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第二章  第十五話  魔人国編15

本当に最近は調子がよく続きがサクサク書けます。なので早めの更新です。

ゴブリン問題が解決してから数日が経過して、ダディン様がその報告とゴブリンキングの素材とキングの持っていた暴風を発生させる大斧の魔道具を王都へ持って行くために先に手紙を送り行く準備を進めていたが、王都からの手紙にゴブリンの件で活躍した霜葉も連れて来てほしいと書かれていた。


そのことをお願いされた霜葉は、新月たちが進化できるようになったこととこの国では調べることはないと判断して、この国を出ることを考えていた。そのためこれもいいきっかけだと思い王都へと向かうことを了承して現在、ダディン様とナナリ様、リルファちゃんとアルト君と共に馬車に乗り、王都へと向かっているところである。


道中は驚くほどに順調で、魔物にも数度出会うことがある程度でその魔物を解体は霜葉が行い、野宿の際も霜葉が料理を作ると大変に好評で料理の得意な騎士たちが教えを乞うほどである。そんな騎士たちに料理を教えながら、馬車は四日後には王都へ到着した。


魔人国の王都も女王国と大して違いはなく街以上の高い外壁に大きな門。これは王都である以上どこも変わらないのかも知れない。ダディン様の馬車は御者である騎士が貴族用の出入り口まで馬車を勧め、ダディン様が馬車からお顔と証明書を出して門番はそれを確認したのち門を開けた。


なお今回の同行者の中にトマスさんはいない。彼はダディン様が居ない間の街の代行責任者として残っている。もっとも必要なことは先にダディン様が済ませているので何かあった時に責任者が誰もいないので話にならないのでトマスさんが責任者として残ったと言うわけだ。


馬車と騎士団は王都の道を進み。貴族街へと向かってゆく。王都では他の街以上に平民と貴族の生活場所が分かられていて、貴族のほとんどは貴族街に屋敷がある。例外はそれほど力と権力のない男爵や平民から貴族になった名誉貴族と呼ばれる者たちだ。


霜葉は馬車から王都の雰囲気を見てさすがに王が住まう所なだけあり、活気に満ちている。しかしそれも貴族街へ近づくにつれ静かになってゆく。さすがに貴族街は静かでないといろいろ問題があるのだろう。貴族街の入り口には内壁と門があり、門番に外壁と同じやり取りをして貴族街へと入った。


そこはまさに別世界と言うべき物だった。趣味のいい屋敷もあれば、これでもかと派手な外装の屋敷、はたまたこんな屋敷に人が住んでいるのかと思うような所もあった。これを見た霜葉の感想は・・・・


「すごく色々な屋敷がありますね・・・・」

「はっはっは!まぁ、ここを知らない者は大半がそう言うだろうね?もっと素直な感想を言ってもいいんだよ?お世辞にも趣味がいいとは言えない建物もあるからね」


ダディン様は笑ってそう言うと、ナナリ様は苦笑を浮かべリルファちゃんとアルト君は頷いていた。


「私個人としてはもう少し景観という物を考えてほしいよ。治安はいいんだからそれさえ考えてくれれば入場料を取って平民も入れるようにしたいところだよ」

「確かに趣味のいい落ち着いたお屋敷ももいくつかありましたから、それらばかりだといい場所ですよね」


ダディン様は霜葉の同意と言葉に大いに頷き、趣味の悪い屋敷を酷評し続けた。どうやらこの現状には相当に頭にきている様だ。霜葉個人としても落ち着いた屋敷の隣に金ぴかの屋敷やドピンクの屋敷があるのはどうかと思った。そんな中馬車は王都のダディン様の屋敷へと着いた。


「あなた、愚痴はそこまでにしましょう?屋敷に着いたわよ?」

「む?ああ、すまない。ソウハ殿も申し訳ないね。どうにもここに来るたびにあんな屋敷を見ると言いたくなるんだよ」

「お気持ちお察しします」

「わかってくれるかね・・・とりあえず今日は我が屋敷に泊って行くといい。リルファ達もその方がいいだろう?」

「「はい、お父様」」

「ではお言葉に甘えますね」


そう言うと馬車の扉が開き、屋敷がよく見えるようになった。そこはかなり落ち着いた色合いのシックな屋敷であった。土地も広く奥には離れも存在して中々に趣味がよく霜葉出来にはかなり好きな雰囲気だ。そんな屋敷の門から入口にメイドさんがずらりと並び奥から品のいい尻尾の生えたおばあさんが現れた。


「旦那様、奥様、リルファ様とアルト様も長旅お疲れ様でした」

「レミル。変わりはないか?」

「はい、おかげさまで健康そのものです。そちらのお方がソウハ殿ですか?初めまして。この屋敷の管理を任されているメイド長のレミル・ライゼルフですわ」

「初めまして。霜葉と言います。この子たちは僕の家族です」


霜葉がそう言うと白夜たちは順番に鳴き声を上げた。その様子を見てレミルさんは微笑ましく笑うのだった。


「まぁまぁ。トマスの手紙に書いてある通り可愛い子たちですね。よろしくお願いね?」

「お婆様。今は旦那様たちを部屋に案内するのが先では?」

「あら。いけないわ私ったら。どうも申し訳ありません。すぐさま案内しますね」


そう言ってレミルさんはメイドたちに指示を出してダディン様たちの荷物を受け取ると屋敷へと案内した。その間に霜葉はアルノルに気になったことを聞いてみた。


「レミルさんってもしかして?」

「ああ、兄上と私のお婆様でもある。お爺様とは夫婦だ」

「そうでしたか」


疑問が解消したところで霜葉も一室に案内されて、しばらく寛いだ。そして夕食の時間になって食堂にてこれからの予定を聞くことになる。


「おそらく明日には義兄上と王都に居る貴族たちに事の報告をすることになるだろう。ソウハ殿はその時にでも一緒に王城へ来てほしい」

「それは問題ありませんが、着る物とこの子たちは大丈夫でしょうか?」

「ワン?」

「ニャ?」


霜葉の疑問に白夜と十六夜が反応した。新月たちは用意されていた果物に夢中でルナも用意されているお肉に夢中だ。そんな彼らは王城には連れていけないだろうと思っていたのだが・・・


「それは問題ないよ。義兄上からの手紙には魔物たちも見たいからと書いてあって王城への立ち入れは問題ないだろう。恰好についても冒険者の装いでいいとのことだ。さすがに武器は騎士に預けることになるけどね」

「それは仕方ありません。けどいいんですか?この子たちは大人しいですけど魔物ですよ?反対する人がいると思うんですけど」

「いるだろうね。でも義兄上が魔物を含めて会いたいと言っているからね。妹であるナナリを二度も救ってくれた人や魔物にお礼を言いたいんじゃないかな?」


何やら話を聞いていると国内外から【雷帝】と呼ばれる魔人国の王イルバス・デュルファンドはかなりの自由人であるような気がする霜葉であった。それと家族愛にあふれているような気も。とにかく明日王城へ行くために今日は早めに寝ることにした。


そして翌日。ダディン様の家族と共に霜葉達は王城へと向かう馬車の中だ。その中で霜葉は白夜たちと話し合いをしている。


『皆、今日はあのお城に行くけど大人しくしててね?僕が許可するまで戦闘にはならないから』

『『わかった~』』

『了解だぞ』

『わかったの~』

『うん・・・』

『おとなしくするの~』

『ガウェインは退屈してない?』

『大丈夫ですぞ。この場所は居心地が大変に良いですからな。それに今の時代で一騎当千と言われる強者を一目見れるだけでもありがたいことです。どれほどの強者か楽しみですぞ』


そうやって時間を潰していると、王城の門へとたどり着いた。ここでは念入りに馬車の検分が行われ、中も改められた。その際白夜たちを見た騎士たちが警戒したが、ダディン様から王から招待された魔物使いとその配下だと言われ、その証拠である手紙を出して本物であることが確認されて初めて王城へと入ることができた。


かなり厳重に守られている王城の馬車置き場で馬車を止めて、サティスとアルノルを先頭にして王城の中を進む。時折出会うメイドや騎士たちに白夜たちを見て驚かれるが、何も言われないままとある部屋へと着いた。


「ここで義兄上たちの準備が整うまで待っていよう。準備ができ次第呼ばれるはずだ」


と言うわけで部屋に待機していたメイドさんたちが飲み物を用意してくれてそれを飲みながら待つことに。待つ間リルファちゃんとアルト君は白夜たちと触れ合いながら遊んでいた。最初はここに魔物が居ることに緊張していたのであろうメイドさんたちの顔は強張っていたが、二人と遊んでいる彼らは害がないと判断したらしく徐々にその顔は微笑ましい光景に笑顔になっていった。そしてとうとう・・・


「王たちの準備が整いました。これよりご案内します」

「わかった。さあ、行こうか」


呼ばれたことに若干不満そうであったリルファちゃんとアルト君だったが、部屋を出ればそんな顔はすぐに引っ込めた。さすがに公爵家のご息女とご子息であるためか、切り替えは早いご様子。騎士たちの先導で大きな扉の前に着いた時に武器の提出を求められ、サティスとアルノルと霜葉は騎士たちに武器を渡した。その後軽く身体検査が行われてやっと大きな扉は開いた。


そこは広々とした空間で真っ赤な絨毯が敷かれ、その両脇には位の高い貴族たちであろう者たちと城の幹部たちが並び、奥に玉座が置かれそこに座る者こそ【雷帝】と呼ばれる魔人国の一騎当千の強者、イルバス・デュルファンドが居た。


魔族の全特徴を持った体に、紫色の髪を長めに伸ばしたイケメンしかし、線が細い印象は全くなくむしろ服の上からでも引き絞った肉体を持っているのが分かる。そして傍らには槍を持った兵士が一人。この兵士は護衛ではなく王の武器を持っているだけの者だ。彼に護衛など意味がない。この国で最も強いのは王自身なのだから。


ダディン様たち家族は王に近づき王座から5歩くらい離れた所で膝を付いた。霜葉もそれに習い白夜たちは霜葉の傍らでお行儀よくお座りしている。そして・・・・


「陛下。此度は急なご報告を聞いていただきありがとうございます」

「礼は不要だぞ?此度のユーディルス公爵の領土で起こった問題は無視できぬ。国全体で同じことが起こる場合の対策を考えるべきだ」

「私も同じ考えでございます」


ダディン様は口調を改め、義兄上と呼んでいたのを陛下とこの場では呼んだ。さすがに他の者の前ではそう言う呼び方にするようだ。


「それに、今回はゴブリンだったからある意味よかったがこれがオークやリザードマンなどのキング種だった場合を考えると対策は早急に考えるべきだろう」


実を言えばゴブリンは亜人系の魔物でも強さ的には下位に近いのだ。最弱は別にいるがそれでもオークやリザードマンと比べると弱い。ゴブリンとオークの厄介さは強さよりも繁殖力の高さなのと知恵を持つ点なので強さ以上の厄介さはあるが。それでもオークやリザードマンが今回の騒動に出て来ていたら、被害はもっと拡大しただろう。


「そのためにも今回の騒動を経験したユーディルス公爵の話は貴重だ。早速ではあるが聞かせてくれ」

「わかりました。ではまず・・・・」


そこからはダディン様が現場に居た者から聞きこんだことや、ダディン様が見たゴブリンキングの様子。そしてゴブリン達が行った策についても話した。この策についての話になると周りの貴族たちからもざわめきが起こった。


「ゴブリンどもがそのような策を行ったと?」

「状況とゴブリン達の行動からも間違いないかと」

「ただちにキング種の危険度を今より上げるべきだな。ゴブリンどもでそのようなことを行ったのだ他のキング種も同様だと考えるべきだ」


その後も話し合いは続き、周りの貴族たちも真剣に聞いているのがほとんどだった。すべてと言わない理由はこの話を真面目に聞いていないのが何人かいるからだ。彼らの顔はそんな馬鹿な話があるかと嘘だと決めつけている様であった。ダディン様とイルバス王も気付いてはいるが今は話を終わらせるのが先であると考えているのだ。


「・・・・以上です。陛下」

「ユーディルス公爵よ、よくぞ報告してくれた。ただちにキング種の危険度を今より引き上げよう。そしてこの事をすべての街や村へと知らせるのだ。まずはこのような事が現実に起こったと国全土へ知らせるべきだ」

「陛下。少々お待ちいただけないでしょうか」


イルバス王の言葉に待ったをかけたのは王座に一番近い貴族であった。派手な格好をしているし他の者たちよりも明らかに服の質がいい。かなりの地位に居る貴族であろう。


「カンディル侯爵、何か意見があるのか?」

「申し訳ありませんが先ほどの話が本当かどうかが疑わしいのです」

「ほう?これほどの事態がユーディルス公爵の嘘だと言うのか?」

「先ほどの話によれば、街へと攻め込んだゴブリンどもの討伐に一番活躍したのはそこに居る魔物使いだとか。申し訳ありませぬが魔物使いが活躍したなどとは到底信じられませぬ」

「確かに魔物使いが活躍したなどとはとても・・・・」

「ですがブルーベアを配下にしているが?」

「それでも子供ですよ?大人ならともかく子供では役に立たないのでは?」


その言葉に賛同する貴族も居て、場の雰囲気がおかしな方向へと進み始めた。ダディン様は慌てることなく・・・


「証拠にゴブリンキングの素材もあるが?」

「私が疑っているのはそこの魔物使いが役に立ったと言うことだ。他の話はともかくそこだけは信憑性に欠けるな」

「嘘など言ってはいないが?」

「それならばそこの魔物使いに証明していただきたい」

「証明?」

「あれを持ってくるのだ!」


そう言ってカンディル侯爵とイルバス王に呼ばれた者は兵士に合図を送り、兵士はこの部屋の扉を開けた。すると騎士5人が協力してとある鉛色をした岩を持ってきた。騎士たちは部屋に入り慎重な足取りで岩を部屋の中心に置いた。


「この岩は鉱石の中で一番重いとされるググルム鉱石です。これほどの大きな物ですと運ぶのに身体強化スキル持ちでも5人はいるでしょう。この岩をそこの魔物使いと配下の魔物に持ち上げてもらいたい」

(そんなことでいいの?)


カンディル侯爵の提示した方法を聞いた霜葉はそう思った。だが周りの貴族たちは違ったようだ。


「カンディル侯爵殿!いくらなんでもそんなことは・・・」

「そうですぞ!彼が活躍したかどうかは模擬戦でも見ればいいではないか!」


何やら必死になって止めようとしているのだが、当の本人は考えを変えるつもりがないようだ。


「これくらいできないようでは活躍したなどとは信じられませんな。さぁ、そこの魔物使い!やって見せるがいい!」


と言うかまだやるなんて一言も言ってないんですがっと霜葉は思っているが。どうもこの侯爵様は霜葉たちができる訳がないと決めつけている様だ。それがなんとなく気に入らない霜葉は実行に移す。


「わかりました」

「はぁ?」

「新月、三日月、無月ちょっとこの岩を持ち上げてくれない?僕もサポートするから」

「ぐぅ!」

「まぁ!」

「ぐる」


霜葉の言葉に新月たちは岩の周りに駆け出して持ち上げる準備を始める。そして・・・・


「じゃあ、いくよ?【フルアタックブーストワイド】!」

「「「「!!」」」」

「ほう!」

「ぐぅ~!」

「まぁ~!」

「ぐる!」


霜葉の付与魔法術を合図に新月たちはググルム鉱石を持ち上げてひどく簡単にそれが出来てしまった。


「なあ!?」

『これ重いのか?』

『お兄さんの力は要らないかな?』

『三人で普通に持ち上がりそう・・・』

『ありゃ?【ブースト】でもよかったかな?』


この場に居る貴族は全員が呆けた顔をして新月たちを見ていた。例外はダディン様達家族ともう一人。


「ふふふ。面白いな。その付与魔法術を使えるのか」

「これは申し訳ありません。勝手なことをしてしまいました」

「はっはっは!よいよい!そもそも先ほどから無礼な言動をしていたのはそこに居る者なのだからな」


そう言うとイルバス王はカンディル侯爵を睨みつけた。


「さて、カンディル侯爵よ。これでそなたが言う証明はなされたわけだが、問題ないな?」

「い、いやしかし陛下!魔物使いの戦闘力は昔から疑問視されています!」

「昔は昔。今は今だ。付与魔法術が使えるのなら本人の戦闘力よりも味方を援護できるかどうかだ。それもあの付与魔法術が使えるのなら問題あるまい」

「し、しかし!」

「自身の言った言葉には責任を持たぬか!見苦しいぞ!」

「は、はっ!申し訳ありません!」


イルバス王はカンディル侯爵の態度を一喝した。その際に体から電気が発生して辺りにビリビリと電撃の音が鳴り響く。


「他に異論のある者はいるか?なければ先ほどのユーディルス公爵の話を国中に広めるのだ!」

「「「「はっ!」」」」

「では、これで今回の集まりは終わりだ。皆の働きに期待する」


イルバス王の言葉で今日の報告会と言うべきものは終わった。貴族やお城の幹部たちは部屋を出て行き先ほどの話を自身の領土に広めるために動き、幹部たちは対策を話し合うのだろう。その際、部屋に持ってきたググルム鉱石を運ぶ騎士たちに霜葉が付与魔法術を施して上げた。騎士たちは楽に運んで行った。


その後、先ほどの部屋まで戻ってきてダディン様が口を開いた。


「ソウハ殿。先ほどの件はすまなかったね?」

「いえ、ダディン様が謝る必要はありませんよ?」

「いやいや、これは私が謝ることだよ。誰かは難癖を吐けてくるだろうとは予想してはいたが、あんな形とは予想外だったよ」


そんな話をしていると、メイドさんがやってきて王がお呼びですと言い全員を案内して王城の中庭へとやってきた。そこには先ほどのイルバス王と白魔族の女性。そして真魔族の8歳くらいの子供が二人いた。


「来たか。ダディンよ今回の騒動でお主が無事でよかった」

「無事だったのは兵士と騎士たち、それに住人達が頑張ってくれたおかげだよ。義兄上」

「ナナリ。あなたもよくご無事で」

「ありがとうございます。義姉上」

「リルファちゃんとアルト君も大丈夫だった?」

「うん!もちろんよ!」

「だ、大丈夫です」

「じ~・・・・」


どうやら王族の家族大集合と言ったところか。ダディン様とイルバス王は先ほどよりも気安く話しかけているし、白魔族の女性は王の奥様なのだろう。ナナリ様の無事を喜んでいる。子供たちはどちらも男の子で一人がリルファちゃんとアルト君に話しかけている。もう一人は白夜たちを凝視している。


「おっと?初めて会うのだから先ほどできなかった自己紹介をすべきだな。俺がこの国の王であるイルバス・デュルファンドだ。こちらは俺の家族だ。皆自己紹介を」

「では私から。初めましてイルバスの妻であるクリス・デュルファンドです。此度の騒動でのご活躍は聞いていますよ?」

「次は僕ですね。初めまして!第一王子のカルナ・デュルファンドです」

「・・・・初めまして。第二王子のニクス・デュルファンドです」

「申し遅れました。Cランク冒険者の霜葉と申します。こちらに居るのが僕の家族です」

「そう硬くならずともよい。此度の騒動でのそなたの活躍は聞いているし、それ以前の野盗の件も聞いている。二度も妹を救ってくれたのだ。こちらが感謝しなくてはならないが王であるため満足にできないことを許してほしい」

「もったいないお言葉です」


そんなイルバス王と霜葉の会話の横で子供たちは白夜たちに興味津々のようだ。特に先ほどからニクス王子の目は白夜たちを順番に見続けている。


「この子たちが噂の魔物さんたちですか!みんな可愛いです」

「じー」

「ワン?」

「ニャ?」

「ぐぅ?」

「まぁ?」

「ぐる~」

「ぴ~?」


無月以外は初めて見る子供たちの視線に首を傾げている。そんな白夜たちの仕草に子供たちはにっこにこである。クリス王妃も初めて見るであろう魔物たちの可愛らしい仕草に笑顔を浮かべている。


「お父様!お母様!この子たちと遊んできてもいいですか?」

「ふふ、私は構いませんが、聞く相手はもう一人いるのではなくて?」

「そうだな」

「ソウハさん!いいですか?」

「もちろんですよ。皆、カルナ様とニクス様と遊んでおいで」


霜葉がそう言うと皆嬉しそうに鳴き声を出して、中庭へと駆けだした。カルナ君とニクス君、それにリルファちゃんとアルト君も白夜たちを追い駆けて行った。


「二人とも楽しそう。やはり立場のせいで遊び相手が少ないですからね」

「仕方のないことではあるがな。むしろ、リルファとアルトが居るだけでも恵まれている」


中庭で魔物たち相手に追いかけっこをする子供たちを見てイルバス王とクリス王妃は穏やかな顔で見つめていた。その顔は王や王妃と言うよりは父親と母親の顔であった。


「さて、子供たちのことはあの子らに任せるとして、ソウハ殿。今回の騒動での活躍は俺からも礼を言わせてもらう。あの場所では礼が言えなくてもどかしかったのだ。ありがとう」

「私からもお礼を申します。家族助けてくれてどうもありがとうございました」

「どうか、お気になさらずに私は自分のできることをやったまでです」

「はっはっは!そう堅苦しくなるな!ここには我々家族しかおらぬ。もっと砕けた話し方で問題ないぞ?」

「そう言うわけにはいきません」

「ふむ?意外と頑固だな?」


話をしているとメイドさんが近づき、軽食の用意が出来ましたと言って中庭の屋根がある場所には全員が座れるテーブルと椅子が用意されていた。


「あの場所ではロクな話が出来なかったからな?ソウハ殿よければ食べて行ってくれ」

「では、お言葉に甘えて」


それからは家族の話と霜葉のことを話し合うお茶会になった。霜葉の場合はすべてを話すわけにはいかないので作り話も混ぜている。その際にダディン様の街の冒険者ギルドの副ギルドマスターであるブルトルが発見されて捕まえたと言うことも聞いた。王都へと送られ重い罰を受けるそうだ。


それとダディン様たちが買い取ったゴブリンキングの素材をイルバス王に献上すると言ったところ大層喜んでいた。やはり、今使っている槍が相当使い込んでいるらしくそろそろ新しい物を作らねばならないと言っていた。魔王の存在もあるためいい素材を探していたと言う。さらには近衛騎士団長にもゴブリンキングが使っていた大斧の魔道具を渡すことも伝えると・・・・


「あやつの武器も相当使い込んでいたからな。喜ぶだろう」


そんな話し合いを続けていると、子供たちもお腹が空いたらしくテーブルへと加わり他愛無いおしゃべりをしてこの日は過ごした・・・・

次回は明日には更新できます。

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