第一章 第十九話 女王国編19
とても遅くなり楽しみにしていた方には申し訳ありません。
無事にCランク昇格試験を終え、辺境の町へと帰ってきた霜葉たち。その後に試験結果を聞くため冒険者ギルドに行くとギルドマスターと対面。ギルドマスターである彼女直々に試験結果を聞かされた。そして霜葉たちは見事に試験に合格して、Cランク冒険者となった。しかし一人だけ試験に落ちてしかも降格を言い渡されてしまった。
それもそのはずでその一人はあまりに問題行動や発言が多々あったので、この結果は当の本人以外からしたら当然の結果だった。それでも納得しない彼に対してギルドマスターが強者の圧を放ち強制的に黙らせた。その後、彼は冒険者ギルドを飛び出してしまった。
そして翌日。その彼は霜葉に対して決闘を申し込んだ。霜葉は断ったのだが、彼はしつこくその態度に健吾と生徒会長は怒りが込み上げてくる。だがこの時試験の見届け人であったテイザーが現れ、彼に対して冒険者資格剥奪を言い渡した。この決定にまたしても納得いかない彼であったが、白夜たちの実力を見せつけられその場を去った。去り際に霜葉を睨みつけたので安心できないが・・・・
そんなことがあった後に霜葉は冒険者ギルドのギルドマスターの部屋に呼ばれていた。
「今回はすまなかったね。この町のギルドのトップとして謝罪するよ」
「いえ、ギルドマスターが謝る必要はないのでは?」
「そうはいかない。彼、ダスケの行動は間違いなくこちらの判断ミスだからね。最初に降格ではなく冒険者資格を取り上げて模擬戦でもして鼻っ柱をへし折るいや、木端微塵に砕く必要があったね」
「そこまでする必要があるんですか?」
「ギルドの信用にかかわるからね。資格を剥奪した者がいきなり問題を起こしたらこちらとしても責任が多少はあるんだよ」
「なるほど」
「とにかく謝罪は受け取ってくれないかな?」
「そういうことなら謝罪を受け取ります」
「ありがとう」
呼ばれた理由は今の会話でわかると思うが、ダスケの決闘騒ぎのことだ。霜葉個人が呼ばれて他の三人はミンクとコロナに召喚者たちを紹介している。ちなみに白夜たちはと言うと・・・・
「くぅ~ん」
「にゃ~」
「ぐぅ・・・」
「まぁ・・・」
「ぐる・・・」
白夜と十六夜は霜葉の腕の中で顔を隠して震えている。新月と無月は霜葉の左右の足にしがみつき顔を隠している。三日月は霜葉の後ろで頭を抱えてギルドマスターにお尻を向けて震えている。・・・・この光景を想像すると可愛いと思うのは私だけだろうか?
「う~ん可愛い光景なんだけど、完璧に怖がっているね~全く彼のせいでこの子たちに怖いお姉さんと思われちゃったじゃないか!」
私の同類がここにもいた!まぁこのことは置いておいて。ギルドマスターのセリフに霜葉も苦笑をするしかない。この子たちのこの反応は試験結果を伝えた時にギルドマスターから圧が放たれた為、その圧を感じた白夜たちが自分たちでは敵わないと判断してしまい怖がっているのだ。
「ま、まぁとにかく今回の件はこれでおしまいだ。君が無事でよかったよ。なんせ君たちのおかげでこのギルドは今までにないくらいの利益を上げているからね」
「そうなんですか?」
「そうだよ~君たちが持ち込んだ魔物素材はこの町の数少ない腕利きの職人たちがこぞって求めているんだよ。なんせ品質的には問題ないどころか高品質だからね。職人たちや商人からしたら是が非でも手に入れたいと思うよ?」
「へぇ~」
「あ、もちろん君たちから買い取った金額は適正価格だからね?」
「そこは信頼していますよ」
「ありがとう。これからも頑張ってほしいね」
「でも、僕は近いうちに旅に出ますよ?」
「え!?そうなの!?」
霜葉のこのセリフは予想外だったのか、ギルドマスターは驚愕の表情を浮かべた。
「はい」
「で、できれば君にはこのままこの町のギルド専属になってもらいたいんだけど?」
「すいませんが、僕にも目的があって旅をしたいので・・・・」
「そ、そうか~さすがに僕には君を止めることはできないし仕方ないか~」
「今すぐに旅をするわけではありませんし、しばらくは旅の資金稼ぎをしますから」
「そうしてもらえるとこちらとしては助かるよ~あ、だったら君が旅立つまで君たちが持ち込んだ魔物素材は色を付けて買い取るよ」
「そんなことしていいんですか?」
「問題ないね。君たちのおかげでかなり潤っているし、君がいなくなった後にでも高品質の素材はこれで最後だと言えばかなり儲かるだろうしね」
「商売上手ですね」
「長く生きてるとこれぐらいはできるさ」
ギルドマスターのセリフでわかると思うが、エルフはかなり寿命が長く300歳は軽く超えて生きる。エルフ以外だとドワーフや魔族も寿命は長い。寿命の長さはエルフ>魔族>ドワーフである。もっとも、魔族に関しては獣人ほどではないが種族が複数あり、その種族によって寿命の長さは異なるのだが。
話はこれで終わり、霜葉はギルドマスターの部屋を出た。その際白夜たちはあからさまにほっとした態度でギルドマスターは肩を落としていた。1階に下りた霜葉は健吾たちと合流してお互い何があったかを話し合った。
「ギルドマスターの話は終わったのか霜葉?」
「うん。決闘騒ぎの謝罪と僕が旅立つまで僕たちが持ち込む魔物素材は色を付けて買い取ってくれるらしいよ」
「そうなの?」
「どうも僕たちが持ち込んだ魔物素材がかなりの利益になっているらしいんだよね。ただ、僕が旅立つともう手に入らないからね」
「それはいいですね。こちらとしてもありがたいですね」
健吾と裕佳梨も同様に喜んでいる。もっとも霜葉は買い取り価格の件は今回の騒動の謝罪の意味もあると考えている。利益があるのは間違いないだろうが、それだけでこんなことにはならないだろう。生徒会長も同じ考えではあるが、態々指摘する必要もないと考えたのだ。
「そっちはミンクさんとコロナさんに皆を紹介した?」
「ああ。今日依頼を受けに来た生徒たちを紹介しておいたぜ」
「早速試に何人かと一緒になって依頼を受けてたよ?」
「私たちも依頼を受けましょう。Cランクの冒険者になったのですから難しい依頼も積極的にやりましょう」
そう言った生徒会長の言葉に3人は頷き、依頼が貼られているボードの前で相談した結果受けた依頼はこちら。
【ブレイドディアーの討伐】
目的: ブレイドディアー6体の討伐。討伐証明に角を要提出!
報酬: 銀貨一枚と銅貨三枚
【ブレイドディアーのお肉納品】
目的: ブレイドディアーの一頭分のお肉納品。
報酬: 銀貨二枚(解体状態だと追加報酬あり)
この二つを受けて霜葉たちと五匹は森の深い場所へと向かった。そして現在森の深い所で出会ったホーンドボア二体と戦闘中である。
「ボォー!」
「まぁー!」
「ぐるー!」
突撃してくるホーンドボアを三日月と無月が受け止める。二人には霜葉が【アタックブースト】と【ガードブースト】を掛けているので二人がかりで何とか受け止めた。そこに・・・・
「ぐぅ!」
「ボォ!?」
新月が横から体当たりを行い、ホーンドボアは横へと倒れてしまう。倒れたホーンドボアに新月たち三人が集まりボコボコに殴り始める。魔物が哀れに思うが、最初に襲ってきたのはむこうなのだからしかたなし。
「ボ・・・ボォ」
最後に新月がのどを爪で引き裂いてホーンドボアは物言わぬ肉塊へと変わった。もう一体の方は霜葉以外のメンバーが倒している。
「三人ともお疲れ様。だいぶ強くなってきたね?」
『ありがとう兄さん。でもまだまだ強くなりたいよ』
『お兄さんのおかげだよ~♪』
『その通り・・・・』
霜葉は三人を労い、新月たちも霜葉にお礼を言っている。そんな霜葉たちと五匹の現時点での狩の成果はホーンドボア二体にファングバイパー三体、フォレストオウルが四体となっている。
「さすがに深い所に出てくる魔物はそう簡単には出会えないな」
「そうだね」
「今までが順調でしたからね。これは今日では終わらないことを覚悟する必要がありますね」
冒険者ギルドのボードに張られている依頼は基本期限はないものだ。とは言えあまり時間をかけすぎるのはまずいので暗黙のルールとして三日間が依頼の期限として扱われている。
「そうですね。お昼まで探して見つからなければ今日は終わりにして町へと帰りますか?」
「その方がいいだろうな」
「夜は危ないらしいしね」
「そうしましょう」
夜には夜行性の魔物が出てくるらしく、街道付近ならともかく森の深い所では遭遇率が格段に上がるので召喚者たちは夜には出歩かないようにしているのだ。それ以前に夜目に自信がないのも理由なのだがね。現代っ子には月や星の明かりしかない夜の森は予想以上の暗さなのである。安全を考えるとランプなどの明かりは自分たちの居場所を教えているようなものだし、松明は森ではやめておいた方がいい。
そして結局この日は目当てのブレイドディアーは見つからず、グリーンフォックスが三体とキックランナーを二体が襲ってきたので倒して今日は道へと引き上げることにした。そして町へと帰る道中に霜葉は今作ってもらっている武器が出来て、資金を稼いだら旅に出ることをみんなに打ち明けた。
「そっか・・・・そろそろ旅に出ちまうのか・・・・」
「うん。この前のCランク試験でみんなが旅に必要な物は作ってくれたし、装備とお金が手に入れば旅をするよ」
「・・・・前から聞いてはいたけど気を付けてね?霜葉君」
「この子たちともしばらくお別れですか・・・・」
「わん?」
「にゃ?」
「「「??」」」
三人とも前々から決めていたこととはいえやはり寂しさがこみあげてくるが、事情は分かっているため引き留めることはしない。生徒会長は腕に抱いている白夜と十六夜さらに新月たちを寂しそうに眺めていたが。
町へと戻った後は冒険者ギルドで霜葉が倒した魔物を解体した。最近はお金も十分に稼いでいるため、安全を考えてギルドの解体場で解体をしているのだ。解体した魔物素材は全部買い取りに出して額は銀貨八枚と銅貨五枚になった。
住処へと戻るとミンクとコロナと一緒に依頼を受けた召喚者たちからお礼を言われた。なんでも二人のおかげでいつもより魔物を倒せて、素材売却でかなり儲けたらしい。ミンクとコロナの二人も召喚者たちと仲良くなり霜葉たちにお礼を言っていたようだ。しばらくは何人かの召喚者たちと依頼を受ける約束をしたらしく、いい関係を築けたようで霜葉たちも安心した。
翌日になって森へと行ったらあっさりと依頼対象であるブレイドディアーを見つけて依頼は達成することができた。それからしばらくは森の奥へと行く依頼を受けつつお金を貯めた。そして・・・・
「これらがお主らの武器じゃ!わしが作った中でもトップクラスの武器じゃぞ!」
今霜葉たちがいるのはドワーフ夫婦が営んでいる武具店だ。武器が出来上がる期日になったので顔を出したのだ。そして店主のドワーフが自信満々でカウンターに乗せたのは槍、戦棍、杖が二つの武器である。不思議な光沢で輝き、芸術作品と行っても通用するほどの美しさがある。霜葉が鑑定をしてみた結果は・・・
【ボーンメタルスピア】
バトルコングの骨と血で作った槍。確かな職人の腕と高品質な素材でかなりの逸品。
適正価格 銀貨六枚
【ボーンメタルメイス】
バトルコングの骨と血で作った戦棍。確かな職人の腕と高品質な素材でかなりの逸品。
適正価格 銀貨七枚
【ボーンメタルロッド】
バトルコングの骨と血で作った杖。確かな職人の腕と高品質な素材でかなりの逸品。
適正価格 銀貨五枚
今までで一番高い価格だ。戦棍が一番高いが槍と杖は持ち手の部分が木なのでその差なのだろう。
「かなりの物のようですが、本当に銀貨八枚で貰っていいんでしょうか?」
「前にも言ったが素材持込みならそんなもんじゃよ。それにこれらに使った素材なら腕の立つ職人なら是が非でも欲しい物じゃしのう。最近は坊主たちのおかげでいい仕事が出来て礼を言わねばならんわい!ありがとうのう!」
そう言って店主は嬉しそうにがッはッはッと笑っている。この言葉は本当で事実ギルドが売りに出したバトルコングの素材は商人や職人たちがこぞって求めているのだ。この件でギルドはまたもかなりの利益になりギルドマスターはほくほく顔だったとか。
「あと革の大盾の方じゃが、三日もすれば出来上がりそうじゃぞ?初めて作ってみたが、思ったより頑丈で十分に盾として機能しそうじゃわい」
「わかりました。では三日後に受け取りに来ますね。これが残りのお金です」
「まいどあり!」
そうして霜葉たちは新たな武器を手に入れて、冒険者ギルドへと行き依頼を受けて武器の試し切りをすることにした。受けた依頼は・・・
【キックランナーのお肉納品】
目的: キックランナーの一羽分のお肉納品
報酬: 銀貨五枚(解体状態だと追加報酬あり)
【キックランナーの羽納品】
目的: キックランナーの一羽分の羽納品
報酬: 銀貨三枚
この二つだ。依頼の紙を受付に持って行った後に霜葉たちは森へと向かう。そして何度か魔物と戦ったのだが、かなり戦闘力の向上が見られた。現在戦っているレッドウルフでもその差は歴然だった。
「おらぁ!」
「ぎゃん!」
健吾の持つ戦棍を振るえばレッドウルフの頭骸骨を簡単に砕く。
「はぁ!」
「!!」
生徒会長の槍はたやすく喉を貫く。
「【アタックブースト】!【ガードブースト】!」
「わん!」
「にゃー!」
「ぐぅ!」
「まぁ!」
「ぐる!」
霜葉の付与魔法術を掛けたテイム組はいつも以上の力を発揮して、レッドウルフたちを倒した。武器の性能はかなりの戦闘力を霜葉たちにもたらしたようだ。
「いや~すごいなこの武器は!」
「そうですね。今までの武器とはかなりの差がありますね」
「こっちも魔法術の効果が上がっている様だよ?」
『いつもより力が上がったのご主人~』
『すごく戦いやすかったの~』
『兄さんすごいよ』
『私もすごかったの~』
『お兄さんすごいよ・・・』
裕佳梨を除いた三人が武器の凄さを体感し、武具の重要性を改めて感じた瞬間だった。しかし逆に言えば・・・
「皆武器が凄いのは分ったけど、自分の力じゃなくてあのドワーフの職人さんが凄いんだからね?武器を使ってるのは私たちだけど、自分たちが強くなったと勘違いしちゃダメだよ?」
と裕佳梨が皆に言い聞かせた。確かに裕佳梨の言う通りである。武器が強いからと言って自分自身が強くなったわけではないのだ。
「裕佳梨さんの言う通りですね。それにこの武器はかなりの貴重品らしいですから盗まれないように注意も必要でしょう」
「あ~そうですね。でもCランク冒険者と事を起こす奴なんているかね?」
「いないと断言はできないよ健吾君。冒険者だけじゃなくて商人とか貴族なんかが狙ってくる可能性はあるからね」
「あ~確かに。貴族は前例があるからな~」
そう言って健吾は新月たちに視線を向けた。この子たちを奪いに来た貴族がいたのは記憶に新しい。
「そう言えば霜葉君?武器は手に入ったから旅にはいつ出発するの?」
「そうだね・・・・旅の資金も手に入れたいから三日後かな?その間は依頼や魔物素材でお金を稼いでおかないとね」
「そっか・・・・とうとう旅立っちまうのか・・・」
「寂しくなりますね・・・・」
霜葉を除いた三人は心に感じた寂しさで顔が暗くなった。
「三人ともこれで会えなくなるわけではないんだし、そんな顔しないでよ」
「でも霜葉?お前の職業を考えたらここに戻ってくるのは難しいんじゃないか?」
「それはあくまで現時点ではだよ?僕が考えていることが実現出来たら問題ないよ」
「どういうこと?」
「それはね・・・・」
霜葉は己の頭の中にあるある計画について三人に話した。それを聞いた三人はだんだんと顔が驚愕に変わってくる。
「・・・・・とこんなとこだね」
「またすごいこと考えるな霜葉は」
「でも確かにそれが実現すれば現時点の問題は解決するね」
「別の問題が生まれますが、私たちが考える問題ではありませんしいいかもしれませんね」
「そのためにも頑張るよ」
「俺も応援するし協力は惜しまないぞ霜葉」
「当然私もね」
「私もです。」
この計画は霜葉の安全を考えたものであるため、三人は協力を約束した。この計画についてはそう遠くない未来で明らかとなるだろう。
話が終わったら血が抜けきったレッドウルフ7体をアイテムボックスに入れて、森の探索を再開した。その結果はレッドウルフ7体、キックランナー2体と初見の魔物である角が水晶のシカと大きさが大型犬ほどもあるウサギ。シカの方はクリスタルホーン。ウサギはジャイアントホワイトと鑑定に出た。
この二体はすぐさま逃げ出そうとしたのだが、白夜の咆哮によってうまく逃げられず狩られることとなった。いつものように血抜きをしてアイテムボックスに入れて町へと帰還する。そしていつものように解体場で解体するためにアイテムボックスから魔物を出したら驚かれた。
なんでもこのクリスタルホーンとジャイアントホワイトはかなり珍しい魔物らしいのだ。強さ的にはさほどではないが、あのバトルコングよりも滅多に出会わないとのこと。それに珍しいがゆえにこの2体の魔物素材はかなりの高値で取引される。
そこでクリスタルホーンは角付の頭のままでいいと解体場の職員に言われて、そのまま買い取ってもらうことにしてあとは皮とお肉。ジャイアントホワイトは皮にお肉それと2体共通で魔結晶を解体した。他の魔物も解体済みだ。これらを買い取ってもらった結果、依頼報酬込みで金貨三枚と銀貨八枚になった。
「こんなにいいんですか?」
「はいもちろんですよ?すべての素材が傷もなく高品質でお肉も部位ごとに切り分けられていて文句などありえません。むしろギルドよりもどこかの商人に売りに行った方がこれ以上の値段で買い取ってくれますよ?」
「いえ、それはやめておきます。ギルドの方が信用できますし」
「ありがとうございます」
実際たとえ持ち込んだとしても交渉でかなりの時間を取られてしまい、交渉も難航するだろう。素人がやるには面倒なことになること間違いなしである。そう言う意味でもギルドの方が面倒がなくていいのだろう。
今回の稼ぎは金貨二枚を霜葉の取り分にしていいと他の三人が言ってきた。霜葉は多すぎると言っていたが、この先仲間の魔物が増えればいろいろお金がいることになるだろうと言われて納得した。そして今回のようなことを三日間続けて、現在は就寝中。だが・・・
「・・・・眠れないな」
霜葉は部屋のベットで寝つけないでいた。明日にはドワーフの武具屋で革の大盾を受け取ったら旅に出るため緊張しているのだろうか?同じ部屋に居る健吾とテイム組はぐっすりと寝ている。
「くぅ~zzz」
「にゃ~zzz」
「ぐぅーzzz」
「まぁ~zzz」
「ぐるーzzz」
テイム組は部屋の片隅で一塊になり丸まって寝ていた。その光景に笑みを受けべて霜葉はおこさない様にベットから起き上がり部屋を出た。気分転換に夜風に当たろうと思っての行動だった。
住処から出てた霜葉は入口近くにあるベンチへと座り夜空を眺めていた。この世界の夜空は空気が汚染されていないからよく星が見えて綺麗に輝いている。しばらく見上げていると・・・・
「霜葉君ですか?」
「聖夏先輩?」
向かいに住処から生徒会長が出てきて霜葉とばったり出くわしたのだ。
「眠れないのですか?」
「ええ。だから夜風に当たりながら星を見ていました」
「私も隣でご一緒していいですか?」
「どうぞ」
霜葉の許可を聞いて生徒会長は隣へと腰かけた。そしてしばらく二人は星を見ていた。
「眠れない理由はやはり旅への緊張からですか?」
「たぶんですが、そうだと思います。聖夏先輩はどうして?」
「これでもこの世界に来て緊張の連続だったので何度か寝つけない日がありましたので」
「・・・・こんな時ぐらいは言葉を崩しても構いませんよ?」
「・・・・そうよね。霜葉君に緊張しても仕方がないわよね」
そう言って生徒会長は丁寧な言葉遣いをやめた。
「健吾君や裕佳梨ちゃんの前でも緊張していたんですか?」
「なんとなくあのままになっちゃてね。でもそろそろ二人の前では言葉を崩すことにするわ」
生徒会長は緊張していると言葉遣いが丁寧になる癖があるのだ。そしてその事実を霜葉は知っていたのだった。ちなみにこの癖を知っているのは家族と霜葉以外にはいなかったりする。
「もしかして他にも悩みがあったりしますか?」
「・・・・・わかる?」
「なんとなくですが」
「・・・・・霜葉君は気付いていると思うけど、私たちは必ず元の世界に帰れる保証はないわ。最悪この世界で一生を終えることになるかもしれない。でもこのことに気付いている生徒はほとんどいないでしょう」
「・・・・そうですね」
「いつまでも気付かないなんてことはないでしょうから、そう遠くないうちにホームシックになる生徒や自暴自棄になる生徒も出てくるかもしれない。そう考えると今日は眠れなくてね・・・・」
生徒会長の考えは至極当然のことだった。生徒たちのほとんどは帰れることを目的に今を頑張っている。しかし必ず帰れる保証もないのだ。生徒会長の不安は確かにあり得る未来なのだ。だが霜葉は・・・・
「そこまで深く考える必要はないのでは?」
「え?」
「聖夏先輩が言った事ですよ?生徒たちは自立心が高いと。そんな生徒たちならこの世界でも立派に生きていけますよ。幸いスキルという物があり生徒たち全員が役に立つスキルを持っていますし、その生活を続ければ悩むことも少ないと思いますよ?」
「・・・・・」
「それにまだ問題にもなっていないことで悩むのは馬鹿らしいですよ。そう言う生徒が出てくる可能性はあるのでしょうが、僕は低いと思います。実際ここにいるみんなは楽しそうですしね」
「それは・・・・」
「悩んでいる人がいるなら僕が今聞いた様に手助けしてあげればいいんですよ」
「・・・・霜葉君の言う通りかもしれないわね。私は生徒たちを信じてあげるべきよね」
霜葉の意見を聞いて少しは悩みが晴れたようで、先ほどまでとは違い晴れやかな顔になった。
「ありがとう霜葉君。おかげで少しは重荷が取れたわ」
「聖夏先輩にはお世話になりっぱなしですからね。少しでもお役にたてたのならうれしいです」
「私だって霜葉君には助けられているわよ?この町で男子をまとめているのは霜葉君だしね」
「僕が旅に出れば健吾君が代わりにまとめてくれますよ」
「・・・・・本当は私もいっしょに行きたいのだけどね」
「え?」
「な、なんでもないわ!そろそろ寝られそうだから失礼するわね!」
そう言って生徒会長は向かいの住処へと入って行った。霜葉も首を傾げていたが、そろそろ寝ないと明日の旅に影響すると考えて部屋へと戻りベットに入った。
そして翌日。何とか寝れて朝を迎えた霜葉は召喚者たちから豪華な朝飯を作ってもらっていた。旅へと行く霜葉に今まで世話になったお礼もかねてのことだ。それだけではなく日持ちする料理も何品か作っていて旅に持って行ってほしいと言われ霜葉は心よりのお礼を口にした。
食事を終えた霜葉たちはドワーフの武具店へと向かった。召喚者たちは霜葉の見送りに行きたかったが、人数が多いので町の門に行けば邪魔にあると思い取りやめた。その代り霜葉たちが住処を出て行くときに全員が霜葉にエールを送り旅の安全を願った。霜葉は皆から好かれているのだ。
ドワーフの武具店で簡単に受け取りを済ませた後、霜葉を見送るために健吾たちは門から出て最後の挨拶をしようとしていた。
「霜葉!無事にまた会おうな!」
「うん。健吾君も体には気を付けてね?」
「白夜たちも元気で。また会いましょうね?」
「わん!」
「にゃん!」
「ぐぅ」
「まぁ~♪」
「ぐる」
「霜葉君。旅の無事を願っているわね?」
「聖夏先輩もいろいろ大変でしょうが頑張ってください。では皆行こうか」
『『行くの~♪』』
『うん。兄さん』
『付いて行くの~』
『一緒・・・・』
こうして霜葉は旅へと出発した。生徒会長たちは霜葉が見えなくなるまで見送った後に町へと帰って行った。
これにて第一章は終わりです。第二章に行く前に閑話を2話ほど書いて、その後登場人物紹介などを書く予定です。
体調が本調子ではないので、不定期更新になりますが調子を崩さない程度に頑張りたいと思います。




