第三章 第一話 商王国編1
七日間毎日更新6日目です。新章の商王国編です!お楽しみください!
霜葉たちが魔人国から商王国へと向かってから五日が経過した。その道中は何もなく平和だったので新しく仲間になったホワイトコボルトたちと今後の予定についてと霜葉の目的について話し合い、後は能力実験を行った。
ホワイトコボルトたちにこれから行く商王国でダンジョンに挑戦して白夜たちのLv上げをするとともに進化を目指すことを説明した。その際に進化についても【軍勢の魔王】の固有スキルの効果で仲間の魔物はLvがMAXになるとより強い種族に進化できると説明したらホワイトコボルトたちの目の色が変わった。
『主様!我らも進化できるのでしょうか!』
『君たちも変則的だけど僕たちの仲間だしできると思うよ?』
『でしたら我々もダンジョンでLvを上げたいと考えます!我らも強くなりたいのです!』
ホワイトコボルトの群れの長である北斗も進化したいと言ってきた。他のコボルトたちも同様のようだ。これに対して霜葉は今から行く街で自分たちもダンジョンへは初めて挑むので様子見をしてからでいいかと聞いてみた。北斗も自分たちも初めてなので問題ないとのことだ。役に立つことがあればいつでも呼んでくだされとも言っていた。
次に霜葉は自分がこの世界とは違う別の世界の人間だと言うことを明かした。人間が持っている勇者召喚と言う召喚魔法術によってこの世界に召喚されたのだと。これに関してはコボルトたちはよくわからなかったようなので次の話題へと移る。
召喚された理由は【闘争の魔王】を名乗る者が各国に宣戦布告したことでその対策の一つとして呼ばれたと説明したところで他にも魔王が居ることに驚いていた。さらに霜葉達がコボルトたちに出会う前に戦い敗北したことを明かすとコボルトたちは信じられないと言いたげな顔になった。
『だからこそ今度の国ではダンジョンで強くなろうとしているんだよ。いつかまた出会う可能性もあるからね。それに【闘争の魔王】以外にも強敵に出会うことがあるかもしれないしね』
『・・・・仰る通りです。我らは身に染みています』
北斗はそう言うと着ている服を見つめた。彼らは自分たちよりも強いレッドコボルトに襲われた経験があるから一番わかっているだろう。だからこそ強くなれると知り頑張ろうとしているのだから。
とりあえずは話すことは話したと霜葉は判断して、次は能力実験を行うことにした。と言うのもホワイトコボルトたちを群れごとテイムした時に群れの長は主の固有スキルを一部使えると謎の声がしたのだ。
と言うわけで北斗に霜葉が持ってる固有スキルが使えるかやってもらうことにした。と言っても使えそうな固有スキルは【箱庭世界】と【思念会話】ぐらいしかないのだが。とにかく実験をしてみた。
まずは【箱庭世界】の入り口を北斗にも出現させられるかを試してもらったが、これに関しては無理であった。さすがにこれが仲間に使えるようにはならないようだ。次に【思念会話】これに関しては使えるようなのだ。北斗と合わせて五人までだが同時に【思念会話】が出来たのだ。これは群れとしてもありがたいと北斗は言う。
自分とのホットラインが四人だけとはいえあるのとないのでは天と地の差であるのは言うまでもない。早速北斗は霜葉と相談して誰にこの権利を渡すのか相談することにした。話し合いの結果、槍部隊の隊長。弓部隊の隊長。生産部隊の隊長。子供コボルト代表に【思念会話】の権利を渡すことにした。
部隊の数は槍7-弓7-生7-子6だが生産と子供は弓も使えるので戦力が欲しい時は弓部隊に加わることになった。他にも生産部隊には木の槍だけではなく棍棒も作ってもらうことにした。棍棒なら生産部隊の大人コボルトでも簡単に使うことができるので予備として作ってもらうことにしたのだ。
話し合いと能力実験も終わり、霜葉達は商王国の最初の街までの道を進むことにした。と言っても道らしい道があるわけではないのだが。商王国の国土はほぼ荒地であり街道などは存在しない。せいぜい以前に通った馬車の跡が無数にあるのと、申し訳ない程度に石が等間隔に並んで地面に埋まっているくらいだ。ただ、これだけでもないよりはありがたい。そんな道とは呼べない物を頼りに霜葉達は進んでゆく。しかし、こんな荒地でも魔物は出てくるのだ。
硬い甲殻に覆われたサソリ、メイルスコルピオン
砂色の皮をした蛇、サンドスネーク
鉄並みに硬い甲羅をしている亀、アイアンタートル
普通自動車並みにデカいトカゲ、ギガントリザード
これらが襲ってきた。メイルスコルピオンやアイアンタートルは魔法術を使える白夜、十六夜、無月、ルナが倒して、サンドスネークとギガントリザードは新月、三日月、ガウェインが倒した。サンドスネークは普通の蛇よりはデカいがファングバイパーと同じくらいで苦戦はしなかったが、ギガントリザードは少々手強かった。と言っても霜葉が援護したらあっという間に片付いたが。
これまでの戦果はメイルスコルピオンが六体、サンドスネークが五体、アイアンタートルが四体、ギガントリザードが三体だ。これだけの戦果があったのにガウェインはまだLvが上がらない。
『なかなか上がらないね?』
『焦っても仕方ありませぬ。ダンジョンでの戦いに期待しましょう』
『そうだね』
とりあえず解体は後にして先を急ぐのだが、この国には魔物以上に厄介な敵がいた。
『暑いよ~』
『暑いです~』
『暑いなー』
『暑い~!』
『暑くて眠気が・・・』
『あついの~!』
『確かに暑いね・・・』
それは暑さだ。荒地であるため日光を遮る物など雲ぐらいしかなく、雲すらない場合は炎天下と言ってもいいくらいの暑さなのだ。これには白夜たちはなんとか耐えている。とは言え白夜、十六夜、三日月、無月は体毛があるせいでかなりつらそうだ。特に三日月などは【ウールベア】では暑すぎるのでブルーベアに退化している。
『皆辛そうですな』
『ガウェインは平気みたいだね?』
『スケルトンですからな。ですが、先ほどから甲冑の間に風で砂が入ってくるのでなんだか妙な感じがします』
ガウェインは暑さは平気でも別の問題があるようだ。つらいのなら【箱庭世界】で休む手段があるだけマシだと考え霜葉は着ているローブのフードを被り直して先へと進む。しばらく進んだ後に休むのにちょうどよさそうな岩陰を発見したので、そこで小休憩を行うことにした。
白夜たちは岩陰に寝転び少しでも涼むために動こうとしなかった。新月と無月も退化して小さなブルーベアとなり休んでいる。大きい体よりは休みよいのだろう。霜葉も岩陰にある岩に座り小腹が減ったのでアイテムボックスからコロッケを取り出した。
これは魔人国で商王国に行くための準備をしている時に【箱庭世界】の中で作った物だ。それ以外にもメンチカツや空揚げなども大量に作った。こういうのがあれば小腹が減った時や白夜と十六夜やルナにも食べさせられると思い実行した。ちなみに作った物はアツアツの物と冷めた物を半々でアイテムボックスに入れてある。今取り出したのは冷めた物だ。
早速、コロッケを食べようと口に運ぼうとしたら何やら強い視線を感じた。白夜たちかと思ったが彼らはいまだにぐったりと休んでいる。霜葉はこの視線を主を探して視線をあちこちに向けたが、この視線の主は霜葉の目の前に居た。
まん丸の顔に細長い鼻をひくひくさせて地面から大きな爪を覗かせて霜葉のコロッケを凝視しているのは・・・・モグラさんだった。
「もぐ~」
ぎゅうるるる~!
どうやらこのモグラさんはお腹を空かせている様だ。だから先ほどから鼻をひくひくさせてコロッケをジーと見つめているのだろう。さすがに目の前でお腹を空かせている子を放っておくことはできず・・・
「食べるかい?」
「もぐ?」
いいの?と言うようにモグラさんは鳴き首を傾げた。霜葉は頷いてコロッケをモグラさんに近づけた。
「もぐ~♪」
そうするとモグラさんは地面から出てきて、器用に大きな爪でコロッケを受け取り一口齧った。すると・・・
「もぐー!」
好みにあったのかすごい勢いで食べ始めてあっという間に無くなってしまった。
「もぐ~」
ぎゅうるるる~!
かなりお腹が空いているようでまだ食べ足りないようだ。霜葉はしばし考えてアイテムボックスから大きな木製の皿を取り出して、その上に冷めたコロッケを全部乗せた。
「も、もぐ?」
「お腹いっぱいになるまでお食べよ」
「もぐもー」
モグラさんは霜葉に対してお礼をしてコロッケを食べ始めた。今度はゆっくりと噛みしめながら食べている。そんな霜葉とモグラさんに休んでいた白夜たちもようやく気付いた。
『ご主人。その子どうしたの?』
『主。その子は?』
『なんだ?』
『誰かいるね?』
『まだ寝る・・・』
『だれかいるの~』
食べているモグラさんを興味深く見つめる白夜たち。このモグラさんは二頭身サイズで大きさは白夜以下十六夜以上と言ったところか。そんな中ガウェインがこの魔物に付いて知っていたようだ。
『ふむ。ピットモールですな』
『どんな魔物なのかな?』
『強さ的には大したことはありません。ただ、見た目が可愛い類なのでわしの生前ではこの魔物だけをテイムした魔物使いが居ましたし、穴を掘るのが得意なので農地の開拓や落とし穴を作って敵を嵌める工作兵として人気でしたな』
『へぇ~』
『それはそうと主殿。ピットモールが増えておりますぞ?』
『え?』
ガウェインの説明を聞いていた間にモグラさんが三人に増えていた。しかもまた一人最初に出てきたモグラさんの穴から出てきた。最終的にモグラさんは五人になり仲良くコロッケの乗った皿を囲んで食べている。
そのモグラさんたちが食べ続けた結果、最後の一つになったコロッケ。そんな時おそらく最初に食べ始めたモグラさんがお皿の囲みから抜けた。自分はもういいと言っているのだろう。さらにまた一人また一人と囲みから抜け最後の一人になり、抜けたモグラさんたちを見渡すと全員が頷いている。それを見たモグラさんは最後の一つを手に取りゆっくり食べ始めた。
よく見れば最後のモグラさんは他のモグラさんと比べると小さい気がする。もしかしたらこのモグラさんたちは家族で最後の子は末っ子なのかもしれない。食べ終わったモグラさんたちは一人が霜葉に近づき深々と頭を下げた。それを見た他のモグラさんたちも霜葉に頭を下げるのだった。そして穴へと帰ろうとしたら。
『待ってモグラさん』
『え?』
最初に出会ったモグラさんに対して霜葉は【思念会話】で語りかけた。モグラさんは辺りを見渡して慌てている。そんな様子に他のモグラさんも慌てだした。
『落ち着いて。僕はさっき食べ物を渡した者だよ。今僕のスキルで君に話しかけてるんだ』
『そんなスキルを持っているんですか?それで話しかけた理由は何でしょうか?』
『僕の仲間になってくれませんか?』
『仲間にですか?』
外見に似合わず中々の丁寧口調。それはともかく、霜葉は先ほどのモグラさんたちのやり取りで彼らを仲間にしたくなったのだ。まだ白夜と十六夜に確認はしていないが一番小さな子に食べ物を譲ることができる彼らなら問題ないと確信している。
『はい。今僕は一緒に旅をする仲間を集めています。君たちなら仲良くできると思うんですよ』
『お誘いはありがたいのですが。我々は強くありませんよ?』
『僕は仲間に強さを求めてはいませんよ?それに僕のスキル効果で仲間になれば強くなれますよ?』
『そ、そんなスキルが有るのですか?』
『少なくとも僕の仲間になれば餓えることはないですよ?どうでしょうか?』
『・・・少々仲間と考えさせてください』
『わかりました』
そう言うとモグラさんは仲間を離れた場所に連れてゆき、もぐもぐと相談を始めた。その間に霜葉も白夜と十六夜に確認する。
『皆。あの子たちを仲間にしようと思うんだけど、どうかな?』
『いいよ!あの子たちいい匂いがするの!』
『私も賛成です~!いい音もしますから~!』
『いいと思うぞ?』
『仲良くできそうなの!』
『反対はしない・・・』
『かぞくがふえるの~』
『ふふふ。ここ最近で一気に数が増えましたな?』
『まだ仲間になるかどうかはわからないよ?』
それからしばらくしてモグラさんたちの相談も終わった。結論から言えば仲間になるそうだ。ここしばらくは何も口にしていなかったらしく霜葉が餓える心配はないと言ったのも決め手になったらしい。それとは別にまたあの食べ物も食べたいとも言っていた。よほど気に入ったらしい。
そう言うわけでまずは最初にコロッケを与えたモグラさんからテイムすることに。テイムを終えたモグラさんは力が湧いてくるような感覚を味わっていた。そのことを霜葉に尋ねるとそれは僕の職業効果だと説明したがよくわからなかったようだ。魔物は職業などないから仕方がないが。モグラさんのステータスは・・・
名: なし
種族: 【ピットモール♂Lv4/Lv10】
スキル: 爪撃Lv4 : 穴掘りLv5 : 夜目
: 連携 :
この通りだ。確かにスキル的には弱い。しかしそんなことは霜葉は気にしない。それとモグラさんは群れの長のスキルを持っていなかったので五人では群れ認定されないようだ。霜葉は最低でも二桁はないといけないのかと考えたが、まずは残りのモグラさんもテイムすることに。全員をテイムし終わった後に・・・
≪テイムを確認。条件達成。【箱庭世界】がLv6にアップします≫
その声が響いたのを聞いた霜葉は【箱庭世界】に居るホワイトコボルトたちが気になった。Lvが上がって影響がないかを確認するために北斗に連絡を取った。
『北斗』
『おお、主様。何かご用ですか?』
『うん。実は今新しい子たちを仲間にしたんだけど。【箱庭世界】もLvが上がったんだ。何か起こらなかった?』
『それはおめでとうございます。ですが、こちらは特に何も起きなかったですぞ?念のため周りを調査させましょうか』
『お願い。僕たちもすぐにそっちに行くから』
『了解です』
霜葉はモグラさんたちの名付を後回しにして、【箱庭世界】の入り口を出現させた。いきなり現れた黒い渦にもぐらさんたちは困惑したが、白夜たちに先に入ってもらい彼らも意を決して渦に飛び込んだ。霜葉もそれに続き、目の当たりにしたのは・・・
「山が出来てる・・・・」
遠くの森だった場所に山が聳え立っているのだ。それほど高くないと思われるが、それでも山には違いない霜葉はいきなり緑豊かな森へとやってきたことに驚いているモグラさんたちを促してホワイトコボルトの集落へと向かう。
霜葉達が着いた場所は海岸からほど近い場所にある広い空間でそこには簡素な小屋が幾つも建ちホワイトコボルトたちが笑顔で生活している集落であった。そしてその奥には簡素な小屋で無く立派なログハウスが建っている。主たる霜葉に使ってもらいたくてコボルトたちが総力を挙げて造ったのだ。
以来、霜葉は野宿するならここで寝起きをしている。せっかく造ってもらったので生活して見れば快適だったので霜葉はコボルトたちにお礼を言い、コボルトたちは霜葉が喜んでくれたのが嬉しかった。
『主様。お帰りなさいませ』
『ただいま北斗。遠くに山が出来てたけど大丈夫だった?』
『わしも今困惑しております。本当に何も起きなかったのに調査に向かわせた者から聞いた時は信じられませんでしたよ』
『だろうね』
『現在は山に何人か向かわせることを検討中です』
『別に急いでやることでもないから、手が空いた子たちにやらせる程度でいいよ?』
『ふむ、そうですか?わかりました』
何も起きずに山が出来たのは不気味だが【箱庭世界】の中で危険はないと判断して調査はゆっくりでいいと指示して霜葉は新しく仲間になった子たちを紹介する前に名付を行うことにした。モグラさんたちは霜葉の予想通り家族であり父親に長男、長女、次男、末っ子の次女だそうだ。母親は運悪く霜葉達と出会う前に別の魔物に襲われ命を奪われたそうだ。
そのことに対してモグラさんたちは自分たちが弱かったからだと言っている。魔物の世界においては襲われて全滅しなかっただけマシだと。しかし、子供たちのためにも強くなって末永く一緒に生きたいから強くなれると言った霜葉の仲間になったそうだ。やはり家族思いなモグラさんたちである。
名付は父親は金剛、長男は黒玉、長女は天青、次男は黄玉、次女は天藍に決まった。どの名前も宝石の和名から石を省いた名だ。モグラさんにはぴったりの名前だろう。
『皆、これからよろしくね?』
『はい、よろしくお願いします主様』
『『よろしくお願いします!』』
『『よろしくなの~』』
どうも父親はしっかりした性格で、長男と次男は熱血系、長女と次女はおっとり系な性格かなと霜葉は考えたが、これからわかるかと考え直して楽しみになった。その夜は皆に金剛たちを紹介して親睦会と言う名の宴会を行った。霜葉が解体したこの日倒した魔物たちをおいしく料理して。
翌日。霜葉達は今日も暑さがきつい荒地を進んでいた。その場にはいつもの白夜たちの他に金剛一家も同行していた。理由は昨日の親睦会で金剛はガウェインと、黒玉と黄玉は新月と、天青と天藍は三日月とルナと仲良くなったのだ。それで今は一緒に行動していると言うわけだ。今日は魔物にも遭遇することなく進み、とうとう街の外壁が見えてきた。
『ようやく街に着いたね』
『そのようですな。では主殿』
『そうだね。ガウェインは【箱庭世界】に入ってくれる?』
『おや?ガウェイン殿は一緒に行かないのですか?』
『わしはスケルトンじゃからのう。人のいるところではいない方がいいんじゃよ』
『なるほど』
『金剛殿、お互いダンジョンで強くなろうぞ』
『もちろんですぞ』
親睦会の時に霜葉の目的は話てある。金剛たちも進化して強くなれることには驚き同時に努力する決意を固めていた。ガウェインを【箱庭世界】に送ってから霜葉達は街へと向けて進みだした。新月たちもブルーベアに退化済みだ。親睦会の時に退化を見せたら金剛たちは唖然としていたなと霜葉は思い出していた。
そうして外壁の門へと近づいたのだが、外壁はヒビが所々にあり、門もどこか古臭い。なんだか本当に街なのか疑いそうになるが、門番が二人いるから街で間違いないだろう。霜葉は門番さんに近づき・・・
「そこで止まれ!」
門番さんに止められた。素直にその場に止まる霜葉達。そんな彼らに門番は質問してきた。
「君はなぜ魔物たちと一緒に居るんだ?」
「ああ、僕は魔物使いなんですよ。ここに居る子たちは全員僕がテイムした子たちです」
「ま、魔物使いだと?本当なのか?」
「とりあえずこの子たちに簡単な指示をやってみましょうか?」
「そうだな・・・頼む」
そう言われ霜葉は白夜と十六夜にはお座り、お手、伏せを指示して見事にやって見せた。できたのでほめることも忘れない霜葉。その後も簡単な指示をこの場に居る子たちに伝えやってもらったところ・・・
「う~む、取り敢えず危険は無さそうだな。いいだろう身分証を見せてくれ」
「はい、どうぞ」
「ありがとうってCランク冒険者だと!?お前さんたちがか!?」
「はいそうですけど?」
「お前さん凄いんだな?魔物使いでCランク冒険者になれるとは」
「この子たちが居たからこそですよ」
「ばかいえ。こんなかわいい魔物たちが居るだけでCランクになれるかよ」
本当のことなのだがと霜葉は反論しようかと思ったが、どの道言っても信用されないだろうと考え直した。
「とにかく、通っていいぞ。しかし、もしかしてお前さんダンジョン目的か?」
「そうですが?」
「そうか・・・悪いことは言わん。明日にでも別の街のダンジョンを目指した方がいいぞ?」
「それってどういうことですか?」
「詳しく知りたいなら、冒険者ギルドに行って聞いてくれ。俺からはちょっとな」
「わかりました?」
疑問が残るがとりあえず街へと入り冒険者ギルドを目指す。しかし、入ってすぐにこの街の活気のなさが目立った。どこの店も閉まっていて出店がちらほらあるが人がいないためやる気にすらなっていないようだ。
どうにもおかしいと思い冒険者ギルドに急ぐ霜葉。目的地に着いたのだが冒険者ギルドもなんだか活気がなくギルドの看板も盾の前に剣が2本交差している絵も見えにくくなっている。ここで立ち尽くしても意味がないので白夜たちと一緒に中へと入る
中へと入った霜葉はここが本当に冒険者ギルドかとどこか別の場所ではないかと思った。誰もいないのだ。酒場で酒を飲む冒険者もどの依頼を受けるか仲間と相談する冒険者もそんな冒険者を相手にするギルド職員も誰一人。
「ん?客か?珍しいな」
いや、一人だけいたようだ。受付の奥からドワーフの男の人が現れたのだ。そんな彼は霜葉を見てとりあえずと言う感じで言葉を発する。
「悪いが依頼なら受付られねえぞ?見ての通り冒険者が居ないからな」
「いえ、依頼主ではなく今日この街にやってきた冒険者です」
「冒険者だと?それにお前さんの周りにいるのは魔物か?何者だよお前さん?」
説明をするためテーブル席へと座る霜葉とドワーフ。霜葉は自分がCランク冒険者で職業は【魔物使い】周りにいる子たちはテイムした仲間であることを話した。
「はぁ~魔物使いでCランク冒険者になれたのか。おまえさんすげぇーな」
「この子たちも頑張ってくれたからですよ。ところであなたは?」
「ああ、言いそびれちまったな。俺はダルバンだ。一応はここのギルドマスターってことになってる」
「一応?」
「ここは商王国の中でもハズレダンジョンだからな。俺みたいな嫌われ者はこういう所がお似合いってことさ」
「ハズレダンジョン?」
「お前さん何も知らないでここに来たんだな。しょうがねぇーから説明してやるよ」
ダルバン殿が説明するにはここのダンジョンは数ある商王国のダンジョンでもうまみが少ないダンジョンは通称ハズレダンジョンと言うらしい。ハズレダンジョンは色々あり敵が強すぎる場合や、魔物を倒した時に手に入る素材の価値が低い場合や、魔道具が全く出ない場合など種類がある。
そして、そんなハズレダンジョンでも街であるためにそこを治める領主や冒険者ギルドのギルドマスターはどうしてもいなければならない。だが、そんなところに好き好んで行く者も居ないので大半は厄介払いを兼ねた島流しに使われる。ダルバン殿も商王国内ギルドで何度か方針で衝突したことがあるらしく、そのせいでここに異動させられたと言うのだ。
「てなわけでこの街に居る責任者は俺や領主も含めて厄介払いされたんだよ」
「領主もなんですか?」
「ああ、なんでも商王国の貴族の中に貿易品を横流ししている奴がいたらしくてそれを追及したらここに異動させられたそうだ」
「詳しいですね?」
「街の安全について話し合うこともあるからな。もっとも収入源であるダンジョンがハズレじゃあ、金は集まらねぇしダンジョン目当ての冒険者も商人も来ないから街の雰囲気は暗くなるしで踏んだり蹴ったりだがな」
「ちなみにここのダンジョンはどういうハズレなんですか?」
「素材が価値がねえのと、魔道具が出ねえの二つだ。なんせ出てくる魔物はスケルトンとゾンビだけだからな。特にゾンビは悪臭がするからなお悪い。悪いことは言わねえからお前さんは別の街のダンジョンに行った方がいいぞ?」
ダルバン殿はそう言うのだが、霜葉は本当にハズレなのか気になった。
「ここのダンジョンは15階層あると聞いたんですか、最高到達はどこまでですか?」
「確か5階層までだったはずだぞ?でも、それを聞いてどうするんだ?」
「いえ、せっかく来たので15階層まで行ってみたいなと思いまして」
「話聞いてたのか?ここのダンジョンは入る意味がないぞ?」
「せっかくなので」
「物好きな奴だな?お前さんも・・・行きたいなら止めないが本当にきついぞ?」
「覚悟の上です。場所はどこですか?」
「はぁ~場所は・・・・」
ダルバン殿にダンジョンの場所を聞いて霜葉はお礼を言って早速向かう。霜葉達にとっては初めてのダンジョン挑戦はハズレと呼ばれる場所である・・・・
明日が七日間更新のラストです!