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第一章 第一話  女王国編1

「くぅ~ん」

「にゃ~ん」

「ん?んんぅ~・・・」


聞き覚えのある声が聞こえ、さらには顔にさっきからぺろぺろと舐められてるような感覚とポンポンと何か柔らかい感触が伝わってくるのを感じる霜葉。身を動かし瞼を開けて真っ先に映ったのは・・・


「あれ?君たちは・・・」

「わん!」

「にゅん!」


動物保護施設で霜葉に特に懐いていた子犬と子猫であった。どうやら先ほどの感覚と感触は子犬が顔を舐めて、子猫が肉球で顔を叩いたのが原因らしい。


「君たちもしかして逃げだしたの?そう言えば先生が朝から保健所の人が健康診断に来るって言ってたね。

じゃあその時に逃げたんだね。ダメじゃないか逃げたりしたら」

「くぅ~ん」

「にゅ~」

「うるうるしてもダメ!さぁ、早いとこ施設にもどらないと・・・・?」


そう言って霜葉は先生にこの子たちを戻してくることを言おうと辺りを見渡した。そこで初めて気づいたのだ自分がいるところが、否。自分たちがいる場所が高坂高校の体育館ではないと。


そこは真っ暗でおおよその見える範囲では石造りの神殿のような雰囲気だ。自分と子犬と子猫以外ではおそらく体育館に居た全員がこの場で倒れている。そして霜葉の友達である健吾と裕佳梨。さらに生徒会長も確認できた。


(落ちつけ・・・まずは僕の情報から確かめよう。僕の名前は動島 霜葉。身長160㎝。肉体的な特徴はやせ形の筋肉質。水泳の授業の時に同級生たちから意外と言われたっけ。顔はどちらかと言えばかわいい系でなぜか女性の先輩たちから弟にしたいなんて言われたっけ)


付け加えるならば、彼は動物に懐かれやすいためよく動物と一緒いるところを目撃されその姿が可愛いなどと話題を呼び、一部の女性上級生からは隠れファンがいるほどだ。


しかしこの状況で慌てず狼狽しないところを見ると、彼は冷静と言えるだろう。考えていることが若干的外れではあるが・・・・


「て、こんなことを考えるよりみんなを起こさないと!」


現状でできる最大限をようやく思い至り、まずは健吾と裕佳梨を起こすため二人に近ずいた。すると・・・


「う、う~ん」

「目がちかちかします~」


二人が霜葉が起こす前に起き上がり、二人が起きるのをきっかけにして生徒たちが続々と起き始めた。


「な、何が起こったんだ?」

「ここどこだよ!?」

「く、暗いわね?」

「なんで、石造り?」


そして周りを見渡してここが自分たちのよく知る場所でないと分かると騒ぎ出す生徒たち。とりあえず霜葉は友人である二人の様子を確認することにした。


「健吾君に裕佳梨ちゃん。体でどこかおかしなところは無い?」

「あ、ああ痛みや違和感なんかはねぇよ?」

「私もです。まだ目がちかちかする程度です~」

「裕佳梨無理するな、しばらく目を閉じてた方がいいぞ」

「そうします~キャ!今足元に何かいました!」

「にゃ~」

「こらダメだよ。脅かしたりしたら」

「ん!?よく見たら霜葉に懐いてる子犬と子猫じゃないか。なんでこんなとこにいるんだ?」

「僕にもよくわからないんだ。多分逃げ出して体育館に来て巻き込まれたんだと思うんだけど」

「わん!」

「とりあえず君たちは僕のそばを離れないようにね」


霜葉がそう言うと子犬と子猫は嬉しいのか霜葉の足にまとわりついてきた。


「わふ~」

「にゃ~」

「あ、こら動けないから!しょうがないなぁ~」


このままでは身動きが取れないので霜葉は二匹を抱きかかえた。


「しばらくおとなしくしててね?」

「わん!」

「にゃ~!」

「・・・・はあ~子どもはのんきだな~」

「ふふふ、でもおかげでちょっとは落ち着きました」


そんな風に話し合っていると、全生徒が起きたのか騒ぎがどんどん大きくなりこのままでは暴走する生徒が出てくる可能性がある。そんな時・・・・


「皆!静まりなさい!」


凛とした大きな声が辺りに響き、騒ぎの喧騒がピタリと止んだ。その声を出したのは高坂高校 生徒会長 高坂 聖夏だった。


「このような状況では不安になるのもわかります。しかし今は慌てず騒がずに状況の把握に努めましょう。まずは、全校生徒がいるかの確認です。どうか皆さん知り合いとグループを作り自分の知っている人がちゃんといるかどうか確認してください!生徒会や各委員長は私の下に集まってください!数の確認を行います!」

「「「「は、はい!」」」」


カリスマな雰囲気をこれでもかと発揮して、彼女はこの場の騒ぎを治めることに成功した。そして生徒会と各クラスの委員長が集まり、他の生徒たちも仲の良いグループで集まったり、同じ専門科の同級生たちで集まったりしながら数の確認を行った。


「さすがは生徒会長だな」

「うん。皆も一応は落ち着いたみたいだし」

「とりあえず。僕らも知り合いがいるか確認しようか?」

「ああ!」

「ええ!」


その後三人と二匹は各グループの人たちを見渡しながら自分たちの知り合いに話しかけ、ここにいるかどうかの確認を行った。結果は・・・・


「どうやら俺達の知り合いは全員いるようだな」

「よかったです」

「うん、そうだね」


その後、確認作業が終了しここには高坂高校全生徒がいることが判明した。そう、生徒だけで教員たちは誰一人としていなかったのだ。


「ちょっとまずい雰囲気だな。大人がいないのは」

「そうですね。大人が一人でもいればよかったんですが・・・」

「これからどうなるんだろう?」


大人と言う人生の先達が全くいない状況に再び騒ぎ出す生徒が出るのではないかと思われたが、次の瞬間に事態は動いた。


ごごごごぉ~!!


「「「!!」」」


この石造りの建物?の一部が開き出したのだ。光が差し込み眩しさに目を隠すがそれでも目を逸らさずに開いた場所を見続けるとガチャンガチャンと鉄同士が打ち合う音と布がこすれる音が聞こえてきた。


「おお、成功だ!」

「しかもこんなにたくさんの勇者が!」

「これで我が国は安泰だ!!」


光が収まりか生徒たちの前に居たのは、騎士甲冑を身に纏った人たちと魔法使いのようなローブを着た人たちであった。


「なんだあの人たちは?コスプレか?」

「いったいなんなんでしょうか?」

「少なくても成功とか言ってるし、僕たちの状況を把握してそうだね?」


霜葉は彼らのセリフを聞いて自分たちに起こった事がある程度把握した。彼は趣味でライトノベル小説を見ていてこの事態と同じ現象が起こった小説も見ている。まさか自分にその現象が降りかかるとは思わなかったが・・・


「あなたたちは何者ですか?そして私たちをどうするおつもりで?」


ここで生徒会長が彼らへと言葉をかけた。彼らは彼らで生徒会長を見て何やら呆けている。どうやら彼女の美しさに見惚れている様だ。


「質問に答えてくれませんか!?」

「私がお答えしよう」


そんな彼らの奥から美男子が現れた。金髪の長い髪を後ろで括り、目は蒼く少々たれ目になっている。身長も高く180㎝を超えているだろう。そんな彼は魔術師のような恰好をして先端に赤く輝く水晶球が付いている杖を持っていた。


「あなたは?」

「お初に御目にかかる美しき女性よ。私はここ女王国リュカレア第一王子アルバン・リュカレアという者です」

「女王国リュカレア?そんな国は聞いたことがありません!」

「それもそのはずです。ここはあなた方が言う所の異世界なのですから」

「・・・・今なんと言いました?」

「ここは異世界だと言いました」


そのセリフに生徒会長は胡乱な目をアルバン王子に向けた。言葉にすれば「この男は正気か?」であろうか?


さらに先ほどの会話はよく通る声で話していたため全生徒に聞こえ、そこらかしこで異世界の単語について騒ぎが起こっている。霜葉たち三人も同じであった。


「異世界って何言ってんだ?」

「ど、ドッキリ番組?」

「二人とも多分あの人が証拠を見せてくれるよ」

「「え?」」


二人は霜葉のセリフに驚き詳しく聞こうとしたら、生徒会長が声を発した。


「そんなばかばかしいこと聞いてるのではありません!真面目に答えてください!」

「私は嘘は言っていません。その証拠もお見せします」

「証拠?」

「はい・・・【炎よ、渦巻く業火となり顕現せよ!フレアストーム!!】」


アルバン王子は何やら言葉を紡いだら、全校生徒の上空に突然炎の竜巻が出現した!


「「「「きゃあ~!!」」」」

「「「「な、なんだぁ~!!」」」」


本当に前触れもなく出現した現象に女子生徒は悲鳴を上げ、男子生徒はいきなりの展開に驚き場が混乱した。


「あ、あなた!一体何を!!」

「これはいけません。少々やり過ぎてしまいました。【水よ、炎を包み消し去れ!アクアキューブ!!】」


アルバン王子がさらに続けて言葉を紡いだとき、炎の周りに水が出現しキューブ状に包み込んだ。水は泡立ち沸騰したが炎は消えた。そして水も役目を終えたからか消えていった。


「「「「「・・・・・」」」」」

「これがその証拠である【魔法術】です。確かあなた方の世界には【魔法術】は存在しないですよね?」

「今のが証拠ですか?」

「はい。納得していただけましたか?」

「・・・とりあえずあなた方に従った方がいいのはわかりました」

「ふむ。こちらにはあなた方を傷つけるつもりはありませんよ?」

「その言葉を今は信用します。信用するしかありませんから」


今のやり取りを理解できたのが生徒の中に何人居たことか。アルバン王子は力を見せることで遠回しに脅迫を行ったのだ。今の【魔法術】が生徒に放たれればそれだけで全生徒は全滅する。あちらにそれをするつもりがなかろうが力を見せつけられたら、防ぐ手段のない生徒たちは従うしかなくなるのだ。


もっともアルバン王子にはそのつもりは本当にないのだ。なぜなら今彼の目の前にいる生徒たちはこの国の今後を左右する大事な客人だからだ。それに・・・・


(そんなことしたら、私が死ぬ・・・・可能性もありますしね)


大半の生徒は今のやり取りをただの証拠の提示だと思っている。自分たちがその脅威にさらされているなど露程も思っていない。もっとも・・・・


「なぁ、今のって・・・」

「遠回しな脅迫ですね・・・・」

「でも、態々遠回しにしたってことは正面からはできない理由もきっとあるよね?」

「そうだな。でも脅迫になることをやったのは間違いない。他にも方法はあっただろうに」

「そうですね。今は信用するしか選択肢がありませんが、注意する必要がありますね」


理解している生徒も確かにいるのだ・・・・・


それからアルバン王子が全生徒に向けて話しかけた。


「皆様の疑問にお答えするためにも、今は私たちに付いて来てください。これから女王国の女王ミューファルド・リュカレアに謁見して女王の口から説明されます。どうかご理解のほどを」


そう言われて生徒会長が皆に「付いて行きましょう。このままでは選択肢がなさすぎますから」と言って現在移動をしている最中である。


「そう言えば、霜葉?さっきは何で証拠を見せてくれると思ったんだ?」

「そうですね、気になります」

(二人ともここからは声を小さくして)

(!わかった。やばい話なのか?)

(それはこれからの話や展開次第だけど、さっきのやり取りを見る限りやばめかな?)

(でしたら今の内にできるだけ教えてください)


霜葉は頷き二人に、小説で似たような話を読んだことがあり異世界に召喚され魔王を倒してほしいと言われるのではないかと話した。


(ん~普通ならそんなことあるわけないって言うんだが・・・)

(現に私たちは謎な場所に居ますし、創作の話だからと言って無視するのもどうかと思いますよね?)

(僕も最初は戸惑ったけど、でもアルバン王子が出てきて異世界ですって断言しちゃったからね)

(でも、それのどこがやばめなんだ?早い話が俺達に悪の親玉を倒してほしいって話だろう?)

(そうだね。魔王が本当にいて本当に悪の親玉ならね?)

((え?))


二人にはさらに深い話をした。小説の異世界召喚系の話は単純ではなく中には召喚した者をただの戦力増強の奴隷扱いするため召喚するパターンがあると。


(なんだそれ?)

(そんな話もあるのですか?)

(他にも色々あるよ。魔王は本当いい人で魔族も人に害してるわけでもないのに領地を広げるためだけに召喚してその異世界人をだまして魔王と戦わせたりとかね)

((うわぁ))

(まあ、何が言いたいかというと召喚した側の言い分だけを信じるのは危険だってことだよ)

(なるほどな。それでさっきのやり取りにつながるわけか)

(うん。少なくとも遠回しとは言え脅迫するような人の言うことは話半分で聞いといた方がいいよ)

(では現時点であのアルバン王子は要注意と言うことですか?)

(それもこれからの展開次第だけど、僕は信用したいとは思わないな)


それから霜葉はこれから起こるであろうことを話そうとしたが・・・・


「異世界人の皆様。こちらの部屋で女王がお待ちです」

「ここにですか?」


そこは扉は大きいが、お世辞にも女王と会おうと言うのにふさわしいとは言えない造りだ。


「はい。何分異世界人の皆様の数が数です。我が国の謁見の間では全員が入りきれず、急遽大広間での謁見を行うことにいたしました」

「そういうことですか・・・・」


ここに来る前に、最初に入ってきた騎士と魔術師が(恰好がそれっぽいので仮呼称)部屋から何人かが出て行ったが知らせと準備に行ったのだろう。


「では・・・・女王陛下!第一王子アルバンが異世界からの客人を連れてまいりました!」

『ご苦労様です。お入りなさい。』

「「「「!?」」」」


艶のある女性の声が響いたのち、扉が開いて大広間が姿を現した。そこは巨大なシャンデリアが明かりを灯すかなりの空間であった。これなら確かに全生徒が入るには十分だろう。この大広間には2階があり、そこには中世の貴族のような恰好をした者たちがいて、こちらの様子を品定めしているかのようだ。そして大広間の奥には・・・


「ようこそ、勇者たちよ。我々はあなた方を歓迎します」


銀色に輝く髪。優しげな顔。さらにはモデルすら圧倒するスタイルをドレスに包み。微笑む女神がそこに居た。


「「「「「・・・・・・」」」」」


生徒は無言。無理もない女王の美しさに言葉もないのだろう。


「どうぞ。お入りください。あなた方に起こった事をご説明します」


しかし一人だけ霜葉は違う印象を持った・・・・


(なんか・・・ひどく悲しげと言うか?罪悪感?)


女王の顔がこちらに対してどこかすまなさそうにしているのを感じ取っていた。


広場に全員が入り、改めて霜葉は周りに視線だけを向けた。広間の2階には相変わらずこちらを観察するように貴族風な人たちが視線を向けている。何人かの視線はこちらを見下しているような視線だ。


(多分、この国の貴族なんだろうな。貴族主義とか居そうでこわいな~)


次に正面に居る女王に視線を向ける。女王は微笑んでいるが霜葉には無理をしているようにしか見えない。

女王の座っている大きな椅子の両隣には、まだ10歳にも満たないであろう子供たちが座っている。女王の子供だろうか?


さらにその子供たちの隣には右にアルバン王子が、左には真っ赤な鎧を着込んだ大柄な男が居た。かなりの筋肉質な体で身長も190㎝に近いと思われる。女王の護衛騎士かもしれない。


「さて、これから説明いたしますが。どこから始めた物か・・・・」

「女王陛下。発言をお許しいただけないでしょうか?」


女王が説明の方法を考えていると、生徒会長 高坂 聖夏が女王に声を掛けた。すると2階にいる貴族たちが彼女に注目した。なかには彼女の美貌に見惚れる者もいるな。


「かまいませんよ?それと口調も畏まらずともかまいません。あなた方は異世界人こちらが無理に招いたようなものですから」

「ありがとうございます。でしたらお言葉に甘えさせていただきます」

「それで何かお聞きしたいことがあるのですか?」

「説明する方法なのですが、こちらが疑問をお聞きして答えていただく方法はいかがですか?」

「なるほど。その方がいいかもしれませんね。わかりました、その方法でかまいません。疑問をどうぞ」

「重ね重ねありがとうございます。ではまずは・・・・」


それから生徒会長の疑問を発言して、女王がそれを答える形でいくつかのことが分かった。わかりやすくしよう。


・この異世界の名はブルスバンという。

・俺達の世界で言うと中世のヨーロッパのような文化であるらしい。

・科学文化は無く、代わりに魔法技術で発達しているらしい。

・女王国以外にもいくつかの国があり、今の所国同士の問題はない。


「ここまでは、よろしいですか?」

「お答えくださりありがとうございます。次は私たちが知りたい最大の疑問を幾つかさせてください」

「ええ、お答えいたします」

「まずは、私たちはなぜこの異世界にいるのでしょう?」


ここからの質問は彼ら生徒たちの今後において無視できない内容になるだろう。

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