第二章 女王国編閑話2
七日間毎日更新4日目です。閑話なので短めです。
霜葉達が旅に出てから一か月近く経過した。その間に霜葉の友人たちは魔王との戦いのためにLv上げを頑張っていた。女王国の辺境の町である周辺の森で彼らはいつものように冒険者ギルドで依頼を受け討伐対象と戦っていた。
この日に健吾と裕佳梨に生徒会長が受けた依頼はとある魔物の討伐であった。その魔物とはホーンアーマービートルと言う名の昆虫型の魔物である。見た目としてはカブトムシに近いだろう。ただしその大きさは大型バイク以上もある巨大なカブトムシである。
そんな巨大生物を討伐するために健吾たちは他の召喚者にも協力を頼んで事に当たるのだった。以前なら他の召喚者は生産系職業に就いた者達であり戦闘力で言えば健吾たちよりは弱いと言わざる得ない。しかし、今この街には戦闘系の職業に就いた召喚者たちも数多くいるのだ。
理由は以前に王都へ行った際に他の召喚者たちに辺境の町へと来ないかと勧誘したのだ。その結果、王都周辺ではLv上げの効率が落ちてきた騎士団に入った者や冒険者になった者たちが興味を持ち辺境へとやってきたのだ。そして彼らは辺境の森での戦闘を経験してここがLv上げの効率では最高だと分かった。
その結果、王都の騎士団に入っていた召喚者たちの何名かは辺境の町の責任者であるガリレオ辺境伯の騎士団へと異動し、王都で冒険者をやっていた者たちの大半は辺境の町へと向かった。そのおかげで今辺境の町には戦闘力の高い者が多いのだ。そんな彼らとともに健吾たちは今戦っているのだ。
「ギィギィ!」
「おりゃ!」
ホーンアーマービートルの角を使った攻撃を健吾は持っている革盾で弾き返して敵の姿勢を崩した。そこへ・・・
「「おりゃ~!」」
大槌と大斧を両手に持った戦士風の軽鎧を装備した召喚者が左右から大型武器を振り下ろした。
「ギギャ!?」
この攻撃により敵の硬そうな甲殻は破壊されてそのまま動かなくなった。
「よし次だな!」
「待って三人とも!一応体力を回復しておこう?【エリアヒーリング】!」
大斧を持った召喚者が次の標的の所へ行こうとするのを裕佳梨が呼び止めて三人に体力回復の魔法術を施した。
「サンキュー裕佳梨」
「ありがとう水梨さん」
「水梨は心配性だな?これぐらいで疲れたりしないぞ」
「自覚がない場合もあるんだよ?疲れたって自覚した時には体力が一気に無くなる場合もあるしね」
健吾と大槌を持った召喚者は裕佳梨に感謝しているが、大斧を持った召喚者はどこか面倒そうに言葉を口にした。
「大丈夫だって!俺達は強いぜ!!」
「それは否定しないが、調子に乗り過ぎだと思うぞ?特にお前は」
「細かいことはいいんだよ!事実負けなしなんだから!!」
「負けた時には何かを失ってるかもしれないぞ?」
「うわ?なにそのセリフ?健吾よ~それ恥ずかしくないの?」
「俺は真面目に言ってんだよ!一度死ぬかもしれない事態になったからこその忠告だよ!」
「ああはいはい、気を付けま~す!じゃ会長と合流しようぜ?」
大斧を持った召喚者は明らかに真面目に聞いてませんと言いたげなセリフを口にして先に進む。そんな態度に後に残った三人はため息を吐いた。
「あいつは本当に調子に乗ってるな?」
「大丈夫かな?」
「こればっかりは本人の考え方だからな。事実これまで苦戦すらしなかったからな」
この二人は召喚されてこれまでいくつかの戦いを経験したが、どれも簡単に勝ち続けたのだ。この二人のジョブは【大戦士】と言う物で効果としては大型武器に対して高い適性がある。最初にスキルを調べた際も大槌術や大斧術などのスキルが高いLvだったのでこの二人はスキル通りの武器を選択した。
その結果大抵の魔物には一回の攻撃で片が付いてしまう。普通は大型武器の攻撃は当てにくいのだが二人の場合は筋力強化と身体強化も持っているので武器を軽く持ちあげてしまうのだ。そんな戦闘を続けた来たがゆえに大斧を持った召喚者は調子に乗ってしまったのだ。
「お前はそう言うことにはなってないんだよな?」
「ああ、強いとは思っているが、健吾が苦戦したと言うラージ種だったか?そんな話を聞かされては引き締める必要があるからな」
「あいつもそう言う考えにならんかね?」
「そうしてほしいけど聞く耳を持ってくれないからね」
三人は調子に乗っている知り合いが、大失敗をするのではないかと心配している。そんな会話をしながら先へと進んだ彼を追い駆けた。
「おい!遅いぞ!会長を待たせるなよ!」
「構いませんよ。こちらも今は解体している最中ですから」
「あ、それならこいつもお願いしてもいいか?」
「ああいいよ。そこに置いておいてくれ」
生徒会長たちのグループに合流した健吾たち。先に進んだ召喚者は遅れてやってきた彼らに文句を言ったが、生徒会長は気にしてはいない様子。健吾は引き摺ってきた魔物を解体している人たちに頼むととも周りを確認した。
「そっちも終わったようですね?」
「ええ、こちらは私も含めて魔法術が使えるメンバーが多かったですから」
この場には健吾と裕佳梨、生徒会長と他の召喚者が六人で合計九人いる。そのうち生徒会長が担当したホーンアーマービートルは盾持ちの前衛と魔法術が使える生産職で戦ったのだ。硬い甲殻を持つ魔物も魔法術を防げるような防御力は持ち合わせていなかった。
「おかげで解体が楽でいいが、そっちの魔物は砕けすぎだぞ?」
「しょうがないだろう!俺達の武器じゃあ砕く以外の方法なんてないんだから!」
「それもそうだな」
そう言って解体作業を進める生産者たち。しばらく経って解体が終わりすべての素材を生産者のスキルであるアイテムボックスに入れて町へと帰還する。その道中に・・・
「会長!この間おいしい食堂を見つけたんです!一緒にどうですか?」
「お断りします。どうぞお一人で行ってください」
「そんなこと言わないで行きましょうよ!」
大斧を持った召喚者は生徒会長をしつこく食事に誘っているのだ。生徒会長は徐々に機嫌が悪くなるが相手はそれに気付かない。むしろ周りが気付き始めてハラハラしている。
(聖夏先輩・・・こえ~)
(なんであいつは気付かないの!?)
(おい、誰か止めろよ!)
(さっきから止めようとしているが無視されている)
(それに周囲の警戒もしないといけないからな)
(それはそうだけど・・・)
(このままじゃ聖夏先輩爆発するかも・・・)
実を言えばこれまでに生徒会長は何人かの男に言い寄らえている。その中には身分の高い貴族もいたが、そのすべてを断っている。彼女にはすでに心に決めた人がいるからだ。断ったことでわかりそうなものだが、中にはこのようにしつこい者も居る。そんな輩には決まって・・・
「いい加減にしてくれませんか?」
「へ?」
(((((((来た~!?)))))))
生徒会長は迫力満点な声でしつこい男に語りかけ、雰囲気も怒れる女帝と言うのがピッタリの言葉だろう。そんな声でとある爆弾を言い放つ。
「私にはすでに心に決めた人が居てそんな彼に告白しようと思っています。あなたが入り込む余地はありませんよ」
「なぁ!?」
このように恋する乙女のセリフを堂々と言い放つのだ。大抵の男はこの迫力とギャップのあり過ぎる言葉を聞いて絶句するのだが、今日の男は往生際が悪かった。
「心に決めた人とは誰のことだ!?ま、まさか旅に出た動島のことかぁ!?」
「だったらなんですか?」
(会長。その返しは肯定同然です)
((((生徒会長・・・かっこいい!))))
((あちゃ~))
周りの者たちは場違いなことを考えたり、冷静に評価したり、健吾と裕佳梨はこの状況をどう収めようかと頭を抱えた。
「あ、あんな弱い職業に就いた奴よりも俺の方が強いですよ!」
「私はそうとは思えませんね。それに強さ的にもあなたより・・・・左に避けなさい!」
会話の途中で生徒会長は突然叫んだ。その言葉は届いたであろうに男はその言葉を無視した。そのことがこの召喚者のこれからのことを決めてしまった。
「いきなり叫んでどうしました」
ザシュ!!
「へ?」
召喚者の男はいきなり右手の感覚が無くなったのを不思議に思った。視線を向けた先には自分の右手があるはずだった。しかし、男の目に映ったのは右手の腕半ばで切られている断面だった。
「あ、あれ?お、俺の右手は・・・・ぎゃああああ!!!!」
ようやく右腕を切られたことを自覚して激痛が体を巡った。その結果を男に与えたのは後ろに現れた魔物だった。その姿はカマキリに酷似していた。だが全身が蒼い甲殻に覆われ鎌はメタルブルーに輝いていた。この魔物の名はリッパースフィア。音もなく獲物に近寄り切り刻む大自然に生きる暗殺者である。
「裕佳梨さん!私と一緒に彼の回復を!他の皆はあの魔物を頼みます!」
「わ、わかりました!」
「「「「「りょ、了解!」」」」」
「俺が敵を引き付ける!」
結論から言えば彼らは何の問題もなくリッパースフィアを倒せた。この魔物は暗殺は得意だが真っ向勝負は得意ではないのだ。しかし、戦った者たちの顔は暗い。それは召喚者から初めて重傷者が出てしまったからである。その重傷者は切られた激痛で気絶している様だ。
「聖夏先輩に裕佳梨。そいつの腕はどうなった?」
「幸い、切られた腕自体は無事ですし私と裕佳梨さんの回復魔法術ですぐに繋がりました。ですが・・・」
「何か問題なんですか!?」
「さすがに私たちは医者ではないので神経や血管も繋がったのかわからないんですよ。すぐに町に戻り治療院で見てもらう必要があります」
そう言われた彼らの行動は早かった。健吾が重傷者を背負い周りを警戒しながら町へと戻り、すぐに重傷者を治療院へと運び見てもらった。だが・・・・
「これ以上の処置が出来ないてどういうことだよ!」
「これ以上何をする必要があると言うんだね君たちは?この患者の腕が動くかは運次第だよ」
「運って、それだけなんですか!?血管や神経を繋げるとかは」
「ケッカン?シンケイ?君たちは何を言っているんだい?」
「「「「「え?」」」」」
「「「あっ!」」」
「ともかくこの患者にはこれ以上のことはできない。他にも患者がいるからこれで失礼するよ」
そう言って回復魔法術が使える医者は部屋を出て行った。これに関しては彼らはここが異世界であり医療の常識も未発達だと言うことを忘れていたのだ。むしろ回復魔法術と回復薬と言う便利な物があるせいで医療の発達はかなり遅れている。それこそ地球の中世よりも進んでいないと言えるほどに。
結局、腕を切られた召喚者は腕自体は繋がっているが全く動かすことが出来なかった。これをきっかけにしてその召喚者は戦いに恐怖を抱いてしまい。戦うことが出来なくなってしまった。しかも彼はその原因は自分ではなくその時一緒に居た者たちのせいだと言い始めたのだ
これに対して生徒会長たちは猛反論。彼が重傷を負ったのは安全ではない森の中に居たのにも拘らず警戒を怠り、さらには躱せと言われた言葉を無視した結果であり、すべては慢心していた彼自身のせいだと断言した。この証言は他の召喚者たちに信用された。
と言うのも重傷を負った召喚者が調子に乗っていたのは辺境の町に居る召喚者たちは全員が知っていたのだ。ゆえに今回のことは彼の自業自得であり、むしろ命が助かっただけでも感謝するべきだと召喚者全員が口をそろえて彼に言った。
それに納得できない彼は生徒会長に償えと言い続けたが、誰も彼には味方しなかった。むしろ、彼が生徒会長に言い寄っていたのは知っているため、誰もが彼を見る目が変わったのだ。都合のいい理由を並べて自分勝手なことを言い始めた彼には味方がいない。結局、彼は王都へと運ばれしばらく誰とも合わなくなった・・・
「くそ!くそ!くそぉ!!なんで俺がこんな目に合うんだ!?俺は強かったんだ!こうなったのは周りがいけないんだよ!俺のどこが悪いんだよ!!」
「ええ、あなたは悪くありませんよ?」
「だれだよ!?」
「あなたの味方ですよ?」
「味方だと・・・?」
そんな彼に不穏な影が近づいてしまった・・・・・
明日も更新します! 次は二章登場人物紹介と霜葉の仲間紹介に二章終了時の霜葉達のステータスです。




