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第一章 第十四話  女王国編14

メリークリスマス!プレゼントって訳ではないけど、更新です

霜葉たちは武具店でラージレッドウルフとホーンドボアの革製の防具とナイフの制作依頼を頼んだ後に、冒険者ギルドに来ていた。


早速4人は討伐依頼を2つほど受けて、町の外へと向かった。受けた依頼は・・・・


 【スピアディアーの討伐】

目的: スピアディアーの3体討伐。討伐証明に角を要提出!

報酬: 銅貨7枚


 【ニードルラビットの討伐】

目的: ニードルラビットの4体討伐。討伐証明に角を要提出!

報酬: 銅貨5枚


この2つだ。なお、依頼は3つまで受けられるが霜葉たちはまだ冒険者になれていないため、一度に受ける依頼は2つまでと決めているのだ。


町の外へと出た、4人はどうするか話し合っていた。


「今日も街道近くの探索ですか?」

「そうですね・・・」

「それなんですが、今日は森の深くへ行ってみませんか?」

「いいのかよ霜葉?迷わねえか?」

「大丈夫みたいだよ?今、僕を鑑定してみたら方向感覚ってユニークスキルが有って、その効果は目的地に迷わずに行けるってものなんだ」

「お、マジか?」


この言葉をきっかけにして他の3人も許可を取り鑑定して見た所、霜葉を含め皆Lvが上がっており方向感覚のスキルも持っていた。


「これはありがたいですね。では、霜葉君の意見を採用して森の深いところに行ってみますか?」

「わかりました」

「異議なしです」


そう言うこととなり、霜葉たち4人と二匹はしばらく街道を移動してかなり町から離れた所で森へと入った。すると、初見の魔物にも何匹か出会った。


緑色の毛皮をした中型犬の大きさの狐、グリーンフォックス。

小型犬以上中型犬以下の大きさのフクロウ、フォレストオウル。

ダチョウのようなしかし足が立派な飛ばない鳥、キックランナー。


これらの魔物と戦ってみたら、意外と何とかなった。狐は白夜と十六夜が倒して、フクロウは生徒会長の風魔法術で倒し、ダチョウのような魔物は健吾が蹴りを防いで戦棍を叩き込んだ。


その他、すでに知っている魔物も合わせて結構な数を倒した。なお、初見の魔物は解体せずに血抜きだけ済ませてアイテムボックスに入れていた。冒険者ギルドの解体場で職員に素材になる部分を聞いてから解体するつもりのようだ。


「ふう~さすがに奥に来ると魔物の種類も増えるんだな?」

「そうだね。女王様が言ってた通りだね」

「狐撫でたかったです・・・・」

「仕方ありませんよ、聖夏先輩。襲ってきたのはむこうなんですから」

『ご主人のおともだち元気ない~?』

『元気出すの~』


狐を見て撫でたかった生徒会長だったが、威嚇して襲ってきたため白夜と十六夜が倒したのを残念そうに見つめていた。そんな落ち込んだ生徒会長を元気づけようと白夜と十六夜が足元でじゃれつく。


「この子たちはいい子ですね~♪」

「わふ~♪」

「にゃ~♪」


そんな二匹を生徒会長は撫でて気分を持ち直した。その後は討伐依頼の魔物を指定数倒して、血抜きしている間に休憩しているところだ。


「今日はもう帰るか?」

「そうですね。これだけ倒したのですから稼ぎとしては申し分ないでしょう」

「この子たちも頑張ってくれたしね」

『ご主人~ぼくがんばったよ~』

『主~わたしもがんばったの~』

『うん、二人とも偉かったよ』

『『わ~い、ほめられた~♪』』


霜葉たちがこのまま町へと帰ろうとした、その時・・・・


「グワァァ~!!」

「「「ウオーン!!」」」

「「「「!!」」」」


突如、辺りに何かの叫び声と狼の遠吠えが聞こえてきた。霜葉たちは聞こえてきたと同時に武器や盾を持ち周囲を警戒した。


「今の声は何だ?」

『二人とも、近くで何か匂いや音は聞こえるかい?』

『ちょっと遠いけど、いやなにおいといいにおいがするの~』

『主~私も遠いところでいい音といやな音がする~』

「白夜と十六夜が言うには、遠くで誰かが戦ってるみたいだね」

「誰かって?」

「それは分らない。でも二人が言うには嫌な匂いと音といい匂いといい音が一緒に居るみたいだよ」

「誰かが戦っているってことか?」

「だ、だったら助けに行った方がよくない?」

「そうですね・・・・このままでは動きずらいですし、様子くらいは見た方がいいかもしれません」


生徒会長の言葉に誰も反対せず、ゆっくりと声のした方へ進んだ。しばらく進むと、鳴き声と戦闘音が聞こえてきた。そして発生源を視界に捉えた霜葉たちは・・・


「あれってラージレッドウルフか!?」

「いやちがうよ。ラージ種ほど大きくないからあれは元になったレッドウルフって魔物だね」

「戦っているのってブルーベア?」

「あれがそうなんですか・・・本当に青い毛皮のクマですね・・・・」


霜葉たちの目の前では、レッドウルフが群れでブルーベアを襲っているところだった。ラージ種をギルドに見せた時にレッドウルフのことも聞いていた霜葉達。レッドウルフは群れで生活する魔物で、最低でも6体以上いる。しかも戦闘では連携して戦うためかなりの強いらしい。ラージレッドウルフは群れから離れた個体ではないかとも言っていた。


とは言え、強いと言ってもブルーベアほどの強さはない。本来なら群れていても襲うことはないはずなのだが・・・


「なんか苦戦しているな?ブルーベアの方が」

「多分、後ろを守りながら戦っているから満足に戦えないんじゃないかな?」

「あ、ほんとだ後ろに小熊がいるよ?」

「か、かわいい!」


霜葉の言う通り、ブルーベアは後ろにいる我が子を守るために戦っているため自分から攻めることができずにいた。しかも、レッドウルフの方もそれが分かっているのだろう。小熊の方を狙うように攻撃している。


「ぐぅ・・・」

「まぁ・・・」

「ぐる・・・」


小熊は3体いるが恐怖に震え、一か所に丸まっていた。そんな我が子を守るため、親熊は懸命にレッドウルフを撃退して行った。事実、親熊の足元には何体かのレッドウルフが横たわっていた。


しかし、やはり状況が悪いのだろう。親熊も無傷とはいかず、牙や爪を受けて辺りを血で染めていた。このままではいずれ限界が来る。


『ご主人~』

『主~』

『どうしたの二人とも?』

『『あの子たち助けたい~』』

『え?珍しいね?君たちがそんなこと言うなんて』

『あの子いいにおいするの~それに前に会ったことがあるの!』

『そうなの!だからお願い~主~!』

『ええ!?じゃあ、あの時のブルーベアの親子なの!?』


何と、霜葉たちの目の前にいるブルーベアは、以前霜葉が騎士たちの魔物の調査と駆除に同行した時に出会っていたあの親子連れだったのだ。


「ねぇ。皆ちょっといいかな?」

「「「?」」」


霜葉はまずは3人に、二匹があのブルーベアを助けたいと言っていること。そして以前にあのブルーベアに会っていることを話した。


「マジかよ、あんときのやつなのか?」

「白夜と十六夜が言うにはそうみたいだよ?」

「ど、どうしようか?」

「私は賛成です!早くあの可愛い子たちを安心させてあげましょう!」

「僕としてもあのブルーベアはいい子みたいだし助けるのはありかと思う」

「で、でもな~」

「う、う~ん・・・」


小熊の可愛さに撃墜された生徒会長は何やら興奮しているが、助けるのは賛成らしい。霜葉も二匹の意思を尊重して助けてもいいかと思っている。健吾と裕佳梨は二匹のお墨付きがあるとはいえ、魔物を助けていいものか悩んでいた。しかし、状況は彼らの答えを待ってはくれなかった。


「まぁー!!」


横たわっていたレッドウルフの一体が起き上がり、小熊一体を掻っ攫った。どうやらやられたふりをしてチャンスを狙っていたようだ。


「グワァー!!」

「ぐぅー!」

「ぐるー!!」


親熊は我が子をさらったレッドウルフに近づこうとするが、その隙にレッドウルフが他の子を狙おうとしているため、近づくことができなかった。他の小熊二体も兄弟?を心配する声を上げるが、自分たちは何もできないこと思い出したのか再び丸くなった。


その間、十分に離れたレッドウルフは仲間と共に小熊を食べようとしていた。どうやらこの群れは空腹で親子連れのブルーベアを獲物とする賭けに出たようだ。そして、今その賭けに勝とうとしていた。


「まぁー!!!」


泣き叫ぶ子熊。しかし無情にもよだれを垂らして近づくレッドウルフは止まらない。親熊も襲ってくるレッドウルフを撃退するのに必死で助けに行けない。小熊の命は消えようとしていた・・・・


「【ウィンドアロー】!」

「わーん!」

「にゃー!」


――――――――直前で救う者たちが現れなければ。


生徒会長の放った【ウィンドアロー】は正確にレッドウルフ3体の顔に命中して怯ませ、白夜が1体の首に噛みつき食いちぎった。十六夜も残り2体の首を引っ掻き絶命させた。二匹の攻撃は霜葉の【アタックブースト】により強化されたため一撃で結構なダメージとなったのだ。


「まぁ?」

「もう大丈夫だよ?【ヒール】!」


小熊の前に霜葉が近づいて、レッドウルフが掻っ攫った時に腕を怪我したので回復魔法術で治してあげた。


「まぁー♪」


傷を治してくれた霜葉に小熊は近づいて、足にしがみついた。どうやらこの子熊は果物をくれた霜葉のことを覚えている様だ。


「おりゃー!!」

「【ヒール】!それから【ヒーリング】!」


健吾と裕佳梨も霜葉たちに遅れて、親熊の周りにいるレッドウルフに対して健吾は攻撃し裕佳梨は親熊に回復魔法術を掛けて傷を治し体力を回復させた。小熊が食べられそうになったの見て助けると決めたらしい。


「グワァー!!」


傷が治り体力も回復した親熊はさっきまでより苛烈に攻めた。我が子を食べようとしたレッドウルフに対しての怒りを爆発させたように。この時点でレッドウルフの群れに勝ち目は無くなった。


しばらくして、レッドウルフは全滅して合計12体の死体が辺りに散乱していた。特に親熊が仕留めたレッドウルフの死体がひどい、頭が粉砕している。よほどの怒りを込めたらしい。


「まぁー♪」

「グワ♪」

「ぐぅー!」

「ぐるー!」


ブルーベアの親子は互いの無事を喜び、特にレッドウルフによって奪われた小熊を親熊が丁寧に舐めている。他の小熊も嬉しそうだ。


『よかったね~』

『あの子うれしそう~』

『そうだね』


そんな親子の触れ合いを微笑ましく見ている4人と二匹。だが・・・・


「グ・・・グワ・・・・」

「まぁ?」


何やら親熊の様子がおかしい?ふらふらしだして、どこか不安定だ。そして唐突に親熊が倒れてしまった!


「まぁー!?」

「ぐぅー!?」

「ぐるー!?」


慌てる小熊達。親熊に駆け寄り体をこすりつけるが、親熊からの反応はない。そして霜葉たちも・・・・


「いきなりどうしたんだ!?」

「どこか怪我をしているのでは?」

「い、いえ!ちゃんと【ヒール】を施しましたし、傷は完治しているはずです!」

「何があったんだろう?」


霜葉たちも突然の事態に困惑していた。正解を言えば、親熊は血を流しすぎたのだ。回復魔法術は傷を回復はするが、失った血まではどうしようもないのだ。親熊はとうに限界を超えていたのだが、小熊を守るため気力を振り絞って戦っていたのだ。


危機的状況を乗り越えて、気を抜いたため倒れてしまったのだ。正直に言えばもう親熊が助かることはない・・・


「ぐぅー!」

「まぁー!」

「ぐるー!」


小熊達が必死に呼びかけるが親熊はどんどん冷たくなってゆく。やがて・・・・


「ぐぅ・・・」

「まぁ・・・」

「ぐる・・・」


小熊達も理解してしまった。自分たちの親はもう起き上がることはないのだと。小熊達はそれでも親熊の元を離れたがらず、親熊の顔を舐めていた。


「親熊、死んじまったのか・・・」

「そ、そんな・・・」

「あの子たちはこれからどうなるのでしょう?」

「・・・・・よし」

「霜葉?」


霜葉は何かを決めた様な顔をして、小熊達に近ずいた。小熊達は近ずく霜葉に対して一匹が親熊を守るために霜葉の前に立ちふさがった。


「ぐ、ぐぅ~」

「君たちの親に何かする気はないよ?」

「ぐぅ?」

「ねぇ君たち?僕と一緒に来ないかい?」


霜葉は小熊達にそう語りかけた。


「まぁ?」

「ぐる?」

「僕と一緒に来れば少なくとも食べるのに困ることはないよ?そこの親熊みたいに守ることはできないけど、僕の下に来れば強くなることもできるけど、どうする?」

「まぁ~♪」


霜葉の話を理解したかはともかく、霜葉が回復してあげた小熊と思わしき鳴き声を上げた者が霜葉の足に顔をこすりつけた。


「ぐぅ・・・」

「ぐる、ぐるるぐる」

「ぐぅ」


他の二匹も何やら話し合って?霜葉に近ずいてきた。そして霜葉に頭を下げてまるで、これからよろしくお願いしますと言っているようだった。


「うん、こちらこそよろしくね?じゃあまずは【テイム】」


【テイム】を使用して、小熊三匹が淡く輝きだして白夜や十六夜と同じく繋がる感覚を霜葉は感じていた。やがて三匹の輝きは収まり、小熊達は首を傾げていた。


≪【ブルーベア♂】二匹と【ブルーベア♀】一匹のテイムに成功。条件達成。【箱庭世界】がLv2にアップします≫


何やら条件がクリアしたため、【箱庭世界】がLvアップしたようだが、霜葉は後で考えることにして三匹に【思念会話】で話しかけた。


『三人とも聞こえるかな?』

『な、なんだ!?声が聞こえるぞ!?』

『すご~い!これってお兄さんの声かな?』

『お兄さんすごい・・・・』

『うん、僕の能力で仲間にした子たちと会話ができるんだよ。改めてこれからよろしくね?』

『よろしくね~!』

『よろしく・・・』

『・・・・・・』

『うん、君はどうしたのかな?』


ブルーベアの小熊の一体が何やら考えているようだ。そして俯いた顔を上げて霜葉を見上げてあることを聞いてきた。


『なぁ、あんたのとこに居れば本当に強くなれるのか?』

『うん、そうだよ。僕の能力の中に仲間が増えれば僕と仲間を強くするって言うのがあるんだよ。だから今でも君たちはさっきより多少は強いはずだよ』

『そうなのか?』

『これから町に帰る時にでも魔物と戦って、確かめればいいよ?』

『わかったやってみるよ』

『後、僕の能力には君たちのLvがMAXになれば、より強い姿に成長する物もあるからそれでも強くなれるよ?』

『ほ、本当か!?だったら母さんのように妹と弟を守れるようになるのか?』

『あの子は母熊だったんだね。残念だけどその能力は正確には分ってないから、断言はできないけど弱くなることはないと思うよ?』

『そうなのか・・・・うん、俺強くなるよ。あんたの下で、いや、兄さんの下で強くなれるように頑張るよ。今度は俺が妹や弟を母さんの代わりに守るんだ』

『私も強くなるの~!』

『俺も・・・・強くなる・・・・』


妹の方は、何やら楽しげだが兄や弟は今回のことで何もできなかったことがよほどショックだったのだろう。その顔は決意に満ちていた。


『うん、三人ともよろしくね?あとこの子たちとも仲良くしてね?同じ仲間だし』

『『よろしく~』』

『よろしくな』

『よろしくね~』

『よろしく・・・・』


白夜と十六夜を紹介して、早速二匹が小熊達に近よりじゃれついている。小熊兄はいきなりのことに動揺して、小熊妹の方は楽しそうに、小熊弟は呑気に欠伸をしていた。


「霜葉?仲間にできたのか?」

「うん、この子たちは今日からうちの子だよ?」

「そうか!しかし、またずいぶんとかわいい子たちが仲間になったな?」

「ふふ、そうだね」

「霜葉君、できれば後で抱っこさせてください!」

「この子たちが嫌がらなければいいですよ?」


霜葉の返事に生徒会長はいい笑顔で何度も頷いていた。それからは皆で血が抜けきったレッドウルフの死体を一か所に集めて霜葉がアイテムボックスに入れて、母熊の方は小熊たちのことを考えて近くにあったこの子たちの住処の洞窟に埋めることにした。


洞窟を壊して入り口をふさぎ、霜葉たちは町へと戻ることにした。方向感覚のスキルのおかげでなんとなく行きたい場所が分かるので戻り道の心配はない。道中で出てくる魔物も小熊達が蹴散らすので問題なし。小熊達の方はと言えば・・・・


『す、すごい!俺強くなってる!』

『私も~!すごいの~!!』

『お兄さんすごいよ・・・・』


魔物と戦える強さを手に入れたことに感動している様だ。ちなみに小熊達のステータスは道中で確認済みだ。


  名:  なし


 種族: 【ブルーベアLv4/20】


スキル: 爪撃Lv3 : 腕力強化Lv2 : 体力強化Lv2

   : 持久力強化Lv2 : 低燃費 

 

ステータスの違いは♂♀くらいで他は変わり映えがなかった。正直に言えばこの時点で白夜や十六夜よりも戦闘向きなスキル構成である。低燃費は食事が少ない量で充分なエネルギーを確保できるという物で果物一つで満足したのはこのスキルのおかげらしい。


今のままでも強いせいなのかLv20までがMAXであり、白夜や十六夜よりも進化が遅いが特に問題はないだろうと判断した。名前については、町に着いてから考えるつもりの様だ。


町の門の前に着いたのだが、ここでひと騒動起きてしまった。


「ぶ、ブルーベア!?」

「な、なんでこんなとこに!!」

「小熊だが、親熊はどこにいるんだ!?」


町へと入ろうとしていた人たちが小熊たちを見て騒ぎ出したのだ。この時点ではまだブルーベアが凶暴な魔物と思われているので、ある意味仕方がないのだが・・・・


「まぁ、こうなるよな。普通は」

「で、でも白夜と十六夜は平気なのに、なんでかな?」

「この二人は魔物だと思われてないからだと思うよ?」

「わう?」

「にゃ?」

「確かにパッと見は小さなかわいい動物の子供ですしね」

「それはいいけど、どうやってこの騒ぎを止めるんだよ?」


四人が話している間にも騒ぎは一向に治まる気配がない。ちなみに渦中の小熊たちは自分たちがこの騒ぎの原因だとは知らずに、霜葉の足元で騒いでいる人たちを見て首を傾げている。そうこうしているうちに門番が霜葉たちの下へとやってきた。


「君たち、そのブルーベアはいったいどうしてここに居るんだ?」

「この子たちは僕がテイムしました」

「・・・・・すまないが、もう一度言ってくれ」

「僕は魔物使いですから、この子たちをテイムしました」


霜葉のこの言葉は大きな声ではなかったのに、その場にいる全員に聞こえていた。


「ま、魔物使い?」

「今、魔物使いって言ったか?」

「ああ、確かに言ったな」

「ブルーベアをテイムしたってマジかよ・・・・」

「さすがに嘘じゃねえか?」

「だったらあの子熊はどう説明するんだよ?」

「それは・・・・」


周りで騒いでいた人たちは霜葉の発言に驚いている。魔物使いの職業は使えないと言う固定観念があるため、霜葉の言葉を鵜呑みにできないのだ。しかし、今目の前にいるブルーベアの子供の説明をするならそれ以外にないとも思っているため、周囲に沈黙が漂う。


「ちなみに危険はないんだな?」

「はい、この子たちは知能も高いですし言えば守ってくれますよ。そうだよね?」

「ぐぅ」

「まぁ」

「ぐる」


霜葉の言葉に頷く三匹。少なくとも意思疎通はしっかりとできているらしい。


「・・・・・確かに心配はないようだな。だが、念のためこの町の責任者であるガルレオ辺境伯には知らせるぞ?」

「当然の対応ですので、こちらも構いません」

「明日には呼ばれるかもしれないから、覚えていてほしい」


霜葉は頷き門番も門まで帰り、とりあえずこの場では終わりになった。騒ぎで列が乱れたので再び並びだし霜葉たちも最後尾に並んだ。並んだ人たちがちらちら子熊に視線を向けてくるが、仕方ない行動だろう。


それからしばらくして、町へと入った霜葉たちであったが・・・・


「な、なぁ?あれって・・・・」

「ブ、ブルーベア!?」

「な、なんでここに!?」

「や~ん!!かわいい!!」

「ばか!?可愛くても魔物だぞ!?」


ものすごく目立っている。道行く人や出店の人からの視線や声が凄い。一部小熊達の可愛さに身悶えている女子や男子(!?)がいるが・・・・


「やっぱ目立つよな~」

「仕方ないよね」

「そうですね」


霜葉以外の3人のセリフである。なお、霜葉はこのセリフを聞いて苦笑を浮かべている。町の人々を驚愕させながら冒険者ギルドへと向かってゆく。


「昨日も驚いたが、今日も驚かされるとは思わなかったぞ坊主?」


ところ変わって、ここは冒険者ギルドの解体場。ギルドに到着した霜葉たちは町の人たちと同様に冒険者や受付嬢を驚かせて、事情を説明。すると霜葉が魔物使いだと言うのに驚いて、さらにブルーベアを子供とは言えテイムできた事実にも驚いた。驚きすぎて疲れたと顔なじみの受付嬢に言われていた。


霜葉は依頼の達成報告用に討伐証明部位を提出したら、解体場に足を運んだ。そしてやはりここでも驚かれた。


「すいませんでした」

「別に怒っちゃいないんだがな。しかし、坊主は魔物使いなんだな・・・ブルーベアをテイムできた以上戦力としては申し分ないな。まぁ、まだ子供だからそんなに強くはないだろうがな」


そう言って解体場の責任者はがッはッはと笑っている。実際は霜葉の【軍勢の魔王】の職業効果でそこらの魔物では相手にならないが・・・・


「で、今日はどんな獲物を持ってきたんだ?」

「え~とまずは、今日の討伐依頼の対象である。スピアディアーが6体、ニードルラビットが7体、他にも緑色の毛皮の狐が4体、フクロウが3体、足が太い大きな鳥が4体、レッドウルフが12体です」

「またずいぶんと大量だな~狐はグリーンフォックスに、フクロウはフォレストオウル、足が太い鳥はキックランナーだろうな。フォレストオウルは森の奥でよく見かけるが、グリーンフォックスとキックランナーは珍しいぞ?」


名前は超鑑定のスキルでわかっていたのだが、念のためわからないことにした霜葉であった。


「では、その3体の素材はどう言った物がありますか?」

「グリーンフォックスはもちろん毛皮で爪や牙も装飾品として利用価値がある。フォレストオウルは羽と爪だな。こちらも装飾品や羽は矢羽根に使われる。キックランナーは羽と肉だ。特にキックランナーのふともも肉は高級肉だぞ?」

「なるほど・・・・ではそれらすべて売りますね。レッドウルフは大きな毛皮以外は売ります」

「キックランナーの肉は食わないのか?」

「今はお金と装備を優先します」

「ああ、なるほど」


と言うわけで早速、解体するべく霜葉は作業を開始した。まずは慣れているニードルラビットとスピアディアーを解体して、この二種類は角は早めに取り外しているのでいつもより早く終わった。その後に、レッドウルフを解体。これはランドウルフと手順は同じであり楽であった。その後に初見の三種類を解体場の職員に教わりながら、解体した。なお、解体中白夜と十六夜小熊達は離れた所で丸くなっている。


解体し終わると傷ついているところなどを【錬金術】で治して、終了だ。


「いや~坊主はやっぱり手際がいいな~なぁ、本当にここで働かねえか?」

「お気持ちはありがたいですが・・・・」

「まぁ、そうだよな~ぶっちゃけこれらを売った方が利益は十分だろうしな。言ってみただけだ。わりぃな坊主」


その後、受付で解体した分の買い取り額の合計は金貨一枚と銀貨一枚になった。これは素材が高品質であるため高めらしい。討伐依頼の報酬額と合わせて、金貨一枚と銀貨二枚、銅貨二枚の稼ぎである。


今までで一番の稼ぎに、4人と五匹はほくほく顔で住処へと帰って行った・・・・

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