第一章 第十一話 女王国編11
霜葉たちは女王陛下の依頼でガルレオ・カルナキス辺境伯の治める辺境に、生産職に就いた他の召喚者たちと共に来ていた。そして今、冒険者ギルドで冒険者登録を終えた所だ。
「すいませんが、皆様の登録カードのランク変更を行うため提出をお願いします」
用事が終わったのでこれからどうするか悩んでいると、霜葉たちの対応をしていた受付嬢からそんなことを言われた。
「変更ですか?」
「はい、さきほどの魔物素材を査定した結果、皆様の実力は確かな様子。ですので冒険者ランクをFからEに変更しようと思います」
「そんな簡単に決めていいんですか?」
「問題ありません。そもそもEに上がる条件は戦闘ができることを証明することですので、魔物素材を持ち込んだ皆さまは条件を達成しております」
「ですが、それでいいなら誰かに頼んで魔物素材を持ってきてもらって提出する人が居ませんか?」
霜葉がそんな不正をする輩がいるのでは、質問すると・・・・
「冒険者ギルドではそこまで厳しくする必要はないと考えております。それにそんな方法でランクが上がっても苦労するのは本人ですしね」
確かにその通りだ。不正ばかりやってランクが上がっても途中で躓くのは目に見えている。4人は納得して登録カードを受付嬢に渡した。そのカードを受付嬢はカウンター奥へと持って行き、しばらくすると戻ってきた。
「お待たせしました。これで皆様は冒険者ランクEになりました。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「登録作業はこれで終了です。このたびはこちらの不手際があったこと大変申し訳ありませんでした」
「こちらは迷惑とは思っていませんから、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
受付嬢はそう言ってから深々と頭を下げた。カードの表側だと思うが名前の上にでかでかとEと刻印されていた。霜葉たちは用事も終わった事だし冒険者ギルドを出て行くことにした。
「とりあえず登録は終わったし、帰って休むか?」
「そうだね。そうしようか?」
「馬車での旅の疲れもあるでしょうし、それがいいでしょう」
「あ、待って!」
帰ろうとする三人を裕佳梨が呼び止めた。頭に?マークを浮かべる三人。
「どうしたんだ、裕佳梨?」
「うん、ちょっと提案なんだけど服屋に行って聖夏先輩の服だけでも買わない?」
「私の服ですか?」
「うん、聖夏先輩今の格好は似合ってないし、それにちょっと視線集め過ぎだし」
生徒会長の今の格好は提供された灰色のシャツと茶色のズボンのようなものを着ている。確かに絶世の美女と言っても通用する彼女には似合ていない。それにサイズもギリギリなためスタイルが強調されていて近くを通る男性の視線が集中しているのだ。
「あ~確かに余計なトラブルにはなりそうだよな」
「うん、今日の冒険者ギルドでは人が少なかったから大丈夫だったけど、人が多くなるとこの格好だとね」
「そ、そうでしょうか?」
「裕佳梨ちゃんの言う通りだね。じゃあ服屋を探そうか?」
「「賛成」」
「私としては嬉しいのですが、いいんですか?」
生徒会長のこの言葉に3人は頷き、急遽服屋で生徒会長の服を購入することに決まった。
その後、町の人に服屋の場所を聞いて買い物を行った。さすがに今の所持金ではいい物は買えなかったが、同じ色合いのサイズがピッタリの物があったので、それを購入したようだ。それからは帰って早めに休んだ。
翌日。霜葉と健吾は慣れない馬車と野宿で疲労が溜まっていたらしく、夕食を食べずに爆睡してしまった。これは他の男子もそうだったようで朝食はかなりの量を食べた。そして朝食後に今後の話し合いをしていた。
「やっぱり、塩と胡椒ぐらいは欲しい」
「それに肉ばっかりだと、栄養バランスがな~」
「他には服も欲しいぜ。さすがに制服と訓練用の服だけじゃな~」
「要は金だよな。最大の問題は」
現在は今欲しい物について意見を出し合っているところだ。肉の味付のための調味料、栄養バランスを考えた野菜果物、普段着、お金、などなど足りない物が多すぎだ。
「はいは~い!皆、一旦ストップ!とりあえずは欲しい物をまとめると調味料、野菜果物、服、お金くらいだけど順番に解決方法を言うから質問があれば言ってね?」
話し合いの進行は霜葉が行っている。誰もやりたがらなかったのもあるのだが、ここに居る大半は霜葉のことを知っている人間だったためだ。知り合い多数や高校の職業体験で顔見知りになった者たちなどなど意外と霜葉は顔が広いのだ。
「まず調味料は、お金で買う以外に外で採取するって案がある」
「外にあるのか?」
「少なくともハーブ類があるのは以前の調査と駆除で確認済みだよ?ここなら種類も豊富なんじゃないかな?他にもこの世界独特の物があるかもしれないけど、それはお店で聞いてみればいいしね」
「確かにな」
生徒たちは特に料理人関係の職業に就いた者たちは、この世界独特の調味料に興味津々だった。
「野菜や果物も外で自生している物があるかもしれないし、それが分かるスキルを持っている人は外で探すのもありだね。あ、もちろん自衛できる人限定だよ?」
「そりゃそうだ」
「服については、お金が稼げるまでは我慢かな?生産職の人が作ることも可能だろうけど、材料を買わないとね」
「結局は金か~」
「お金に関しては、冒険者になる人はそれで稼げるとして、生産職の人は今日辺境伯がお世話になる生産工房に案内してくれるって話だし、その結果次第かな?」
「いろいろ作るぜ~」
「いや、いろいろは無理だろ?自分の生産系の作品だけだろう?」
「細かいことはいいんだよ!」
生産職に就いている者たちは楽しみにしていた。もともと生産系のことを学校で学んでいた生徒たちが大半なので自らの手で物を作るのが楽しいと言う人種ばかりなのだ。
それからは、とにかくやれることをまずはやってみないことには始まらないと結論して、冒険者になる生産職の者たちを連れて霜葉たちは冒険者ギルドに向かった。女子たちも合流してちょっとした集団になっていた。
「・・・・じゃあ、女子はまずは服をどうにかしたいわけか?」
「うん、さすがにいつまでも制服と訓練用の服だけなのは嫌だし、何着か買いたいんだよね」
「とりあえずは、持っている魔物素材を全部売って資金にして、今日の冒険者になる人たちでお金を稼いだら服を買って行こうと思います」
「魔物素材を全部売るんですか?」
「はい、今はとにかく服の問題を解決したいと女子全員の意見が一致しましたので」
女子たちの服に関する考えは男子とは違うのは当たり前なのかな?と疑問に思う霜葉と健吾だった。
冒険者ギルドに着いた一行はまず生産職は登録をしようとしたが、他の冒険者が依頼を受けるための列が多くて時間が掛かりそうだ。そこで場所は分ったので、お店を回って情報収集をまずはしようと言うことにした。外にあるだろうハーブの種類やこの世界独特の調味料の発見、各種野菜や果物の値段や外に自生しているかなどいろいろ知りたいことはある。
霜葉たち4人はお金を手に入れるため、依頼を受けてみることにした。依頼の書いた紙が書かれているボードの前に着てみれば、ボードの上に雑用、採取、素材調達、討伐、護衛と樹類ごとに分けられていて、危険度が低い物は下側に危険度が高い物は上にと言う感じで分けられていた。
なお、書かれている言葉は霜葉たちには日本語に見えていた。さすがに言語や文字に関しては分るようになっている様だ。実際に書くとどうなるかはわからないが。
霜葉たちはそこから素材調達と討伐を剥がして、受付に並んだ。依頼は護衛以外なら3つまで受けることが可能だが、最初と言うことで簡単なものにしたのだ。剥がした紙に書かれた依頼は・・・・
【ランドウルフの牙の納品】
目的: ランドウルフの牙5つ納品。
報酬: 銅貨6枚
【ランドウルフの討伐】
目的: ランドウルフの5体討伐。討伐証明に牙を要提出!
報酬: 銅貨7枚
この二つである。ランドウルフとは戦ったこともあるので、まずはこれをやって冒険者ギルドに慣れておこうと言う方針だ。列に並び霜葉たちの番が来たので依頼書を提出する。
「依頼はランドウルフの牙の納品にランドウルフの討伐ですね。では、全員の冒険者ガードの提出をお願いします」
「わかりました」
4人がカードをカウンターの受付嬢に渡すと、カウンターの下に魔道具でも置いてあるのか何やら音が聞こえてくる。数秒後受付嬢はカードを返してくれた。
「皆様は依頼を受けるのは初めてですね?カードの裏には討伐対象の記録が書き込まれます。これにより討伐漏れなどは起こり難いでしょう。依頼を達成したら納品素材と討伐証明の牙とカードを提出してくださいね?」
「なるほど、わかりました」
「外に行く前に職業の変更や確認はいかがですか?今なら空いていますよ?」
「大丈夫です。戦闘は経験済みですから」
「わかりました。ではお気をつけて」
受付嬢の挨拶を聞いてから、霜葉たちは冒険者ギルドを出て行った。なお、本来なら登録した時にも職業のことを聞かれるのだが、霜葉たちは戦闘経験者と聞いた受付嬢が聞かなくても問題ないと判断したのだ。だが、先ほどの言葉で霜葉は自分はともかく三人は他にどんな職業があるかは見ておいた方がいいなと思っていた。
冒険者ギルドを出た4人は、町の出入り口の門までやってきた。門には列ができていておそらくは霜葉たちと同じく依頼を受けた冒険者だろう。列の中には馬車で並んでるのもいるから冒険者ばかりではないようだが、ともかく4人も列の最後尾に並び順番を待った。
「よし!次の人はどうぞ!」
「はい、これの提出ですね?」
霜葉たちの番になり門番の前に冒険者カードを出す4人。4人のカードを検めた門番は驚いた顔をした。
「お、お疲れ様です!冒険者カードはお返しします!」
「は、はい?どうもありがとうございます」
「お気をつけて!」
いきなり態度が変わった門番に4人は驚きながら門を通り過ぎた。後ろで並んでいた人も何やらひそひそ話している。そのまま4人は門から壁に沿って離れ、疑問の声を上げた。
「あの門番さん、どうしたのかな?」
「いきなり敬礼もしたりしてびっくりしたぞ」
「多分、辺境伯から僕たちのことを聞いてるんじゃないかな?」
「おそらくはそうでしょうね。いつもあんな調子では目撃した人に不審に思われるかもしれませんね。今日の内に会って一言言っておきましょう」
召喚者たちの特にこの町で冒険者になると決めた生産職のメンバーは、名前を女王陛下に覚えられている。その名前のリストでも女王陛下から送られて、辺境伯が部下たちに丁重に接するようにとでも言ったのだろうと生徒会長は考えた。事実その通りであった。
「とにかく今は、依頼を達成しよう。白夜に十六夜も見つけてね?」
『『がんばる~』』
珍しく今日は霜葉に抱っこされずに歩いていた二匹に声を掛ける霜葉。
「じゃあ、このまま森を探索するか?」
「なるべく町から近いか、街道近くを探そうね」
「そうですね。この周辺の地理にも詳しくありませんし森の奥へ行くのはやめておきましょう」
「賛成です」
冒険者になっての初仕事を達成するために、4人は行動を開始した。
まずは、町の壁が見える範囲を探索することにした。しかし、町の近くではさすがに魔物はいないのか全く出会わない。
「このあたりにはいないみたいだな?」
「さすがに壁の周辺には魔物は寄り付かないようですね」
「でも、無駄ってわけじゃないみたいだしよかったよね」
『ご主人~これもいいにおいがするの~』
「ありがとう白夜。うん、鑑定結果でも食べられるみたいだしこれは確保だね」
魔物には出会わないが、地面にはキノコやハーブ類が自生していたので白夜が匂いで食べらえるか判断して霜葉が超鑑定のスキルで確かめて、食材をゲットしている。もっとも、霜葉のスキルは秘密なので後で食材限定で鑑定できる生産職の召喚者に見てもらう予定だが。
『主~いやな音はぜんぜんしないの~』
「十六夜もここら辺には魔物はいないってさ」
「仕方ありませんね。今度は街道周辺を探索してみましょう」
「了解です」
「わかりました」
4人は門の所まで戻り、そこから街道を進みある程度町から離れたら森へと入った。すると・・・・
「ぐる~」
「フシャ~」
白夜と十六夜が前方を睨みつけて、低い威嚇の声を上げている。
『ご主人~いやなにおいがするの~』
『いやな音もです~』
「二人ともありがとう。皆この先に何かいるみたいだよ」
「街道から出て早速かよ」
「では、慎重に進みましょう」
「はい」
ここからは4人とも武器を構えて、慎重に進んだ。健吾が先頭に立ち盾をいつでも構えられるようにして、その後ろを生徒会長が槍を持って歩き、その後ろに裕佳梨が最後尾に霜葉と白夜と十六夜が後ろも気にしつつ進んで行く。やがて、4人の目の前に現れたのは・・・・
「シカか、あれは?」
「そうなのかな?」
「鑑定してみたけど、スピアディアーだってさシカで間違いないね」
「果物を食べてますね。草食なのでしょうか?」
4人の目の前には木に生っている果物を食べているシカのような魔物が居た。霜葉がスキルで鑑定した結果スピアディア―と言う魔物らしい。全部で3体いる。
「どうする?目的のランドウルフじゃあないが」
「お金と戦闘経験を得るために戦うって選択肢もあるけどね」
「で、でも3体もいるよ?危なくない?」
「いえ、この場で怖気づくわけにはいきません。霜葉君の言う通りお金と戦闘経験を得るために戦いましょう」
「・・・・そうっすね。魔王と戦うって決めたんだしあいつら程度で戦えないんじゃ話にならないか」
「そ、そうだね。怖いけど私も頑張るよ」
「大丈夫だよ裕佳梨ちゃん。皆いるしこの子たちも頑張ってくれるよ?」
『ご主人とおともだち守るの~』
『がんばるの~』
『二人ともよろしくね』
『『うん!』』
4人は戦うことに決めたようだ。
「相手は3体いるからどう戦う?」
「それなら俺が2体ひきつけるから、生徒会長と二匹が協力して1体早めに倒してくれ」
「いいの?健吾君」
「何、この盾もあるし油断はしない。俺に任せてくれ」
「私も何かあったらすぐに回復するから気を付けてね健吾君」
「サンキュー裕佳梨」
「・・・・わかりました。桂木君の案でいきましょう。気を付けてくださいね?」
「もちろんです。あと生徒会長、俺のことは名前で呼んでください」
「そうですか?では私も名前で呼んでください」
「わかりました。聖夏先輩」
「よろしくお願いしますね。健吾君」
闘い方も決まり、この場所での初戦闘を開始するため動き出す4人。やがてスピアディアーの近くまで来れた健吾と生徒会長は、武器を構えて魔物たち目掛けて突撃した!
「うおぉぉ~!!」
いきなり出てきてさらに叫び声を上げる健吾にスピアディアー達は驚き、一瞬硬直した。そこへ・・・
「わ~ん!」
白夜が咆哮を上げて、スピアディアー達は白夜に視線が固定された。白夜はまだ小さいので視線は地面を見るように下へと下がる。その隙を突く形で・・・・
「ハァ!」
「喰らえ!」
生徒会長が突き出した槍が魔物の首に刺さり、健吾が下から上斜めに振るった戦棍が魔物の顎に当たり魔物は力尽きたように崩れ落ちた。
他の2体がやられ、残った1体は硬直も解け視線の固定も外れ、逃げようとしたが・・・
「にゃ!」
いきなり目の前に飛び込んできた見たこともない魔物に顔面をひっかかれ驚いて止まってしまった。そこに・・・
「わ~ん!」
再度響き渡る咆哮。これによりまたも視線が固定され、最後に残ったスピアディアーは逃げるタイミングを完全に潰された。振るわれた戦棍からも逃れる術はなかった・・・
「いや、なんかあっけなかったな」
「この子たちのサポートが的確だったのもあるでしょうね」
「うん、なんかすごく丁度いいタイミングだったよね」
『ご主人~僕たちがんばったよ~』
『主~私たちえらい?』
『うん、二人は凄いし偉いよ。よくやったね』
『『わ~い♪』』
現在霜葉は倒したスピアディアーの解体を行うために血抜きしている最中だ。この魔物の素材は魔結晶以外だと角と毛皮とお肉らしいのでそれ以外は【クリーン】を掛けて草むらに放置する予定だ。
「そう言えば霜葉君?この魔物が食べていた果物は私たちでも食べられる?」
「食べられるみたいだよ?ただスキルで見たら酸っぱいんだってさ。レモンみたいな果物らしいね」
「だったらどうする?」
「もちろん回収するよ?そもそも表向きでは僕たちには判断できないんだよ?いくつか持って帰るよ」
「ああ、そう言えばそうだった」
霜葉は表向きに超鑑定のスキルを隠しているので、食べれる食べれないの判断ができないのだ。本来はできるのだがそれをしてしまっては矛盾が生じる。
「今にして思えば、超だけ消しておけばよかったよ」
「だったら、そのスキルを手に入れたってことにしたらどうだ?」
「ん~鑑定系のスキルはかなりレアらしいからね。先天的に持っているのがほとんどで後からは習得できないスキルらしいから」
「そっか~何事もいい方向ばかりにはいかないか~」
あの時のスキルを隠す選択をした霜葉は間違ってはいない。隠す加減を間違えただけでありそこを責めるのは酷であろう。
「仕方ありません。あのときは情報なんてありませんでしたし、霜葉君も必死だったんですから」
「ありがとうございます。聖夏先輩」
「とりあえず、この果物はいくつ収穫しましょうか?」
「4つでいいですよ。採り過ぎたらまずいですから」
「なんで?」
「さすがに独占しても食べきれるかわからない物だしね。それにほかの冒険者も採るかもしれないし、魔物の食べ物が減るのもまずいでしょ?」
「ああ、俺達の世界でもあった森や山の食料不足の問題か」
山や森の食べ物が無くなり、人里に下りてくるなんてことになれば霜葉たちの世界でも問題になったのにこの世界ではさらに大問題だ。
「うん、だから自生した物は少しは残すのがマナーだよ」
「だからキノコやハーブ類も少し残してたんだね?」
「うん、そうだよ。さて、血抜きも終わったようだし解体したら次に行こうか?」
血抜きのために頭を落として木に吊るしていた魔物を解体し始める霜葉。しばらくして角、毛皮、お肉に解体された。内臓や骨などは霜葉が【クリーン】を掛けて草むらへと放り込んだ。解体した素材をアイテムボックスに入れた霜葉は立ち上り、3人とに二匹に話しかける。
「皆お待たせ。次に行こうか?」
「お疲れ様です」
「おし、次こそはランドウルフに出会えるといいんだがな」
「そうだね」
『『がんばるよ~』』
それから霜葉たちは街道周辺を探索して、出会った魔物を倒して回った。出会った魔物はニードルラビット、ランドボア、ランドウルフと以前の騎士団の調査と駆除に同行した時にも出会った魔物ばかりで霜葉の仲間になりそうな魔物はいなかった。そして現在ランドウルフと交戦中。
「おりゃあ!」
「キャウン!」
健吾の戦棍を受けて、ランドウルフは吹き飛び木に当たりそのまま地面に落ちて、痙攣したのち動かなくなった。
「よし!これで依頼は達成だな!」
「気が早いよ健吾君。解体だって終わってないよ?」
「ですが、討伐はこれで終わりですし上手くいってよかったです」
「ですね。そろそろお昼だし、これを解体したら町に帰ろうか?」
「賛成だ」
「そうしましょう」
「お昼は何食べようか?」
『ご主人~もうおわり?』
『主~私たちお役にたちました?』
『うん。二人のおかげでみんな怪我もしてないし、ありがとうね』
『えへへ♪』
『ほめられました~♪』
その後は解体に慣れた霜葉が手際よく終わらせ、街道に戻り町へと向かってゆく。
「思ったよりも町から離れちまったな?」
「結構歩き回ったしね」
『ご主人~僕ねむいの~』
『主~私も~』
『そうなんだ。二人ともおいで、抱き上げるから寝てもいいよ』
『『ありがとう~』』
二匹からの言葉に霜葉は二匹を抱っこして、船を漕ぎ始める二匹。
「わぅ・・・」
「にゅう・・・」
「その二匹は疲れたのか?」
「そうみたい。魔物になって強いと言ってもこの子たちはまだ子供だしね」
「ふふ、かわいいよね?」
「・・・・・・」
何やら生徒会長が霜葉の腕の中に居る二匹を羨ましそうに見ている。
「聖夏先輩。よければこの子たち抱っこしますか?」
「え、いいのでしょうか?」
「大丈夫ですよ。周囲の警戒くらいなら僕もできますし、この子たちも嫌がりはしないでしょう」
『二人とも。このお姉さんに抱き上げるの代わるけどいいよね?』
『いいよ~』
『この人はいい音するからいいよ~』
「今二人から許可も貰いましたし、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
そう言って霜葉は二匹を生徒会長に渡した。
「くぅ~zzz」
「にゅぅ~zzz」
「か、かわいい・・・・」
二匹を抱き上げて生徒会長は至福っと言うような顔となった。ただ、抱き上げたのはいいのだが、大きな胸があるせいで二匹がその胸に寝っ転がっている様なことになり二匹が寝返りをしたり、ちょっと動いたりすると胸が揺れて大変目に毒な光景になってしまった。
霜葉はその光景を見ても、よく寝ている二匹を見てニコニコするだけだ。さすが、ぶれない。だがこの場にいるもう一人の男子はと言うと・・・・
「ごくり・・・・」
「け・ん・ご・く・んなにをみているのかな?」
「いた!いたたたたぁ!!ゆ、裕佳梨!わ、悪かった!俺が悪かったから耳を引っ張るのはやめろー!!」
そんな風に約一名嫉妬に狂いながら、4人は町へと帰るのだった。ところ変わって町へと着いた一行はまたしても門番の過剰な反応に見送られ、冒険者ギルドに着いていた。
「こ、これはまた・・・魔物素材がいっぱいですね・・・」
受付嬢の目の前にはカウンターの上に置かれた魔物素材がいっぱいである。内訳は魔結晶×12、毛皮×12、角×6、牙×16、お肉は自分たちが食べる分を残しておき塊が5個、牙は依頼で提出するので6個が残る計算だ。
「ま、まずは依頼の分を先に処理しますね?」
「お願いします」
「依頼はランドウルフの牙の納品と討伐ですね。牙の状態も素晴らしいですし、討伐分と合わせて依頼達成です。ありがとうございます」
「どういたしまして」
「では、こちらが依頼達成報酬の合わせて銀貨一枚と銅貨三枚です。確認をお願いします」
「はい、確かに」
「次に魔物素材の査定ですが、どの素材も大変に状態がいいです。肉は付いてないどころが傷や汚れもありませんし」
汚れの方は、霜葉が【クリーン】を掛けて洗い流したと言えばいいのか?ともかくそれで対処した。傷の方は霜葉のスキルの【錬金術】で直した。
【錬金術】は魔力を使い材料があれば物を直したり、作れるスキルなのだ。ただし、職人が自らの手で作った物よりは品質が落ちるが、一瞬で出来るのが強みであり鉱石などのインゴットも作れるためかなり便利なのだ。
今回、霜葉は傷や痛んだところを【錬金術】を使い元の状態へと戻した。材料は毛皮の切れ端を使えば事足りたので傷のない完璧な毛皮になったわけだ
「魔結晶は12個で銀貨一枚と銅貨二枚、毛皮は12枚で銀貨二枚と銅貨四枚、角は6個で銀貨一枚と銅貨二枚、牙は6個で銀貨一枚と銅貨一枚、お肉は塊が5個ですので銅貨八枚となり合計で銀貨六枚と銅貨七枚となります」
依頼の金額と合わせて銀貨八枚の収入を得た霜葉たち。受け取り受付嬢にお礼を言おうとしたその時・・・
「おいおい、兄ちゃんたち随分とお金持ってんだな?」
「俺達に恵んでくれよ?」
横からガラの悪い二人組が話しかけてきた・・・・