第一章 第十五話 女王国編15
明けましておめでとうございます。作者の今年最初の更新です。
読者の皆様、今年もよろしくお願いします。
霜葉たちは冒険者ギルドで依頼を受けて、その道中でレッドウルフの群れに襲われているブルーベアの親子を発見。その親子を助けたのだが、親熊は血を流しすぎて死んでしまい小熊達は霜葉がテイムした。町へと連れ帰るとブルーベアの子供を目撃した住人達に驚かれたが、何とか住処に帰ってきたところであった。
「「「かわいい~」」」
「まぁ~♪」
「意外と毛皮が柔らかいな?」
「さっき霜葉が【クリーン】掛けてたからな」
「なるほど」
「ぐる~zzz」
「うふふ♪」
「ぐぅ・・・・」
ただ今、小熊達は召喚者たちに大人気だ。まぁ、熊を身近で見たり接する機会など動物園の飼育員くらいしか経験がないだろうし、わからなくもないが。メスの小熊は女子生徒たちに構ってもらってご機嫌だし、末っ子であろう小熊は丸まって寝ていて男子生徒が触っている。生徒会長に抱っこされている小熊はなぜかぐったりしているが・・・・
「ところで、この子たちの名前はどうするんだ霜葉?」
「今の所、新月、三日月、無月にしようかと思ってるよ。この二人が夜で統一してるから、合わせてみたよ」
「わん」
「にゃ」
「へぇ~なるほどな」
その後の話し合いで、長男小熊を新月、長女で真ん中の小熊を三日月、末っ子でマイペースな小熊は無月に決まった。
『俺は新月か』
『私は三日月~』
『ふぁ~俺無月・・・』
『三人とも改めてよろしくね?』
それから夕食の買い物に出かけた。皆の収入が結構な額になってきたので余裕ができたのだ。あまり森での採取ばかりと言うのもそれで生計を立てている人に申し訳ないと言う面もあるが。
買い物は主に野菜や果物を買うことにしている。お肉は冒険者組が狩ってきた物があるのだ。いつものように料理関係の職業持ちや調理術スキル持ちが協力して、夕飯を作りそれ以外の者たちも自分たちができることをやっている。主に配膳やテーブルの片づけなどだが。
ちなみに白夜と十六夜のご飯は霜葉が作っている。と言っても肉を焼いただけのものだが、二匹は喜んで食べている。新しい仲間の新月、三日月、無月の三匹は果物一個で事足りるので楽ではある。他の召喚者たちは果物を食べている三匹を見て笑顔を浮かべている。
夕食を食べた後は、そのまま解散となった。
「ちょっと待って!冒険者をしている人は渡したい物があるから受け取ってくれないかな?」
「なんだよ。霜葉?何くれるんだ?」
「これだよ」
そう言って霜葉はアイテムボックスからレッドウルフの毛皮を6枚取り出した。
「この毛皮で革鎧を作れば、防御力は向上するからよければどうぞ?」
「いいのかよ?霜葉たちが優先すればいいんじゃあないか?」
「僕たちはもう別の魔物の毛皮で防具作成をある店で頼んでいるから、大丈夫だよ。ここでの生活もだいぶ形になってきたから、そろそろ防具のことも考えないといけないからね」
「確かにそうだな。有難う霜葉。店で頼むか自分たちで作るかはみんなと相談して決めるよ」
そう言って冒険者をやっている召喚者たちは毛皮を受け取り自分たちのアイテムボックスに入れた。そしてみんな自分たちの部屋へと帰り明日に備えて寝た。そして翌日・・・
「本当にブルーベアだな。まさかテイムできたとは・・・」
「ぐぅ?」
「まぁ?」
「ぐるぅ~」
ここはガルレオ辺境伯の屋敷の中。そして今いる部屋はガルレオ辺境伯の仕事部屋と言ったところか。部屋にある机には書類が山積みになっているから的外れと言うこともあるまい。
朝飯を食べ終えて、今日の依頼を受けようと冒険者ギルドへ向かおうとしたところで辺境伯の使いの者がやってきて、屋敷へ来てくれないかと馬車と一緒に来たのだ。おそらく小熊達三匹の件だろうと思い霜葉たちは使いの者にいいですよと答えて、馬車へと乗り辺境伯の屋敷へと向かった。
なお、馬車のなかはさすがに霜葉たち4人と五匹が乗れるほど大きくなかったので、白夜と十六夜を霜葉が預かり、健吾が無月を、新月を生徒会長が、裕佳梨は三日月をそれぞれ抱き上げて馬車に乗った。可愛い子熊を抱っこできて生徒会長は朝から上機嫌だったが、新月はぐったりしていた。どうやらスキンシップは好まないようだ。三日月は好みらしく上機嫌だが、無月はこだわりはないらしく寝ている。実に個性豊かである。
「もうすでに噂になっていたよ。使えない職業の魔物使いに就いている者がブルーベアと言う強い魔物をテイムしたとね」
「早いですね?」
「それだけかなりの衝撃を受けたと言うことさ。私も女王陛下からの手紙で君のことは知っていたが、まさかブルーベアをテイムするとは思ってもみなかったからな」
辺境伯の言う通り、ブルーベアは最近の調査で実はおとなしい魔物であると分ってきたが、それでも強さは変わっていない。特に大きくなったブルーベアはCランクの冒険者でも苦戦するほどなのだ。
「ガルレオ辺境伯殿。今日はこの子たちの確認だけでしょうか?私はそれだけではないと思うのですが?」
「察しがいいなセイカ殿は。実はソウハ殿に忠告をしておこうと思ってな」
「忠告ですか?」
「ああ、君たちは最近の貴族が魔物をペットにしていると言うのは、聞いたことはないか?」
「お城で聞いたことはありますね」
お城にいた時にメイドさんから聞いた話だ。なんでも魔物を従わせる魔道具を使ってペットにしているとか。
「そう言う貴族たちは他の貴族に自慢するために珍しい魔物をペットにしたがるんだよ。つまり・・・」
「そう言った貴族がこの子たちを欲しがる可能性があるわけですね?」
「そう言うことだ。しかも、中には強引な方法で取り上げる者も居る可能性があるのだ。同じ貴族として恥ずかしい限りだがね」
「そう言った者が現る可能性があると?」
「ここは辺境だからな、珍しい魔物や可愛らしい魔物を探すならうってつけの場所だ。だからこそ、ここには魔物をペットにする貴族が越してくる場合があるのだよ。そして最近はそう言った貴族の間でも珍しい魔物は見かけていないそうだ」
「確かにそう言った状況ならこの子たちに目を付けるかもしれませんね」
「ですが、辺境伯殿?私たちに絡んでくる貴族は本当にいるのですか?」
霜葉たちがここに来たのは女王陛下の依頼できたのだ。ある意味、霜葉たちの邪魔をしたり妨害するのは女王陛下に楯突くようなものである。
「本来ならいないと言うべきなのだろうがね・・・どこにでもバカな者と言うのは居るんだよ」
辺境伯のこの言葉通り、典型的なバカな貴族や甘やかされて育てられた貴族の坊ちゃんと言うのは少ないながら居るのだ。
「だから、もしそんな貴族が接触してきたら私の名を出すんだ。これでも引かないようなら処罰も考えなくてはならんからな」
「いいのですか?そこまでしてもらって?」
「かまわない。君たちを無事に元の世界に送り返すのはこの国の義務だ。そして国の要職に就いている者は責任がある。少なくとも私と女王陛下は同じ考えのはずだ」
そう言った辺境伯の顔には後悔と決意が見え隠れしたのを霜葉と生徒会長は見抜いていた。後悔は勇者召喚を止められなかったことと、それに頼らねばならなかった自らの弱さに対する物で、決意はそんなことに年若い者をましてや違う世界の者たちを巻き込んだゆえに絶対に元の世界へと無事に返す物だ。もっとも二人はそこまで見透かすことはできないが・・・
「わかりました。こちらでも注意はしておきますね」
「すまないが頼む。こちらもそう言った貴族に注意喚起はするつもりだが、どこまで効くかはやってみないことにはわからないからな」
話し合いはこれで終了となり、霜葉たちは辺境伯の屋敷を後にした。厄介な話ではあったがいきなりそんな事態になるよりは事前に知らせてくれたので、心構えが違うのはありがたかった。霜葉たちは辺境伯の言った事を頭に残しつつ、今日の依頼をこなそうと冒険者ギルドへと足を向けた。
それから二日が経過した。幸いその二日間は貴族の接触はなく、霜葉たちも冒険者ギルドの依頼を受けて所持金を増やしていった。現在の所持金は金貨三枚と銀貨四枚と銅貨六枚。何度か霜葉が解体場に臨時の手伝いとして行ったり、他の召喚者と共に依頼をやっているうちに貯まって行ったのだ。
そして今日は依頼の前に作成依頼をした防具が出来ているはずなので、受け取りに行っている最中だ。
「どんな感じになっているでしょうかね?」
「真っ赤な革鎧にはなっているだろうし、今考えると派手だよな?」
「二人には似合うよ。きっと」
「ふふ、そうだね」
霜葉たち4人と五匹は大通りを進み店へと向かう。なお、通りを歩くほかの人々は小熊達に慣れてきたので騒ぐことはない。せいぜいこの町に来たばかりの旅人や商人などが驚くくらいである。そんな人たちに店の者や近くに居た人が小熊の説明をすると、さらに驚くのが定番になりつつある。
そうやって少数の人の驚く声を聴きながら、店へと向かっているのだが・・・
「そこの魔物使い!止まれ!」
何やら、命令調の声が響き渡り霜葉たちは足を止め振り返った。
「僕のことですか?」
「お前以外に魔物使いがいるのか?まぁ、いる訳がないがな。魔物使いなどと言う弱い職業に就いた奴など。おっと失礼、俺の前に一人いたなそう言えば」
初対面の人間に対してかなり失礼な物言いである。霜葉に声を掛けたのは見るからに貴族が着る服に身を包んだ小太りした中年男性だった。髪の毛も後退している。左右には護衛と思われる騎士風の格好をした男たちもいる。
「なんのご用でしょうか?」
「お前が連れているブルーベアの子供は私が貰い受ける。有難く思うんだな」
「お断りします」
「お前の意思なんぞ聞いていない!これは決定事項だ!黙って渡せ!!」
霜葉たちは何を言っているんだこいつはと思っていた。辺境伯からもバカな貴族がいるとは聞いていたが、正直ここまでひどい奴がいるとは思っていなかった。そんな時、周りの人たちの声が聞こえてきた。
「おい、あいつって確か・・・・」
「ヨルウィン子爵家の一人息子だな。確か」
「いろいろ問題を起こしているって話だよな」
「ああ、そのせいで辺境であるここに送られたって話だ」
どうやら目の前の貴族は問題行動の常習犯らしい。
「お前たち、その子熊を私の下に連れて来い!」
「「は!」」
騎士風の男たちは貴族の指示に従い、一人は三日月に近づきもう一人は無月に近づいた。すると・・・
「ぐぅ!」
「ぐほぉ!」
「ぐる!」
「ぐはぁ!」
三日月の前に新月が立ち塞がり近づいてきた騎士風の男を殴り倒した。無月も近づいた騎士風の男を同じく殴り倒した。小熊たちの爪は普段は毛皮の中に隠れているため、殴るのに邪魔にならないのだ。
『妹に何するんだ!』
『散歩の邪魔・・・・』
新月の男を殴り倒した理由はともかく、無月はひどすぎないか?
「きさま!何をするんだ!」
「いや、それこっちのセリフですから。堂々とうちの子たちを誘拐しようとして何を言ってますか?」
「うるさい!きさまは黙ってブルーベアの子供を私に渡せばいいんだ!」
「話中に失礼しますが、よろしいですか?」
話し合いになっていない言葉の応酬に生徒会長が割って入った。貴族の男は生徒会長を見て呆けている。
「ほう?中々の美人ではないか。私に何か用か?」
「先ほどから見ていれば貴方の行いは犯罪ですが、自覚もないのですが?」
「犯罪?平民が貴族の言うことを聞くのは義務だ。そんなこともわからんのか?」
「そうですか。では同じことをガルレオ辺境伯殿の目の前で言ってください」
「なに!?」
「私たちは辺境伯殿と知り合いでして、今回の出来事は辺境伯殿にも知らせておこうと思います」
「きさま!私を脅すつもりか!」
「そんなつもりは毛頭ありません。と言うかこの行いが犯罪でないのなら脅すことには繋がらないのでは?」
「く!?お、おぼえていろよ!?」
そう言って貴族の男は護衛を置き去りにして立ち去って行った。
「やれやれ、あんな貴族が本当にいるのですね。大丈夫でしたか霜葉君?」
「ありがとうございます聖夏先輩。三人は大丈夫だったかい?」
『お兄ちゃんが庇ってくれたから大丈夫。有難うお兄ちゃん』
『おう、無事でよかったよ』
『俺も大丈夫・・・』
【思念会話】での会話と同時に三匹は頷いたり、三日月が新月に抱き付いたりしている。
「とりあえずどうする?辺境伯に知らせに行くか?」
「その方がいいと思います」
「そうですね。防具を受け取ったら辺境伯の屋敷に行きましょうか」
「そうしましょう」
そう結論づけて、霜葉たちは足早に防具作成を頼んだ店へと向かった。
「これが出来上がった防具とナイフだ。こちらとしてもいい仕事ができたわい!」
そしてやってきた武具屋で早速防具を見せてもらっている霜葉たち。革鎧が二つとグローブとブーツも二セットある。あとは革の胸当てが二つにナイフが一つ、それぞれを霜葉は鑑定してみた。
【ラージレッドウルフの革鎧】
品質の高いラージレッドウルフの皮を一流の職人が革鎧に仕立てた逸品。
適正価格、銀貨六枚。
【ラージレッドウルフのグローブ】
品質の高いラージレッドウルフの皮を一流の職人がグローブに仕立てた逸品。
適正価格、銀貨四枚。
【ラージレッドウルフのブーツ】
品質の高いラージレッドウルフの皮を一流の職人がブーツに仕立てた逸品。
適正価格、銀貨三枚
【ホーンドボアの革の胸当て】
品質の高いホーンドボアの皮を一流の職人が胸当てに仕立てた逸品。
適正価格、銀貨三枚。
【ファング・ナイフ】
ラージレッドウルフの牙をナイフに加工した逸品。適正価格、銀貨二枚
鑑定結果ではすべてが逸品と評価されていた。適正価格もかなり高い。
「かなり出来がいいみたいですが、これホントに合計銀貨六枚でいいですか?」
「気にするな、素材持込みならそんなもんじゃよ。むしろこちらとしても礼が言いたい。実に久しぶりの高品質の魔物素材じゃったしの。作るのが楽しかったわい!」
「でしたら遠慮なく。あ、これが残りの代金です」
「まいどあり!できればまた持ってきてほしいもんじゃ!」
代金を支払い、店主の別れを告げ店を後にする霜葉たち。本来なら冒険者ギルドに行く予定だったが、先ほどの貴族の一件を報告するために辺境伯の屋敷へと足を向ける。
辺境伯の屋敷へと着いた霜葉たちは門番に用件を言うと、すぐさま辺境伯の部屋へと案内してくれた。本来ならあり得ない対応だが、それほど辺境伯は霜葉たち召喚者のことを重く考えているのだろう。
「全く、そのようなバカな者が本当に居たとはな・・・・ソウハ殿。この国の貴族が迷惑をかけてしまい本当に申し訳ない」
「いえ、ガルレオ辺境伯殿が謝る必要はありませんよ?」
「同じ貴族として多少の責任はあると私は考えている。ましてや、この町の住人である貴族が迷惑をかけたのだ。この町の責任者としても無視はできぬ。他の三人も迷惑をかけてしまった申し訳ない」
そう言ってガルレオ辺境伯は深く頭を下げた。
「俺、いや私たちは問題ないですよ?」
「ええ、そうですよ?」
「こちらとしては、その貴族がまた接触してこなければ問題ありません」
「僕も同意見です」
「もちろんだ。その貴族には重い罰を与えることを約束する。それで確認なのだが、その貴族はヨルウィン子爵家の息子で間違いないのだな?」
「本人は名乗りませんでしたが、町の人がそう言っているのは聞こえましたので」
「よし、すぐさま町の警備隊を向かわせよう」
結果、その貴族は拘束されて屋敷を調べてみると地下に奴隷の首輪をした魔物と人間が数人発見された。
この奴隷の首輪が魔物を従わせる魔道具で本来は奴隷用なのだが、最近になって魔物にも効果があると分かったので使われるようになったのだ。
奴隷はこの世界では一般的であり国によって制度は違うのだが、女王国では人権がしっかりと保護されている。ただ、奴隷にも種類があり女王国では犯罪奴隷と借金奴隷の2種類がある。
犯罪奴隷は文字通り犯罪を犯し奴隷の身分に落とされた者たちだ。奴隷から解放されることはなく、犯した犯罪によっては鉱山に送られ死ぬまで働かされる実質的に死刑であり終身刑だな。
一方、借金奴隷はお金が払えなくなったりお金を手に入れるために自らや家族を売ってなる奴隷だ。こちらの場合は奴隷となった後にしっかりと働いてお金を稼ぐなり、家族がお金を払うなどすれば奴隷から解放される。
しかも奴隷となった後の生活は奴隷商や雇い主に保障され、女王国でも借金奴隷の人権は法によって保護されていて法に違反すれば雇い主や奴隷商が犯罪奴隷になる場合がある。
話を捕まった貴族に戻そう。発見された魔物はヨルウィン子爵家に所有権があるので王都にある子爵家に手紙を送りどうするかと返答を待っていたら、所有権は放棄するとの返答を貰い魔物たちは辺境伯の騎士団に解体されて素材となった。
問題は奴隷たちであった。この奴隷たちは犯罪奴隷でも借金奴隷でもなく違法奴隷たちだったのだ。違法奴隷とは人攫いや盗賊たちが違法奴隷商に人を売り無理やり奴隷の身分にされた者たちだ。奴隷の首輪には所属する国の製造番号が施されるのだが、この奴隷たちの首輪には製造番号がなかったのだ。
これは違法に造られた首輪である証明であり、性質が悪い物は製造番号すら偽造する。今回の物はそこまでの物ではなかったため判明したのだ。違法奴隷にされた者たちは全員女性であったが,幸い乱暴された跡などはなく、話を聞いてみると人攫いに攫われて最近になってあの貴族が買ったらしい。
運がよかったと言うべきであろう。これが盗賊であるなら凌辱された後に売られ、売られた先でもどうなっていたことか・・・・
当然、違法奴隷は女王国では最大級の違法であり買ったあの貴族は罪状がさらに追加され王都に送られることになり、子爵家からは追放を言いわたされ身分を犯罪奴隷に落とされ鉱山で死ぬまで働くことになった。
辺境伯の屋敷で伝えることは伝えたので屋敷を出て、霜葉たちは冒険者ギルドへと向かい依頼を受けて町の外へと向かう。
ちなみに、今回の依頼はこんな感じ・・・
【フォレストオウルの羽の納品】
目的: フォレストオウルの羽4つ納品。
報酬: 銅貨六枚
【フォレストオウルの討伐】
目的: フォレストオウル4体討伐。討伐証明に爪を要提出
報酬: 銅貨五枚
最近の霜葉たちは方向感覚のユニークスキルのおかげで森の奥へ行けるので、このような森の奥に生息している魔物の依頼を受けることができるのだ。報酬もわずかに高いのでいい儲けとなっている。
「さて、今日も依頼を頑張るとしますか?」
「健吾君、年寄り臭いよそのセリフ」
「え!まじで!?」
「ふふふ」
「・・・・・・」
「?どうした霜葉?考え事か?」
「うんちょっとね。依頼が終わったら相談に乗ってくれるかな?」
「もちろんだぜ」
「私もいいよ」
「当然、私もです」
「ありがとうございます。じゃあ、五人もよろしくね?」
『『がんばる~』』
『俺も頑張って強くなるぞ!』
『私も頑張るよ~!』
『俺も頑張る・・・』
森の奥へとたどり着いた時の会話である。それから霜葉たちは依頼の対象であるフォレストオウルを8体は倒して他には、角が刃のように鋭いブレイドディアーやホーンドボア、初見の牙が立派な蛇ファングバイパーなどを4体以上倒した。なお、ファングバイパーが現れた時は、太さが子供の腕くらいはあるためか裕佳梨が悲鳴を上げた。
「うう~蛇怖い・・・・」
「確かにあのデカさの蛇がいきなり現れたのはびっくりしたがな?」
「霜葉君は元の世界で蛇のお世話もしてたから平気なのはわかるけど、どうして聖夏先輩は平気なんですか~?」
「と、言われましても?平気な物は平気なのでとしか言いようがありません」
「ちなみにこの蛇のお肉も高級品みたいだよ?」
「え?ま、まさか食べるの?」
「興味はあるけど、今はお金稼ぎを優先かな?」
「ほぉ・・・・」
明らかに安堵している裕佳梨。それほど蛇肉は食いたくないか・・・・いつものように倒した魔物を霜葉が解体していると・・・・
「依頼も達成したし、相談事なら今聞くぜ霜葉?」
「そうですね。ちょうどいいかもしれませんね」
「そうだね。じゃあ聞いてくれるかな?」
「うん、いいよ」
「さっき考えてたのはそろそろ旅に出てもいいんじゃないかなって思ったんだよ」
「「え!?」」
「・・・・・理由を窺っても?」
「もちろん構いませんよ。新月たちが仲間になったから戦力と言う意味では十分だと思います。それに・・・」
「それに?」
「そろそろ白夜と十六夜がLvMAXになるんだ。タイミング的にもいいんじゃないかと考えまして」
戦闘を重ねた結果、霜葉本人のLvも白夜と十六夜のLvも上がっているのだ。現在のステータスは・・・
名: 動島 霜葉
職業: 【軍勢の魔王Lv9】
固有スキル:【存在進化】:【箱庭世界Lv2】:【思念会話Lv2】
スキル: 回復魔法術Lv10 : 付与魔法術Lv10 : 錬金術Lv10
調理術Lv10 : 魔道の極み : 魔力強化・極
魔力回復強化・極 : 無詠唱 : 職人の極み
超鑑定 : 超隠蔽 : 短剣術Lv4 : 杖術Lv3
アイテムボックス・極 : 方向感覚
名: 白夜
種族:【異界犬♂Lv9/10】
スキル: 咆哮Lv6 : かみつきLv5 : 嗅覚探知Lv6
名: 十六夜
種族:【異界猫♀Lv9/10】
スキル: ひっかきLv5 : 隠業Lv6 : 聴覚探知Lv6
確かに霜葉の言う通り白夜と十六夜はあと少しで進化できるだろう。しかし、進化がどのような形で行われるかわからないし、十中八九姿は変わるためこの国に居る間は進化することはできそうにない。
「だから、旅の準備もしないといけないし、ちょっと考え込んだんだ。みんなはどう思う?」
「「「・・・・・」」」
「みんな?」
三人の心境としてはとうとう来たかと言ったところか。四人で行動するのにも慣れてきたし楽しかったから余計にそう思うのだろう。霜葉とてそう言う気持ちがないわけではないのだが、この国に居続けることは職業的に言ってまずいので仕方ないと考えている。
「僕もみんなと離れるのはつらいけど、こうした方が僕的にはいいと思うんだ」
「・・・・確かに霜葉はこの国に居続けるのは危険だしな。わかったぜ、俺は協力するし賛成だ」
「確かにそうですね。それにここでわがままを言って霜葉君を困らせる訳にはいきませんしね」
「うん、そうだよね。本当は一緒に行きたいけどそれも難しいのは分るし、私も協力するよ」
「ありがとうみんな」
この話し合いで霜葉が近いうちに旅に出ることが決まった。
『『お話おわった~?』』
『うん、何かあった二人とも?』
『『あの子たち三人ともいないの~』』
「え!?」
白夜と十六夜がそう言ってから霜葉は辺りを見渡すが、確かに新月たち三兄弟がいない。しかし・・・
「ぐぅ~」
「まぁ~」
「ぐる~」
奥の茂みから三匹が鳴きながら出てきた。霜葉は安堵のため息を出して三匹に視線を向けた。
「三人ともどこに行ってた・・・・の?」
霜葉は目の前の光景に少しフリーズした。なぜなら・・・・
『お兄さんこれ見つけたの~』
三日月が大きな卵を持っていたのだ・・・・・
女王国編12をこの話に合わせるために少しだけ修正しました。