表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/116

第二章  第一話  魔人国編1

 霜葉が女王国の辺境の町から旅立ち一週間が経った。旅の目的は元の世界へ帰るための情報を集めることが第一で、次点で魔王の情報。最後に魔物の仲間を増やし自らの実力を上げることを目標にしている。


そのために女王国以外の大国に向かっていた。現在の目的地は女王国から近い位置にある大国である魔人国 デュルファンドだ。獣王国 アレスガルも近いのだが、辺境の町からは魔人国が近いためそこから行くことにした霜葉であった。


 この異世界ブルスバンの大陸は扇形でありその中心に女王国が存在している。

 女王国の西側に魔人国が。

 北東には獣王国がある。

 商王国 タンワオは北側に。

 神聖国 シャイバーンは遠い南側。

 霊樹国 ユディールは東南の位置に。

 海王国 グロージルは最も遠い北東の海上に位置している。


各国の間に小国が乱立していたのだが、魔王の影響で大半の小国は滅んでしまい残りの小国も大国に助けを求めた結果、そのまま大国の領土となった。現在は獣王と魔王が戦ってから魔王の姿は確認できておらず、つかの間の平和と言ったところだ。


そして現在、霜葉たちは魔人国へと続く道を歩いているところである・・・・


「このまままっすぐ行けば、魔人国に明後日には着くかな?」

『お兄さん?もうすぐ町に着くの?』

『そうだよ。そしたら珍しい果物もあるかもね?』

『楽しみ~♪』

『楽しみだ』

『ジュルリ・・・』


霜葉は街道をゆっくりと歩き、ブルーベアの三匹はそんな霜葉の横をトコトコと四足で歩いている。そして霜葉は前を歩く白夜と十六夜にも声を掛ける。


「二人も楽しみかい?」

「ワン!」

「ニャン!」


そこに居たのは子犬と子猫・・・・ではなく、中型犬と標準サイズの猫がいた。しかも、この場に居るのは一人と五匹だけではない。


「ぴー!」

「君にとっては初めての町だし楽しみだよね?」


霜葉の肩に体長15㎝くらいの鳥がいた・・・・・彼らの説明をするためには三日前のことを話すとしよう。



霜葉たちが辺境の町を旅立って四日後のこと、彼らは現在街道を離れて【箱庭世界】の中で休もうとしたら白夜と十六夜が警戒の声を出した直後に角の生えた虎が襲ってきた。この魔物は霜葉の【超鑑定】で鑑定したところホーンタイガーと言う魔物らしい。


強さ的にはレッドウルフ以上ブルーベア以下なのだが、さすがにそこまでは【超鑑定】でもわからない。とにかくいきなり戦闘になったが、霜葉の【付与魔法術】の相手の身体能力を下げる魔法術である【カースアタック】や【カースガード】などを掛けて何とか倒すことに成功した。そして戦闘が終わった直後に。


≪固体名 白夜と十六夜のLvMAXを確認。固有スキル【存在進化】の効果で進化可能です≫


「おや?」

『ご主人~何か聞こえたよ~』

『私も聞こえました~』

『なになに?』

『どうしたんだ?』

『ふぅあぁ~』


どうやら先ほどの戦闘で白夜と十六夜のLvがMAXになり進化ができるようになったようだ。ただこの内容の声は霜葉本人と白夜と十六夜のみに聞こえたようで、新月たちは何事かと首を傾げている。


「どうやら白夜と十六夜は進化できる様だね?」

『つよくなれるの?』

『主をもっと守れるようになるの?』

「多分だけど、今よりも強くなれるはずだよ?」

『『ほんとう~?』』

「試してみようか?」

『『うん!』』


霜葉たちは安全のため【箱庭世界】に入り休む前に白夜と十六夜の進化をすることにした。ちなみに【箱庭世界】はLv2なったことで砂浜だけの島だったLv1よりも島らしくなった。具体的には島の中心部に草が生えヤシの木が生えていたのだ。絵で書ける簡単な島のようになったと言えばいいかな?


霜葉はこの島に召喚者たちが作ってくれた簡単なテントや寝袋、調理器具などを置いていた。野宿するなら安全が確定しているこの世界で寝起きした方がいいから旅をし始めた時に設置したのだ。


「じゃあ始めるよ?」

『『わくわく♪』』

『何が始まるんだ?』

『二人とも楽しそう~』

『ねむい・・・・』

「白夜と十六夜の進化を行います!」


≪進化先を選択してください≫


 【異界犬】 選択肢 ⇒ 【ホワイトドック】 【ウィンドドック】

 【異界猫】 選択肢 ⇒ 【サンダーキャット】 【ホワイトキャット】


霜葉が宣言すると目の前にこのような物が浮かび上がった。どうやら進化先が二通りあってどれかを選択する必要があるようだ。


「どれにしようか?」

『ご主人が決めていいよ~』

『主が決めてください~』

「いいの?」

『『うん!』』


二匹は霜葉の判断に従うようだ。とりあえず霜葉は選択肢の項目を鑑定して見た。


 【ホワイトドック】

 異界犬が【存在進化】のスキルによって進化した魔物。真っ白な毛並みを持つ狼のような生物。

簡単な【氷魔法術】を使える。


 【ウィンドドック】

 異界犬が【存在進化】のスキルによって進化した魔物。緑色の毛並みを持つ狼のような生物。

簡単な【風魔法術】を使える。


 【サンダーキャット】

 異界猫が【存在進化】のスキルによって進化した魔物。白黒の毛並みを持つ虎のような生物。

簡単な【雷魔法術】を使える。


 【ホワイトキャット】

 異界猫が【存在進化】のスキルによって進化した魔物。真っ白な毛並みを持つ虎のような生物。

簡単な【氷魔法術】を使える。


進化することによって魔法術をどれも覚えるようだ。鑑定結果を見て霜葉は考えている。


(白夜はこの二つの内なら【ホワイトドック】かな?その方が今の姿が成長したって言えるしね。そう言う意味では十六夜は【サンダーキャット】の方がいいだろうな~)

「よし決めたよ。今から選択するね?」


そう言って霜葉は選択肢に触れた。すると・・・・白夜と十六夜が光りに包まれて徐々に大きくなってゆく。光が収まった後に残ったのは、中型犬くらいに成長した白夜と猫の標準サイズに成長した十六夜だった。


「お~二人ともおっきくなったね!」

『す、すごいね・・・・』

『お兄さんすごいのぉ~』

『俺達もいずれ強く・・・・』

『ご主人!僕強くなった?』

『主!私も強くなりましたか?』


【思念会話】による声もどことなく幼さが少なくなったようだ。霜葉は確認のために二匹のステータスを確認する。


  名:  白夜


 種族: 【ホワイトドック♂Lv1/Lv20】


スキル: 咆哮Lv7 : かみつきLv6 : 嗅覚探知Lv7

   : 身体強化Lv1 : 氷魔法術Lv1



  名:  十六夜


 種族: 【サンダーキャット♀Lv1/Lv20】


スキル: ひっかきLv6 : 隠業Lv7 : 聴覚探知Lv7

   : 身体強化Lv1 : 雷魔法術Lv1


魔法術の他に身体強化のスキルも追加されかなりの強化となった。次のLvMAXは20にもなりさらなる成長にも期待できる。


「うん二人とも強くなったよ」

『『よかった~♪』』


そう言って二匹は霜葉の足にじゃれついた。体は成長してもまだまだ甘えたいようだ。


『そう言えばお兄さん?』

「どうかした三日月?」

『前に渡した卵はどうしたの?』

「あ・・・忘れてた・・・ごめんよ?」


卵と言うのは以前に三日月が拾った者だ。拾った直後にCランク昇格試験などがあり忘れてしまっていたのだ。早速アイテムボックスから取り出そうとするが・・・


≪この卵はアイテムボックスから取り出せません。取り出すためには【箱庭世界】から出るか、卵を思い浮かべて【テイム】してください≫


「え・・・卵の状態でテイムできるんだ?」


どうやら卵の状態でも【箱庭世界】生き物判定らしく持ち込むないらしい。アイテムボックスの場合は生き物ではなく食材扱いなのかもしれない。


「じゃあ・・・卵を【テイム】!」


≪魔物の卵に【テイム】を確認。職業効果により急成長を行います≫


「へ?」


その声が響いた後、霜葉の目の前に魔物の卵が出現して慌てて両腕で受け止めた。すると・・・・


ピキッ!パキパキパキ・・・・パカ!

「ぴー!!!」


卵が割れて中から白銀の翼をもつ体長10㎝ほどの雛が誕生した。


「おー生まれたー!」

『何何?』

『誰誰?』

『生まれたのか?』

『うわ~♪』

『鳥?』


何やら霜葉の職業である【軍勢の魔王レギオン・ロード】はまだまだ謎が多い職業の様だ。まさか卵を【テイム】した直後に生まれるとは・・・・


『初めまして。僕は霜葉だよ』

『ぱぱ~』

「はい?」

「ぴ~♪」


卵から出て、翼を広げて飛んだ雛は霜葉の肩に乗り体を擦り付けてきた。


「生まれたばかりなのに飛べるんだね?」

「ぴー!」

『ご主人?新しい子?』

『主?新しい仲間ですか?』

『そうだよ。仲良くしてあげてね?』

『『うん!』』

『三人も生まれたばかりの子だから気にかけてあげてね?』

『わかった!』

『うん!』

『了解・・・・』


五匹に一言伝えた後、霜葉は生まれた雛のステータスを確認することに。


  名:  なし


 種族: 【シルバーウィング♀Lv1/Lv30】


スキル: 爪撃Lv1 : 無音翔術Lv1 : 闇魔法術Lv1

   : 身体強化Lv1 : 魔道の極み : 夜目 


「・・・・つ、強いね君?」

「ぴー?」


何とこの雛はLvMAX値が30もあり、スキルもかなり多く2つもユニークスキルを持っていた。種族は聞きなれないため見慣れないスキルと共に鑑定を行った。


 【シルバーウィング】

 主に夜に活動する魔物。朝や昼間も活動できるが夜を好む。音もなく飛び獲物を狙い、夜では見難い闇魔法術を使い敵対者を攻撃する。


 【無音翔術】

 音もなく飛べるようになる。Lvが上がれば一切音がしなくなることも可能。


 【夜目】

 夜の暗闇でもよく見えるようになる。


なんとなく暗殺者みたいなスキル構成である。今は子供だが成長すればかなり強くなるであろうことは疑いようがない。


「とりあえず君の名前を考えないとね?」

「ぴ~」

「女の子だし・・・・うん、ルナって言うのはどうだろう?」

「ぴ~?ぴー!」

『どうかな?』

『わたしるな~ぱぱありがとう~♪』

『ぱぱって・・・・僕のこと?』

『ぱぱはぱぱなの~』


どうやらこの雛にとっては霜葉は父親と言うことになっている様だ。


『まぁいっか。とにかく新しいうちの子だし皆とも仲良くしてね』

『みんな~?』

『『よろしく~♪』』

『よろしくな』

『よろしくね~♪』

『よろしく・・・』


【思念会話】で聞こえてきた声にびくっと体を震わすと、霜葉の周りにいる子たちに気付いた。


「ぴ~・・・・」

『君より大きいけど皆いい子たちばかりだよ?大丈夫だよ?』

『ほんとう~?』

『うん』

『・・・・よろしくー』


おっかなびっくり挨拶する新しい仲間のルナ。生まれたばかりで霜葉以外の子たちを警戒している様だ。


『みんなごめんね~しばらく一緒に居れば慣れてくれると思うから』

『『わかった~』』

『生まれたてじゃあしょうがないな・・・』

『だね~』

『うん・・・』


それからは皆で夕食を食べて寝ることになったのだが、白夜と十六夜は大きくなったことで食べる量が増えてしまったのは予想できていたのだが、予想外はルナであった。


ルナは雛であるが魔物のお肉を食べたがったのだ。ただ、さすがに雛に焼いたお肉を食べさすのは無理であるのでランドボアのお肉をミンチにして与えてみた。そうしたら食べる食べる。白夜と十六夜と同程度は食べたのだ。小さな体のどこに入るのか不思議であった。


しかも、就寝して翌日には少しだけ大きくなった。それからの二日間同じ量のミンチ肉を食べて体長は15㎝にもなった。お肉を稼ぐために食べられる魔物を態々探す羽目にもなってしまった。もしかしたら、職業効果で急成長した弊害かもしれないと霜葉は考えたが、事実は分らない。



そんなことがあって進化した白夜と十六夜。新たな仲間である【シルバーウィング】のルナを連れて魔人国まであと少しと言うとこまで来たのだった。


「そろそろ日も暮れるし【箱庭世界】の中に入ろうか?」

『『賛成~』』

『わかった』

『今日は何食べようかな?』

『今日もよく歩いた・・・・』

『ぱぱ~きょうはあるくのおわり~?』

『そうだよ?これからみんなで夕食だよ』

『わ~い♪』


霜葉たちが街道近くの森に入ろうとしたところ、街道の先から何やら争う音が聞こえてきた。


「なんだろう?白夜に十六夜何かわかる?」

『遠くでいい匂いの人たちと嫌な匂いの人たちが戦ってるよ!』

『いい音と嫌な音もしますよ主!』

「そっか・・・さすがに無視するのもなんだし行ってみよう!」


霜葉はそう言うと走りだし、5匹も後を追った。それから彼らの目の前に映ったのは豪華な馬車を守る角の生えた女性騎士たち8人と彼女たちと戦っている羽が有ったり尻尾が有ったり肌が青白かったりしている男たち18人だった。


そこに居る人たちは全員魔族なのだろう。この異世界の魔族は体に特徴があり羽が生えている羽魔族、角が生えている角魔族、尻尾が生えている尾魔族、肌が青白い白魔族、そして最後にすべての特徴を持っている真魔族がいる。魔族とはこの五種族のことを言い魔人国 デュルファンドは主に魔族たちの暮らす国なのだ。ちなみに彼らの羽や尻尾と角は悪魔的な外見だったりする。


女性騎士たちは奮闘しているが、男たちの方が数が多く徐々にではあるが押されている様だ。


「貴様ら!この馬車に乗っている方が誰か知ってのことか!」

「そんなこと関係ねぇなぁ!野郎ども騎士たちもなるべく殺すなよ!じゃなきゃ後で楽しめねぇからなぁ!へっへっへ!」

「外道め!皆奮起せよ!馬車に近づけてはならぬ!」

「「「了解!」」」


見た所女性騎士たちの力量は男たちよりも上であるのだが、数は相手が多いため徐々に押されている。このままでは最終的に負けるのは騎士たちの方だろう。


『皆、あの騎士たちを援護できるかな?』

『『助けるの?』』

『うん。見た所男たちは野盗か盗賊だと思うしね。念のため聞くけど、あの女性騎士たちの方がいい匂いといい音がしてるんだよね?』

『うんいい匂いだよ!特に馬車からいい匂いがするの!』

『私も同じです!』

『よかった。新月たちもいいかい?』

『いいぞ』

『頑張るの!』

『戦う・・・・』

『よし。じゃあ白夜と十六夜は男たちを魔法術や咆哮と隠業を使って攻撃や騎士たちを援護して。新月たちは僕に向かってくる男たちを頼むね』

『『『『『わかった!』』』』』

『ぱぱ~私は~?』

『ルナはぱぱと一緒に皆の応援だよ』

『は~い』

『じゃあ行くよ!』


霜葉の言葉に従い、白夜と十六夜が男たちに向かって駆け出した。


「【ブースト】!【ブースト】!」

「なんだこの声は!」

「頭!あそこに誰かいます!」

「ほっとけ!たかが一人だ何ができる!」

「ワォ~ン!」

「なんだこの鳴き声は!」

「あ!?なんで魔物がいるんだよ!?」

「く、首が動かねえぞ!?」

「ニャー!」

「イテェ!!何だ今俺の手を攻撃した奴がいる!?」

「ぎゃー!!目が~!!

「今だ!敵が崩れたぞ!反撃だ!」

「「「はっ!!」」」


白夜と十六夜が敵を引っ掻き回したことで女性騎士たちの反撃が始まった。次々と倒れる男たち。そんな中野盗の頭が霜葉の存在を怪しんだ。


「あの野郎が何かしてるだ!3人がかりであの野郎を始末しろ!」

「「「へい!」」」


頭の声に従い、3人が霜葉の下へと向かって行った。しかし、その前に立ちはだかるのは三匹のブルーベア。


「あぁ!?なんでブルーベアの子供がこんなとこに!?」

「知るか!構うことわねぇやっちまえ!!」

「おお!!」

「ぐぅ!」

「まぁ!」

「ぐる!」

「【アタックブーストワイド】!【ガードブーストワイド】!」


今霜葉が唱えた魔法術は複数の対象に魔法効果を付与する【付与魔法術】だ。男達も腕っぷしには自信があるのだろうが、強化された新月たちに苦戦する羽目になる。


「ブルーベアって言っても子供だろう!?なんでこんなに強いんだ!」

「知るかよ!?言ってる暇があるならさっさと倒せよ!」

「くっそぉおお!!」

「ぐぅー!」

「まぁー!」

「ぐるー!」


男たちの攻撃を爪で弾き時には躱して新月たちは互角以上に戦っている。するとそこに・・・・


「ワーン!」

「ニャー!」


白夜の氷魔法術である【アイスアロー】と白夜の雷魔法術である【サンダーアロー】が男たちに放たれた。


「ぐふぁ」

「かはぁ」


【アイスアロー】が当たった男は体に三本の氷の矢が貫き、【サンダーアロー】が当たった男は全身黒こげになりこと切れた。


「ま、魔法術を使う魔物だと!?なんでそんな奴がこんなところに!?」

「ぐぅー!」

「こふぅ」


予想外の攻撃に驚いた男の隙をついて新月が男の腹に爪を深く突き刺して命を奪った。女性騎士たちの方も男たちを倒したようで、後は野盗の頭だけである。


「く!?」

「貴様には聞きたいことがある。素直にしゃべることだな」

「い、命だけは助けてくれ!あんたたちが今日ここを通ることは知らねえ奴が教えてくれたんだ!」

「そいつに特徴はあるか?」

「ぜ、全身を黒色のマントで覆ってたから身体的な特徴は分らねぇ!でも声は男だったぞ!?」

「そうか・・・では、さらばだ」

「はぁ?」


そう最後に言い残して頭の首は天高く打ち上げられ、胴体は血をふき出しながら背中から倒れた。


『ご主人!終わったよ~!』

『主!私たち強かったですか!』

「・・・・・」

『ご主人?』

『主?』

「なんでもないよ。二人ともお疲れ様だったね?三人も守ってくれてありがとう」

『これくらいどうってことない』

『お兄さん守れてよかったの』

『つかれた・・・ねむい・・・』

『みんなすごいの~♪』


霜葉は五匹を褒めながら、【クリーン】を掛けて人の死という物について考えていた。


(覚悟はしていたけど、やっぱり目の前で悪人とは言え人の死を見るのはきついな・・・・でも、この世界で冒険者として生きるにはいつかは僕も誰かの命を奪うだろうし・・・しっかりしないと)


やはり、覚悟していても人の死という物を目の前で見せられては心が揺らぐのだろう。霜葉は自らの心にある気持ち悪さを仲間たちを撫でることで誤魔化そうとした。


『ご主人・・・・大丈夫?』

『主・・・・大丈夫ですか?』

『・・・・二人ともありがとう。少しは楽になったよ?』


そんな霜葉の変化を敏感に感じ取ったのだろう。白夜と十六夜は心配そうに霜葉を見上げていた。そうやって仲間たちで和んでいると女性騎士たちが霜葉たちを囲い剣を向けた。


「あれ?」

「そなたは何者か?奴らの仲間か?であるならば・・・・」


女性騎士たちのリーダー格であろう女性が囲いの中に入り言葉を掛けた所・・・・


「その方は助けてくれた恩人ですよ?」


馬車から声が響き、中から女性が一人出てきた。


「ナナリ様!馬車から出てはいけません!」

「大丈夫ですよアルノル。この人族の方は魔物使いで彼の周りにいるのは【テイム】した魔物です。先ほどの野盗たちを攻撃してくれてあなたたちを援護してくれたのです」

「魔物使い?それは本当ですか?」

「私のスキルで見ていましたから」

「・・・・ナナリ様がそうおっしゃるのでしたら」


そう言った後、その女性騎士は周りの者に合図を送り囲いを解き剣も鞘に収めた。


「わたくしの護衛が失礼をして申し訳ありません。それと、危ない所にご助勢いただきありがとうございます」

「いえ、お気になさらずに」


護衛たちのしたことの謝罪と助けてくれたことのお礼を言って深々と頭を下げる女性。しかし、霜葉は言葉を口にしながら別のことを考えていた。


目の前の女性は真魔族なのである。角を持ち羽が生え尻尾が見え肌も白い。問題なのは真魔族は例外なく王族・・しかいないのである。つまり・・・


「申し遅れました。私はナナリ・ユーディルス・デュルファンドと申します」

「王族の方とは知らず、ご無礼を・・・」


霜葉は慌てて、その場で片膝を付いて顔を伏せようとしたが・・・


「どうかそのままで。確かに私は王族ですが、あなたは命の恩人なのですから楽になさってください」

「いいのですか?」

「もちろんです」


チラッと女性騎士たちの方にも視線を向けたが、特に何も言わず周囲の警戒をしている様だ。この人にとっては日常茶飯事なのかもしれない。


「わかりました。ところで一つ窺ってもいいですか?」

「なんでしょう?」

「どうして私の職業が分かったのですか?この子たちはいますが、魔物使いは珍しいと思うのですが」

「詳しくは申せませんが、私のスキルの効果です。馬車の中でも周りが見えていたのであなたのこともわかったのですよ」


鑑定系のスキルでも持っているのだろうと霜葉は判断したが、それだけではないだろうとも思った。敵対しているわけではないのでスキルの詮索はしなくてもいいとも考えたが。


「お母様。もう出てもいいですか?」


とここで、馬車の中から子供の声がした。霜葉とナナリが視線を向けると馬車の中に女の子がいた。小学生くらいだろうか?その後ろに幼稚園児くらいの男の子もいた。


「ええ出てもいいですよ。リルファにアルトもご挨拶なさいな」

「わかりました」


女の子は男の子の手を繋いで、ナナリの隣まで歩いてきた。


「此度は危ない所を助けていただきありがとうございます。私はリルファ・ユーディルス・デュルファンドといいます」

「ぼ、僕はアルトっていいます」


女の子はスカートの端をつまみながら優雅に一礼して挨拶を行ったが、男の子はリルファと名乗った子の背に隠れてしまっている。


「申し遅れましたが、僕は霜葉と申します」

「アルト?ソウハさんに失礼でしょ!隠れていないでしっかり挨拶しなさい!」

「む、無理だよ~」

「すいませんソウハ殿。この子は恥ずかしがり屋でして・・・」

「いえ、どうかお気になさらず」

「まぁ~?」

「あ、三日月?」


となりで大人しくしていた三日月がアルトが気になったのか、近づいて行った。


「え、え~っと?」

「まぁ!」


アルトの目の前で立ち上がり挨拶のつもりか前足をシュタっと上げた。


「「か、かわいい」」


アルトとリルファはその仕草の可愛さにやられたようで、アルトは隠れるのをやめ三日月を撫で始めた。


「わぁ~柔らかくてふわふわだ~よろしくね?小熊ちゃん」

「まぁ~♪」

「ア、アルト!私にも撫でさせて!」


二人で三日月を可愛がり始めてしまった。当の本人は嬉しそうなので問題ないと言えばないのだが・・・


「ふふふ。ソウハ殿?よければ私たちとご同行していただけませんか?」

「そうですね。ここで別れるのは三日月が可愛そうなのでいいですよ?」

「ありがとうございます」

「「やった!」」


こうして霜葉は魔人国の王族であるナナリ・ユーディルス・デュルファンドご一行と行動することとなった・・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 持ち込むない     ↑ 持ち込めない では?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ