ」
「ああ、なるほど」
「ダンジョンの情報はこんなところじゃ」
「教えてくれてありがとうございます。依頼の件もありますしそれが済んだら挑戦してみます」
「2階層以降に行くのなら情報も高く買い取るぞ?頑張ることじゃ」
そう言ってバリガン殿は霜葉との話し合いを終わらせた。その後、霜葉たちは部屋を出て1階へと降りることに。その霜葉たちを買い取りと依頼の報告が終わり待っていたホワンたちが駆け寄ってきた。
「ソウハ。ギルドマスターはどんな用件だったんだ?」
「なんでも友人が世話になったことについてお礼が言いたかったそうです。後は先ほどの人が迷惑を掛けたことの謝罪でした」
霜葉の言葉にホワンたちはほっとした。彼らは霜葉が厳重注意を受けるかと考えていたので予想が外れて安心したのだ。ちなみに先ほどの騒動の原因であるダーキスと言うBランク冒険者はギルド内にはいない。
「とにかく、助けてくれたお礼に俺達の知り合いの職人を紹介するよ。それと、さっきの冒険者についても教えておくよ」
「お願いします」
紹介してくれる職人の場所まで行く道中に先ほどのBランク冒険者のことを聞くことに。あの冒険者の名はダーキスという。女性二人は槍を持っていたのはアルネア、弓を背負い鉈を構えていたのはナーバァと言い、この街のギルド専属冒険者で三人ともにBランクであり、この街では唯一のBランク冒険者である。
「実力もトップであり、Cランクまでは人気も人望もあったんだがBランク試験を受けてから人が変わったんだ」
「試験自体は合格したんだが、それから問題行動が目立つようになってしまい、だんだんと人気と人望が無くなってきたんだ。今日みたいな自分たちの考えは間違っていないみたいな感じだな」
「ギルドマスターはBランク試験で盗賊とは言え人を殺したことで、壁にぶつかったって言っているがな」
「悪人とは言え人を殺めたわけですから分からなくもないんですが・・・」
「でも、だからと言って何でもしていいわけじゃない。騒動に巻き込まれた人はいい迷惑」
ホワンたちも彼らに対して不満があるようだ。特にエイダは言葉に棘がある。しかし、エイダ以外の者たちはどこか彼らを弁護しているように語る。
「実は俺達もダーキスさんたちに世話になったことがあるんだ」
彼らの話によるとホワン、ヴァン、ザァガ、イーサは冒険者になりたての頃に、当時はまだDランクだったダーキスたちがなにかと世話してくれたと言う。戦闘訓練から魔物の特徴を教えたり一緒に依頼を受けてくれたりと何かと助けてくれたらしい。エイダは彼らがBランク試験をしている間に仲間になったから彼らのことは変わった後のことしか知らないと言う。
「だから彼らが変わったことはショックだった。それほどのことを経験したってことだからな・・・」
「ちなみに、その時討伐した盗賊は厄介な相手だったんですか?」
「いや、そんな話はなかったぞ?」
「この街は三日も馬車で移動すると山があるから、そのふもとに盗賊たちが流れ着いたって情報をギルドが掴んでその討伐が試験になったはずだ」
ちなみに当時はBランク以上の冒険者が居なかったので、ギルドマスターであるバリガンが同行したとのこと。他にCランク冒険者が四人一組参加したが、その冒険者たちは合格して別の街に旅立ったらしい。
「じゃあ、当時何があったかを知っているのはバリガンさんだけなんですね」
「ああ、ギルドマスターなら詳細は知っているだろうけど、ダーキスさんたちが変わった当初に彼らに世話になった人たちが何があったのか聞きに行っても、これは当人たちの問題だって言って詳しい話は聞けなかった。それは今でもそうだよ」
彼らに何があったのかは、霜葉にとってははっきり言って関係ない話ではある。気にならないと言葉にすれば嘘になるだろうが、霜葉にとって大事なのは彼らが白夜たちを殺そうとしたことだ。これで諦めてくれたかはわからない。
(しばらくは注意が必要かな・・・)
霜葉はこの街に居る間の要注意人物として、ダーキス、アルネア、ナーバァの名を覚えた。そんな話が終わり、彼らの案内で職人の店に案内されたのだが・・・
「ここ・・・ですか?」
「うん、そんな反応になるよね・・・」
そこはどう見ても腕利きの職人が居るような店ではなかった。鎧と金槌が描かれている看板は留め金が一つはずれ、店もどうにも繁盛しているような外見ではなかった。ありていに言えばぼろい。蜘蛛の巣は作り放題で閑古鳥が鳴いている。
「なんせ頑固で変なこだわりを持っている人だからな~」
「変なこだわり?」
「この街は防具素材がダンジョンのおかげで豊富なんだが、その人は常々「ダンジョンで手に入る素材は信用できん!冒険者が苦労して倒した魔物を解体してこそ本当の素材じゃ!!」なんて言ってるんだよ」
「おかげでこの街ではあんまり稼いでいないのよ」
「でも、腕は確かだから私たちのような冒険者相手に取引はある。だから不思議と潰れない」
散々な言い方である、特にエイダ。彼女は毒舌キャラなのかもしれない。
「とりあえず、解体素材はいくつかアイテムボックスにありますからそれを見せてみますね」
「おお?そうなのか?」
「それはいいなぁ~俺達も防具が買い換えられるかも・・・」
実際はちょっと洒落にならないほどの量の素材がアイテムボックスに入っている。冒険者ギルドで売ろうとも考えた霜葉だったがまずは自分の防具をどうにかしてからだと考えたのだ。とにかく中に入ってその職人を紹介してもらうことに。
「こんにちは~ラヴァさんいますか?」
「おお、ホワンたちか。いい魔物素材は持ってきたか……ってなんじゃそいつらは?」
ホワンたちが店に入った後に白夜たちがぞろぞろと店に入ってゆく。外見と違い店の中は中々広かったので白夜たちも入ることができた。広かった最大の原因は商品が数点しかなかったからだが。
「なんじゃおまえら。魔物を捕獲でもして奴隷の首輪でも着けたのか?」
「そんな高価な魔道具買えるわけないよ」
「ま、そうだな。じゃあ一体こやつらはなんなんじゃ?」
「この子たちはこっちのソウハって子の仲間よ。彼は【魔物使い】なのよ」
「ん?【魔物使い】とな・・・・」
そう言ってホワンがラヴァと呼んだ店主は霜葉を値踏みするように見つめた。当の本人はドワーフにしては珍しく髭を剃っていて肌も黒く男臭い濃い顔をしていた。
「長年生きてきたが、【魔物使い】を見るのは初めてじゃ。で、何の用じゃ?態々それを知らせに来たわけではあるまい」
「ああ、ソウハが防具を作ってもらいたいって言ってたんでラヴァさんを紹介しようと思って・・・」
「帰れ」
ホワンが言い切る前にラヴァはそう断言した。
「【魔物使い】じゃあろくな魔物は倒せんじゃろう。そんな奴に作ってやる防具はない」
「いや、ラヴァさん話は最後まで・・・」
「聞かんでもわかるわい。大方おぬしらの紹介なら作ってもらえると思ったんじゃろうが、あいにくわしはそんなことでは客は取らん。さっさと帰るがいい」
そんな態度で掌をひらひらさせて霜葉を帰らそうとするラヴァ。そんな店主の態度に霜葉はちょっとカチンときた。先ほど無礼な奴らとトラブルになったばかりなので少々沸点が下がったのだ。
「そのセリフはこの素材を見てから言ってください」
「ふん!どうせ大した素材ではなかろう。まぁ、見るだけ見てや・・・なぁ!?」
霜葉はアイテムボックスからラージ種のデーモンスコーピオンの甲殻を取り出した。本当は鋏を一つ取り出したかったが、この場では狭いので断念した。と言っても甲殻も普通に大きく下手な盾よりも大きい。
「こ、この甲殻はもしやデーモンスコーピオン!?」
「「「なぁ!?」」」
「「うそ!?」」
「いや、だがサイズがおかしい!この大きさはもしやラージ種か!?」
「正解です」
「やはりか!?」
「「「「「・・・・・」」」」」
ホワンたち五人は口を大きく開けて驚いている。それもそのはずデーモンスコーピオンはここらでは特に危険な魔物として有名なのだ。そのラージ種など、緊急依頼として討伐隊が組まれるほどだ。
「す、すまんがこれだけではあるまい!全部の素材を見せてくれんか!?」
「ここでは狭すぎて全部は出せません」
「そ、それもそうじゃ。だったら中庭がある!そこで見せてくれ!」
「わかりました」
さっさと移動して中庭で霜葉はデーモンスコーピオンの素材をすべて取り出す。その様をラヴァは興奮して見ていた。ホワンたちは驚きすぎて放心状態だ。すべての素材を出し切りラヴァが一つ一つ丁寧に確認している間にホワンたちも放心状態から目覚めた。そして・・・
「す、すばらしい!!素材が珍しいこともそうじゃが、完璧に解体されておる!しかも傷や破損はおろか汚れひとつない!品質としては最高じゃ!!」
頑固職人であるラヴァが手放しで褒めている状況はかなり珍しい。彼がそんな状態になるほどの解体技術があるとは思わなかったのでホワンたちは霜葉を珍しい物を見るような視線を向けた。
「ぼ、坊主!ソウハと言ったな!?頼む!この素材を売ってくれ!?」
「お断りします」
「な、なに!?」
「さんざん人の事を言いたい放題言った人に売りたくありません」
「くぅ!?あ、謝るので売ってはくれんか!?このような素材は滅多にお目にかかれん!後生の頼みじゃ!?」
そう言ってラヴァは土下座をして頭を地に擦り付けた。それを見た霜葉は溜飲が下がったので許してこれを使った防具を依頼することに。なお、その様子を見ていたホワンたちはこの街にソウハが居る間は彼を怒らせない様にと固く誓った。
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