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第二章  第十七話  魔人国編17

7日間毎日更新2日目です。お楽しみください。

霜葉達は魔人国から商王国 タンワオへ行く準備を済ませ旅立った。その道中で新月、三日月、無月の三人を進化させて戦闘力の強化を行った。新月はブルーベアからスケイルベアに。三日月はウールベア。無月はアースベアとバラバラの進化先を本人たちは選んだ。


進化した種族はガウェイン曰く、ゴブリンキング程度なら互角以上に戦えると言う。実際戦闘を行ってみれば霜葉の援護なしで魔物を圧倒した。このまま順調に旅が進むかと思われた時、霜葉達の目の前に闘争の魔王が現れ戦闘が始まったのだ。霜葉たちにとって実力者との最大の戦いが始まる。


出会いがしらの攻防で霜葉たちを実力者と認識したらしい闘争の魔王のサージス。笑いながら楽しませろと言い、体から放たれる圧を強める。霜葉はこの圧は殺気とか闘気と呼ばれる物かと考えながら、闘争の魔王と言うジョブと固有スキルや見たことがないスキルを超鑑定で確かめる。


 【闘争の魔王バトル・ロードLv39】

戦闘系職業の最上級職業。肉体や武器を使う戦闘系スキルを数多く持った者にしか就くことができない職業。魔法術関連は壊滅的だが、魔力を直接操作できる【魔闘術】と言う専用ユニークスキルを持つ。さらに戦闘系のスキルを習得しやすくなる【武道】。そしてこの職業最大の特徴は【闘争】である。戦いが長引けば長引くほど自身の能力が強化される。ただし戦闘が終われば元の状態に戻る。


 【限界突破リミットオフ

肉体系戦闘スキルのLv限界をなしにする。ただしLv10以上にするには経験以外に条件をクリアーする必要がある。


 【戦の世界バトルフィールドLv4】

自身を鍛えることが可能な世界を作り出す。Lvが上がればできることが増える。ただしこの世界でジョブのLvは上がらない。スキルLvは上がるが倍以上の経験が必要。


 【闘争本能Lv4】

自身より強い相手または自身よりも優れている能力がある相手を察知する。Lvが上がればより広範囲に効果が表れる。


 気配察知・極

気配察知のスキルLvがMAXになると手に入るスキル。相手の位置に力量までわかるようになる。


 魔闘術

闘争の魔王のジョブの専用ユニークスキル。魔力を直接操作して体に纏わせたり、体から放つなどをして戦うことができる。



固有スキルは戦いの準備に便利そうなスキルではあるが、ジョブの効果と初めて見るスキルがかなり厄介である。気配察知・極はこれがあるだけで十六夜の隠業が役に立たない。魔闘術は使い勝手のよさそうなスキルだ。体に魔力を纏えば鎧代わりになるだろうし、体から放てば魔法術代わりの遠距離攻撃手段にもなるだろう。それ以上に厄介なのがジョブ効果の【闘争】だ。彼を相手にする場合は長期戦は下策。ならば・・・


『皆!戦いが長引けばこちらが不利だ!短期決戦で行くよ!』

『『わかった!』』

『『『うん!』』』

『がんばるの~!』

『承知!』

「まずは【フルブーストワイド】!」


霜葉は【思念会話】でこの戦いを長引かせない様に言い。付与魔法術で全員の能力を底上げした。次に動いたのは・・・・


「ワオ~ン!」

「ニャー!」

「グルー!」

「ぴー!」


白夜と十六夜に無月とルナが魔法術を放った。白夜と十六夜はアロー系を。無月とルナはボール系の魔法術を放ちそれらは一直線に闘争の魔王へと向かう。さすがに魔法術関連の能力が低いジョブであるためか受けようとはせずに、回避しようとする。だが・・・・


「【フルカース】!」

「なんだと?」


霜葉は相手の身体能力を大幅に下げる付与魔法術を闘争の魔王に掛けた。それにより身体能力がいきなり下がったことで回避のタイミングを狂わすことに成功した。闘争の魔王は回避は無理と判断して腕の手甲を前面に構えて受けようとする。


パッキン!!

バチィン!!

ボワ!

チュドドド!!

「く!?」


魔法関連の能力も付与魔法術で強化された魔法術は闘争の魔王にダメージを与えた。それでも魔闘術を使用することでダメージを最小限にされたがそれでも戦闘が始まって初めて闘争の魔王は苦痛を感じている。


「グゥー!」

「なめるな!!」


魔法術が放たれた直後に新月とガウェインは敵に向かって駆け出していた。走る時は四本の足を使っている新月が先に攻撃できる距離に到達したので爪の生えた右手を振るう。闘争の魔王はこれを迎撃するため拳を突き出す。両者の攻撃は・・・


ガキイ~ン!!!


拳と新月の右手は激突して甲高い音を辺りに響かせた。よく見れば闘争の魔王の拳は新月の右手の鱗に触れておらず、若干の隙間がある。魔闘術を使用して魔力を拳に纏わせているのだ。相手はさらなる攻撃を新月に放とうとするが・・・


「ちっ!」


新月の腕を弾いてバックステップでその場を離れた。その直後に闘争の魔王が居た場所に盾を構えたガウェインが突っ込んだ。この攻撃を躱した闘争の魔王は両掌を前に突き出した。


「破あっ!」


その瞬間両掌から、青い球体が放たれた。魔闘術による魔力の放出攻撃だ。二個の球体はもうスピードで新月とガウェインに向かってゆく。


「ぴー!」

ボン!


だが、空から飛来した黒い矢のような物がその球体に接触。爆発音を響かせて球体は消失した。闘争の魔王が空中を一瞥するとそこには霜葉の肩に止まっていた鳥が飛んでいた。恐ろしく羽音をさせずに。


「ぬ、こいつはシルバーウィングか!まだ子供だが厄介な!」

「ワオーン!」


ルナの存在を認識した次の瞬間には近くへと移動していた白夜が咆哮を上げた。その結果またしても視線が不自然に白夜の方へと向いてしまう。Lv差で少しの間の視線誘導でしかないが,その少しの間が貴重な攻撃の瞬間なのだ。


「ニャー!」


白夜が作った攻撃の瞬間に合わせて十六夜が【サンダーアロー】を放つ。視線誘導が解除されて闘争の魔王は拳に魔力を纏わせて迎撃を行う。しかし、直前まで別方向に視線が釘付けだったのが災いして反応が遅れ二発ほど喰らう。


「くっ!」

「グゥー!」


【サンダーアロー】を喰らい痺れて動けなくなった闘争の魔王に新月が全力の体当たりを繰り出した!


「がは!」


闘争の魔王は吹き飛んで地面に2度バウンドしてから止まり、何とか立ち上がろうとした。そこへ・・・


「グルー!」

「ぴー!」


無月とルナの魔法術が襲いかかった。両者ともにボール系の魔法術で威力重視の選択だ。もっとも無月は魔法術を覚えたてであり、それしか選択肢がないのだが。ともかく二人の魔法術は体勢の整ってない闘争の魔王に見事に命中。辺りを土煙で満たした。霜葉達はいつでも行動に起こせるように構えて次の攻防に備えた。そんな中・・・・


「ふっふふ・・・ふはははは!!!!」


土煙の中で突然笑い声が聞こえてきた。当然、笑っているのは闘争の魔王であろうが、この状況でなぜ笑うのか霜葉にはわからなかった。


「よい!よいぞ!!集団戦など弱者の寄せ集めの児戯に等しいと思っていたが、貴様たちは違うな!個々それぞれが自らの能力で援護し、助け、協力し合うことで実力が数倍にも上がっているぞ!おかげで反撃がまともにできぬわ!面白い!!実に面白いぞ!!!」


闘争の魔王は楽しくて仕方がないと言う風に霜葉たちを評価して面白いと言う。このセリフで霜葉は相手がどういう手合いかわかってしまった。こいつは戦闘狂であると。戦いが楽しくて仕方がないと言う戦闘狂い。そこには善も悪もなくただ自身が楽しく戦えればいいと言う自己中心的な考えだ。


白夜と十六夜が匂いや音が変だと言ったのはこれが原因だと霜葉は考えた。今までそう言う手合いには会わなかったから判別できなかったのだ。


「さあ!もっと俺を楽しませろ!!」


そう言うと闘争の魔王は近くに居た新月へと殴りかかった。そのスピードはかなり速さであっという間に新月の目の前に到達した。


「グゥ!?」

「【フルガードブースト】!」

「ハァ!!!」


速さに驚き対応できない新月に霜葉は防御力上昇の付与魔法術を掛ける。そんな新月に闘争の魔王の拳が迫り・・・


ガン!!!

「グゥ!?」


軽自動車並みの体を持つ新月が数歩ほど後退させられた。鱗も三枚ほど壊れ再生しているところだ。間髪入れずに追撃を仕掛けようとする闘争の魔王。しかし・・・


『ハアァ!』

「む!?」


ガウェインが剣による突きを放ち追撃を阻止した。闘争の魔王はそれを躱してガウェインと攻防を繰り返す。霜葉はガウェインが敵を引き付けている間に新月に話しかける。


『新月、大丈夫!?』

『も、問題ないぞ。結構痛かったけど』

『防御力を強化したのに?』

『うん。鱗がなかったらもっと痛かったと思う』


どうやら闘争の魔王のジョブ効果である【闘争】の効果が表れ始めたようだ。これは時間をかけている暇はないなと霜葉は判断した。


『皆!次に攻撃の隙が出来たら魔法術を放って!僕も全力で援護する!三日月はそのまま僕の護衛を頼むね!』

『『わかった!』』

『わかった~!』

『絶対当てる!』

『がんばるの!』

『了解です!』


霜葉は【思念会話】で指示を出して白夜たちはその指示に従う。これまでの攻防で霜葉達は【思念会話】を使って攻撃のタイミングやスキル使用の合図などなどを行い、連携していた。大筋の指示は霜葉が細かい攻撃の指示などはガウェインが担当して戦っていたのだ。おかげで連携は上手くいきここまで戦ってこれた。


闘争の魔王との攻防でガウェインと一対一で戦っているが徐々にガウェインが押され始めた。やはりジョブ効果の【闘争】の効果が出始めているのだ。そんな彼らの戦いに鱗が再生した新月が後ろから闘争の魔王に攻撃しようとしていた。


「グゥー!」

「【フルアタックブースト】!」

「む!」


霜葉の付与魔法術の効果をこれまでの戦いで身に染みている闘争の魔王は新月に魔法術が掛かったと思い警戒した。だが・・・・


『ぬえい!』

「ガァ!?」


先ほどの魔法術を掛けたのは新月ではなくガウェインである。新月に掛かったと誤認させガウェインの警戒を下げさせたそのわずかな隙をガウェインは見逃さなかった。持っている盾で思いっ切り顔面を叩き吹き飛ばしたのだ。霜葉の付与魔法術の効果もありかなりの距離を飛び3度ほど地面を跳ね止まった。


『今ですぞ!主殿、四人とも!』

「【フルマジックブーストワイド】!」

「ワオーン!」

「ニャー!」

「グルー!」

「ぴー!」


ガウェインの合図に霜葉は魔法術関連の能力が上がる付与魔法術を一か所に集まっている白夜、十六夜、無月、ルナに掛けて、四人は魔法術を敵に向けて放った。白夜と十六夜の放ったアロー系は凄まじい速度と数が敵に殺到して次々と炸裂した。その後に無月とルナが放ったボール系が爆発。辺りを土煙で満たした。


この攻撃は魔法術関連の能力が壊滅的である闘争の魔王に一番有効であるとともに、今霜葉たちができる最大の攻撃だ。土煙はいまだ晴れないが霜葉達の誰もが警戒を解かずに身構えている。すると・・・・


「かっかっかっか・・・・あっはっはははは!!!!」


やっと晴れてきた土煙から血まみれになりながら高笑いする闘争の魔王が現れた。


「素晴らしい!素晴らしいぞ貴様ら!!これほどの傷を負ったのは獣王以来だ!まさか獣王や各国の一騎当千の強者以外でここまで戦える者達が居ようとは!!これだから戦いはやめられないのだ!!今度はこちらの番だな!俺の最大の攻撃をお見舞いしてやろう!」


そう言葉にした後、闘争の魔王は右掌を霜葉達へと向けて右手首を左手が掴む妙な構えを行った。しかし次の瞬間・・・・


「カァア!!!!」


闘争の魔王から凄まじい圧が放たれ、周りが青白く見えて風景が歪んで見える。どういうことかを考える前に霜葉はあれは放っておいたらダメだと確信した。


『皆!攻撃を!』

『『わ、わかった!』』

『『『う、うん!』』』

『や、やるの~!』

『承知!』


しかし、新月とガウェインは駆けだそうとするが圧と迫力に負け近づけない。他の皆は三日月以外は魔法術で攻撃しているが圧に物理的な効果があるのか、敵に当たる前に見えない壁に当たっているように到達する前に霧散してしまう。白夜たちは次に来る攻撃を防げないと判断して・・・・


『新月!わしと共に主の壁になるぞ!』

『わかった!』

『私も!』

『他の皆も主を守れ!』

『え!?』

『『『わかった!』』』

『ぱぱは守るの~!』


新月、三日月、ガウェインが霜葉の前で一丸となり防御姿勢を取った。他の皆も霜葉のすぐそばまで来て少しでも霜葉が無事な可能性に賭けてその身で霜葉を庇うように覆った。


『ちょ!ちょっとみんな何してるの!?』

『主殿!全員に防御力上昇の付与魔法術を掛けてくだされ!』

『それはもちろんだけど!僕は無事でも皆が!』

『主殿が無事であれば回復魔法術でどうとでもなりましょう!』

『確かにそうかもしれないけど!』


霜葉は突然の皆の自分を犠牲にしても霜葉を守ると言う行動に面喰った。しかし、他の皆は大まじめで行動をしている。自分の身よりも霜葉を優先するくらい彼らは霜葉に対して想いがある。それは好意で有ったり、恩で有ったり、忠義で有ったりと理由はバラバラであれどやるべきことは変わらなかった。


「ああもう!【フルガードブーストワイド】!」


とにかくこのままでは皆無事ではすみそうにないのは確実であるため、霜葉は言われた通り防御力上昇の付与魔法術を全員に掛けた。やがて・・・・


「ははは!耐えきれるかぁ!【バスター・フレア】!!!!」


闘争の魔王が技名を叫ぶと右掌から超極太の青白い光線が放たれた。それは真っ直ぐに霜葉達へと向かってゆく。霜葉はこれは防ぐことができないと確信した。だから・・・・・


そこには破壊の爪痕がはっきりと残っていた。近くの森ごと消滅し大地もえぐり、これを受けた者は生き残れないと証明するかのように。


「ふむ?さすがにやり過ぎたか・・・・この技を使う必要はなかったか。普通に戦えばよかった。そうすればまだ楽しい時間があったであろうに。実に惜しい」


この破壊を行った張本人である闘争の魔王は己の行為をそう評価した。この男にあるのはいかに戦闘を楽しむかそれ以外にないのである。しかし、そう言葉にした直後に体がふらつき膝を地面に付けた。


「く・・・やはり血を流しすぎた後にあの大技は無茶であったようだな。しばらく回復に専念しなければ・・・・」

「こんなに暴れておいてか?」


闘争の魔王の言葉に答える声がした。この場には先ほどまで自分と戦っていたあの魔物使いしかいなかったはずなのに。闘争の魔王は声のした方に視線を向けると・・・・


「【雷帝】イルバス・デュルファンドか・・・・」

「貴様は闘争の魔王で合っているか?」


そこに居たのは軽鎧と篭手、ブーツを装備し十字槍を手に持っている魔人国国王にして一騎当千の強者である【雷帝】イルバスが佇んでいた。


「先ほどまで気配はなかったはずだがな・・・・」

「それはそうだ。今着いたのだからな?」

「そうか・・・各国の強者の中で最速と言う噂があったが事実だったか・・・」

「先ほどの質問の答えを聞かせてもらいたいのだが?」

「これは申し訳ない。いかにも俺が闘争の魔王だ。お見知りおきを」

「興味がない。俺の国で暴れたお前は今この場にて始末する。覚悟するがいい!」


そう言ってイルバス王は槍を構え、電撃を槍に纏わせている。その体からは相当の圧が放たれ近くにある小石がはじけ飛んだ。


「これは大変に魅力的だが、つい先ほどまで楽しい戦いをしたばかりだ。傷もかなり負った。今日の所は退散させてもらおう」

「させる訳がなかろう!!」


そう言った瞬間、イルバス王の姿は掻き消え闘争の魔王の目の前に突如現れた。そのまま恐るべき速さで槍を突きだしたが・・・そこにはもう誰もいなかった。


「なに?」


槍の穂先には血が付いているし。イルバス王も若干の手応えを手に感じていたから攻撃は当たったのだろうが、肝心の敵の姿がない。


「時空魔法術で逃げたのか?この俺の速さでも捕えきれないとは・・・・【獣王】の手紙の通り実力者であるのは間違いないようだな。この破壊の痕跡を見るだけでも十分だが」


そう言ってこの場の状況に視線を向け戦いの激しさを予想した。それと同時に疑問も浮かぶ。


「しかし、奴と戦える実力者が我が国に居たのか?血の跡もないから生きてはいるだろうが・・・もしそうなら一度会いたいものだな」


そう言葉にした直後にイルバス王はこの場から消えた。彼は知らない。その実力者にもうすでに出会っていることを。それからイルバス王は各国へと魔人国に闘争の魔王が現れたことを伝えた。この事態に神聖国 シャイバーン以外の国は深刻に受け止めて対策に追われるのだった。



『ぬぅ・・・・』

「ワフ・・・・」

「ニャ・・・・」

「グゥ・・・・」

「マァ・・・・」

「グル・・・・」


ガウェインは見慣れた場所で目を覚ました。そこは【箱庭世界】の砂浜であった。自分にとっては住み慣れた居心地のいい場所。だが、なぜここに居るのかはわからなかった。自分たちは闘争の魔王との戦いで敵の攻撃から主を守るためにその身を盾にして守ろうとしていたはずなのに。


「ガウェイン!気が付いたんだね!」

『主殿・・・・無事でありましたか・・・・』

「うん、僕は大丈夫だよ」

『あの戦いはどうなりましたか?』

「ちょっと待ってね。皆が目を覚ましたら説明するから。攻撃の余波でみんな気絶しちゃったから体力を回復させて休ませてるんだ」

『わかりました・・・・』


そう言ってガウェインは起き上がっていた身体を寝かせた。どうやら自分も余波を喰らっているらしく体が思うように動かないのだ。そんな、ガウェインに霜葉は体力回復と回復魔法を施して白夜と十六夜、ルナのためにお肉を焼き始めるのだった。


しばらくして皆目を覚ました。白夜と十六夜、三日月とルナは目を覚ますなり霜葉に飛び掛かり体を擦り付けた。その際、霜葉以上の体を持つ三日月に抱き付かれ苦しかったが新月と無月が三日月を落ち着かせてくれたのはもはやお約束の類だろう。


とりあえず説明の前に落ち着くために食事が必要な子たちに食べ物を与えた。食事が終わった後も白夜と十六夜、ルナは霜葉のそばを離れなかったが構わずに説明を始めた。


『あの時闘争の魔王の攻撃が放たれたのを見て、僕たちでは耐えられないと判断した僕は一か八か【箱庭世界】の入口を自分たちの真下に出現させたんだ』

『真下にですか?』

『うん。そうすることで回避が出来ないかと思ってね?初めての試みだったけどうまくいってね。ただ、かなりギリギリだったから余波を僕以外皆が喰らってしまってね?ここの砂浜に落ちた直後に気絶しちゃったんだよ』

『そう言うことでしたか。それだけで済んだのは幸いでした』

『『よかった~』』

『『『うん』』』

『皆無事~』

「全然よくないよ!あの時みんな何であんな事をしたの!」


説明を終えて、ガウェインたちがそれだけで済んだことを喜んだ直後に霜葉は声を荒らげた。皆初めて見る霜葉の態度に困惑した。


「あの時!皆が自分を犠牲にしてでも僕を守ろうとしたのは能力的にもわかるけど!だからってみんなが傷ついてそれで自分だけ無傷だなんて!そんな状況を僕が喜ぶと思う!?」

『そ、それは・・・・』

「確かに僕はある程度の傷なら回復できるよ!だからってそれを前提にしたことはこれからは絶対にやれないでね!僕は君たちが傷ついてしまうのだって本当は嫌なんだから!!自分の能力的にそれが最善だからやっているだけなんだ!」

『ご主人・・・・』

『主・・・・』

「頼むから傷ついてでも僕だけは守り抜くとか考えないでよ?僕はこれからも君たちと一緒に居たいんだよ?」

『『『お兄さん・・・・』』』

『ぱぱ・・・』


そう言った霜葉の目には涙が浮かんでいた。彼の言葉を聞いた白夜たちは自分を恥じた。こんな心優しい主を傷つけてしまった己の行いを。


『・・・・確かに我々は末永く主の傍に居たいと考えています。そのことをあの時は忘れておりました』

『ご主人・・・ごめんなさい・・・・』

『主・・・・申し訳ありません・・・』

『『『お兄さん・・・・ごめんね・・・』』』

『ぱぱ~ごめんなの~!』


白夜と十六夜は耳と尻尾を垂れ下げなから霜葉に顔を擦り付けた。ルナも霜葉の肩に飛び乗り体を擦り付けている。新月たちはしょぼんと落ち込み。ガウェインも落ち込んでいる様だ。


「わかってくれたならいいんだよ。でも、さっきも言ったけどこれからは自分のことも守るようにね?僕だけは守るなんて考えは禁止だよ?」

『『わかった!』』

『『『うん!』』』

『ずっと一緒~!』

『肝に銘じます』


それからはの話し合いでしばらくはこの【箱庭世界】で過ごすことにした。理由は今出て行けば闘争の魔王に自分たちが生きていることがばれる可能性があるからだ。霜葉は自分たちが居なくなってからの状況を【箱庭世界】の中から見ていて闘争の魔王がイルバス王の攻撃を避けたのは自分と同じようなスキルの【戦の世界】に入ったからだと確信している。


超鑑定で確認しているので闘争の魔王に時空魔法術がないのは知っているし、それを使える仲間が居るのは可能性では低いと霜葉は思っている。それを確かめるためにもしばらくはここで過ごして状況の確認をすることに決まった。


そんな訳で現在は夜になり霜葉はテントの中で寝ている。外の見張りはガウェインが行ってくれるので霜葉は安心して戦闘の疲れを癒すために寝ているのだ。そんな中・・・


『『『『『『ハァ・・・・・』』』』』』

『ため息を吐いてどうしたのだ?主殿を傷つけたことを気にしておるのか?』


ガウェイン以外の魔物たちがそろってどこか落ち込んでいるような雰囲気と共に【思念会話】でため息を吐いていた。それを気になったガウェインは会話をしようと語りかけるのだった。


『それもだけど・・・ご主人を守れなかったの~』

『強くなるって決めたのに、主を守れませんでした』

『俺も進化したのに負けた。母さんみたいに強くなったと思ったのに・・・』

『みんなを守れるように強くなりたいな~』

『俺達まだまだ弱い・・・』

『るなも~ぱぱを守りたいの~・・・』

『ふむ?そう言えばお主たちはの事情は知らなかったな?よければ聞かせてくれぬか?何故強くなりたいのじゃ?』


それからは皆が強くなりたい理由をガウェインは聞くことになった。白夜と十六夜は以前にラージ種との戦いで何もできずにいたことで霜葉を守れなかったのを気に病み強くなることを望んだ。新月たちは自分たちを傷つきながらも守ってくれた母親のように強くなることを望んでいる。ルナの場合は単純に霜葉の役に立ちたいがために強さを求めている様だ。


『なるほど・・・お主たちの強くなりたい理由は分った。そして今日主殿が言ったように我々は自分自身を守るためにも強くならねばならぬ。そこでじゃ。お主たちに提案があるのじゃが・・・・』


ガウェインは霜葉の話を聞いてから考えていたあることを皆に提案するのだった。そして翌日の朝。霜葉がテントから出ると行儀よくお座りしている白夜たちと砂浜に膝を付き待機しているガウェインが居た。


『みんなどうしたの?』

『主殿。配下一同のお願いがあります』

『何かな?』

『主殿はこれから最もダンジョンが多い国へと行かれるのでしたな?』

『うんそうだよ』

『そこの長期滞在を検討していただきたい』

『長期滞在?』

『順に説明いたします』


ガウェインが言うには先日の闘争の魔王との戦いが発端であるそうだ。あの戦いはこちらの完全な敗北であり、霜葉の咄嗟の行動がなければ全滅もしていただろうことは明らか。さらに無事に切りぬけた後の霜葉の言葉で自分たちの実力不足を痛感したと言う。


このまま旅を続ければ同じような事態にも遭遇することは容易に想像できる。そこでダンジョンにて実力を上げたいとガウェインが皆に提案したそうだ。ダンジョンであれば自分たちのLvも上げやすいしそこで進化を最低でも2回ほど各々が達成したいと言うのだ。そうすれば今よりも実力は上がるし霜葉の言ったように自分自身も守りやすくなる。


それを達成したいがために今霜葉に商王国の長期滞在を願い出ているのだ。説明を聞いた霜葉はしばし考えて・・・・


『確かにあの戦いはこっちの敗北だったしいろいろ考えさせられたね・・・いいよ。商王国には皆を最低2回は進化するまで滞在しよう』

『ありがとうございます』

『僕も考えが甘かったようだしね。これからは戦闘を積極的に行おう。仲間も増やして能力の強化とできることを増やそうと思うよ』

『ご主人。僕自分も守ってご主人も守れるように強くなるよ!』

『主。私も頑張りますよ!』

『俺も今より強くなる!』

『私も~!』

『俺も強くなる・・・』

『るなも~!』

『うん。互いに頑張ろうね!』


それから三日後には外に闘争の魔王が現れた。やはり霜葉の予想通り【戦の世界】の中に入っていたようだ。そのまま南へと歩き出した闘争の魔王。傷はまだ完全には癒えていないようだから魔人国ではもう戦わないと考えられる。念のためあと二日は【箱庭世界】で過ごして、霜葉達は気持ちを新たに商王国へと向かうのだった・・・・


感想・誤字脱字報告・応援コメントお待ちしております。作者のやる気が上がります。


明日も更新しますよ!

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