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第一章 第十六話  女王国編16

ブルーベアの小熊達をテイムしたことで注目を浴びた霜葉。それによりブルーベアを寄越せと言ってくる貴族も現れたが、ガルレオ辺境伯のおかげでその貴族は奴隷へと身分が落とされて事なきを得た。同時期に装備も新調して霜葉は以前から考えていた旅をする時期になったと感じていた。そんなことを考えていたら小熊達がびっくりする物を持ってきた。それは・・・・


「卵だな?」

「卵だね」

「卵ですね」

「卵だよね?」


ブルーベアの小熊達である新月、三日月、無月の三匹が霜葉たちから離れて戻ってきた時には三日月が卵を持っていたのだった。現在4人と五匹で卵を中心に置いて眺めていたときのセリフである。卵の大きさ的にはバレーボールくらいの楕円形と言ったところか。


『三日月これどこにあったの?』

『木の根元の草むらに落ちてたの~』

『そうなの?新月、無月」

『そうだぞ。三日月が兄さんに見せるって言って持ってきたんだ』

『三日月が見つけた・・・・』

「三人が言うには、これ木の根元の草むらに落ちてあって三日月が見つけて僕に見せるために持ってきたらしいよ?」

「じゃあ、その木の上に巣があるんじゃないのか?」

「普通に考えればそうなんだけど・・・・」

「この卵が普通とは言い難いですしね。こんな大きさの卵はダチョウくらいですよ?実物は見たことありませんが」

「とりあえず、霜葉はこれ鑑定してみたか?」

「あ、まだだよ。びっくりして忘れてた。今するよ」


そう言って霜葉はこの卵を鑑定して見た。結果は・・・・


 【魔物の卵】

親が不明なため現時点では何が生まれるかは分らない。


「魔物の卵みたいだよ」

「え!?マジでか!」

「うん。でも親が不明だから何が生まれるかは現時点ではわからないんだってさ」

「ど、どうしようかこれ?」

「対処に悩みますね?」

『ご主人~この子いいにおいするの~』

『主~いい音します~』

『そうなの二人とも?』

『『うん!』』


白夜と十六夜が言うにはこの卵から生まれるのは凶暴な魔物ではないようだ。そうであるならばと霜葉はある対案を三人に伝える。


「ねぇ三人とも。この卵は僕が貰ってもいいかな?」

「どうする気だ霜葉?」

「生まれてきた子をテイムしようかと思って」

「だ、大丈夫?凶暴な魔物だったら危ないよ?」

「そこは大丈夫だよ裕佳梨ちゃん。白夜と十六夜がこの卵からはいい匂いと音がするって言ってるから」

「二匹のお墨付きなら大丈夫ですね」


それからの話し合いでこの卵のことは他の召喚者には黙っていることにした。理由としてはこの卵が魔物の卵だと判断できる鑑定スキルを霜葉は表向きには持っていないことにしているため、卵のことを明かすと説明できないためだ。


アイテムボックスに卵は入れられるのもそう決めた理由の一つだ。まぁ、入れられなかったとしても【箱庭世界】の方に草を敷いて置いておくと言う選択肢もあったがね。


それから町へと帰り、依頼を達成してから解体場で初見のファングバイパーを解体した。ちなみにこの魔物の素材はお肉と牙と皮だそうだ。ホーンドボアの皮は冒険者をしている他の召喚者に渡すために手元に残している。依頼料と素材の売却で金貨一枚と銀貨八枚と銅貨四枚になった。ブレイドディアーの素材やホーンドボアとファングバイパーのお肉が結構高めだったようだ。


ちなみに解体は以前から持っているナイフを使った。作ってもらったファング・ナイフは武器用として使って行くつもりの様だ


後、最近は魔結晶も売っている。霜葉たちの住処でのシャワーなどの魔道具を使うために魔結晶は手元に置いているのだが最近は他の召喚者も持ってくるため量が多くなりつつあるのだ。


今の生活をする分は十分にあるし、他の召喚者から自分たちが集めるから霜葉たちはお金で装備を充実させてくれと言われているのでお言葉に甘えているのだ。


それから霜葉たちは住処へと帰り、霜葉はまず持っているホーンドボアの皮を冒険者をしている召喚者たちに渡した。最近は彼らの生産職としての腕も上がり、革鎧などの防具も作れるようになっていて自分たち用の防具を作るのが楽しいようだ。


自分たちで狩ってきた魔物の素材などからも防具を作っているらしく皮が一枚余ってしまった。他の召喚者たちからは霜葉たちが使ってくれと言われて、明日あたりにドワーフの店へと持って行くことにした。


いつものように狩ってきた魔物の肉と買ってきた野菜や調味料で夕飯を作り食べる召喚者たち。ここで霜葉は自分が旅をすることを考えていて、近々旅立とうとしていることを明かした。


「おいおい、大丈夫なのかよ霜葉?旅だなんてこの世界じゃかなり危険だぞ」

「だからこそ、この子たちを仲間にしたんだよ。特にこの三人の戦闘力はすごいし大丈夫だよ」

「ぐぅ!」

「まぁ!」

「ぐる~」

「で、でも魔物だけじゃなくて盗賊なんかも現れるんでしょう?その場合はどうするの?」

「覚悟はできてるよ。自分やこの子たちの命を守るために他者の命を奪う覚悟は」

「皆、何言っても無駄だぜ。霜葉は結構頑固なとこがあるからな。よっぽどの理由がないとやめることはないさ」

「健吾たちは納得しているのか?」

「ああ、さすがに止めるような理由がないからな」


今まで一緒に居た健吾たちが納得しているならと、召喚者たちは一応納得はした。しかし、旅に必要な物を俺達の手で作って渡すから、それを貰ってから旅をしてくれと言われ霜葉は喜んで承諾した。


翌日。霜葉たちは持っているホーンドボアの皮で霜葉と裕佳梨のグローブとブーツを作って貰おうとドワーフの夫婦が営んでいる武具屋に来ていた。


「今回はグローブとブーツを2セット作ればいいのか?」

「はい。お願いできますか?」

「うむ、了解したぞ。だが、今回は皮が余るが残りはどうする?」

「そうなんですか?」

「うむ。今回のこの皮は平均サイズはあるからのう~これなら残りの皮で革鎧ができるがどうする?」

「でしたら革鎧も作っていただき霜葉君が貰ってください」

「聖夏先輩?」

「そうだな。霜葉が貰ってくれよ」

「旅をするなら装備も準備した方がいいし、私も賛成だよ」

「みんな・・・ありがとう」

「なんじゃ?坊主は町から出るのか?」

「ええ、近々旅をするので町を出ようと思います」

「そうなのか・・・まあ、理由はだいたいわかるがの」


店主は、小熊達に視線を向けた。ちなみに店主の奥さんが小熊達の可愛さにやられて三日月を構っている。三日月が嬉しそうなので放置しているのだ。小熊達が最初にこの店に来た時も似たような状況になり、放置していたのだ。


「まさか、魔物使いに就いている者がいるとは思わなんだ。しかし、ブルーベアを三体も仲間にできたんじゃし戦闘力と言う意味では問題ないのではないか?」

「それは今だけですよ。あの子たちのLvがMAXになれば成長できずにいつか皆の方が強くなりますから」

「まぁ、一理あるのう」

「でしょ?」

「ふむ。おっといかんいかん、今は防具の話じゃな。とりあえず坊主と嬢ちゃんは手と足のサイズを測らせてくれんか?あと、代金は合計で銀貨五枚じゃ。前金で半分の銀貨二枚と銅貨五枚を貰おうかの」

「わかりました」


霜葉と裕佳梨のサイズを測ってから、前金を払い出来上がりには三日後だと言い霜葉たちは三日後に受け取りに来ることを伝えて店を出た。店主の奥さんが三日月を名残惜しそうに見送っていたのが印象的だったが。


店を出て冒険者ギルドにやってきた霜葉たち。早速今日受ける依頼を探すため提示板の方に向かおうとしたところ・・・・


「あ、皆さんお待ちしておりました。お話があるのでこちらにどうぞ」


と、受付嬢の一人に言われて受付に向かう。


「何かご用でしょうか?」

「はい、皆さんのこれまでの依頼達成に持ってこられた魔物素材を考えた結果、Cランク冒険者の試験を行うのに十分であると言う結論になりましたので、そのご報告です」

「試験ですか?」

「はい。ご存知とは思いますが、Cランク以上の冒険者になるためには試験に合格しなければなりません。しかも試験を行うのはギルドに認められた冒険者だけです。近々試験を行う予定だったので試験を受ける冒険者の中に皆様もこれまでの功績で選ばれたのです」

「なるほど」

「試験の日程は、四日後の朝に護衛依頼をしてもらいその結果や道中の様子をギルド職員が見ていますのでそれらを含めて合格の判断がされます。ご都合が悪ければ次の機会となりますがどういたしますか?」

「いくつか質問をしますが、よろしいですか?」

「はい、どうぞ」

「まず、この機会を逃したら次の機会はいつごろになるでしょうか?」

「申し訳ありません。正確な時期は断言できません。護衛依頼が試験になるので依頼者にも承諾を得ねばなりませんからかなり間が空くのは確実ですが・・・・」

「なるほど。次はDランクとCランクの違いを教えてくれますか?」

「はい、Cランクになりますと冒険者ギルドでもかなり信頼されます。重要な依頼を頼むこともありそれらを達成するとかなりお金も稼げるでしょう。ただし、それらを失敗すると信頼はガタ落ちになり最悪降格などの処分が言い渡されることもあります。Cランクの冒険者はギルドの顔と言ってもいいですからかなり厳しいのです」

「ありがとうございます。質問は以上です。試験を受けるかみんなと相談するので待ってもらえますか?」

「わかりました。できればお早めにお返事を聞かせてください」


受付嬢に断わってから霜葉たちは開いているテーブルと椅子に座り、相談を始めた。


「皆はどうする?この話」

「俺は受けてもいいんじゃないかと思うぜ?」

「うん、私も同意見だよ」

「そうですね。今の所問題はないでしょう。ただ・・・・」

「聖夏先輩?」

「二人は覚悟はありますか?護衛依頼と言うことは盗賊を相手にすることがありますよ?」

「「!?」」

「盗賊とてバカではないでしょうから、護衛のいる馬車などを襲うとは思えませんが、絶対ではありません覚悟は必要でしょう」

「僕は覚悟はあります。旅をするのに絶対にするべき覚悟ですから」

「ええ、霜葉君の決意は知っています。私も覚悟はしています。自分自身や私の知人を守るために他者の命を奪う覚悟は。お二人にその覚悟はありますか?」

「・・・・・俺は有るぜ。俺が命を奪わなかったせいで誰かの命が奪われるのは嫌だからな。前の一件で死の恐怖を味わったし、自分のミスでそんな状況にだけはなりたくはない」

「わかりました。最後に、裕佳梨さん」

「・・・・・」

「裕佳梨さんは私たちの中では直接戦闘はしませんが、相手がそれに気付いて狙ってくることはあります。酷なことを言うようですが、覚悟は必要でしょう」

「・・・・・聖夏先輩の言う通りですね。私も私のミスでみんなを危険な状況にするのはいやです。私も覚悟します。守るために命を奪う覚悟を」

「裕佳梨・・・・無理はするなよ?」

「健吾君もね」

「皆さんの決意は分りました。では、試験は受けると言うことでいいですね?」


生徒会長の言葉に全員が頷き、受付嬢に試験を受けることを伝えた。そして試験内容を詳しく聞くと、依頼主はこの町と王都に店を構える雑貨屋で、王都の方が本店らしい。


四日後の朝に本店へ売り物を受け取りに行くためこの町と王都を往復するので、その道中の護衛が試験になったのだ。往復で最低でも四日はかかるだろうから、準備も怠らないようにとのことだ。


それから霜葉たちは試験のための準備に忙しく走り回った。召喚者たちにも協力してもらい、いくつかの物は作ってもらった。


そして試験当日の朝。霜葉たちは防具を着け体を動かし、体調を確認すると同時に防具の調子も確認した。


「霜葉。あのドワーフの職人に作ってもらった防具はどんな調子だ?」

「かなりいいねぇ。動かしやすいし中々かっこいいしね」


準備期間の間に頼んでおいた防具を取りに行ったのだ。今、霜葉はその防具を装着しローブを羽織っている。ローブの方は召喚者たちが作ってくれたものだ。ローブは霜葉たちが準備期間中にグリーンフォックスを倒して霜葉と裕佳梨用に作った物だ。後衛にはやっぱりローブだろうとは作った者たちの言葉だ。


「では、準備ができたので待ち合わせ場所に行きましょう」


生徒会長のこの言葉に皆が頷き、依頼主の待っている場所へと向かう。待ち合わせ場所は町の門を出たすぐ近くだそうだ。依頼主は馬車で待っているのでわかるだろうと受付嬢が言っていた。


霜葉たちは門を出て、辺りを見渡せば近くに馬車を発見。それ以外で馬車はいないのであれが依頼主の馬車だろう。馬車の傍には仕立てのいい服を着た小太りした人と防具を身に着け、背中に槍を背負っているかなりの体格をした男が一人。霜葉たちは生徒会長を先頭にその二人に近づいた。


「失礼しますが、あなた方が今回の護衛依頼の依頼主ですか?」

「ああ、ハイ。私が依頼主です。今回はよろしくお願いしますね」

「こちらこそよろしくお願いします」


まずは小太りした男の人が挨拶をした。それに合わせて霜葉たちも挨拶を交わして、霜葉が残りの一人に声を掛けた。


「そちらは、依頼を受けた冒険者の方ですか?」

「いや、私はギルド職員の者だ。名はテイザーと言う。今回の試験の見届け人だ」

「そうでしたか。それは失礼しました」

「謝る必要はないぞ?確認は大事だからな。あと断っておくが、私はあくまで君たちの試験の様子を見届けるのが仕事だ。魔物や盗賊が出て来ても私は一切手を出さない。むしろ私が手を出したり口を出したりするならば試験は失敗と思ってくれ」

「わかりました。今日はよろしくお願いします」

「個人的には君たちには期待している。短期間で試験を受けてもいいと名が上がるのだからな」


そう言ってテイザーは霜葉たちと依頼人が見える位置に移動した。もうここから試験はスタートしているのだろう。


「すいません確認なのですが、護衛対象はあなたと王都からの帰りの荷物でだけでしょうか?増えたりはしていませんか?」

「それなんですが、新たに同行者が二人ほどいます。今紹介しますね。二人ともこちらに来なさい」


そう言って馬車の方に視線を向ける依頼人。霜葉たちも視線を追えば、馬車の陰に二人の子供がいた。女の子と男の子だ。


「私の子供です。本来は知り合いに預ける予定だったのですが、その知り合いが風邪で寝込んでしまい、仕方なく同行させることにしました。何度か同行させているので旅には慣れていますので、ご迷惑にはならないかと思います」

「わかりました。では、三人はなるべく一緒に居てください。こちらとしても護衛対象が固まっていた方が対処しやすいですからね」

「わかりました。二人にもよく言い聞かせておきます」

「お願いします」


生徒会長が依頼主と話してるうちに子供たちが霜葉に集まりだした。視線が霜葉の足元に居る五匹に向いているので気になるのだろう。


「ねぇねぇお兄さん?その子たち触っていい?」

「うん。いいよ?でも、嫌がったらやめてあげてね?」

「うん、わかった。約束する。ほら、あなたも」

「や、約束します」


女の子の陰に隠れながら男の子が返事をした。それから女の子は三日月を構い、男の子は白夜と十六夜を撫でている。新月は三日月を見守り、無月は丸まって寝ている。三日月や白夜と十六夜は嬉しそうだ。


そんなことをしていると、この集団に近づいてくる人たちがいた。先頭に金属鎧を着込み背中に盾と手斧を持っている戦士風な人が依頼主に声を掛けた。


「すまないが、ここが護衛依頼の待ち合わせ場所で合っているだろうか?」

「あ、はい。間違いありません。私が依頼人です」


そう言って依頼主と戦士風な人が会話を始めた。残りの人は革鎧を着た大剣を背中に背負っている男性と同じく革鎧を着た弓を背負っている女性。あとはとんがり帽子をかぶっているいかにも魔女ですと言いたげな格好の女の子だ。


依頼主と話し終えると、戦士風な人はテイザーに話しかけた。


「貴方も護衛依頼を受けた冒険者の方か?」

「いや、私は違う。今回の試験の見届け人だ。名はテイザーと言う」

「そうでしたか、今日はよろしくお願いします」


そう言って頭を下げる戦士風な人。それからテイザーは霜葉たちに言った注意事項を伝えて、全員が見渡せる位置に移動した。この行動を見て戦士風な人は顔を引き締めて両手のひらで頬を叩いた。どうやらテイザーの行動の理由を察して、気合を入れ直したようだ。


その後に他の人と一緒に霜葉たちに近づいてきた。


「すまない、いくつか確認したいのだが、君たちもこの護衛依頼を受けた冒険者で間違いないか?」

「はい、間違いありませんよ」


生徒会長が返事をして、視線が集まると男性二人が彼女に見惚れた。もはやお約束であるな。そんな男性二人に対して弓を背負っている女性が活を入れる。


「ちょっといつまで見惚れているのよ!聞きたいことはまだあるでしょ!」

「ハァ!す、すまない。まずは自己紹介だな。俺はバノンという者だ。四人のリーダーをさせてもらている」

「私はラーシムよ。背中の武器でわかると思うけど弓士よ」

「俺はナゼック。約四日間だが、よろしく頼む」

「キーリ。よろしく」


彼らの自己紹介の後に霜葉たちも名を明かすが、苗字は言わずに名前だけを言葉にした。苗字は貴族くらいしか持っていないため、明かすと面倒事になると思い名前だけ教えると事前に決めておいたのだ。


「君たち四人のリーダーは誰かな?」

「私です」

「そうか。ではセイカこれから依頼主とその子供を守ることになるが、魔物や盗賊が出た時の配置は希望はあるかな?」

「そうですね・・・・そもそも護衛依頼は初めてですし、皆さんといきなり連携は無理だと思います。ですので魔物が出た時は交互に魔物を撃退する組、依頼主を防衛する組に分かれるのはどうでしょうか?」

「「「!!」」」

「な、なるほど!そうすれば頻度にもよるが、まんべんなく仕事ができるな!分ったその案で私は問題ない。皆はどうだ?」

「「「異議なし!」」」


それからは、親睦を深める意味でも雑談になった。特に女性二人は小熊たちや依頼主の子供たちが抱いている白夜や十六夜に興味津々だった。


「まさか噂になっている魔物使いと会えるとは思わなかったわね~」

「噂通り、かわいい・・・・」

「まぁ~♪」

「ぐる~zzz」

「ぐぅ?」

「まさかこんなに真直にブルーベアを見れるとはなぁ~」

「貴重な体験だな」


男性二人もブルーベアである三匹には興味がある様子で視線を向けていた。


「ところでこれで全員なのでしょうか?」

「いや、まだ居るはずだ。この試験は未経験の者がほとんどだから、最低でも三グループは選ばれるんだ」

「詳しいですね?」

「Cランク冒険者に知り合いが居てね。その人から情報を買ったんだよ」

「それっていいんですか?」

「問題ない。人脈も重要だからな、ギルドの方でも黙認しているのさ。まぁ、偉そうなことを言ってるがそれほど褒められたやり方ではないのは自覚しているよ」


そんなことを話ながら待っているのだが、しばらく経っても誰もやってこない。そろそろ出発しなければならないのだが・・・・


「誰も来ませんね?」

「おかしいな?参加人数がこれだけとは思えないんだが?」

「テイザーさんに確認した方がいいのでは?」

「しかし、見届け人に確認するのもなぁ~これは依頼であると同時に試験だからなぁ~」

「だったら依頼主に意見を聞きましょう。依頼主がもう出発したいと言えば酷なようですが、出発しましょう。依頼主の意見が何より重要ですから」

「それもそうですね」

「確かに君の言う通りだな。では依頼主に聞いて来よう」


生徒会長とバノンさんが依頼主に予定を聞くと、そろそろ出発しないと予定が狂うらしい。依頼主の話では後三人のグループがこの依頼を受けているらしいのだが。そこで二人は依頼主の予定を最優先に行動することを勧めた。その三人には悪いが、依頼主が最優先だ。


依頼主も最初は困惑したが、このままと言うのもまずいため出発するために馬車に子供を連れて乗り込んだ。御者は別の者が待機しているため、これでいつでも出発できる。すると・・・・


「ま、待ってくださぁ~い!!」


門から走ってくる三人組が居た。しかもその三人は全員が獣人だった。一人は兎耳をした弓を背負った女性と狐耳をした小柄な女の子。そしてもう一人は大柄な体格をした白い犬耳をした男性だ。


三人組はそのまま全速力で走ってきて、馬車のすぐ近くで止まった。


「ぜぇぜぇ。わ、私たちも護衛依頼を受けた冒険者です。遅れてしまったことは謝りますので参加させてください」

「ようやく来てくださいましたか。あと少しでも遅れていたら出発していましたよ?」


馬車から降りてきた依頼主が、そう言うと兎耳をした女性が申し訳ありませんと深く頭を下げた。


「はぁ~まだ朝じゃねえか?こんなの遅れた内に入んねえだろう。何言ってんだアンタ?」


と、そこに場の空気を読まない発言が放たれた。このセリフを言ったのは犬耳をした男性である。腰には剣が二本あるから二刀流の剣士なのだろう。そのセリフに狐耳の女の子が男性を注意する。


「あんたは黙ってな。そもそも遅れたのはあんたが準備をしてなかったのが原因だろうが!」


小柄な女の子と言う外見の割には、言葉が乱暴であった。


「いいじゃねえか。間に合ったんだし問題ないって」

「あんたが言うな!!」


そうして始まる口喧嘩。依頼主は突然始まった言い合いに戸惑っている。


「あ、これは私たちの日常なので放っておいて大丈夫です」

「は、はぁ?そうですか・・・・ですが、時間がないのは確かなのでこのまま出発します。他の冒険者さんたちへの挨拶は道中で済ませてくださいね?」

「わ、わかりました」


そうしてやっと全員そろったので改めて出発する霜葉たち。その後、馬車の左側に健吾と裕佳梨が右側にナゼックとキーリが周辺を警戒し進みながら、馬車の後ろで自己紹介が始まっていた。


「私は兎の獣人のミンクと言います。武器でわかると思いますが弓士です」

「俺は狼の獣人でダスケだ。間違っても犬なんて言うんじゃねぇぞ」

「あたしは狐の獣人でコロナだ。遅れてしまって申し訳ない」


ミンクとダスケの格好は革鎧を着込み、よく見るとミンクは背中に弓以外に鉈を腰に差している。弓士と言うより狩人である。コロナはローブを着込み背中に長杖を背負っている。


「俺はバノンだ」

「私はラーシムよ。右側に居るのは、男の方がナゼックで女の方がキーリって言うわ」

「私は、聖夏と言います。左側に居るのは男の方は健吾君といい、女の方は裕佳梨と言います」

「僕は霜葉といいます。魔物使いで足元に居る子たちはテイムしたうちの子たちです」

「わん!」

「にゃ~」

「ぐぅ!」

「まぁ~」

「ぐる」

「「か、かわいい・・・・」」

「はぁ?まものつかい??なんでそんな使えない職業のやつがいるんだよ。足手まといだから帰れよ」


再び、空気を読まないセリフを放つ犬耳・・・もとい狼の獣人。そのセリフに対して慌てたのは仲間の二人である。


「あんた。初対面に人に対して失礼よ!謝りなさい!」

「そうよ!そもそも私たちは遅れてやってきたのよ!?そのことに対しての謝罪が先よ!」

「だから、遅れてなんていないだろう?まだ昼にはなってないんだし。それよりこの足手まといの方だよ問題は。魔物使いなんて使えない職業のやつはいない方がいいんだよ」

「・・・・・それを決めるのは君ではない。冒険者ギルドだ」


ここでテイザーが話に割って入ってきた。このことで霜葉たちとバノンさんたちは緊張した。当然だ。事前にテイザーから口は出さないと言っていたのだから。


「はぁ?アンタは誰だよ?」

「この試験の見届け人だ。名をテイザーと言う」

「「み、見届け人!?」」

「お?そうかならあんたからも言ってくれよ。この足手まといはいない方がましだってな」

「彼はギルド職員の大多数の者から試験を受けるに値すると言われてこの試験に居るのだ。他のメンバーも同様だ。返す理由はないな」

「はぁ~なんだよ。見る目がねえな冒険者ギルドも」

「あんたはもう黙りなさい!!」

「す、すいません!テイザーさん!あ、あのよろしくお願いします」

「君たちは最後に来た上に遅刻すれすれできたから忠告しておくが、そのような態度や考えはCランクでは通用しないぞ。依頼主を待たせるなど信用を失いかねない行為だ。よく覚えておきたまえ」


言いたいことを言ってテイザーは全体が見渡せる場所へと移動した。


「はぁ!何だよ偉そうに!」

「実際にえらいのよ!あんたは少しは考えなさい!この脳筋!!」

「んだとう!?」

「うう~こんなメンバーだけどよろしくお願いします。皆さん」

「それはいいんですが、ミンクさん今のテイザーさんの行動はまずいかもしれませんよ?」

「え?」

「我々は、テイザーさんからこの依頼について手も口も出さないと聞いていた。だが先ほどの行動は口を出したに該当するかもしれない。本当にただの忠告の可能性もあるが、少なくとも君たちの印象は最悪だろう」

「そ、そんなぁ~」


二人の言葉に落ち込むミンク。そしていまだに口喧嘩を続ける二人。この三人は大丈夫か心配になる光景である・・・・・

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[気になる点] 我々は、テイザーさんからこの依頼について手も口も出さないと言っていた。       ↑聞いていた では?
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