第二章 第十八話 魔人国編18
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霜葉達は闘争の魔王に遭遇して戦闘になり絶体絶命のピンチを迎えたが、霜葉の咄嗟の機転で何とか全員が無事であった。とは言え霜葉たちにとっては初めての敗北であり、いろいろ考えさせることになるのだった。さらに、戦闘中に行った白夜たちの行動が霜葉の心を傷つけてしまい、白夜たちは己の行動を深く恥じた。
その際に霜葉の言葉である自分自身も守ってほしいと言う言葉を重く受け止めたガウェインは白夜たちにとある提案を持ち掛けた。翌日にガウェインはその提案を霜葉にも打ち明けて次に向かうダンジョンが一番多くある商王国では自分たちの進化を最低でも2回ほどするまでは長期滞在してほしいと言う提案だ。
霜葉はこの提案を受け入れ闘争の魔王との戦いで自身の考えも甘いと痛感し、これからは積極的に仲間も増やして自身の能力を強化していくことを誓った。こうして霜葉達は新たな気持ちで旅を再開した。
闘争の魔王との戦闘から数日が経ち、霜葉達の商王国への旅は順調だった。むしろ順調すぎた。先の戦闘での敗北をきっかけにして霜葉を含む皆が強くなるために積極的に戦おうと思っていたのだが、なかなか魔物に出会わないのだ。
この数日に出会った魔物はアンバーウルフ三体にレッドウルフ七体のみ。これではあまりに戦闘力に違いがあり過ぎてLvは上がらない。態々森の中に入り探索も行ったのだが魔物には出会わなかった。今までが順調だっただけにここにきて不調は痛い。仕方なく霜葉達は先を急ぐことにして商王国に入る前の魔人国最後の街で情報収集と準備の最終確認を行うことにした。
ここらで商王国とダンジョンに付いて詳しく説明しよう。商王国 タンワオの国土はほぼすべてが荒れ地であり荒野である。一部などは砂漠化していて、北の山々は雪が降り続いている環境が厳しい国だ。そのせいでこの国は食料、木材、布製品などは他国との貿易で賄っている。
しかし、貿易をするためには売る物がないと意味がない。商王国がどこでそれらを手に入れているかと言うとダンジョンなのだ。ダンジョンで手に入る魔物素材や魔道具はどれもが貴重であり、高値で取引される。また、商王国に住んでいるのは大半がドワーフであるのでダンジョン産の魔物素材で造られた武具も人気の品だ。
商王国は環境が厳しい代わりにダンジョンが最も多い国で街には最低一つはダンジョンがあり、そのダンジョンから商品を集めたり、または素材で商品を生み出したりして国を支えているのだ。商王国 タンワオはダンジョンによって栄えた国である。
そのダンジョンに付いては残念ながら詳しいことは何一つわかっていない。そもそもなぜダンジョンと言うのが存在しているのかさえわかっていないのだ。研究者たちは様々な仮説を立ててはいる。曰くダンジョン自体が魔物ではないか。曰く神が地上の者たちに残した試練ではないかなど様々なことが言われているが証明できる手段さえ不明だ。
ダンジョンに付いてわかっていることと言えば、入り口が地上部分にあり地下空間が広がっていることと、その空間には様々な場所が存在している。洞窟、遺跡、森、砂漠、海岸などなど本当に様々だ。一つの空間に上り下りできる階段があるためそれらを探して次の階層へと行く。
階層の深さはダンジョンによって違い10階層未満もあれば30階層以上もある物まで深さは異なる。共通点は深い場所は強力な魔物や貴重な魔道具が出やすいことだ。魔物も続々と出てくるためダンジョン自体が生み出しているのではないかと言われている。そのせいでダンジョンを放置すれば魔物があふれ出てくるので定期的に中に入り魔物を討伐する必要はあるが、それさえクリアーできるのならばダンジョンは無限に資源を生成する宝物庫だ。
ダンジョンで手に入れた魔物素材や魔道具は発見した者に所有権があり、それを売るのも自分の物にするのも自由だ。それゆえ一攫千金や強い武器の魔道具を手にすることを夢見る腕に覚えのある者たちがこぞってダンジョンを目指すが、成功する者達はごく一握りである。
霜葉達もダンジョンで白夜たちのLvを上げて進化を目標にしている。そのためにも現在の商王国で一番簡単なダンジョンや一番難しいダンジョンの情報を集めているのだ。その結果は、この魔人国の街から一番近い商王国の街に15階層のダンジョンがあるらしくそこをまずは目指してみることにした。
さらに商王国の王都には50階層以上のダンジョンがあるらしく、そこのダンジョンの歴代最高到達者は62階層まで行ったらしい。なぜわかったのかと言うと商王国ではダンジョンカードなる物がダンジョンに入る者たちに渡されてそれには到達階層が刻印されると言う。それによってダンジョンに入った者がどれほどの偉業を成したのかが分かり、その者たちの証言は信用されダンジョンの詳しい地図や出てくる魔物などの情報に役立てると言う。
目的地も決まったのでその街の冒険者ギルドで持っていた魔物素材を売り、市場で野菜や果物を買い込んでその日のうちに街を出た。夜になったら【箱庭世界】で野宿だ。
『とりあえず目的地も決まったし、道中も積極的に魔物を探してLvを上げようね』
『了解ですぞ。運がよければダンジョンに潜る前にわしは進化するかもしれませんからな。楽しみです』
『おじいちゃんはどんなのになるんだろうね?』
『楽しみです~』
『わくわくするな』
『私も~』
『きっとカッコいいのになる・・・』
『おじいちゃんもかわるの~?』
白夜たちもガウェインの進化先は気になるらしく話は盛り上がった。翌日も霜葉達は先を進みながら魔物を探していた。しかし、この日はまだ魔物に出会っておらず先を急いだ方がいいかと思っていたら・・・
『ご主人!いい匂いと嫌な匂いがするよ!』
『主!私も聞こえました!こっちです!』
『みんな行くよ!』
『『『うん!』』』
『承知!』
『は~い』
白夜と十六夜がスキルに反応があったようだ。二人を先頭にしてその場所まで行ってみると・・・
『あれは・・・コボルト?』
そこに居たのは赤い体毛をしている二足歩行の犬であった。他にも白い体毛の小さなコボルトもいたのだが、様子がおかしい。赤いコボルトは六体いるのだが、その赤いコボルトは小さな白いコボルトを包囲して攻撃を行っている。小さな白いコボルトは二体いてそのうちの一体がもう一体に覆いかぶさり攻撃から守っていた。どう見ても赤いコボルトたちが白い小さなコボルトをいじめているような現場だ。
事実、赤いコボルトたちは手に木の槍を持っているのだがそれを軽く突いているらしく小さな白いコボルトは徐々に傷が増えてその様を赤いコボルトたちは笑っていた。それを見た霜葉は・・・・
『皆、あの小さなコボルトさんを助けよう』
『『わかった!』』
『『『了解!』』』
『やるの~!』
『わかりましたぞ!』
そうと決まったら皆の行動は早かった。まずは白夜が咆哮を使い赤いコボルトたちを強制的に視線を自分へと向けさせた。そのせいで赤いコボルトの何体かが味方を攻撃している。その混乱の隙をついて新月たち熊組とガウェインが爪や剣で切り倒した。残りの二体は十六夜とルナのアロー系魔法術によって倒された。
そうしてあっという間に倒された赤いコボルトたちはとりあえず霜葉のアイテムボックス・極に入れられ、傷ついている白いコボルトを見るため近寄ったのだが・・・・
「ガ、ガルル!」
傷ついた白いコボルトは庇っているコボルトを守るために傷つきながら霜葉を威嚇している。周りには明らかに格上の魔物が居るのにも拘らずである。中々気骨のあるコボルトだ。
『ほほ!このホワイトコボルトは見所がありますな!』
『ホワイトコボルトって言うんだこの子たち』
『はい。コボルト種の中では大人しい種族ですな。反対に先ほどのレッドコボルトは凶暴で戦いを好む種族ですぞ』
などと話していると威嚇していたホワイトコボルトは気絶してしまった。どうやら体力が限界だったようだ。庇われていたホワイトコボルトが心配そうに鳴き声を上げている。
「クウ~ン」
「待っててね。今すぐに傷は治してあげるから。【ヒール】!」
霜葉はすぐに回復魔法術を傷ついたコボルトに施した。幸い傷は多くとも深くなかったのであっという間に回復して苦痛の表情だったのが穏やかな眠り顔へと変わった。
「クウ~zzz」
「ワン!」
「これで大丈夫だよ?あとは目が覚めるまで安静にしてようね」
「ワフン」
庇われていた小さなコボルトは霜葉が何とかしてくれたと気付いているらしく、深々と頭を下げた。それからは傷ついたホワイトコボルトが起きるまで辺りを警戒しながら霜葉は倒したレッドコボルトたちを解体し始めた。素材は毛皮と魔結晶しかなかったが、それでも貴重な収入源だ。ゴブリンよりは毛皮があるだけマシという物だ。
コボルトは亜人系魔物の中ではゴブリンよりも弱い亜人系最弱魔物として有名だ。だが、種族は多種多様でレッド、ホワイトの他にも種族が存在する。その中でレッドコボルトは一番凶暴らしく、自分たちより弱い生き物を快楽目的で傷つけることがあるらしいとガウェインから解体しながら霜葉は聞いていた。
『そう言う意味ではレッドコボルトもゴブリンと同じで見つけた場合は駆除が求められますな』
『そうか・・・・レッドコボルトはこの六体だけだと思う?』
『十中八九どこかに群れがあるでしょうな。そこで主殿・・・』
『うん、僕たちのLv上げのためにも倒しに行こうか』
『それがいいでしょう。もっともレッドコボルトはゴブリンよりも弱いですから余りLv上げにはなりそうもありませんが』
『それでもほうっておくことはできないよ』
『御意』
などと話しながら解体を終わらせて残った死体は【クリーン】を掛けて遠くの草むらの中に放り投げた。ウルフ系の魔物が食べてくれるだろう。解体作業が終わったころに傷ついていたホワイトコボルトが目を覚ました。
「ワン?」
「ワフ!」
二人のホワイトコボルトはお互いの無事を確かめるように抱き合った。だが、すぐさま片方のホワイトコボルトが周りにいる霜葉達に気付いて、もう一人を庇うように威嚇の声を上げる。
「ガ、ガルルル!」
『大丈夫だよ?僕たちは君たちを傷つけたりはしないよ?』
そんなコボルトに霜葉は【思念会話】で話しかけた。突然に頭に響いた声に驚いたようで二人のコボルトは戸惑っている。
『これは僕の能力で君たちの頭に直接語りかけてるんだ。これで君たちと会話ができるよ?』
『ほ、本当か?』
『うん』
『すごい!本当に人間と会話ができてる!』
片方のコボルトは初めて人間と会話が出来たのがよほど嬉しいのかその顔は笑みを浮かべている。犬の顔だが霜葉には判別できた。白夜で慣れているのだ。
『ところで君たちはどうしてこんなところに居たの?』
『そ、それは・・・・』
『あのね、お兄さん。実は・・・』
傷ついて倒れた方は話すのを躊躇していたが、もう一人が話してくれた。なんでもこの子たちのホワイトコボルトの群れは10日前からレッドコボルトの群れに襲われていると言う。ホワイトコボルトたちは若い者たちを守るために年寄りたちが先頭に立って戦ったのだがことごとく倒されてしまい、残っているのは群れの長と若い者たちだけであると言う。
しかも、レッドコボルトたちが襲ってきてからロクな食べ物を口にしてないので全員が空腹でレッドコボルト達に殺される前に餓死する危機なのだと言う。この子たちはせめて子供達には食べられる果物や野草などを与えてあげたくて群れをこっそりと抜け出して食料を探しに来たらしい。その探していた道中にレッドコボルトたちに発見されたというわけだ。
『なるほどね。君たち無茶するね?』
『だって!俺らより小さな子が腹を空かして泣いてるんだよ!?だから・・・』
『それでも君たちだけで何とかするのは無理だったろう?こう言う時は大人たちに相談して一緒に探すとかするべきだよ』
『う・・・』
『ごめんなさい・・・』
『僕に謝っても仕方ないよ。でも事情は分かった。幸い僕のあるスキルの中に食料はいっぱいあるからそれを君たちの群れに上げるよ』
『『え!?』』
『君たちの群れには危害を加えないって約束するから、群れのいるところまで案内してくれない?』
突然の申し出に二人のコボルトは困惑している。だが、群れの状況を考えるとここで断るのもできない。ゆえに・・・
『わかった案内するよ。でも!約束を破ったら一生恨むからな!』
『うん、ありがとう。約束は必ず守るよ』
彼らにできることはせいぜい恨み言を一言と言ってやることだけであった。そんなわけで二人のホワイトコボルトたちの案内で群れの場所へと向かう霜葉達。その道中に食べられる物を白夜が探し当てて二人のコボルトは白夜には懐いてしまった。当の白夜は喜んでいるので問題ないが。
『ところで主殿は何をお考えで?』
『内緒だよ』
『だいたい予想は付きますが』
ホワイトコボルトたちの案内で霜葉達は森の奥深くの荒れ地との境目にやってきていた。おそらく荒れ地の向こう側が商王国なのだろう。その場所には大きな岩場がありそこに身を隠すようにホワイトコボルトを群れが居た。群れは現れた霜葉と魔物たちに驚いて混乱している様だ。そんな中・・・・
「「ワン!」」
「「「「ワ、ワン!」」」」
先頭に居たコボルトたちが鳴き声を出して、群れは初めて二人を認識したようだ。二人は群れへと駆けだしてそのまま・・・群れに居た一人のコボルトによって頭に拳骨を落とされた。
「「キャン!?」」
「ワン!ワワン!!」
そのまま始まるおそらくはお説教。ワンワンと大人のコボルトが鳴き続けるにつれ叱られている二人のコボルトは徐々に落ち込みだした。しばらくお説教は続き終わりになって叱られているコボルト二人が何度か鳴き声を出すとお説教をしていた大人のホワイトコボルトが近づいてきた。
『どうも。初めまして』
『なんと・・・本当に人間と会話ができるのう。この度は同胞を助けていただきありがとうございます』
そう言うと大人コボルトは頭を下げた。この大人コボルトはよく見ると他のコボルトと違い一回り小さい他は100㎝くらいはありそうなのにこの大人コボルトは腰が曲がっていて80㎝に見えてしまう。
『わしはこの群れを長をしている者です。あの二人から聞いたのですが、食料を与えてくださるそうですが、まことですか?』
『ええ、本当ですよ?今から出しましょうか?』
『ここではまずいですぞ?匂いでレッドコボルトどもに我らの居場所がばれかねない。岩の間に大きな空間があります。そこでお出しくだされ』
そう言って群れの長は霜葉達を案内してくれた。確かに案内されたところはすり鉢状になっている広い空間であった。まるで巨大な岩をくり抜いた様な場所だ。そこに霜葉はアイテムボックスからいくつかの倒した魔物のお肉の塊と野菜、果物、食べられる野草を取り出した。そうしたら群がる群がる何人もののコボルトたちが。
お肉は大人たちが食べて、子供たちは果物や野菜を食べていた。普通は逆ではないのかと思う霜葉であったが、好みの問題だと思うことにした。長も霜葉の出した野草を食べているところだ。
『助かりましたぞ。これで少なくとも餓死することは無くなりました。もしゃもしゃ』
『話すことがあれば食べた後でいいですよ?』
『ご厚意かたじけない。もしゃもしゃ』
そう言って長も食べることに集中しだした。やがて腹一杯になったコボルトたちは満足げに寝転んでいた。その間見張りが出来そうにないので霜葉は白夜と十六夜、ルナに頼んで見張りをしてもらった。ルナは飛んで行き空から見張りをしてもらう。
『まずは食料を与えてくださりありがとう。二人だけではなく群れ全体も救ってくれました』
『いえいえ、ちゃんと対価は貰いますので』
『・・・何をお望みで?ここには人間が喜ぶものはありませぬが?』
『単刀直入に言います。僕の仲間になる気はありませんか?』
『な、仲間?』
霜葉の言葉に長は驚いた。なにを要求されるかと思っていたら自分たちを仲間にしたいと言うのだ。
『なぜ我々を?こういっては何ですが我らは弱いですぞ。仲間にするならばレッドコボルトの方が強いですぞ?』
『あれはダメです。仲間になっても仲良くできそうにありません。あなた方の方が仲良くできそうなんです』
ここに来るまでに霜葉は白夜と十六夜に彼らの匂いや音はどうかと聞いてみた。二人はいい匂いといい音と言い太鼓判を押した。二人がそう言うなら問題ないのだ。レッドコボルトは逆であったし。
『ですが、やはり強さ的にも・・・』
『その点は大丈夫です。僕には仲間を強くできる能力があります』
『強くできる能力?ま、まさかあなた様は【軍勢の魔王】ではないですか!?』
『あれ?ご存知なんですか?』
『おお!!何と言うことか!!』
そう言って群れの長は感激したように震えていた。詳しく聞いてみると、長は【軍勢の魔王】のことを先々代の長より聞いていたとのこと。なんでも先々代の長は当時の【軍勢の魔王】の配下であったようでその魔王の命尽きるまで共にいたそうだ。当時の魔王が力尽きてからは同じく配下であった群れを率いていたが、代を重ねるごとに弱い種族になってしまい現在の群れが出来上がったと言う。
『先々代の武勇伝は子供の頃によく聞いておりました。その武勇伝で聞いていた今代の【軍勢の魔王】に会えるとは、しかも仲間に誘われるとは!』
『では、仲間になってもらえるので?』
『むしろこちらからお願いいたします!あなたの軍勢に加えていただきたい!』
それからは話が進み今日中に長が皆にこの方の仲間になると広間で発表。それに対して反対意見などはなかった。子供たちを助けたことと、食料を与えたこと、そして現在の状況では自分たちよりも強い魔物を連れている霜葉の庇護下に入った方がいいと判断したようだ。そしてまずは長に対し霜葉はテイムを発動。するとこれまでとは違った反応になった。
≪群れの長の【ホワイトコボルト♂】のテイムに成功。条件達成。これより群れすべてに対してテイムを行います。群れすべてのテイムに成功。総数28人のテイムを確認。条件達成。【箱庭世界】がLv5にアップします≫
「「「「ワ、ワオ~ン!!」」」」
『な、なんだ!』
『力が溢れてくる!』
『すごいよ・・・』
『これはいったい?』
『みんなどうしたの?』
『わかりませんが急に力が湧いてきたのです。まるでいきなり身体能力が上がったかのように』
それを聞いて霜葉はジョブ効果である【軍勢】を思い出した。【軍勢】は仲間が多いほど自分自身や仲間の能力が上昇する効果を持つ。今までは仲間の数が少なくて効果を実感できなかったようだが、今この時は28人もの数を仲間にしたことで効果が認識できるほど身体能力が上昇したのだろう。霜葉には自覚はないのだが魔物と人の感覚の違いであろうか?さらに・・・
≪群れをテイムした場合はその長だけに名前を付けてください。そうすることで群れを任せることができ主の固有スキルの一部を使えます≫
どうやら魔物単体と群れの長をテイムする場合では仕様が異なるらしい。まぁ、便利と言えば便利ではある。これがなければ全員分の名前を考えなければならない所であった。ちなみにホワイトコボルトの長のステータスはこちら。
名: なし
種族: 【ホワイトコボルト♂Lv3/Lv10】
スキル: ひっかきLv2 : 精密作業強化Lv4 : 木工Lv4
: 群れの長 :
他のホワイトコボルトも似たようなステータスであり違いは【木工】の代わりに【皮革】や【調理術】や【農業】とか【調薬】なんてのもあった。【精密作業強化】は手先の器用さの強化であるようだ。生産スキル持ちなら役立つスキルだろう。【群れの長】と言うユニークスキルは率いている群れに対して指示や命令などが聞こえやすくなる物だ。おそらくはこのスキルのあるなしで群れであるかを判断しているのだろう。
『とりあえず、君の名前を決めようか』
『な、名付をしてもらえるので!?』
『さすがに全員は無理だけど、君はこの群れの長だからね。ふむ・・・よし決めた!君は今日から北斗だ』
『北斗・・・あ、ありがとうございます!』
『これからよろしくね』
名付が終わったら、次は群れの全員を【箱庭世界】へと案内した。いきなりLv5まで上がったのでどうなったかも知りたいからだ。そんな軽い気持ちで白夜たちも呼んで入ったのだが・・・
「なにこれ・・・」
そこに広がっていたのは森だった。海岸の砂浜から視線を逆に向けると森が出来上がっていたのだ。今朝までは木が数本生えているだけの島だったのが、今では立派な森がある規模がデカい島になっていた。白夜たちもこの変わりようには驚いている様だ。一方でホワイトコボルトたちはと言うと・・・・
『立派な森ですな!よく見れば果物もありますぞ!』
砂浜と森の境目にあるヤシの木らしき物に生っているヤシの実を取るために木を登ろうとしているところであった。何人かが取ることができ器用に爪で半分に切ると中から果汁があふれ出た。それを見た他のコボルトたちは一番上だけを切り器用に果汁を飲みだした。やはりヤシの実で合っている様だ。
他にも色々果物が生えているのでここに居るだけで餓えることはないだろう。とりあえず霜葉は砂浜に用意してあった野宿用の道具をすべて片づけて、別の場所に置くことにした。その前にやることもあるのだ。
『とりあえず北斗。みんなで協力して木の槍や木の弓とか作れるかい?』
『これほどの森ならば材料も探せばあるかと・・・しかし、何をするおつもりですか?』
『何ってレッドコボルトたちが攻めてきた場合を考えての装備作りだよ?』
『えっ?』
『ここにずっといるって選択肢はないんだよ。出入り口はさっきまでいた場所に固定だからあそこにレッドコボルトたちがやってきた場合は戦わないと』
『わ、わかりました!すぐに造り始めます!』
そしてコボルトたちは材料を探すために森へと入りいくつかの使えるものを発見した。伸縮性のある蔦やよくしなる木の棒。ちょうどいい太さの木の棒などなど。素材の宝庫であった。これらをホワイトコボルトたちは器用に爪を使い削り出したのだ。しかもほとんどの者が以前よりも造りやすいと言いどんどん武器を造ってゆく。
『ですが、我々は武器を扱ったことがないのですが?』
『それは心配無用じゃぞ』
『ガウェイン殿?』
北斗にはここに来る前に白夜たちを紹介済みだ。レッドコボルトたちの一件を片付けたら全員に紹介する必要があるだろう。
『お主たちには木の槍でもすぐに造れる器用さがある。武器の扱いには器用さも必要じゃ。お主たちならば簡単な武器なら使いこなせよう』
『そうなんですか?』
『いざとなれば我々もおる。そう心配せんでもいいぞ?』
『は、はい・・・』
北斗はまだ半信半疑であった。強くなった実感はあるがこれでレッドコボルトたちと戦えるかどうかが。そんな北斗の心配を霜葉も気付いてはいるが、いざとなれば皆もいるし自分も援護すればいいだけと考えている。そして・・・
霜葉は【箱庭世界】の入り口を見ているとやはりレッドコボルトたちがやってきていた。数はだいたい30前後。こちらの方が数が多いし実力では余裕で勝っているのが七人もいるのでそんなに心配はしていない霜葉であった。
『じゃあ、作戦通りに』
『は、はい!』
霜葉が声を掛けた北斗はがちがちに緊張していた。無理もない話ではある。今まで敵わなかった相手にこちらから戦闘を仕掛けるのだから。よく見ると他のコボルトたちも緊張している様だ。しかし、時間は彼らを待ってはくれなかった。
「グゥー!」
「マァー!」
「グルー!」
「「「「ワ、ワン!?」」」」
いきなり自分たちの目の前に現れたスケイルベア、ウールベア、アースベアにレッドコボルトたちは驚き混乱した。その混乱に紛れてホワイトコボルトたちも【箱庭世界】から出てレッドコボルトとホワイトコボルトの生きるか死ぬかの生存競争が始まった。近くに居たレッドコボルトに向けホワイトコボルトは手製の木の槍を緊張しながらも突き出す。
「ワ、ワン!」
「ブキャン!?」
「ワン!?」
その槍はあっけなくレッドコボルトの頭を貫き絶命させた。その光景は他の所でも見られホワイトコボルトがレッドコボルトを圧倒している。その様子を岩の上から見ていた北斗は信じられなかった。
『こ、これは、すごいですぞ!』
『今だよ北斗!移動していた子たちに合図を!』
「!ワ、ワオ~ン」
レッドコボルトたちが今まで散々勝ってきた相手であるホワイトコボルト相手に苦戦していると、突然、咆哮が響き渡り一番高い岩の上にホワイトコボルトが立ち並んでいるではないか。その腕には手製の弓と腰には矢が入れられている矢筒がある。彼らが出てきた時には槍を持つホワイトコボルトは大きく離れていた。
「ワオン!」
「「「「「ワオ~ン!」」」」
北斗の合図で一斉に弓を構え矢をレッドコボルト目掛けて撃ち放つ。次々と矢が当たり苦痛の声を漏らすレッドコボルト。さすがに矢では頭に命中しない限りは絶命しないがそれでも傷が出来て動きが鈍る。そこへ一度矢が止まると再び槍を構えたホワイトコボルトが襲いかかる。それの行動を繰り返して生存競争の勝者はホワイトコボルトになった・・・・
戦いが終わりこの場にはレッドコボルトの死体が散乱していた。ホワイトコボルトたちは長の指示でレッドコボルトから毛皮と魔結晶を剥ぎ取っているところである。いまだ実感がないのであろう。自分たちを散々苦しめていたレッドコボルトを自分たちで倒したことが。北斗も同様であった。
『信じられません・・・わしたちが勝ったのですか?』
『うん。君たちだけで敵対していたレッドコボルトを倒したんだよ?』
『・・・・いえ、わしたちだけの力ではありません。主様たちの助力があったからこそです』
『ふふ。そう思ってくれるから仲間にしたんだよ。これからもよろしくね?』
『はい!わしたちは末永く主様の傍にいますぞ!!』
その直後、北斗は勝利の咆哮を上げた。それに続いて他のコボルトたちも咆哮を上げて勝利を喜んだ。その声は霜葉も称えている様であった。その後は毛皮と魔結晶はすべて剥ぎ取り死体は森と荒れ地の境目に放置した。霜葉は魔結晶は貰って毛皮はホワイトコボルトたちに与えた。自分たちの成果として役立ててほしいと北斗に言って。
それから北斗たちはこの毛皮で革製の服を上下造り自分たちのシンボルとした。【箱庭世界】では赤い服を着たホワイトコボルトたちが自分たちの住処を造るとともに主たる霜葉のログハウスも造り出した。少しでもお役に立ちたいのと恩を少しでも返すために。その屋敷が完成した日は新しい仲間たちの歓迎を兼ねて盛大に宴が行われた・・・・・
これにて魔人国編は終了です。次は閑話で健吾、裕佳梨、生徒会長のお話です。
明日も更新します!




