第二章 第十六話 魔人国編16
今回は夏休み記念としまして七日間毎日更新をします。お楽しみください。
霜葉達は魔人国の一騎当千の強者であるイルバス・デュルファンドに会うために魔人国の王都へとやってきた。イルバス王は雷魔法術と槍を操る戦い方から【雷帝】と国内外から呼ばれる人物だ。そして霜葉は王城にて王と出会った。
その時はダディン様の街で起こったゴブリン問題の報告であり、霜葉個人と話すことはなかったが。しかしその話し合いの途中で霜葉がゴブリン問題の時に活躍したと言うことに疑問視する声が上がった。これに対して相手が提示した証明する方法をあっけなく終わらせたことで事なきを得た。
その後、イルバス王の家族と出会うことになりその子供たちと白夜たちが遊んでいる姿を見る王の顔は父親の顔であった。それからは他愛無い話をして過ごして王が家族思いであることを霜葉は感じていた。
それから数日間は霜葉は王都にあるダディン様の屋敷で過ごして、商王国 タンワオに行くための準備をしていた。たまにイルバス王の王妃であるクリス様とその子供たちのカルナ君とニクス君がダディン様の屋敷に遊びに来て白夜たちと遊んでゆくことがある。白夜たちが喜んでいるし子供たちもダディン様の子供であるリルファちゃんとアルト君も含めて楽しそうだ。
ちなみに次の目的地である商王国 タンワオに行く理由はダンジョンである。商王国 タンワオは七大国家の中で最もダンジョンの数が多く、ダンジョンから手に入る魔物素材や魔道具で国が成り立っているのである。詳細な国の話は省くがダンジョンで手に入る魔道具の中に元の世界に帰れるヒントになるような物がないかと思い行ってみることにしたのだ。他にも白夜たちのLv上げにも最適だろうから。
準備を終えて、出発する日になりダディン様の屋敷の入り口にはダディン様とナナリ様。リルファちゃんとアルト君。そしてクリス王妃にカルナ君とニクス君も見送りに来てくれた。ダディン様の騎士団団長をしているサティスとアルノルは霜葉を王都の門まで送るため、馬車の準備をしていた。
「どうも、お世話になりました」
「こちらこそ大変世話になった。また訪ねて来てくれ。君ならいつでも歓迎だ」
「道中お気をつけて」
「ビャクヤ君とイザヨイちゃんも元気でね」
「ミカヅキちゃんまた会おうね?」
「ワン♪」
「ニャ~♪」
「まぁ♪」
「夫より伝言があります。君が解体したゴブリンキングの素材で作った槍は大変に質も良く手に馴染むと。とても喜んでおりましたよ」
「またね!シンゲツ君!」
「ぐぅ!」
「ムヅキも元気でね?」
「ぐる」
子供たちは白夜たちに話しかけて別れの挨拶を。大人たちは霜葉に話しかけて別れを惜しんでいた。そして馬車の準備が整い、霜葉達は乗り込んで出発した。その馬車を見えなくなるまで彼らは見送る。そのまま馬車は進み王都の門までやってくると霜葉達は馬車を降りて御者をしてくれたサティスとアルノルに別れの挨拶をした。
「お二人ともありがとうございました。どうかこれからもお元気で」
「ありがとうソウハ君。君も道中は気を付けて」
「街では大変に世話になった。また会えるのなら楽しみにしているよ」
そう言って二人は馬車と共に来た道を引き返した。霜葉は白夜たちと共に門から出る順番待ちの列に並んだ。白夜たちを見て驚く人たちを無視して霜葉は自分の順番が来たのでギルドカードを出して門番に渡した。
「よし。問題ないな。通っていいぞ」
「はい、ありがとうございます」
門を出た後、霜葉達は商王国 タンワオを目指して北へと向かう。だが、その前にやることがあるが。しばらく街道を進み人が居なくなたことを確認して近くの森へと入り、【箱庭世界】の入り口を出現させて中へと入った。
『主。お疲れ様でしたな』
『ありがとうガウェイン。そう言えばガウェインから見てイルバス王はどうだった?』
『かなりの強者ですな。それと同時に器の大きさを感じましたぞ。わしがまだ生きていれば手合わせを願いたいところですな』
『そっか・・・』
『それで今日はもう休むのですか?』
『違うよ。今日はここで新月たちを進化させようと思ってね』
『いよいよか!』
『たのしみ~!』
『どうなるんだろう・・・?』
新月たちは自分たちが進化するのが楽しみであった。白夜と十六夜が進化して強くなったのは知っているから自分たちもあとに続こうと頑張ってきた。その結果が今分るのだ。
『進化ですか。どうなるのでしょうな?』
『わくわく♪』
『ドキドキ♪』
『さんにんともどうしたの~?』
白夜と十六夜、ガウェインはどうなるのか楽しみにして、ルナはよくわかっていないようだ。
『三人とも準備はいいかな?』
『いつでもいいぞ!』
『私も~!』
『俺もだ・・・』
「よし・・・・この子たちを進化させます!」
≪進化先を選択してください≫
【ブルーベア】選択肢 ⇒ 【スケイルベア】 【アームドベア】
【アースベア】 【ウールベア】
【ラージブルーベア】
霜葉が宣言すると白夜と十六夜の時と同様に目の前に選択肢が浮かび上がった。さすがに強いと言われるブルーベアの進化先であるためか五つも進化先がある。
『三人とも選択肢は見えるかい?』
『見えてるぞ?それになんとなくだけど進化先がどうなるのかもわかるぞ?』
『そうなの?』
『うん!なんとなくこうなるんだって理解できるの!』
『悩む・・・』
『じゃあ三人で話し合ってどれにするか決めてね?』
白夜と十六夜は進化先を完全に霜葉に委ねたが、三人の場合強くなることが目的だから進化先は選ばして上げようと霜葉は考えた。その間に霜葉もどんな進化先があるのか確認する。
【スケイルベア】
体毛ではなく鱗が体全体を保護している熊。その鱗は固く攻守において隙がない。
【アームドベア】
前足が発達して強力になった熊。器用さも上がり攻撃に特化している。
【アースベア】
大地との繋がりが強く高い回復力を持ち、【土魔法術】も使える
【ウールベア】
体毛が羊毛のようにモコモコの熊。防御能力が高い。
【ラージブルーベア】
ラージ種の力を得たブルーベア。全体的に力が強化されている。
※この進化先はこれ以上進化しない!
どれもなかなか強そうだが、【ラージブルーベア】だけはこれ以上進化しないらしい。霜葉は新月たちはこれは選ばないと考えた。三人はお互いを守れるくらいの強さを求めている。この進化先では先がないのだ。もし気付いて無い様なら教えなくてはと霜葉は考えていると・・・・
『お兄さん決めたぞ』
『お?何にするんだい?』
『俺は【スケイルベア】にする』
『私は【ウールベア】!』
『俺は【アースベア】だ・・・』
『三人とも別のに進化していいの?てっきり三人とも同じのに進化すると思ってたよ』
三人の選択はバラバラだった。これには霜葉は意外であり疑問の声を上げ理由を聞いてみた。
『俺は進化先で一番強そうなのを選んだんだ』
『私は皆を守れるような進化先を選んだよ!』
『俺は魔法術使ってみたかったから。あの二人が使ってるのを見て羨ましかったんだ・・・』
『なるほど。でもそれだと種族が三人とも変わっちゃうけどそれは平気?』
三人とも進化先に選んだ物は自分がどういう強さを求めているかや、白夜と十六夜の進化先に影響を受けて選んだようだ。ただ、霜葉としては三人の種族が変わるのが気になったのだが・・・
『問題ないぞ?』
『別のになってもお兄ちゃんと弟なのは変わらないの!』
『二人とは姿が違っても兄姉なのは変わらない』
『そっか・・・わかったよ。じゃあ順番に進化してみよう?』
『『『うん!』』』
この三人なら姿が変わっても大丈夫だろうと霜葉は確信した。早速、新月から進化を行うことに。新月の選択肢を【スケイルベア】に触れると、新月は光に包まれ徐々に大きくなってゆくその大きさはブルーベアの大人並みになって光が収まるとそこに居たのは・・・・
「おお~!すごく強そうだね!」
霜葉はそう叫んだ。新月は軽自動車並みに大きくなりその体は青い鱗に守られていて見た目的にもすごく強そうなのだ。新月は自身の変わった体を確認している様だ。
『進化した感想はどうだい?』
『すごいよ!力が溢れてくるような感覚がある!俺強くなれたんだ!』
新月は自身の力を実感しているらしく興奮している様だ。白夜と十六夜は新月の周りを駆け回ってるし、ガウェインは興味深そうに新月を眺めている。ルナはいきなり変わった新月に驚いている。
とにかく能力確認は他の二人も進化させてから行うことにした。三日月と無月も進化させて見た所、大きく変わった。まず三日月は大きさは新月より一回り小さいが体毛がハニーブロンドシープ並みにモコモコしている。試に触ってみたらすっごく肌触りがよかった。無月の大きさは新月と同じであり体毛の色は薄茶色でヒグマに近い。
『三人とも、進化おめでとう。これからもよろしくね?』
『『おめでとう~!』』
『すごいの~!』
『ありがとうお兄さん!これで母さんみたいに妹と弟を守れるかな?』
『ありがとう~!』
『こちらこそよろしく・・・』
霜葉は心から三人を祝福して、白夜と十六夜も彼らを祝った。ルナは三人をキラキラした目で見つめて感激している様だ。そんな中、ガウェインはと言うと・・・・
『いやはや、まさか【存在進化】がこのような物とはわしの予想を上回っておりましたぞ』
『やっぱり、三人が進化した魔物はかなり強いの?』
『ええ、強いですよ。長年生きたこれらの魔物はゴブリンキング程度なら互角以上に戦うでしょうな』
それは確かに強い。実際にステータスを確認すれば・・・・
名: 新月
種族: 【スケイルベア♂Lv1/30】
スキル: 爪撃Lv7 : 腕力強化Lv6 : 体力強化Lv6
: 持久力強化Lv6 : 低燃費 : 身体強化Lv1
: 堅鱗 : 鱗再生 : 退化(配下専用スキル)
名: 三日月
種族: 【ウールべア♀Lv1/30】
スキル: 爪撃Lv7 : 腕力強化Lv6 : 体力強化Lv6
: 持久力強化Lv6 : 低燃費 : 耐久力強化Lv1
: 体毛弾性強化 : 不動 : 退化(配下専用スキル)
名: 無月
種族: 【アースベアLv♂1/30】
スキル: 爪撃Lv7 : 腕力強化Lv6 : 体力強化Lv6
: 持久力強化Lv6 : 低燃費 : 土魔法術Lv1
: 大地の加護 : 魔力回復強化 :退化(配下専用スキル)
この通りである。見たことないスキルを超鑑定で調べたら、新月の【堅鱗】は鱗の硬さが強化されるユニークスキルで【鱗再生】はその名の通り鱗が壊れたりすればすぐさま再生されるユニークスキルのようだ。三日月の【耐久力強化】は体の頑丈さを上げるスキル。【不動】は体幹を強化して吹き飛ばされにくくなるユニークスキル。無月の【大地の加護】は地面と接している場合、自己回復力の強化と土魔法術の威力が上がるユニークスキルだ。
さらに新月たちが進化したことで【思念会話】もLv3に上昇。同時に思念会話できるようになる数が15体になり、配下ではない魔物とも3体までなら思念で会話ができるようになった。それと新月たちが進化したことで【退化】と言う配下専用スキルを手に入れた。どうもこれは進化先が以前の種族と違いすぎると覚えるスキルで効果は以前の進化前の種族に文字通り退化できるという物だ。
これは霜葉としては助かった。新月たちは姿が変わり過ぎているしもう街では一緒に行動できないかと思ったが、これなら街に居る時は退化してもらえば行動できる。ただ、デメリットとして退化した場合進化して手に入れたスキルは効果がないらしい。これは仕方がないだろう。
『わしも進化できるようになるのも近いですし、どのような物になるか楽しみです』
『そうだね。次に進化するのはガウェインだろうね』
ガウェインはあとLvが一つ上昇するだけで進化が可能だ。もしかしたらタンワオに行く道中で進化するかもしれない。その後、新月たちがどのくらい強くなったのか試したいと言うので、【箱庭世界】から出て魔物を探してみた。
見つけた魔物はホーンタイガーが二匹にレッドウルフが八匹の群れを見つけた。ホーンタイガーはともかくレッドウルフは数が多いので三人に協力してもらおうと思ったが、新月が一人で戦ってみたいと言ってきた。これに対して霜葉は危なくなったら助けに入ることを条件に許可したが、そんな必要はなかった。
まず、ホーンタイガーを相手に戦ったのは三日月と無月だ。二人はホーンタイガー相手に最後まで苦戦することなく戦い勝った。三日月の場合はモコモコの体毛に阻まれ相手の攻撃が一切効果がなかった。攻撃によって体毛が切られる程度だ。最後は三日月の体当たりで木に激突して終わった。
無月の場合は魔法術を覚えたことで離れた相手に追い打ちなどができるようになって戦闘の幅が増えた。身体能力はスキルでは変化がないがやはり体の成長は大きかったようで、ホーンタイガーを終始圧倒していた。
最後に新月だが、レッドウルフたちでは相手にならないほど圧倒的であった。相手の攻撃は鱗によって阻まれるし、たとえ鱗が攻撃によって剥がれてもすぐさま再生して意味がない。三人ともこの戦闘では霜葉も援護すらなしで勝利した。
「皆強くなったね!」
「グゥ!」
「マァ!」
「グル!」
この結果に霜葉はもちろん三人も誇らしげに胸を張った。その後、倒した魔物の素材を剥ぎ取り今日は野宿するため【箱庭世界】へと入って行った。その際、夕食の時は三人は今までと同じように果物を食べていた。種族が変わったことで食べ物の好みも変わるのではないかと思った霜葉だが、そこは変化はないようだ。
翌日。霜葉達は商王国への道を進んでいた。新月たちは街道を進んでいるので退化スキルを使ってもらいブルーベアに戻っている。さすがに進化した姿を人に見られたら物騒すぎる。人に目撃されることがある場合は退化してもらおうと昨日のうちに話し合い決めていたのだ。
ちなみに退化スキルを使うと新月たちはポン!と言う効果音と共に白煙が発生してその煙が晴れると見慣れたブルーベアの姿があった。これには本人たちが一番驚いていた。霜葉は変わった所はないかと聞いたが特に問題はないそうだ。
魔物も襲ってくることもなく順調に街道を進んでゆく霜葉達。この分では商王国に一番近い魔人国の街までは問題なく行けるだろうと霜葉は考えていた。しかし、予想外の事態と言うのはこんな時こそ起こるのだ。
最初に反応したのは白夜と十六夜だった。
『ご主人。前から誰か来るよ?でも・・・・』
『主。前から来る人なんだか変です』
『どういうことだい?』
『匂いが今まで嗅いだことがない匂いなの。いい匂いでもないし悪い匂いでもない。こんなの初めて』
『私もです。いい音でも悪い音でもない。なんだか妙な感じです』
『皆一旦止まって様子を見よう。念のため警戒していつでも戦闘になってもいいようにね?』
霜葉の指示に皆従い、新月と白夜と十六夜が霜葉の前に三日月と無月は霜葉の隣で目の前から来る何者かを警戒した。やがてその者は霜葉達の目に見えるようになったが、特に何かがおかしい所はなかった。その者は男であり特に特徴のない顔をしていた。角刈りの茶髪に革鎧を着込み、手には使い込まれている手甲を付け、足にもこれまた使い込まれているグリーブを装備していた。恰好からして徒手空拳の使い手であろう。
しかし、霜葉は何かその男を見ていると妙な感覚を覚えた。その感覚を霜葉はどう言えばいいのかわからなかった。あえて言葉にするならば自分の同類を見つけたような感覚と言えばいいか。やがてその男も霜葉たちに気付き彼らの目の前で止まった。
「なぜ魔物が人と一緒に居るのだ?」
「初めまして。僕は【魔物使い】なんですよ。この子たちは僕がテイムした家族です」
「魔物使い?それはまた珍しい。しかし、その見たことがない魔物二匹はいいが、そちらのブルーベアはなんだか妙な気配がするな?」
「妙な気配ですか?」
「ああ、まるで本来は違う魔物が今は別の魔物になっているようなそんな感じがする」
「「「「!?」」」」
目の前の男は新月たちの正体を気配だけで感じ取っているのだ。さすがにこれはいよいよ怪しくなってきたので霜葉は目の前の男を超鑑定で見てみた。すると、その鑑定結果は驚くべき物だった。
名: サージス
職業: 【闘争の魔王Lv39】
固有スキル: 【限界突破】 【戦の世界Lv4】 【闘争本能Lv4】
スキル: 格闘術Lv11 : 槍術Lv8 : 棍術Lv6
: 体術Lv12 : 体力強化Lv7 : 耐久力強化Lv7
: 身体強化Lv7 : 気配察知・極 : 武術の極み
: 魔闘術 : 鑑定Lv4 : 超隠蔽
『ガウェイン!いつでも出れるように準備を!』
『承知!』
『みんな最大警戒!彼は僕の同類【闘争の魔王】だ!』
『『わかった!』』
『『『え!?』』』
『?』
目の前の男こそ各国に戦いを挑み小国をいくつも滅ぼし、七大国家に宣戦布告をして【獣王】と互角に戦った【闘争の魔王】だったのだ。霜葉はすぐさまガウェインにいつでも出れるように指示を出して、他の皆にも警戒するように言った。そんな中・・・・
「ふむ?明らかに気配が変わったな?もしやお前は超鑑定でも持っているのか?そうならば俺の正体もばれているか・・・」
「・・・・」
「しかし、戦いに関してはど素人だな。正体が分かったのなら先制攻撃でもすればいい。なぜ律儀にこちらが行動するまで待っているのだ?自分で言うのもなんだが俺は国家をいくつも滅ぼし宣戦布告までした大悪人だぞ?」
「!?」
「それとも人を殺したことがないのか?益々珍しいな。しかし、こちらは手加減はせぬぞ」
そう言って男は拳を構えた。その瞬間、男からかなりの威圧が放たれた。霜葉達は一瞬その威圧に呑まれそうになったが・・・
『主殿!わしを出してくだされ!』
『!』
ガウェインの言葉に霜葉はすぐさま反応してサージスの目の前に【箱庭世界】の入り口を出現させた。その瞬間に何もない所からガウェインが現れ男の不意を突いた。
「なに?」
『ハアァー!』
しかし、男は完全な不意打ちだったにもかかわらず冷静にガウェインの上段切りを拳の手甲で受け流してカウンターの正拳突きを放った。幸いその威力は不意打ちだったために体勢が不十分だった。よって威力は男の全力からは程遠い物であるが、それでもガウェインを吹き飛ばすには十分だった。
『くっ!』
しかし、そこは経験豊富なガウェイン。空中で体勢を立て直して見事に着地した。そんなガウェインを闘争の魔王は興味深そうに見つめていた。
「手応えが変だな?甲冑だけを殴ったよう感じだ。うん?貴様スケルトン・ナイトだと?これはますます珍しい。スケルトンをテイムしているのか・・・・」
おそらくはガウェインに対して鑑定を行ったのだろう。彼の正体を知り男は興味深げに霜葉に視線を向けた。
『ガウェイン!大丈夫!?』
『大丈夫です。ですが完全な不意打ちを回避して反撃まで・・・・主殿!これはこちらも本気を出して戦う必要がありますぞ!』
『・・・・わかった!僕も全力で援護するよ!皆も協力して!』
『『もちろん!』』
『新月たちは退化を解除していいから!目の前の男は今まで戦った相手より強いよ!』
『『『わ、わかった!』』』
『るなもがんばる~!』
霜葉の言葉にガウェイン以外の全員が決意を言葉にした。その瞬間、新月たちはポン!と言う効果音と共に白い煙に包まれその姿を隠した。その様子を闘争の魔王は警戒して見ていた。次の瞬間・・・
「グゥー!」
「なに!?」
煙の中から新月の進化した姿である【スケイルベア】が現れその爪を闘争の魔王に向け振るうが、大きく後ろにジャンプして躱す。さすがにこれには驚いたようだ。闘争の魔王は霜葉に視線を向けるとその両隣には【アースベア】と【ウールベア】もいる。
「不可解な。いきなり強い魔物に変わるだと?貴様、ただの魔物使いではないな!」
そう言って闘争の魔王は霜葉へと攻撃するため駆け出した。そこへ・・・
「ワオ~ン!」
「!?」
いつの間にか闘争の魔王の横へと移動していた白夜が大きく吠えた。すると闘争の魔王は白夜に視線が移り顔が不自然に白夜の方へと向いた。慌てて立ち止まると咆哮の効果が短時間だったのか闘争の魔王は首を左右に振り気持ちを落ち着かせた。そこへ・・・・
「ニャー!」
「グルー!」
十六夜の【サンダーアロー】と無月の【ストーンボール】が放たれ、闘争の魔王へと向かってゆく。しかもその軌道は【サンダーアロー】は三本の矢の内二本が相手に。残りの一本と【ストーンボール】が闘争の魔王の頭上へと向かっていた。闘争の魔王は自身に向かってくる魔法術を冷静に拳で迎撃した。拳で魔法術を撃ち落としたにもかかわらず拳にダメージはなさそうだった。だが次の瞬間・・・・
「む!?」
頭上で【ストーンボール】が【サンダーアロー】に激突してその真下に雷撃を纏った石片が大量に降り注いだ。さすがにこの攻撃は迎撃不可能であり闘争の魔王は頭を防御して耐えた。耐えきった後には無数の手傷を負った姿を晒していた。
『ハアァー!』
「グゥ!」
「援護するよ!【フルブーストワイド】!」
その瞬間を隙と判断して、ガウェインと新月が左右から挟撃を行う。霜葉も【付与魔法術】を使い援護を行った。彼ら二人の攻撃を闘争の魔王は両手の手甲で防ぐが・・・・
「む?先ほどより重いし鋭い」
霜葉の【付与魔法術】で身体能力が強化されたので攻撃は重く速かったのだ。その結果、彼らの力は拮抗してこう着状態になった。そこへ・・・
「【フルマジックブーストワイド】!」
「ワン!」
「ニャ!」
白夜と十六夜が相手の正面に移動してアロー系の魔法術を放った。霜葉の魔法術の効果でその威力はかなりの物になっている。闘争の魔王もそれが分かったのか、新月とガウェインを弾き飛ばして大きくジャンプして躱した。
「くっくくく。はっはっは!いいぞ!個々の力は弱いが連係が上手い!きさまらは俺が戦った中では一番の集団だ!もっとだ、もっと俺を楽しませろ!!」
霜葉達の能力が高いのが嬉しくてたまらないと言うように笑い、体からは先ほどよりも強い圧が放たれる。霜葉達はいきなりこの世界の実力者との最大の戦いが始まろうとしていた・・・・
感想・誤字脱字報告・応援コメントお待ちしております。作者のやる気が上がりますよ?
明日も更新します!